四ツ谷駅前
4月も最終週の金曜日。
金曜日っていいよね。明日休みなんだぜ!
しかも、4月の最終週の金曜日ということはこれからゴールデンウィークだ!
せっかくだし、三葉と何かしてみたいなぁ。旅行とか行ってみたい。
いやいや、そんな俺の欲求の話なんかはどうでもいいんだ。
今、俺は奥寺先輩と待ち合わせをしている。
何でもしばらく東京で仕事をすることになったらしく、俺にも会いに来てくれるらしい。
奥寺先輩と二人で会うってのは…なぜだかあんまり嬉しくない。
なんでだろうか?覚えてないってことはまた三葉絡みか?
いやいや、何でもかんでも三葉に結び付けちまうのもおかしな話だ。
奥寺先輩があまりにも美人過ぎて、ちょっと緊張してるだけだ。
などと考えていると、いきなり後ろから声をかけられた。
「あら、ごめんね!待った?」
「うわぁっ!!!!」
突然のことに素っ頓狂な声が出ちまった…恥ずかしい。
背後を見ると、そこには大人の色気が漂う妖艶な美女がいた。
ただ、俺の目線はその美女の胸にいったかといえばそうではない。その後ろの女性に目がいった。
「奥寺先輩…と、なんで三葉が!?」
「いや…あの、私もついてきてって言われただけやから…まさか瀧君に会うことになるとは…」
「いやぁ、せっかくだし仲睦まじい姿を見せてもらおうと思ってねぇ…」
「なーにおばちゃんみたいなこと言ってるんすか…」
奥寺先輩は司と婚約中だ。まもなく結婚式とのことで、司も最近はソワソワとしている。
司め…あいつ新卒社員のくせにもう結婚だのなんだの、ちょっと上司に気に入られているからって調子に乗りやがって…。
いや、もちろん二人のことは祝福したいんだけども…。
奥寺先輩を藤井先輩と呼ばなきゃならなくなるのが嫌だ。ただそれだけです。
「おばちゃんとは酷いわね。私がおばちゃんなら三葉ちゃんもおばちゃんよ」
「瀧君!なんで私がおばちゃんなんよ!さすがに許せんよ!」
「だぁぁぁ!なーんでそういうことになってるんだよっ!」
結構周りから注目されてるから恥ずかしい。
この二人は構いやしないかもしれないが、美女二人とお話してるせいで周りの独身男性たちの目が痛い。
「とにかく!どっか行きましょう!別に今日は時間ありますから!」
「そう、よかったわ。じゃあ行きましょう。色々聞かせてね?」
そう言って奥寺先輩はスタスタ歩いていく。俺と三葉はその後ろから慌ててついていく。
「奥寺さん…きれいな人やね」
三葉がなぜか不機嫌そうに聞いてくる。
「あ…あぁ。確かにな。なかなかあんな美人はいないな……。でも、美人って意味じゃぁお前も似たようなもんだろ?」
「ふぇ?」
三葉が驚いたような顔をする。
その顔も結構かわいいですよ、三葉さん。
「いやぁ、三葉と奥寺先輩じゃ全然美人の意味が違ってくるんだけど…奥寺先輩は『きれいな美人』なのに対して三葉は『かわいい美人』なんだよなぁ」
「…どっちがえぇん?」
「…は?」
男が最も恐れる質問だ。
女の子というのは一番が大好き。くだらないことでも必ず勝負に持ち込んで勝とうとする、結構好戦的な生き物だ。
そして強制的に審査員として選ばれるのは往々にして男子なのである。
あちらがたてばこちらがたたぬの板挟みのジレンマをあじあわされる男はかわいそうな生き物である。
で、今、三葉はなんて言ったんだ?
「すまん…どういうこと?」
「つまり、ミキちゃんと私。どっちが瀧君のお気に入り?」
「…………」
「どっち?」
「………三葉だよ。言わせんな…」
「…そっか…」
あの二人、見ててこっちが恥ずかしくなってくるわね…。