ペルソナ使い鳴上悠と魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
ご指摘・誤字脱字報告ありがとうございます。


今回は魔法科高校サイドの話です。
原作とはちょっと流れが違う感じですね。
リーナが悠と出会ったためのIFみたいな…………


第十八話 アンジー・シリウス対司波達也

 

悠が真由美と共にエリカと幹比古と出会った高校から、脱兎の如く逃げ去っている間、リーナは……ピンチを迎えていた。

 

 

 

「……私に戦う意志はありません」

リーナは仮面の女性USNAスターズ総隊長アンジー・シリウスの姿で若者と対峙していた。

 

「スターズのアンジー・シリウス………いやリーナ。何を知っている」

その若者、全身黒ずくめの戦闘服に身を包んだ達也がリーナに問いかける。

 

 

リーナは4人のスターズのメンバーを率いて、ドッペルゲンガーを捜索していたのだが……

多摩川の河川敷で達也と出くわした。

達也の方はリーナを探していたのだ。達也の後方には、同じく戦闘服の深雪と作務衣姿のスキンヘッド、いや坊主頭の達也の武術の師である忍術使い九重八雲の姿もあった。

 

達也は前々から、リーナがUSNAスターズのエース、アンジー・シリウスで有ることを疑っていたが、一昨日、エリカと対峙していた仮面の女性がアンジー・シリウスだと気が付き、さらに対抗魔法パレードを使用していたことで、確信を得ていた。

 

達也の目的は、ゴースト事件の犯人の情報をリーナから聞き出すこと。

さらに、USNAスターズが昨年末【灼熱のハロウィン】を引き起こした戦略魔法師(自分)を狙っているかの確認であった。

実際、リーナの日本での任務の優先順位の2番めに、灼熱のハロウィンを引き起こした魔法師候補である達也と深雪を調査、監視する事が含まれていた。しかし、ゴースト事件に掛かりっきりで、現時点でリーナは達也が【灼熱のハロウィン】を引き起こした魔法師だと、確証を得ていなかった。

 

達也の師匠、忍術使い九重八雲がここに居る理由は、リーナに対抗魔法パレードを他に広めない様に釘を刺すためだ。

パレードは元々、九重八雲の先代が【纏衣の逃げ水】という古式魔法を九島家に教え、それを改良したものだった。元々秘伝に当たる術であるため、USNA軍人であるリーナが使用している事態憂慮する案件なのだ。

秘伝ならば何故、九島家に教えたのかという疑問は残る……過去の経緯があるのだがここでは割愛したい。

 

 

「私はその様な人物ではありません……それ以上の詮索は、命取りになります」

リーナは達也に低い声で警告する。

 

リーナは、今はまだ達也と争うつもりは無い。

最優先任務であるゴースト事件の犯人、USNA軍人の姿をしたドッペルゲンガーの排除に力を入れたいからだ。

しかし、正体を暴かれる事態に陥ると、例によって達也を排除しなければならない事になる。

既に達也サイドは確定している様だが、それを認めるわけには行かない。

悠と違い、達也は魔法師であり、さらに灼熱のハロウィンを引き起こした容疑者だ。USNA軍にとって、リーナの正体を絶対知られるわけには行かない人物なのだ。

 

「……なぜ、USNA軍スターズがゴースト事件を追っている?」

達也はリーナの警告を無視し、更に話を続ける。

達也は、エリカに仮面の女性(リーナ)と対峙した経緯を聞き、スターズがゴースト事件を追っていると判断したのだった。

 

「…………」

リーナは後ろに控える部下に目配せをしてから、達也の質問に答えることなく、達也の横をすり抜けて、過ぎ去ろうとする。

 

「話す気が無いか………リーナであることは否定しないのだな」

すれ違いざまに達也はリーナに言葉を投げかける。

 

「……」

リーナは達也を無視し、通り過ぎ去ったのだが……

 

「僕も君に話があってさ、聞いてくれないかな?」

九重八雲がリーナの目の前に突如現れ、話しかけてきたのだ。

 

「な!?」

リーナはそれに反応しきれずに驚く。

 

リーナの後ろの部下が戦闘態勢を取る。

 

「大丈夫。大丈夫。君たちの隊長さんには危害は加えないから、大人しくしてくれればね」

九重八雲はまるで友達に話すような気軽さで、リーナとリーナの部下に言う。

 

「……私に何の用ですか?」

リーナは部下に手出し無用と手でサインを送り、待機させ、改めて八雲に正面に向き直り聞き返す。リーナは諜報部の事前調査により九重八雲を達也のマスター(師匠)で、魔法を使う忍者である事を把握しているが、それ以上の事は知らないでいた。

 

「九重八雲と言うしがない坊主なんだけど、いやー、君のその仮装行列(パレード)を、広めないでほしいんだ。それは元々家の秘術なんだよ」

 

「……なぜそんなことを私に?」

 

「九島家にも忠告しておいたんだけど、まさか、海外に血筋を残し、あれの使い手が生まれるとは思っても見なかったんでね」

八雲がこういうのも無理もない。

パレード使用できるのは十師族九島家でも極わずかに限られる。それだけ難易度の高い魔法なのだから。

 

「私には関係ない話……忠告は一応聞いておきましょう」

リーナは今も、自分は無関係な話だというスタンスを守る。ここで認めてしまうと、自分が九島家縁者だと言うことになる。しいては、アンジェリーナ・クドウ・シールズで有ることを認めてしまうことになるからだ。

最早体面上だけの話になってしまっているが、ここを穏便にやり過ごすには、知らぬ存ぜぬのスタンスを貫くしか無かったのだ。

 

「ふむ、まあ、そうしてくれると助かるよ」

八雲はリーナの返事を肯定的に捉え、自分の坊主頭を撫でながら答える。

 

 

 

しかし…………

 

達也が過ぎ去るリーナにこんな事を言い出す。

「アンジー・シリウス……一つ勝負をしないか?勝ったほうが、知りたい情報を得ることが出来る…………」

 

「何を馬鹿な………」

 

リーナは達也の言葉が終わる前に、そんな馬鹿げた話に乗る訳がないと一蹴しようとしたのだが……達也の言葉の続きがこれだった。

 

「例えば、戦略級魔法師について……どうだ?」

 

 

「!?」

リーナは思わずその達也言葉で振り返る。同じく部下たちもだ。

日本に送り込まれたUSNAスターズの2番目の任務。【灼熱のハロウィン】を起こした戦略級魔法師の調査なのだ。その容疑者である司波兄妹の監視調査役が東京に送り込まれたリーナ達なのだ。

その、容疑者である達也が、こんな事を言ってきたのだ。

達也はその事を本家である四葉家から予め警告を受けていたため、逆にそれをエサとして利用したのだ。

 

 

「一対一の勝負だ。ルールは簡単だ。相手を死亡させないように叩きのめすか、負けを認めさせる。勝った方が負けた方に、一つだけ情報を提供するどうだ?」

達也はリーナとその部下が立ち止まり振り返りこちらを見たのを確認し、言葉を続ける。

 

「その情報が正しいものだと誰が判断出来る?」

 

「少なくとも、俺と深雪は真実を語る用意がある。……それと立会人は、九重八雲先生にしていただく」

 

「それは、あなた達に有利ではなくて?」

 

「うんうん。若いって良いね。若者はこうでないと!ああ、僕はね、あまり俗世に興味がなくてね。弟子が持っている情報とかどうでも良いんだ。ただ、この勝負面白そうだし、九重八雲の名の下で公平に勝負を見てあげるよ。もし、君が勝ったら、無理からにでも弟子達から、君が知りたい情報を言わせてあげるよ。………………絶対にだ」

八雲はいつもの調子の様に飄々とした軽い感じで、こんな事を言っていたが、最後の言葉を発した口調には有無を言わせない雰囲気を漂わせていた。

 

 

「…………後悔することになるわ」

リーナは考えをまとめ、その勝負に乗ってしまったのだ。

【灼熱のハロウィン】を引き起こした犯人についての調査も任務の一つだ。それが司波兄妹が結果的に【灼熱のハロウィン】の戦略級魔法師で有ろうと無かろうと、それを決定付ける情報があれば、リーナの任務の一つが解決することになる。これでゴースト事件ドッペルゲンガーの件に集中することが出来る。

そんな安易な考えではあったが、リーナは勝負に勝つ自信があった。

USNAスターズの最高峰の魔法師である自分が一介の高校生に負けるわけがないと、達也は洞察力に優れ、頭は切れそうだが魔法師としては劣った存在だ。妹の深雪は魔法師としての能力は自分に匹敵するが、実戦経験の差は埋められないと…………そう判断したからだ。

 

 

 

 

 

 

そして………

 

「くっ、魔法が消された?………どういう事?対抗魔法?」

場所をさらに人気がない河川敷の広々とした場所に移し、リーナは達也と勝負することになるのだが……今現在リーナは不利な状況に陥っている。

勝負をする前は、リーナは自分が勝つことを信じて疑っていなかったのだが、今は自分の魔法が尽く無効化されていくのだ。

 

達也の術式解散【グラム・ディスパージョン】

相手の術式を分解しサイオン粒子に還元する魔法だ。

露出した相手の魔法式を瞬時に読み取れる達也だからこそ、成り立つ驚異の魔法だ。

実戦で使えるのは達也だけだろう。

 

「…………」

対する達也もシルバーホーンという短銃タイプの特化型CADを奮いながら、自分の魔法がパレードに阻まれる感覚に不快に感じていた。

リーナのパレードは術式さえも巧妙に偽装・隠蔽されているため読み取ることが出来ないでいた。

パレードという魔法が完成された魔法の一つだと言える。

 

 

「なっ!身のこなしも普通じゃない!」

リーナは、今まで戦ったことがないような達也の戦闘スタイルに戸惑いを隠せないでいた。

 

 

達也は、リーナの攻撃魔法を無効化しながら、九重流体術で接近戦を挑んでいた。

ただ、パレードは位置情報をも偽装する。攻撃があたった様に見えても、実際にリーナに届いていないのだ。

 

達也はリーナに接近戦を挑みつつ、意識を集中させ戦闘服の腰辺りに吊るしてあった手榴弾、投擲榴散弾のピンを抜き、丁度お互いの目の前の距離にそっと放り投げたのだ。

 

「な!?」

リーナは手榴弾に驚きながら、防御のため身体の前方に手を掲げ咄嗟に防御障壁魔法を展開する。

 

手榴弾は炸裂し、無差別に周囲を爆発が襲う。

 

 

達也は横向きになりながら、爆発に巻き込まれる面積を減らし、爆発とその破片を身体に受ける。

 

しかし、達也は身体を深く傷つきながらも、リーナが貼った防御障壁目掛け突っ込み、防御障壁を解体し、リーナを捕まえ取り押さえたのだ。

 

 

達也はリーナのパレードが位置情報自体をも偽装する性能で有ることを八雲から聞いていた。

ならば、指向性のない攻撃を無差別に行い。リーナがパレード以外の魔法で自身を防御する所を狙うことにしたのだ。防御魔法自体はパレードとは別物であるため、偽装の範疇外だと考えた。

そして、実行した。自らも深く傷つきながらも………

 

 

しかし、達也の戦闘服は所々穴が空いていたが身体の傷は既になくなっていた。

達也の再成魔法の一つ、自己修復術式が作動し、傷一つ無い身体に戻っていた。

これが有るがために、達也は躊躇なく実行出来たのだ。

 

 

リーナは仰向けに達也に取り押さえられる。右腕は関節技を極められ、リーナの腹部下方と左腕には達也の足が乗り、完全に身動きが取れない状態となった。

 

「くっ………魔法での勝負じゃなかったの?」

リーナは達也が手榴弾を使ったことを言っている。

 

 

「いいや、俺は勝負とは言ったが魔法勝負とは言っていない」

 

 

その光景を見て、リーナの部下がリーナを助けようと動き出すが、八雲が一瞬のうちに彼らを無力化し気絶させる。

 

 

「…………あの人は何者?」

 

「俺の武術の先生だ。本人は忍術使いと名乗っているが……凄まじい魔法の使い手だ」

 

 

リーナのパレードは既に解かれている。

部下を一瞬でのされる光景を見、素顔を晒したリーナは観念した表情をしていた。

 

 

「………私をどうする気?」

 

「勝負前に言った通りだ。俺の質問に答えてくれるだけでいい」

 

「その前に、どいてくれないかしら………少し痛いわ」

 

達也はリーナを押し倒している体制からスッと立ち上がり、リーナの手を持って、リーナを立ち上がらせる。

 

リーナの後ろには既に、部下を気絶させロープで一塊に拘束した九重八雲が、達也の後ろには深雪が控えている。

最早逃げ道も無かった。

 

 

「俺の質問に答えてもらおう」

 

「わかったわ……どうせ私は、あなた達に正体もばれてしまったのだから、強制送還よ」

リーナは右肩を抑えながら、自嘲気味にそう言う。

口調もいつものリーナに戻していた。

 

「スターズが追っている奴等は何者だ」

 

「………ドッペルゲンガー私達はそう呼んでいるわ。古式魔法の世界認識ではパラサイトとよばれている存在よ」

 

「ドッペルゲンガーとは?パラサイトとはなんだ」

 

「ああ、あれだね。精神生命体や、別次元生命体のことだよ達也くん」

九重八雲がリーナの後ろから答える。

 

「師匠は今東京で起こっている事件について知っていたのですか!?」

 

「俗世には興味ないんだけどね。風のうわさで届くんだよ。そこの金髪美少女ちゃんが言ったとおり、それがパラサイトと呼ばれているものなんだけど。まあ、あれだよ。幽霊や妖怪や悪魔とかの存在のことだよ」

 

「幽霊や妖怪……悪魔。先生そんな物が存在するのですか?」

今度は深雪が八雲に質問をする。

 

「よくわからないが、存在を確認されているものをひっくるめてパラサイトと呼んでいるだけだよ。まあ、妖怪や幽霊、海外では悪魔や天使の伝承ってたくさんあるだろ?あれの元をたどれば、これに当てはまることが多いんだ」

 

「……なるほど、まだまだ、世の中には俺の知らない存在が有るということか」

 

「そうだよ。達也くん目に見えるものだけが真実じゃないのさ。勉強になるだろ?」

八雲は司波兄妹を見ながらおどけたように言う。

 

「アンジー・シリウス、いやリーナ。そのドッペルゲンガー、パラサイトは何故、魔法師を襲う?なぜスターズが追っている?」

達也は再びリーナに問いかける。

 

「魔法師を襲う理由はスターズも把握していないわ。それと、追っている理由は別の質問じゃないかしら、勝負の話は、勝ったら一つだけ話すって約束じゃない?」

 

「…………いいだろう」

 

「お兄様……」

深雪は達也に目配せをすると、それに気が付き達也はうなずく。

 

 

「リーナ。私とも勝負してくださらない?」

今度は深雪がリーナに勝負を挑んだ。

 

「なぜ?……と聞いてもしかたないわ。私が勝ったら部下を解放してくれるのかしら?」

リーナは部下を捕らえられている状況で拒否できようも無い。

その部下も、勝負の約束に反してリーナを助けようと動いてしまい、捕らえられたのだから文句も言えようもない。

 

「リーナが勝ったら、質問に一つ答える。負けたら当然質問に答えてもらう。それとだ。勝負を受けたのなら勝ち負けに関係なしに部下も解放しよう」

達也は淡々と答える。

 

「ありがとう……それは親切に」

リーナは達也がこの展開になることをはじめから予想していたのではないかと疑い、皮肉を込めてそう答えたのだ。

 

 

 

「リーナは連戦になる。少し休憩を入れる」

 

「どうも、やさしいのね」

リーナは、憎々しげにそう言う。

 

 

達也と深雪はリーナから離れていく。

八雲はリーナの隣に呑気そうに腰をおろしていた。

どうやら、リーナが逃げないようにと監視役らしい。

 

「うーん、さっきの勝負。君に迷いがあったよね。それがなかったらもっといい線いっていたと思うよ」

八雲はリーナにそんな事を言ってきた。

 

「ミスターは達也のマスター(師匠)ではないのかしら?」

 

「そうだけど、勝負は公正でないと面白くない。君はどこか人を傷つけることに躊躇していないかい?」

 

「誰しもそうじゃないかしら?」

 

「君は軍人なんだろうに」

 

「…………」

 

「まあ、いいや、深雪くんもかなり強いから、全力で行った方が良いと思うよ」

 

「わかっているわ」

 

八雲の指摘通り確かにリーナには迷いがあった。

対人で魔法を使うとどういう事になるのかリーナは十分知っていたからだ。

それが顔見知りであると……尚更だ。

 

 

リーナは八雲からある程度距離をとり、立ちながら自分の体をあちこち回しながら状態を確認する。

(肩と腰を若干痛めたけど……戦えない程じゃない。…………悠、失敗しちゃった…………でも今度こそは………)

 

 

 

 

 

『リーナ!どうしたの?戦闘でもあった?ちょっと怪我してるみたいだけど』

 

(りせ!?)




主人公全く出ずに…………
次は深雪ちゃんとリーナの勝負から始まります。
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