午後もさんざんに遊びまわった俺たちは、最後にスカイツリーまで出かけて景色を眺めていた。
空は雲一つない快晴で、美しい景色が広がっている。
時刻は間もなく日没。
美しい夕焼けに東京の街が照らされている。
東京にはありとあらゆる色があふれている。
でも、その色が夕方だけはただ一色にそまる。
「きれいやね…」
三葉が独り言のようにつぶやく。
三葉は俺の腕に手をからませて、口をあけてその景色を見ている。
「こんな時間を黄昏時っていうんだな」
黄昏時…いや、なんか違うな。
そんなみんな知ってるような言葉じゃなくて、もっとしっくりくる言葉があった気がする。
なんだっけ…?
「三葉はスカイツリーには上ったことあるか?」
「うん…東京に来た時に上った。ただ、瀧君と見る風景は、格別」
「はは、俺もだよ」
三葉と景色を眺めていると、見慣れた東京の街も、どこか違ったものに見える。
そのすべてが輝いてみえる。
世界って、こんなに美しかったんだなって思える。
「瀧君…今日はありがとね」
「何だよ、まだ本題がのこってるぞ?」
「うん…糸守もきれいなところやよ」
「…俺が好きになった町だ。あたりまえだろう?」
三葉がおかしそうに笑う。
この笑顔を見れただけで、俺はもう何もかもがどうでもいい気がしてくる。
「さっき、瀧君は『黄昏時』って言っとったよね?」
「あぁ」
「語源は知っとる?」
「確か…誰そ彼…だったっけ?」
なんで知ってるんだろう?
どこかで習ったのかな?
「そう…夕暮れ時、世界の輪郭がぼやけて、彼が誰だかわからなくなる時間。人ならざる者に会うかもしれない時間。だから、彼は誰時とか、逢魔が時とも言ったみたい」
「不思議な体験をする時間ということか」
「うん…糸守ではね。黄昏時のことをこう言うんよ…」
三葉が次の言葉を言うだめに息を吸い込む間に俺は無意識的に言う。
「かたわれ時」
「え…?なんで…なんで瀧君が知っとるの?」
「わからない。ただ、いきなりポンと頭の中に浮かんできた。お前の祖母ちゃんの言葉のときと同じだ」
「お祖母ちゃんの言葉は瀧君が聞いたことがあるから思い出したって説明ができるけど、糸守の古い方言を知っとるなんて変やん?」
「…言われてみれば…」
なんで瀧君はかたわれ時を知っているの?
その答えはわからない。
「俺は、このかたわれ時に、ふいに涙が流れることがあるんだ」
瀧君は涙を流しながら言う。
悲しいわけでもないのに。
「私もやよ。なぜか涙が流れるんよ」
多分、私も涙を流しているんだろうな。
悲しいわけでもないのに…いや、むしろ瀧君とこうして一緒にいれることが嬉しくて幸せなのに。
「糸守のかたわれ時、見てみたいな。東京でこんなんなら、糸守の景色を見たら、ボロボロ泣くぞ、俺」
「あはは、見てみたいわ!瀧君が号泣してるところ」
「多分、俺と一緒に見たら三葉も泣くぞ?」
「ふふっ。多分、二人して号泣するんやろね」
「あぁ、違いないな」
二人で笑う。
かたわれ時が終わろうとしている。
友達と遊んでいたら、いつの間にか時間がたっていて、もう帰らなきゃいけない時間だ。
俺たちも帰ろう。
「そろそろ、戻ろうか。夕飯は俺の家でいいだろ?」
「うん。私に夕飯作らせてよね!今日の朝はおいしくてびっくりしたけど、瀧君も私の料理食べたらびっくりするで!」
「ほぅ、ならば楽しみにしているよ」
また、互いの顔を見て無邪気に笑う。
子供なら、かたわれ時は帰らなきゃいけない時間。
でも私たちは大人だ。もう、かたわれ時だからといって友達と別れなくてもいい。
ずっと一緒にいてもいい。これからが楽しい時間なのだ。
二人は腕を組みながらエレベーターに乗った。
文字が少ないだって?
じゃあアレか!お前は投稿ペースが著しく遅くなってもいいってのか!?
アァ!?
…すいません(笑)