君の名は、   作:柚子丸

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デート

せっかく二人とも今日1日時間があるんだから、色々出かけた後に俺の家へ向かうことにした。

 

「遊ぶってったって…どこに行くんだよ?」

 

つーか、これ完全にデートじゃないですか。

俺、デートには基本的に悪い思い出しかないんだけど…。

 

「えっとね…銀座!」

 

定番だな。老若男女問わず大人気な東京一のお洒落街。

でもな、何か買ってって言われたら困ってしまう。

例えば三葉に「ねぇ瀧君…これ買って?」などと上目遣いで頼まれたら俺は全財産を投資しかねない。

俺は貯金したいんだー!

 

「わー!これお洒落!ねぇ瀧君!」

 

心配は杞憂に終わったようだ。

何かを買うということはなく、ただ冷やかしながら見て回る。

銀ブラなんて言葉があるけど、なるほどこういう楽しみ方なのね。

最近散歩とかしてないし、これもたまにはいいものだ。

特に三葉が一緒だと、さらにいい。

 

「おー、このカーディガンか。確かにお洒落だ…どうだ、そこで試着してみたら?」

「うん!」

 

三葉は嬉しそうに試着室へと向かっていった。

「銀座」という町は、建築マニアにとってもいい町だ。

いろんな建築があって、デザインの構想なんかの参考にもなる。

まぁ、俺はまだデザインなんて到底させてもらえないほどの下っ端なんだけど…でもやっぱり趣味みたいな感じで設計図とかを書いてたりする。

いつか、俺が設計・デザインした建物を建ててみたいものだ。

 

試着室のカーテンが開いた。三葉が着替え終わったのだ。

 

「お…おぉ…似合ってるじゃないか」

「え…へへ…そうかな?」

 

目の前に現れた三葉は…それはもう…なんというか…美しい!!

とてもよく似合っている!

 

「即買い!即買いだ!」

「えぇ!?買うのぉ!?お金ないんじゃないの!?」

「ATMがある!これが見納めだなんてもったいない!俺が買う!三葉にプレゼントする!」

 

そう言って外にあるATMへ瀧君は走っていった。

えへへ…そんなに似合っとるんかな…?

もうすぐ衣替えの季節でもあるし…瀧君に選んでもらうのもいいかもしれない…。

でも、そういえば私ってアパレル業界勤務なんだから人の服をコーディネートする側なんよね。

ならば!

 

「ねぇ瀧君!」

 

お会計を済ませた瀧君に声をかける。

 

「今度は私が瀧君の服を選んであげる!」

「え?俺の?」

「だって、今瀧君、スーツやん」

「あぁ…」

 

それは…確かにそうなのだ。

三葉がお洒落しているのに、俺はスーツなのだ。

理由は、昨日宮水家に泊まったからである。

 

「私が似合う服をプレゼントしてあげる!」

「いいの?」

「もちろん」

「じゃあ、頼む!」

 

さっそく服選びが始まった。

ほ~、色々な服があるんだなぁ…。

服って色々な種類があるよね?あれってなかなか覚えられないんだよ。

でも三葉はさすがというか何というか、ちゃんと覚えてるし、謎の専門用語もよく知ってらっしゃる。

 

「う~ん、これなんかどうやろ?」

 

そう言って三葉が差し出したのは普通のシャツだ。

紺色の落ち着いた雰囲気のあくまでオーソドックスなもの。

笑みがこぼれる。

 

「三葉…俺のこと、よくわかってるなぁ」

「え?いや、瀧君はあんまり目立つようなのは好きじゃないかなぁって思って…」

 

そう。俺は目立つカジュアルなファッションは好きじゃない。

だから私服もほとんどが地味なものばかりだ。

やっぱり仕事柄、その人が好きなファッションがわかったりするのかなぁ?

 

「ズボンは何がいいかな?」

「あー、ごめんな。色々選ばせちゃって」

「いいんよ。女の子はこういう感じに人に服を着せるのが好きなんよ?」

「それは…わかる」

 

人に合う服を選ぶのは確かに楽しい。

さっきみたいに色々な服を見ながら「三葉にはこんなのが似合うかなー?」とか考えていると、いつの間にか時間が過ぎて行ってしまう。

しかし、人の服を選ぶのは割と好きなのに自分に合う服を選ぶのは苦手だ。

いや、確かに試したことはあるんだけどイマイチだったというか…自分に合う服って自分にはわからないもんなんだなぁ。

 

「こんなのはどうかな?」

 

ふむ…やはり俺の好みを理解してくれている。

ナチュラルなストレートパンツだ。

 

 

「どうだ?似合ってるか?」

 

おぉ~、瀧君似合ってる!

 

「なかなかいいと思うよ!落ち着いた感じがしてて、ぴったり」

「そうか、ありがとう!じゃあ、これにするかぁ…」

「あ!私が払うね!」

 

せっかく服を買ってもらったんだからそのお返しにプレゼントしようと思った。

でも瀧君は

 

「え?それは悪いよ!」

 

と言う。どんだけ優しいのよ!

少しは年上面もさせてほしいと私は思う。いや、甘えたいと言えばそれもそうなんだけどね。

 

「えーの!私にプレゼントさせて?」

「お…おぅ…ありがとう…」

 

だんだんわかってきた。

瀧君は上目遣いで私がお願いすると、基本的に断れないみたいだ。

おぉ、これは使えるぞ!!

この上目遣いを駆使して瀧君にいろんなことをさせてやろう!

うわぁ…妄想が…止まらないよ…。

 

なーんか三葉が不敵に笑みを浮かべてて、怖いんですけど。

何か悪いこと企んでないか?

 

「あー、三葉、そろそろ昼だし昼飯どっかで食べてこうぜ?」

「あ、いいね!」

「フッフッフ…先ほどATMに行ってきたから金ならたんまりあるぜ!」

 

そう言って自慢げに言う瀧君のおでこを私はチョップする。

 

「痛っ!何すんだ!」

「新社会人が見栄張らんの!私にもおごらせない!」

「…なんでもオミトオシなのですね…」

「昨日の今日でこんなに散財して…全部私のためやからなんか悪いことしてるように思うやん

?」

「いやいや、好きでやってることだからさ!でも…心配させちゃってごめんな」

「うん…えいっ」

 

私は瀧君の腕に抱きつく。

 

「えっ、ちょっ、三葉ッ!?」

「これで行こ?」

 

私は満面の笑みで言う。

はたから見たらバカップルそのものやけど、いいも~ん。

いっそ見せびらかしたいぐらいだ。私の好きな人はこの人でーすって。

 

「ナンパ除けか?」

「な…そんなわけないやん!!割と台無しやよ!!」

「え…いや、三葉ってかわいいし…男だって寄ってくるだろ?」

 

え…かわいい…?

今…かわいいって…!

いや、瀧君は特別な気持ちで言ったわけやないことぐらいわかっとるけど…もう!いきなりそんなこと言わんでよ!

でも、瀧君は私が頬を赤くしていることには気づかず、店を探している。

瀧君って…けっこう鈍感だったりするんだろうか?

 

「お?この店なんかいいかもな?」

 

瀧君が立ち止まったのは和食料理店の前だった。

 

「今日の朝は洋食だったし…三葉はやっぱり和食が好きなんじゃないか?」

 

瀧君、私の好みをよくわかってらっしゃる。

洋食もいいがやっぱり和食。いわゆるおふくろの味ってやつが私は大好きだ。

 

「うん。やっぱり洋食もええけど和食のほうが落ち着くんよ」

「なら、ここにするか」

 

 

 

俺の感想。三葉って、結構食べるんだな。

私の感想。瀧君って、割と小食なんやな。

 




デート。したいなぁ。
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