ハルカンドラ。
巨大な火山から流れる溶岩。火山灰の降りしきる大地。とても生物の住めなさそうな星だが、反面高度な文明が発展していた。
夢と願い、希望を与える噴水と杖。どんな願いも1つだけ叶えさせる機械の彗星。これらは古代ハルカンドラ人が作り上げたアイテムだ。
古代ハルカンドラ人が何故『願い』に固執したのかはわからない。現在のハルカンドラの技術をもってしても、そのアイテムを再現することはできなかった。
そんな人々が遺したモノに、ある冠があった。身につけた者に無限の力を与える強力なアイテム。
そのアイテムには守護者がいた。火山の頂上に住む、四つ首の竜。溶岩と噴石、そして竜によって守られた冠を手に入れる者は誰もいなかった。
だが、ある男が何としてでもそれを手に入れたいと思った。支配欲が強く、虚言癖があり、利用できる存在はなんでも利用する。そんな性格の魔術師だった。
彼は古代人の遺産の1つである船を奪い、改造した。この力があれば、竜を斃し冠を奪えると思ったのだ。
だが計画は失敗に終わった。竜の力は予想以上であり、船は致命的な損傷を受けた。辛くも逃げ出した彼は、新たな計画を立てた。彼の故郷でも有名な別の星の"勇者"の力を借り、自らの手を汚さずに竜を斃してもらおうと考えたのだ。
彼の計画は成功した。"勇者"の手によって船は完全に修復し、故郷へと戻った彼は"勇者"に竜を倒させることに成功する。
長年渇望していたアイテムを手に入れた彼は、無限の力を使い邪魔となった"勇者"を斃し、全宇宙を支配しようとする。
しかし彼は"勇者"を甘く見ていた。冠によって得た無限の力でも、"勇者"には敵わなかった。彼の精神は全てを支配したいという執念と、"勇者"に対する憎悪に染まり、無限の力を制御できずに飲まれてしまった。
自身へ憎悪を向ける彼を、"勇者"は見捨てなかった。暴走する彼を止めるために、"勇者"は彼を倒し、冠を破壊した。
一命を取り留めた彼は、罪を償うために旅に出た。
「その『彼』が、マホロア。アンタね。」
「ソウ。欲望に飲まれ、全てを失った哀れな魔術師。"勇者"に止められていなかったら、ボクは君達の住むこの世界にも魔手を伸ばしていただろうネ。」
「で、アンタは支配のためではなく、罪滅ぼしのためにここに来た。でもアンタの話を聞く限りマスタークラウンがそれほど脅威とは感じないわね。」
「その意見には賛同するわ。」
いつの間にかいた紫が話に割り込む。霊夢達が驚く中、紫は気にせずに話を続ける。
「無限の力がどれほどのものにせよ、打ち破られた事実がある以上こちらで何とかできるわ。マホロア、残念だけど貴方の助力はいらないわ。――ああ、それと逃げるなら早く逃げたほうがいいわよ。」
「エ?」
「侵入者に告ぐ!無駄な抵抗はせず、今すぐ船から出てこい!さもなければ、船を破壊する!」
見ると、犬走椛率いる白狼天狗部隊がローアを取り囲んでいた。紫は巻き込まれるのを避けたのか、忽然と姿を消していた。
「おい、どうするんだ霊夢。あいつら私達も巻き込む気だぜ。」
「今出ていったらマホロアの協力者と見られて攻撃されるでしょうね。マホロア、さっさと出ていきなさい。」
「ああもう、これ以上船を壊されてたまるかヨォ!」
霊夢がマホロアに出ていくように言うより早く、マホロアは船から飛び出していた。余程この船が大事なのだろう。
「侵入者を捕らえろ!」
マホロアが船から出てくると同時に、複数の白狼天狗がマホロアを取り囲んで拘束する。
「なんとも奇怪な…。よし、こいつを連―」
「椛様!」
椛が部下にマホロアを連行していくように指示しようとしたその時、1人の白狼天狗が飛んで来て跪いた。
「なんだ?」
「上空に大量の『穴』が開き、その『穴』より怪鳥が出現しました!怪鳥は周辺を無差別に襲っております!しかも、そのうちの何体かはこちらに向かってくる様です!」
「何!?おい貴様!一体何をした!」
「チョット、ボクのせいかヨォ!ボクは何もしていないヨ!」
「うわあああっ!」
「「!!」」
近くで悲鳴が上がる。既に、あちこちで戦闘が始まっていた。白狼天狗と球体の躰を持った、紫や赤の怪鳥が戦っていた。
「スフィアローパー!もう嗅ぎつけたのカ!」
「スフィ…?なんだ、それは!」
「説明も撃退もするから、この拘束を解いてくれないかナァ?」
「…ええい、やむを得ん!」
椛が持っている剣でマホロアの縄を切り落とす。
「ふう…。あいつらはスフィアローパー。『アナザー・ディメンション』に住む生き物サ。魔力エネルギーが好物でね、ボクの乗ってきた船は全体が魔力エネルギーを帯びてるから、それに釣られてこの世界にやってきたみたいだネェ。」
「間接的に貴様が原因ではないか。」
「まあ、そういえばそうかもしれないけれど…グダグダ話してる時間はないヨ。」
「!!…このっ!」
近くまで寄ってきていたスフィアローパーの一体を、椛が斬り伏せる。スフィアローパーは爆発し、消滅した。
「さぁて、久しぶりに大暴れしてみるカ!」
その頃、ローアの中では…
「なんだか外が大変なことになってるみたいだけど、どうするんだ?」
「面倒だからこのまま中にいましょ。」
「それもそうだな。」