君の名は、   作:柚子丸

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日々
建築オタクの集い


さて、今日は月曜日。

全人類が最も嫌いであろう日だ。

当然、俺も嫌いな日である。

しかし、悲しいかな…どれだけやだきらいと言っても、働かねばならないのだ。

俺はこの会社で色々な建物を設計して、俺の建物を日本中に建てまくってやりたいと思っていたのだが…。

入社してみたらどうだ、ひたすら下働きだ。

いや、予想してなかったわけではないんだが、いつになったら自分一人で建物を設計できる日がくるのか見当もつかないのだ。

まぁ、気長に待つしかないんだろうな…。

 

閑話休題。

 

さて、そろそろ読者の皆様が気になっておられるであろう話をしよう。

「あの後、三葉とどうなった?」

何もございませんでした。

いや、本当にだよ?

何か特別なイベントがあったわけでもなく、あの後三葉は普通に家に帰った。

一応送っていったんだけど、すごい剣幕で「駅まででいい!!!!」と言われてしまった。

なんか「四葉…許さない」とスマホを眺めながら言っていたけど、四葉ちゃん三葉に何したんだろうな?

今度、時間があれば聞いてみよう。

 

閑話休題。

 

それで今俺は何してるかと言うと、3人の親友と共に昼飯を食っている。

3人の親友とは言うまでもないだろう。

一人は司だ。

もう一人は高木真太。

俺や司と同じ建築オタク仲間だ。

こいつも内定を俺の会社にもらったらしく、この会社に入社したらしい。

今はこいつは本社の方で働いていて(俺と司は支社)、今日は出張で支社まで来ていた。

真太は言った。

 

「お前…何か変わったな」

「なんか…司にも同じこと言われたな」

「いや、ほんとに…なんつーか、数割増し魅力アップというか…」

「魅力?」

「いや、要するに…お前さ、彼女でもできたの?」

 

…また返答に窮する質問を…。

 

「…いねぇよ」

「…間があったな…司よ、どう思う」

「間違いない。菩薩にも春が来たな」

「勝手な勘違いしてんじゃねぇ!あと菩薩じゃない!」

 

俺たちはだいたいこんな感じだ。

司と真太が俺をいじる。

あれ、俺って損しかしてないじゃん…?とも思うが、それでも許せてむしろ居心地がいいのだからやっぱり俺たちは親友何だろう。

 

「そうかい上杉謙信。でも…じゃあなんでこうも変わったんだろうな?」

「…はぁ、ごまかせそうにねえな…」

 

俺は観念して、三葉のことを言うことにした。

 

「そうだよ、彼女じゃねぇが、知り合いの女の子ができた。誰にも言うなよ?」

 

俺がそう言った瞬間、司と真太は同時に「「YEAH!!」」と言って拍手し始めた。

 

「いや~、遂に!遂にですよ高木さん!高校から数えて苦節7年!」

「ようやく瀧にも春が訪れましたな藤井の奥さん!」

「やめてくれよ!周りにも人がいるんだから!」

 

本当にやめてほしい。

つーか、マジで俺と三葉の関係ってどう表現すればいいのか迷う。

恋人じゃない…でも友達?親友?ちょっと当てはまらないような気がする。

いっそ恋人のほうがしっくりくる。

 

「ところで、どんな方なんだ?」

 

真太が聞いてくる。

 

「どんなって…えっと、宮水三葉って子で…」

「かわいい?」

「…かわいい…すごく」

 

偽りのない本心だ。

三葉は綺麗、かわいい、美しい…どんな言葉もあてはまる超ハイスペック美人なのだ。

なんで俺なんかがあんなお方とお近づきになれたんだろうか…?いや、答えはわかってるか…。

 

「ほぅ、ちなみに写真とかは?」

「ねーよ、さっきも言ったが別に恋人ってわけじゃないんだ」

「出会って何日なんだ?」

「先週の金曜日だから…4日?」

「4!?」

 

真太が飛び上がる。だから彼女じゃねぇって!

いや、そういう関係になりたい願望はあるけど、今はまだ彼女じゃない!

ちなみに俺は三葉の写真をもっている。え?いつそんなもん撮ったのかって?

寝顔を少し撮影させていただきました。かわいかったし…。

 

「4日前ってさ、お前がちょうど遅刻してきた日だよな?」

 

司が思い出しながら言う。よく覚えてらっしゃる。

 

「あぁ…正直に言うとその時に出会った」

「やーっぱり女だったか!」

「ぐぬぅ…つーか遅刻じゃねぇし」

 

ぎりぎり間に合ってたし!

 

「ほう、聞かせてくれますかな藤井さんや」

「いや、あの日瀧が珍しく遅刻してきたんだよ。しかも頬を弛緩させながら。女かって聞くとクネクネして気持ち悪いし」

「そんなんじゃなかっただろぉ!誇張すんなよぉ!」

「いやでもほんと、女だったのか…」

「なんだよ、感慨深げに…そんなに俺に彼女ができるのが珍しいか…彼女じゃないけど」

 

すると司は笑いながら言った。

 

「違えよ、ただ…お前、なんか高2のあのときから変だったじゃねぇか」

「あぁ、勝手にお前らが旅行に行くって言いだしたやつな…おめえら結局土産買って来なかったよな…」

 

あの日か…糸守に行って、三葉と何かがあったであろうあの日。

もしかしたら、こいつらも何か、俺たちのパズルを解き明かす重要なカギをもってるかもしれん…聞いてみるか。

 

「あのさ、司。俺、あのとき糸守に何しに行ったんだっけ?」

「え?お前ら糸守に行ったの?」

 

真太、ちょっと黙ってなさい。あなたには聞いておりません。

 

「メル友を探しに行くとかどうとか…」

「メル友?」

 

司は驚いた。

あの日もたしか瀧をメル友とか言っていじったが、あのときは瀧は全力で否定したはずだ。

しかし今日は真面目な顔で聞き返してきた。

もしかして…覚えてないのか?瀧…。

 

「いや、それは方便だとか言ってたな…誰かを探しに行くって言ってた」

「誰かを…?」

 

まぁ…三葉しかおらんわな…ほかに糸守に用があるはずもない。

 

「行先もわかんねぇっつって、スケッチだけを頼りに探していって…」

 

言うまでもなく、昨日三葉に見せたあのスケッチのことだ。

 

「なんとかラーメン屋のおっちゃんのおかげで糸守に辿りついたんだけど…お前、糸守を見てやけにショックを受けてたから…あれ、その後何したんだっけな…」

「いや、いい。教えてくれてありがとう」

 

今の司の話だけで色々なことがわかった。

俺は糸守に誰かを探しに行った。

糸守を見て俺がショックを受けたということから、俺は糸守が当然あるものだとばかり思って行ったんだろう。

そして目の前には無残な糸守の姿があったわけか…。

当時の俺に会ってみたいな。あの日、お前はどう思っていたんだ?

 

「なんかさ…お前、一人でどっか行っちまったけど…どこ行ってたんだ?」

「あぁ…ちょっと山登りにな…」

「「山登り??」」

 

司と真太が同時に聞くが、俺の耳には入らない。

俺は三葉を探しに行ったはずだ。

でも、すでに彗星が落ちていたから三葉はそこにいなかった。

それに俺はたいそうショックを受けたってことだろう?

つまり、俺は三葉が2016年の糸守にいるものだとばかり思って糸守に行ったってことか?

よくわからん。

 

「俺は…糸守の彗星災害のことを知らなかったのか?」

「おいおい、また記憶喪失かよ…彗星災害のことは知ってたみたいだが、自分の探してた町が糸守だってことは知らなかったみたいだったぞ」

 

つーことは…俺は糸守のことを知らずに糸守のスケッチを描いたってことか?

え…俺ってエスパー…なはずがない…じゃあどういうことだ?

俺の描いた画は三葉が「間違いない」と言っていたから正確なはずだ。

なぜ正確な糸守の姿を糸守を知らない俺が描けたんだ?

また記憶なのか…?

俺は司と真太が見ているにも関わらず、LINEで三葉にメッセージを書いた。

 

『今日、時間ある?』

 

ずっと考え込んでいた俺には、司と真太が「できてんじゃね?」と話しているのには気づかなかった。

 

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