自己紹介を終えたところで、ふと思い出したことを口にした。
「……そういや星空。お前、用事のほうは大丈夫なのか?」
「え?……あ~~~~!!!遅刻にゃ!かよちんが待ってるにゃ!」
どうやら友達を待たせていたらしい。驚愕の表情の星空が駆け出そうとするので、小町と共に慌てて制する。
「いや、落ち着け。先に連絡した方がいいだろ。足のことも含めて」
「そうだよ、凛ちゃん。油断禁物だよ?」
「あ、うん……わかったにゃ……」
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彼女が電話をしてからしばらくすると、ショートヘアの女子が駆け足でやってきた。背丈は星空と同じくらいだが、身に纏う雰囲気は星空と違い、ふわふわしている。
「はあ……はあ……り、凛ちゃん……大丈夫!?」
「かよち~ん。もう、大げさにゃ~」
心配そうに星空の脚に触れるかよちんとやらに対し、星空はにぱぁっと笑顔で答える。
その様子を小町と並んで見ていると、かよちんは立ち上がり、こちらに向かってぺこりと頭を下げた。
「あ、あの……凛ちゃんを助けて、いただいて、ありがとう、ございます……」
消え入りそうな声で途切れがちに呟く彼女に、小町が努めてやわらかな笑顔をつくり、落ち着かせる。俺は従者の如く、斜め後ろに控えることにした。
「大丈夫ですよ~…………またまた美人さん発見」
何やらぼそぼそ独り言を呟く小町はさておき、目の前のおどおどした少女は、星空とは系統の違う美少女だ。眼鏡越しのくりくりした瞳は、小動物のように庇護欲をそそる何かがある。
星空はかよちんに抱きつき、ゆるゆりな癒やしのオーラを放ちながら口を開いた。
「この子がかよちんだよ!可愛いでしょ~」
「り、凛ちゃん……あ、初めまして。小泉花陽です……」
「初めまして~、比企谷小町です♪こっちは兄の八幡です」
「……あー、どうも」
またもやコミュ力の高さを発揮する小町に続く形で、俺は本日二度目の自己紹介をすませた。
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「……で、何でファミレス?」
「だってこっちの方が話しやすいでしょ?」
「いや、そういうんじゃなくてだな……二人は用事とかは大丈夫なのか?」
「大丈夫にゃ!二人でぶらぶらするだけですから!ね、かよちん!」
「う、うん……」
「そ、そうか……」
女子3人の勢いに呑まれ、ファミレスまで来てしまったが、この組み合わせで俺ができることといえば、見張りとか、殿を務めるとか、置物になるぐらいしかないのだが……。
「ね、ねえ、比企谷さん……」
「?」
「凛達高校生になるから聞きたいんだけど、高校生ってどんな感じですか?」
「……特に中学と変わらん」
「へ~、部活とかは……」
「入ってないからわからん」
「……じゃ、じゃあ、帰りは友達と楽しく……」
「いや、真っ直ぐ家に帰ってる」
「…………」
うん、なんかごめんね?参考にならなくて。
星空はドン引きというよりは、何か不思議なものを見るような目をこちらに向けていた。
その視線はどこかくすぐったかった。