「う~ん、悩むにゃ~」
「…………」
ラーメン屋に入り、メニューを開いたはいいが、星空はなかなか決められずにいた。
さっきから頭を抱えて悩んでいるのを見ると、こいつのラーメン愛は本物だとわかる。
だが、とりあえず決めないことには、話にならない。
「どれで悩んでるんだ?」
「チャーシュー麺のチャーシュー5枚か7枚で悩んでいるにゃ」
「…………」
そこかい!と思わず突っ込みたくなるような内容だ。
俺は首筋に手を当てながら、なるべく優しい口調で、かつさりげなく口を開いた。
「値段はそんなに変わらんから、7枚でいいんじゃないか?」
「……はいっ」
意外とすんなり聞いてくれた。
注文を終えると、後は待つだけ。
この時間は普段なら精神統一をして待っている。だが……今日はいつもと違う。
小町の友達と一緒にいる以上、精神統一のみというのは不味い気がする。もし小町に知られたら、後で何を言われるか、わかったもんじゃない。
とはいえ、俺に相手を不快な気分にさせず、かつ楽しまれるトークスキルはない。くっ、気まずい沈黙ならいくらでも乗り越えてやるんだが……。
「比企谷さん」
「……どした?」
「やっぱり餃子も頼むべきだったか悩むにゃ」
「いや、それは待ったほうがいいんじゃないか?小町達が合流してから、一緒に何か食おうってなるかもしれんぞ」
「た、たしかにそうにゃ……!」
「……てか、まだ悩んでたのか」
「あはは……」
照れたように頬をかく仕草に、つい胸が高鳴ってしまう。
いや、まあ、そんなことよりも……向こうから話しかけてきてくれてよかった……。
そうこうしているうちに、ラーメンが二つ運ばれてきた。
もくもくとたっている湯気に、食欲を誘うスープの香り。つい見入ってしまうようなボリュームに、俺も星空も、自然と口元が緩んだ。
こうなったら、ラーメン好きとしてはやることは一つ。
黙ってひたすら味わう事だ。
俺は星空に箸を渡し、気持ちを整えた。
「「いただきます」」
*******
「ふ~、おいしかったにゃ~」
「そっか。じゃあ、よかった」
ラーメンを食べ終え、店を出ると、言うまでもなく人は多いが、それを打ち消すくらいに星空はいい笑顔を見せていた。
ああ、こいつのこういう感じも上手くは言えないが、なんか猫っぽいんだよな。
「あ、かよちんから連絡にゃ……フードコートで待ってるって……」
「……おう」
「ふふっ。比企谷さん、今度は皆でラーメン食べますか?」
「そ、それはまたの機会に……」
星空からの素晴らしい提案を一旦スルーし、俺達はフードコートへ向かうことにした。