日本有事に対し『日本帝国海軍』が介入しました 作:休日ぐーたら暇人
まあ、政治ネタ。
東京都 帝国ホテル一室
「まったく、ここのマスコミの酷さはウチ以上だな」
テレビを観ていた日本帝国首相(元海軍大将)福本伊吹は吐き捨てる様に言った。
これを同じ様に隣で観ていた杉下将(すぎしたまさる)大使(予備役海軍将校)と第七独立機動艦隊第十一戦隊司令近衛百合奈(このえゆりな)少将も頷く。
なお、3人は別々の場所で仕事をしていたのだが、何故か播磨達が転移したと同時に転移してしまったのだった。
「敗戦と言う物の恐ろしさを見せつけられますね」
「まったくです。しかも、70年前の戦争に何もかも縛られいる…これが国とは情けない」
3人共、立場や階級は違えど『愛国心』を胸に軍の門を叩いただけに日本の劣化ぶりに歯痒さを口にする。
「……さて、そろそろ、先方との約束の時間があるから行こうか」
福本伊吹の言葉に2人も立ち上がった。
帝国ホテル〜首相官邸間の道筋
『占拠された与那国・多良間両島を奪還せよ!!』
『政府は直ちに戦闘を停止し、撤退せよ!!』
『中国の横暴を許すな!!』
『戦争反対! 話し合いを!!』
『未来の為、断固領土奪還!!』
『自衛隊に人殺しをさせるな!!』
……等々のデモ隊のスプラッシュコールが上がる中、福本伊吹達を乗せた車は首相官邸に向かう。
「見たまえ、テレビはわざと反対派ばかりアップで映していたが、人数も主張も勢いも賛成派が多い。正に『マスゴミ』だよ」
運転席と助手席に座る私服警官の微妙な顔も気にせず、伊吹は吐き捨てる。
「この場合、いくら領海問題があるとは言え、一方的軍事行動に対する実力行使は冷静を求める声があれど、賛成派が正論であり、肯定されるべきなんですがね」
「しかも、今回は問題である尖閣諸島ではなく、その奥、長年正式な条約等を担保に実行支配している先島諸島の与那国・多良間両島…反対以前の問題…すみません、若輩が先輩方々に要らぬ講釈でした」
杉下大使に続き、近衛も意見を言って、講釈口調であったので詫びる。
なお、階級的序列であれば福本伊吹→近衛少将→杉下大使なのだが、年齢的には福本伊吹(60代)→杉下大使(30代前半)→近衛少将(20代後半)なのである。
「いやいや、問題無い。まあ、この様子では軍隊…自衛隊の地位もたかが知れている…いかんな、いや、まったく、いかんな」
そう行って伊吹首相の憂いある視線を向けながら車は首相官邸へと向かった。
首相官邸の一室
「昨日ぶり、ですな」
「えぇ、まったく」
垂水慶一郎首相に挨拶をして、福本伊吹首相は直ぐに話題を切り出した。
「垂水首相、率直に言おう。これは国家の明暗を分かつ事態だ。いま直ぐ、海上警備行動だ、防衛出動だ、なんて言葉遊びでなく、堂々と『自衛戦争』を宣言し、自衛隊にフリーハンドを与え、解決すべきだ。既にウチの息子達が居て、いつでも支援出来る。いま動かずに何時動くんですか?」
あくまで冷静に相手を立てる様に伊吹首相は言った。
「……福本首相、貴方の言う事はわかる。しかし、下手に動けば中国とは全面戦争になる。また、これにアメリカを巻き込み、米中戦争を巻き起こす訳にはいかないのです」
「つまり、全面戦争を怖れて一歩退いた状態で戦うと?」
「そうです。いま、貴方との交戦で世界の目は東シナ海に向いています。また、戦闘の推移によっては国連を通じて世界が介入する可能性がある。下手な事は出来ないのです」
「国連? 今の国際世界がなんの役に立ちますかな? 国連も認める明らかな日本の行政支配地域への軍事占拠に対して、批判すらしない国連を頼ると? バカバカしい。だいたい、こう言う場合の国際世界の介入と言うのは侵攻された国が断固たる意志と一撃を見せ付けてから介入するもの。このままでは後手後手に回るだけです」
「伊吹さんの主張はわかる。だが、この微妙な世界情勢を加味していただきたい」
「加味すべき時期が違いますな。先ず自国領土侵攻に対する日本のハッキリした意志を世界に主張し、そこから世界情勢の変化を的確に把握し、対処する。いまやるべき事は意志の主張と占拠・侵犯した支那共産党軍を排除する事でしょう。そうしなければ、日本は支那共産党の脅威に怯えるアジアと世界からの信頼も失い、アメリカも見捨てますよ」
「アメリカがそんな事をすれば、それこそ世界の信用を失いますよ」
「アリバイ工作的な事をしてしまえば世界に格好はつきますよ。そちらがアメリカと真の協同保障を望まないなら、首相のご意見でもよろしいですがね」
互いに冷静に、克つ、耳を傾けるべき主張ではある。
しかし、垂水首相にとって福本伊吹と言う人間を相手にするのはレベルが違い過ぎた。
何故なら、杉下や近衛は充分に承知している事だが、軍事・外交・政治・経済と4つの関連性はありながらも独自の流れが存在する物を独自に把握・処理する事を福本伊吹と言う人間は出来る人間であり、特に海軍次官時代はその遣り手ぶりから『マジシャン・イブキ』との渾名を『追加』された程だ。
特に軍事に関しては元の畑だけに敏感、克つ、慎重で大胆で巧妙に処理する手腕は首相になってから更に洗練された、と海外筋で言われ、『アメリカ・ロシア・日本の3人巨人で世界が安定している』と謳われいる。
よって、官房長官と言う『政治面』の荒波しか越えていない垂水首相は軍事などはどうしても畑違いであり、4つの複合的な嵐を口笛を吹きながら楽しそうに越えていく福本伊吹ではそうならざるおえないのである。
「垂水さん、同じだが違う日本人として言わせてもらうが、先ずは国民の保護と侵入者の排除が第一優先だ。世界世論だ、情勢だは一旦横に置いて、それに注視すべきだよ。しかも、時間の経過は味方にならない。逆に手遅れになってしまう」
「故にです。ですから、帝国艦隊には我らと海自の指揮下に入ってもらいたい」
「…『我ら』と『海自』の言語が入ると言う事は、そちらのシビリアンコントロール下に入れ、と言う事ですかな?」
この念を押すような伊吹の質問に今までとは違う口調の変化を杉下と近衛は直ぐ様感じ取ると同時にその意味合いを理解した。
「はい。こちらの支援を行うのであれば…」
「近衛少将、垂水首相に展開している艦隊を説明してあげなさい」
垂水首相の言葉を遮るかの様に伊吹は近衛に対してわざと説明を促す指示を出した。
「は、はい…まず、前提としまして、現場に展開しているのは二個艦隊の混成艦隊であり、今は臨時で指揮系統を統一して運用しています」
「2つの艦隊の混成艦隊?」
「はい。まず、私の原隊である第七独立機動艦隊。先の大戦で大戦果を挙げ、近年復活した、ほぼフリーハンドを得た艦隊です。次に第零艦隊。これはある種の方面駐留艦隊ですが、ほぼ第七艦隊と同じ程の独自裁量権がある艦隊です。この艦隊は複数のタクスフォース…任務部隊で形成されており、その総称が『第零艦隊』です」
「なるほど…それが、いったい?」
「垂水首相、我々はそちらの『不都合なシビリアンコントロール』下に入る事は出来ない。私は現場経験者として、また、軍と政府の最高責任者として、その要請を全面的に拒否する」
伊吹首相の言葉に杉下と近衛は『あぁ、やっぱり、言った』と内心溜め息を吐く。
「何故ですか!?」
「侵攻直後の初動対応ならイザ知らず、その後の個々の戦闘においても『政治の過度な介入』を行う事は同意出来ません。我が精鋭たる二艦隊は現場指揮官の素早い対応で今まで犠牲無く勝利を収めてきました。対して、そちらのシビリアンコントロール下に入れば先制攻撃すら許さぬなど、現場の将兵に対して『お前達が全滅するまで反撃を許さない』と言う様なものです」
「我が国は『専守防衛』を掲げているのです! 先制攻撃はそれにあたる事象です!」
「個々の戦闘にまで『専守防衛』を強要するのが間違っている! 通常においての『専守防衛』とは『相手が攻撃、あるいはその素ぶりを見せるまで攻撃しない』が原則で、その後は相手が降参するか、逃げるかを選択・判断しない限りは攻撃の続行が認められる。つまり、初撃以後は『専守防衛』を堅持する国はまったくもっていません! 何故なら、手を抜けば現場の将兵や後方の国民の命が掛かっているんです! 雁字搦めな状態で戦わすなど、私は断固拒否します!」
そう言って伊吹首相は立ち上がると一礼し、「では、また明日に」と言って踵を返す。
杉下と近衛も慌て一礼し、踵を返した。
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