君の名は、   作:柚子丸

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三葉と四葉…あなたはどっち派?


宮水家

タクシーの運ちゃんにすごい目で見られたけど、まぁやましいことはしてないしいいよね?

 

というわけで俺は三葉を背負って宮水家の前へやってきた。

都内のどこにでもある、普通のマンションだ。

エントランスにはすでに四葉ちゃんがいた。

 

「ありがとうございます!ご迷惑をおかけしました!えっと…」

「立花瀧っていいます」

「私は宮水四葉っていいます。今は高校2年生です」

「高2かぁ…」

「?」

 

高2といえば、俺と三葉の過去を紐解く上で重要な時期だ。

だからちょっと感慨深い。

既に日付が変わりそうな時間だ。

ここまで起きてていてくれたのは、素直にありがたい。

 

「えっと、とりあえず三葉は部屋まで連れて行くよ」

「ありがとうございます!こっちです」

 

四葉ちゃんに連れられてエレベーターに乗る。

マンションのエレベーターなので、狭くて窮屈だ。

ふと、四葉ちゃんが俺の顔をまじまじと見ているのに気づく。

 

「えっと…俺の顔に何かついてた?」

「あ!いえ!ただ…お姉ちゃんがこんな風に隙を見せるなんて、珍しいこともあるんだなって…」

「?」

 

今日話してみたかぎりでは、三葉は割と隙の多い危なっかしいやつだと思っていたが…違うのかな?

ただ、そこまで詮索するのもどうかと思って、聞くのはやめておいた。

 

「家では、三葉との二人暮らしなのか?」

「はい」

「妹から見て、どんな人だと思う?」

 

ちょっと聞いてみただけだ。

三葉の普段の様子というのが気になったのだ。

しかし、四葉ちゃんの表情はあからさまに曇った。

なんかデジャヴだ。地雷踏んだか?

 

「私たちは糸守出身なんです」

「それは聞いた。三葉は彗星の落下を予知してたんだって?」

「はい。あのとき以降姉は…笑わなくなりました」

「…」

 

一番近くで見てきた妹が言うのだから間違いないんだろう。

やっぱり三葉は彗星が落ちたときに、大切な何かを失ったんだ。

 

「彗星が落ちて、みんなが助かったとき…私はすごく喜びました。お姉ちゃんも喜んでいました…でも、ふと姉の表情が曇ったんです…どうしたの?って聞いたら…」

「…」

「一緒に喜んでほしい人がいない気がする…って…そしてそれ以降姉は心の底から笑うことがなくなったんです」

 

一緒に喜んでほしい人…それが誰なのかは不明だ。

しかし、これまでの三葉と四葉ちゃんの言葉と俺の考えをまとめて総合的に考えてみると…そいつはもしかしなくとも俺なんじゃないだろうか。

俺の頭の中に、何か大切な記憶がよみがえろうとしている。

しかし、そこでエレベーターのドアが開いた。

よみがえりかけていた記憶はどこかに引っ込んでしまった。

まぁいいや。ゆっくり思い出そう。

 

 

 

「本当にありがとうございました!」

「いいってことよ…しかし、時間がなぁ…」

 

三葉を宮水家までおくりとどけ、さぁ帰ろうと思って時計を見たら、もうすでに終電の時間を過ぎている…まいった。

 

「あ…もしかして…」

 

四葉ちゃんが心配そうな顔になる。

 

「あ、いやいや大丈夫…タクシー代ぐらいはあるだろうから…」

 

財布を開く。

ない。

そりゃそうだ。

二人分のイタリアンのコースの代金を払い。

深夜の二人分の長距離のタクシー代を払い。

 

「あ…あの、やっぱり私が払いますから…」

「いや…大丈夫…歩いて帰るから…」

 

グーグルでここから俺の家までの徒歩での時間を調べる。

一時間半…しんどいぞ。

 

「あの…もしよければ泊っていってください」

「え?いいの?」

「はい、ご迷惑をおかけしましたから…」

 

僥倖っ!なんたる僥倖!

あぁ、目の前のJKが輝いて見えるよ!

女性二人の住んでる家に男が泊るなんて普通に考えたらヤバいが…まぁいいだろこの際!

 

「じゃあ…お言葉に甘えて…」

 

どうやら部屋は余っていたらしく、布団だけ敷いてもらった。

軽くシャワーをあびて、そして俺は気づいた。

 

「…パジャマ…ない」

 

 

 

「あっははははは!!!!瀧君!すごっ…かわいい!!!」

「ちょっとお姉ちゃん!笑わんの!」

「いや…いいんだよ…別に」

 

三葉、大爆笑。四葉、大激怒。俺、大往生である。

上はTシャツでいいとして、下が無いのだ。

仕方ないから着てたパンツをそのまま着たのだが、気分は最悪だ。

いや、それは百歩譲ってまだいいとしよう。

この服…女物ってこんなかわいいモノしかないの?

ピンクってなんだピンクって!

 

「ふぅぅぅ…ありがとう!瀧君!酔いがさめたよ!」

「…そりゃよかったな」

 

女が男物の服を着ると「かっこいい」と言われる。

男が女物の服を着ると「きもい」とか「おもしろい」とか言われる。

この世は狂ってる!

なぜ男にはこれほどにも女物が似合わないんだ!

神よ、こういう場合ぐらい想定して宇宙を創れ!

俺なら男にも女物が似合う宇宙を創るぞ!!!

なーんていっても俺は神でもなんでもないので、世界の理不尽な法則従うことしかできない。

 

「…もう寝るわ。おやすみ」

 

なんかもう色々とどうでもよくなってきたから寝ることにする。

え?ふて寝だって?

その通りだ。なんとでも言え。

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