ペルソナ使い鳴上悠と魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告、ご指摘ありがとうございます。
助かっております。

第十二話に説明不十分だった軍の背景を少々追加しております。

今回ようやく、魔法科高校の主役クラスが登場です。



第十三話 事件に関わる魔法科高校一年生

2096年1月18日(水)PM

 

 

「よお、みっともない姿を見せちまったな」

西城レオンハルトは病室のベッドから上半身を起こし、いつもの屈託のない笑顔を見舞に来た友人達に見せる。

 

西城レオンハルト、愛称はレオ。身長は180㎝強のガタイもよく、堂々たる体格をしている。イケメンだが日本人にしては彫りの深い顔立ちは名前からも分かるようにドイツ系の血が受け継がれている。

真由美の後輩で第一高校一年2科生。魔法師の卵だ。

この青年こそが、4日前に悠が3人のドッペルゲンガーから救出した若者だった。

現在この都内の某病院の個室で入院生活を送っている。

 

「思ったより元気そうでホッとしたよ」

この線の細い青年は吉田幹比古、古式魔法の大家吉田家の次男。本人もかなりの使い手だ。レオのクラスメイトだ。

 

「レオくんお加減大丈夫ですか?」

この時代には珍しく、メガネを掛けている大人しそうな少女は柴田美月。同じくレオのクラスメイト。

一見この少女がしているメガネは普通のメガネに見えるが、オーラカットコーティングという特殊な加工が施されている。水晶眼という特殊な目の持ち主で、通常目にすることが出来ない不可視な霊子等が見えてしまう。それを抑えるためにこの特殊なメガネを掛けている。

 

「酷い目に遭った様だな」

落ち着いた雰囲気を纏うこの青年は司波達也、同じくレオのクラスメイトだ。

彼には裏の顔がある。独立魔装大隊戦略級魔法師大黒竜也特尉として……さらに、友人達にも知らせていないもう一つの顔、アンタッチャブルとして恐怖される十師族四葉家当主の甥として、更にその四葉家次期当主候補の、妹である司波深雪のガーディアンとしての顔だ。

 

「此奴がそう簡単にくたばる玉に見える?身体が頑丈なだけが取り柄の男なんだから」

レオのベッドの横で、こんな事を悪びれもなく本人の前で言っている赤毛の美少女は千葉エリカ、剣術家の大家千葉家の次女で、彼女自身も優れた剣士だ。もちろんレオのクラスメイトである。

彼女はこんなことも言いながらも、レオが病院に運ばれてからずっと付き添っている。

ちなみに、今日レオが一般面会の許可がようやく出たことを皆に知らせたのは彼女だ。

 

「うっせ」

レオはそんなエリカに悪態をつく。

 

 

「レオ、何があった?」

それぞれ挨拶が終わったところで、達也がレオにこんな目に遭った理由を聞く。

予めエリカから、噂に聞く【ゴースト事件】の被害に遭ったらしい事を聞いていた。

 

大々的ではないが、既にネットや風の噂で、魔法師が不可解な死で発見されたり、行方不明になっている事件が勃発していることを色々な憶測の元に【ゴースト事件】として流れ始めていた。

 

「ああ、【ゴースト事件】の噂は知っているか?街でこいつの兄貴に偶然あって、この事件が実際に起こっている事を知った。俺も正義感とかじゃないが、自分の町でそんな事件が起こっている事にちょっとな……まあ、あてもなく夜の街中を歩いて、なんとなしに犯人を探していたってわけだ。

それで一昨日偶然に人が襲われている所に遭遇して、助けようと思ったんだが、返り討ちにあってこのザマだ」

レオは思い出すように話し始める。

ちなみにこいつの兄貴とは千葉エリカの長兄、千葉寿和警部のことだ。

 

「あの馬鹿兄貴が余計な事を言うから、なんで警察の情報を高校生に漏らすのよ?ほんとチャランポランで不真面目でどうしようもない奴なんだから。……そんで、この馬鹿は警察に任せればいいのにそんな事に頭突っ込むからこういう事になるのよ」

エリカはうんざりした表情から、呆れた目でレオを見た。

 

「わ、悪かったな」

 

「俺もゴースト事件については気になってはいた。……ということは、レオは犯人を見たんだな」

達也もゴースト事件の噂について、独自に検証していたようだ。

 

「ああ、……ただ、自分の目を疑うような光景だった」

 

「どういうことですか?」

美月は真剣な表情で聞き返す。

 

「俺が居た公園は妙な霧が掛かり、視界が悪かったが、襲っていた連中は2~3人居たはずだ。俺はその内の妙な仮面を被った黒ずくめの黒マントの1人とおっ始めた。

お互い素手で、何発か殴り合ったところまでは良かったんだが、相手が妙な糸を出しはじめ、それに触れると…力が抜けてくんだ。まるで力が吸い取られるような感覚だった。俺は力尽き、その糸で簀巻に……」

レオは悔しそうな表情をする。

 

「糸で力を奪い取る?そんな魔法聞いたことが無い」

幹比古は考え込みながら相づちを打つ。

 

「俺が戦いはじめると、若い男が助けに来てくれたようだ。俺は目の前の敵に集中してよくわからなかったが、連中の他に数匹のオオカミと大きな鳥が現れて、その男が戦っていたようだ」

 

「オオカミは日本に居ないですよね」

 

「いや柴田さん、式神かも知れない……僕もオオカミを模した式神を操ることがある」

幹比古も古式魔法の式神を使用することが出来る。流石は吉田家のと言ったところか。

 

「それで、どうなった」

 

「どうやらその男は、どうやったかは知らないが連中を打ち破ったようだ。俺は気を失っていたからよくわからない。目をさますと連中の姿は既に無かった。目の前には刀を持った若い男が俺を介抱しようとしていた」

 

「式神使い……敵は古式魔法師のようだな……しかし、魔法師のみを狙うとは、魔法協会への当てつけか、現体制の失脚を狙ってのことか……」

達也は唸るように口にする。

 

「古式魔法の家でも、特に伝統派は魔法協会の現体制への不満は昔からあるからね」

幹比古の吉田家は、伝統派とは敵対する立場にある。

 

「そうだな、伝統派の連中ならば、魔法協会に登録していない魔法を独自に持っていてもおかしくない」

 

達也がこう言うのにも理由がある。

伝統派とは、京都を中心とした古式魔法師達の連合体だ。

表向きは古式魔法の独自性を維持するための魔法結社だが、現代魔法師、特に第九研出身の魔法師に対し、明らかに敵視し、非合法活動を行っている。

(敵視する歴史的背景があるがここでは語らないでおこう)

 

「伝統派以外にも、現魔法協会を良しとしない、地下に潜った非合法組織は結構あるし……何処の誰だか……」

幹比古はそういいながら考え込む様な仕草をする。

 

「「…………………」」

皆も幹比古と同じく考え込むように沈黙する。

この時代、魔法師を狙う組織に事を欠かない。

実際に、昨年の4月に自分達の学校が反魔法国際政治団体に襲撃されたばかりだ。

 

 

「ここで考えてもしかたないですね。そう言えばレオ君を助けてくださった人とは、どの様な方なんですか?」

美月は場の空気和ますために、話題を変える。

 

「いや、救急車が到着した頃には誰もいなかったそうだ」

レオは残念そうな表情で言う。

 

「刀を持っていたと…剣術使いか…エリカに心当たりは?」

達也は千葉家の息女であるエリカに聞く。

 

「レオに聞いて調べたのだけど、千葉家の人間ではないわね。かなりの使い手のようだから、有名所を探ってるのだけど、今のところはわかってないわ」

 

「どういうことだ?」

 

「レオの先に襲われた連中ってのが、七草家の魔法師なのよ。レオを助けた若い男ってのは、その3人とレオを手玉に取るような連中を撃退出来る程の実力の持ち主ってことよ」

エリカがそういうのも無理もない話である。十師族七草家のお抱えのプロの魔法師が弱いわけがない。さらにレオもそこそこの実力者だ。

 

「どんな奴だったんだ?」

達也は敵を撃退した若い男に興味を持ちだす。

 

「そうだな。背は俺ぐらいあったな……、人当たりが良さそうだが……(強そうな)雰囲気はあった。見た目は……そうだな。仏頂面ではない爽やかな達也といったところか……」

レオは至極真面目な顔で答える。

 

「ププッ…プッ、何よそれ……仏頂面じゃない達也くんって……ププッ」

エリカは達也の顔をチラッと見た後、必死に笑いをこらえていた。

 

「レオ…仏頂面じゃない達也って……爽やかなって…それもう達也じゃないんじゃない?プクッ」

幹比古も達也の顔を見ながら、笑いを我慢している。

 

「……お前ら酷い言い草だな。俺はそんなに仏頂面か?」

 

「クスッ、でも、その人は何で名乗らなかったんでしょうか?」

美月も笑いながら最もな疑問を口にする。

 

「そういえば……警察に事情を聞かれるとまずいから?後ろめたいことがあるとか?」

 

「幹比古はわかってねーな。名乗らないのが格好いいんじゃねーか。悪漢どもを撃退し、傷ついた俺達を介抱しベンチに寝かせ、救急車を呼び出して、役目は終わったと言わんばかりに、その場から去る!まるでヒーローのようにだ!会って、ちゃんと礼を言いてえな」

 

「…………」

達也はその話を聞いて、何やら考え込んでいた。

実際の話、なぜその場を去ったのかを疑問に思ったのだ。

 

「ということは、敵は古式魔法師じゃなくて怪人とか?ゴースト事件だし、オオカミや大きな鳥まで襲ってきたって言うし!怪人を倒した人は、悪を倒す正義の味方?しかも達也くんを爽やかにした感じの…プクップクククッ……そ、プクッ、それ、ないわー」

エリカはレオを茶化す様にこんな事を言いながら、再び達也の顔を見て笑いをこらえる。

 

「フン、言ってろ」

レオはしかめっ面で、そっぽを向く。

 

「エリカちゃん。笑いすぎ」

美月はエリカをやんわりと窘める。

 

「普段お前らが俺の事をどう見ているかわかった……」

仏頂面の達也は仏頂面のままそう言う。

 

「達也は、喜怒哀楽が少ないからね」

幹比古は……たぶん。フォローのつもりだろう。

 

これは仕方がないことであった。達也は幼少の頃の魔法実験で、喜怒哀楽の感情が欠落しているのだ。

 

 

 

 

時を同じくして、

2096年1月18日(水)PM

 

「リーナ、途中まで一緒に帰らない?」

 

「大丈夫よ。だいぶ街にも慣れてきたから」

 

「そう?私と一緒は嫌かしら?」

 

「そ、そんな事はないわ。じゃあ……」

 

リーナを下校に誘った長い黒髪を持つ清楚な美少女は司波深雪、達也と同学年の妹だ。

この深雪ただの美少女ではない。アンタッチャブル四葉家の次期当主候補とあって、リーナに匹敵する魔法力を持った少女だ。

何時もは兄達也と一緒に下校するのだが、達也は友人たちと、レオのお見舞いに行くため先に下校した。

深雪は生徒会として、留学生のリーナを放課後の生徒会の仕事について案内や体験をさせ、今終わったところであった。

ちなみにリーナは深雪と同じクラス1年A組に編入留学している。

 

 

 

リーナは深雪ともうひとりクラスメイトで生徒会書記の光井ほのかと一緒に下校することになり、最寄りの駅に到着する。

 

ほのかは途中で別れを告げていた。

学校に比較的近いマンションで一人暮らしをしている。

 

「深雪、ありがとう。ここでいいわ。」

 

「リーナ、時間があったらお茶でもしませんか?」

 

「ごめんなさい深雪、ルームメイトに買い物を頼まれているの」

 

「そう、ちょうどよかったわ。私も夕飯の買い物がまだだったの」

 

深雪はリーナについて行く気満々である。

これには理由がある。

深雪はリーナを疑っているのだ。

深雪の実家四葉当主である叔母の四葉真夜から警告を受けていた。

USNAスターズが日本に入り込み、昨年10月末日に鎮海軍港を壊滅させた戦略級魔法師を調査し抹殺を図っていると……その戦略級魔法師こそ、司波達也本人であった。

深雪はリーナがそのスターズで、達也を探りに来たものだとほぼ確信している。

そこで、この機会にリーナから情報を得ようとしたのだ。

 

そのリーナだが、ドッペルゲンガーを処理する以外にも任務を負っていた。

それは、やはり鎮海軍港を壊滅させた戦略級魔法師を調査することだ。

この時期、USNA政府はリーナ以外にも、他の魔法科高校に交換留学で入り込んでいる。それだけじゃなく、正規の手段以外でも、日本へ軍の魔法師を何人も密航させている。

USNAから戦略級魔法師の疑いを掛けられている1人に達也と深雪は候補に上がっており、その監視調査役として、リーナが第一高校に派遣されていたのだ。

 

しかし、当のリーナはこの司波兄妹を苦手としていた。

というのも、リーナは留学して早々、達也にスターズのエース、アンジー・シリウスではないかとバレそうになったからだ。(達也と深雪はほぼ確定だと思っている)

 

リーナの任務優先順位は、ドッペルゲンガーの排除が上位に来ているため、今は、司波兄妹の調査は凍結させ、逆にこちらがスターズだとバレない様に努力しているのだが……リーナにそんな器用なことは出来るハズもなく、今の状態となっている。

 

なぜUSNA上層部は、いくら魔法力が非常に高いからと言って、リーナに不向きな密偵まがいの事をさせるのか?

……リーナには知らせていないが、リーナはいわばバレるのが前提の囮であり、そちらに注意を向かせることが目的であった。

どうせ日本には公然の秘密であると………バレたところで、どうもならないだろうと……

 

そんな思惑が飛び交う中……

リーナは必死にバレないように取り繕い。深雪は兄達也のためにリーナから情報を得ようと動いていたのだ。

 

 

リーナは渋々、深雪の同行を余儀なくされている。

そして、深雪を連れ、いつもの地元商店街で買い物をすることになった。

 

「あれ?リーナちゃん、悠ちゃんと一緒じゃないのかい?お友達とは珍しいね。またきれいなお嬢ちゃんだな~」

肉屋の主人に声を掛けられるリーナ。

 

「あはっあははははっ、そうなんです」

愛想笑いをするリーナ。

 

「リーナは商店街の方と仲が良いのですね、ところで、悠ちゃんとは誰です?」

深雪はリーナに聞く。

 

「あれ?あっ、その、この商店街で買い物に困っていたのを助けてもらった人ですわ」

リーナは焦り、口調がおかしい。

 

 

 

「やあ、リーナ」

 

「あっ………悠!」

そこに間が悪いことに学校帰りの制服姿の悠に出くわす。

 

その横で、行儀よくお辞儀をする深雪。

 

「リーナの友達?リーナ、学校で友達いたんだな」

 

「と、友達ぐらいいるわよ!悠!!」

実際友達ではなく、知り合い程度だが反射的に反論するリーナ。

 

「この人が悠ちゃん?リーナ、紹介してくださらない」

 

「あっ……悠、紹介するわ。こちらは私の留学先第一高校の副生徒会長でクラスメイトの深雪」

 

「第一高校、1年A組、副生徒会長を拝命させていただいております司波深雪と申します。学校では留学生のアンジェリーナさんのサポート役をさせていただいております」

 

「ご丁寧に、リーナとこの街で最近友人となった都立〇〇高校3年1組鳴上悠。学校で君みたいに落ち着いた子がリーナと一緒でよかった」

 

「何よ悠!私が落ち着きがないって言うの?」

 

「おっちょこちょいだ」

 

「随分仲が良いのですね。……その鳴上さんは一般の高校の方だとお見受けいたしますが」

深雪は少々驚いた表情をしていた。リーナがこんなにくだけて仲良さそうに話すのを学校では見たことが無かったのと、相手が一般の高校生で年上の男性だったことに驚きを隠せないでいた。

 

「そうだけど?」

 

「深雪、悠に一般人とか魔法師とか言ってもダメよ。この男は大のお節介やきなんだから」

 

「リーナが現金での買い物の仕方を知らないからだろ?」

 

「そ、それは、だって仕方がないじゃない!」

 

「……え?現金での取引がまだあるのですか?」

深雪はその事実に驚く。

 

「ほら、深雪だって知らないじゃない!」

リーナはドヤ顔で言う。

 

「……下町だからなこの辺は…君も現金持ってない?そこの銀行で交換できる」

悠は苦笑いをする。

 

 

結局、悠は二人の買い物に付き合い。

商店街の中にある休憩スペースのベンチでB級グルメ肉じゃがコロッケを二人に手渡す悠。

しばらく談笑したところで、それぞれ別れ、帰宅するのであった。

 

 

 

 

深雪は帰ってから、今日の事を兄達也に報告する。

「リーナは今住んでいる場所で、一般人の青年と友人関係になったようです。その方はどう見てもUSNAスターズとは関係なさそうです。商店街の方々にも気軽に話しかけられておりましたし、そのお陰なのかリーナも商店街で楽しそうに買い物をしておりました」

 

達也はその報告を聞いて、独自に悠の事を調べるが、一般の高校生であり、USNAスターズとの関連性はどう見ても皆無であることが判明する。

 

ただ…深雪の話を聞いて何処か引っかかっていたが、それが何なのかはわからないでいた。




次は明日に投稿できればと思ってます…
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