ペルソナ使い鳴上悠と魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。
ご指摘助かります。

今回は推理パート
つなぎ要素ですね。



第二十話 達也を検証

1月29日(日)9:30

 

 

「…………ここは?私の部屋…いつの間に」

リーナは自室のベットで目が覚める。

 

「……確か昨日、達也と勝負して負けて、深雪とも勝負して……負けそうになって………」

リーナは意識朦朧とベットから起き上がる。

 

「それで………途中何度もりせの声が聞こえて……りせに悪いことしたわ………!?……りせ…悠!?」

リーナは勢いよくベットから飛び出し、自室の扉を開けリビングに飛び出す。

 

「シルヴィ!私昨日どうやってここに戻ってきたの!?」

リビングでソファーに腰を降ろしているシルヴィア・マーキュリー准尉に慌てたように聞く。

 

「リーナ。良かった目覚めたんですね」

シルヴィア・マーキュリー准尉は立ち上がり、リーナの肩に優しく触れる。

 

「……シルヴィ」

 

「ミスター鳴上が気を失っている貴方を背負って、ここに運んできてくれたんです」

 

「悠が!?」

 

「なんでも倒れている貴方を見つけたんだそうです。怪我は無いようですが服はボロボロで……しかも、音信不通が7時間も……先に戻ってきたスターズのメンバーには大凡の成り行きは聞いております」

 

スターズのメンバーは悠がリーナを運んでくる2時間前に戻っていたのだ。

 

悠は達也達が撤退した後、気を失っているスターズのメンバーの拘束を解きその場に置き去り、リーナは背負って一度悠の自宅に連れて行った。

怪我はペルソナで回復させたのだが、疲労が激しく目覚めることが無かった。

リーナがスターズとしての作戦中であったため、真由美がリーナを一度自宅に戻したほうが良いと提案し、悠が気を失っているリーナを背負い、このマンションまで運んできたのだ。

 

「メンバーは無事なの?」

 

「はい、幸い怪我は軽症程度です。九重八雲氏が手加減してくれたのでしょう」

 

「それで、少佐、昨晩何があったんです?」

 

「………そうね。私はもうここには居られない…………」

リーナはうつむき加減で昨日、達也達と対峙し、達也に負け、さらに深雪にも実質負けた事を話し、機密情報を一つ漏らしたことも……シルヴィアに話す。

ただ、最後の悠のペルソナについては避け……深雪に負けて気を失ったということにしたのだ。

 

「私はスターズ総隊長失格です。高々、高校生に負け。部下まで拘束され……情報を漏らし……相手に情けを掛けられるはめに…………」

 

「……でも、貴方が無事で良かった」

 

「もう、私はスターズをやめなければ…………」

 

「そんな事を言わないでください。スターズメンバー4人を一瞬で拘束出来るような人物が相手にいたのですよ」

 

「USNA最高峰の魔法師として、スターズの総隊長を拝命したのに……学生に負けたのですよ!!」

 

「少佐、落ち着いてください。相手は【灼熱のハロウィン】の容疑者なのですよ。その司波達也は手榴弾を使いその様な方法で少佐を拘束したということは、明らかに軍務経験者、いえ軍事訓練を受けた魔法師に違いありません。司波深雪については、少佐と同じレベルの領域魔法が使えるということは、十分戦略級魔法師の可能性があるということ……その二人がかなり有力な容疑者であることを少佐の身をもって証明してくださったではないですか……」

 

「……でも…」

 

「日本は祖国よりも、魔法技術に関しては進んでおります。それは覆しようがありません……それでも貴方は、努力でここまで来たではないですか。それにその二人は規格外です。我々では到底太刀打ちできません。少佐だからこそ……そこまでに持ってこれたのです」

 

「……私は…」

 

「後は私が処理をしておきます。上にも私から報告しておきます。追って沙汰がくるでしょう。その結果本国強制送還もあり得るかもしれませんが、私の方でもうまく報告しておきますので心配なさらないでください。ただ、今日はゆっくり休んでおいてください」

 

「シルヴィありがとう」

 

「でも、ミスター鳴上にはお礼を言ってくださいね。貴方を背負ってここまで運んでくださったんですから」

 

「悠!……私、今から悠にお礼を言いに行ってくる」

リーナは思い出したかのようにそう言って、玄関から出ようとする。

 

「リーナ!パジャマのままですよ!」

 

「あっ」

 

シルヴィアは自室に慌てて戻る年相応の姿のリーナを微笑ましく見つめていた。

 

シルヴィアはリーナが着替え身だしなみを整えている間。紅茶と軽い食事を用意する。

リーナが出ていった後、真顔になり、大型の情報端末を広げ報告書を作成しだす。

シルヴィアは、リーナはこのまま任務続行だろうと、処罰は有るだろうが、本国強制送還は無いだろうと踏んでいた。シルヴィアは知っていた。リーナがここに居る最大の理由は、【囮】で有ることを……潜入捜査に全く向いていないリーナがここに居るのは、相手の注意をリーナに集中させる事だった。リーナがアンジー・シリウスであることを知られるのも想定内。思わず情報が漏れるのも想定内なのだ。

潜入捜査員は何もスターズだけではない。他の潜入専門の魔法師や一般捜査員がメインなのだ。

 

更には、シルヴィアには知らされていないが、本国のUSNA上層部では日本でのドッペルゲンガー壊滅に本腰ではない。

リーナ達がドッペルゲンガーの壊滅に動いているのは、パフォーマンス的要素が大きい。

今は、日本で起きていること、USNA本土ではない。USNA国民に被害が出るわけではない。

USNA脱走兵が事件を起こしているということが日本にバレた時の保険的要素が高いのだ。

そのまま、リーナが壊滅させれば、それで良し、バレれば、独自に解決を行なっていたと言い訳をし、少しでも外交交渉の不利を取り除ければという程度なのだ。

 

さらに、純然たる戦力であるスターズ本隊を日本に送るわけもない。このご時世である本国の守りは何よりも優先順位が高い。

USNAは本国に二人の戦略級魔法師を残している。

 

そして、USNA軍部上層部にとっては、【ゴースト事件】よりも、【灼熱のハロウィン】容疑者捜索の方が優先順位が高い。

しかし、上記の理由で、リーナの東京に派遣されているスターズのメンバーだけに【ゴースト事件】の優先順位を上げ、派手に動かし、囮役をさせていたのだ。

 

ただ、USNA上層部にとって大きな誤算なのは、リーナが担当していた司波達也こそが、灼熱のハロウィンの犯人であった事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1月29日(日)10:40

 

 

「リーナ、おはよう。もう体は大丈夫なのか?」

 

「うん大丈夫。悠……ごめんなさい。それと、助けに来てくれてありがとう」

 

リーナは悠の自宅マンションに訪れていた。

 

「そうか、良かったな。……なんで、あんな無茶をしたんだ?」

 

「それは……スターズのアンジー・シリウスとしての行動だから……」

 

「俺とリーナは運命共同体じゃなかったのか?事前に知らせてくれても良かったんじゃないか?」

 

「そう……なんだけど、あの時の私はUSNA軍スターズの総隊長としてだから」

リーナは勢いなく答える。

 

「アンジー・シリウスもリーナだろ?……俺にとっては眼の前のリーナもアンジー・シリウスも同じリーナだ」

 

「……悠…………私は」

 

「皆も心配していた。説教は後だ。りせも七草も午後一に来る。昼食の買い物に出かけるが、リーナも一緒に行こう」

悠は笑顔を見せ、リーナを買い物に誘う。

 

「うん!」

うつむき加減だったリーナも顔を上げ、嬉しそうに返事をする。

 

 

 

 

 

1月29日(日)12:10

 

悠とリーナは買い物を終え、家に帰ると、丁度真由美とりせが訪れた。

 

「鳴上くん、リーナさんこんにちは、リーナさんお加減は?」

真由美は悠とリーナに無難な挨拶をする。

 

「悠先輩来たよ!………リーナ!心配したんだからね!」

りせは玄関に入り悠に挨拶し、リーナを見ると勢いよく抱きつく。

 

「りせ……その、心配掛けたわ…………真由美もりせも…その、ごめんなさい」

リーナはそんなりせの行動に戸惑いながら謝る。

 

「そうよ!何度も声かけたのに!アンジー・シリウスだからって…………そんなの関係ないよ。リーナはリーナ何だから!!」

りせは、頬を膨らませながらリーナに怒る。

 

「りせ……悠にも同じこと言われた。……その、ありがとう」

リーナは薄っすらと頬を赤らめ、りせに気恥ずかしそうにお礼を言う。

 

「リーナさん。とりあえず昨日あったことを教えてくれないかしら」

真由美はそう言いながら、コートなどをハンガーに掛け、リビングのソファーに座る。

 

「それよりも、悠先輩のご飯!いい匂いしてるし!」

りせもコートを掛け、キッチンに入り、悠の手伝いをしようとする。

 

 

 

年頃3人の女子達は悠の昼食の手作りパスタ料理とシーフードサラダに舌鼓を打つ。

 

 

 

昼食を終えたテーブルには紅茶が用意され、話し合いを始める。

 

「昨日あった事と……私のもう一つの任務についても……皆に話すわ」

リーナはそう言って、昨日達也達と対峙した事と、そのきっかけとなった【灼熱のハロウィン】容疑者捜索の任務について皆に話しだす。

 

「リーナさん。完全に達也くんにしてやられたわね。彼は人の揚げ足をとったり、弱点をつくのが異様にうまいのよ。まるで悪魔の囁きのように……私も何度煮え湯を飲まされたか!」

真由美はこの話になると怒りのボルテージが上がってくるようだ。

 

「そうなのよ!人の痛い所をついて!ホント!デビルよ!あの能面の悪魔!!」

リーナも昨日の事を思い出しながら、怒りがこみ上げてきているようだ。

リーナは大いに打算があり、達也の挑発に乗ったのだが……相手(達也)の力量を測りそこねたことがそもそもの間違いだ。

 

「そうか、その司波達也はかなり頭が切れるということか……しかも手榴弾を持っていたとか……とても普通の高校生には見えないな…………いや、七草、魔法師は手榴弾のような物を普通持っているのか?」

悠は二人の話から、達也が相当頭が切れる人物と判断し、更に何者なのかを考察していく。

手榴弾を持っていた事から普通の高校生ではないなと思ったのだが、魔法師と一般人の常識が異なることを思い出し真由美にその事を聞いたのだ。

 

「持っているわけ無いわ。銃刀法違反よ!しかも持っていたとしても、魔法師は魔法を発動させるための刀とか拳銃とかよ。しかもちゃんと登録はいるし、許可が無いと持ち歩けないの…………ただ……達也くんは軍人らしいから……本当は口外してはいけないのだけど」

真由美は達也が軍人であることを横浜事変の際に知った。

その時に、達也が所属する独立魔装大隊の隊長から口外無用と釘を刺されていた。

 

「魔法師って刀や拳銃を持てるんだ……普通の高校生は武器自体もたないんだけど」

りせは呆れたように言う。

ここでも、りせ(一般人)と真由美(魔法師)の常識が異なっていた。

 

「軍人?あの年で……リーナも一緒か…………ということは益々あの昨年の報復攻撃が彼の魔法によるものだと言うのが現実味に帯びてきたな」

 

「悠どういう事?」

 

「リーナ達が探しているって言う、戦略級魔法師の事。達也って子も戦略級魔法を使えるの」

 

「りせ?………………なんでそんな事を知っているの?」

 

「ヒミコのフル・アナライズで調べちゃった!私に隠し事は出来ないんだから!」

 

「…………そうなの…信じられないけど、しかも達也くんは【分解・再成魔法】の使い手なのよ。実用レベルで……」

真由美はうつむき加減で、顔を少し青くし補足する。

 

「な!?分解魔法!?しかも再成も!?…………信じられない。それを実用出来るなんて!!…………!?魔法が無効化されるのは…………分解魔法の応用!?あれは分解魔法!?」

リーナも驚愕の表情をし、困惑する。

 

「七草、分解魔法というのは、そんなに凄いものなのか?」

 

「そうね。データベースで閲覧したのだけど、物質を分子レベルで分解出来る能力らしいの…………そのためには相手の分子構造や構成組織等を正確に知らないといけないのだけど………達也くんは相手の魔法式を瞬時に読める……もしかすると、物質の分子構造や組織も見れる…………または記憶しているのかもしれない。……でないとトラック一台を完全消滅なんて無理よ」

真由美は青ざめた表情のまま、悠の質問に答える。

 

「……トラック一台を完全消滅……実用レベルもいいところじゃない!……人間なんて簡単に消滅させられるわ!!」

リーナは叫ぶように訴える。

 

「!?そういう事か……七草があんなに取り乱した理由がわかった」

悠もようやく、分解魔法の凄まじい効力に気が付いた。

 

「うーん。分解魔法を応用した攻撃をたくさん持っているみたい。確かにかなり危険度が高い魔法みたい……弱点は……相手の分子構成や組織が読めなければ発動できないかな。魔法起動を妨害すれば大丈夫ね。えーっと高密度のサイオン粒子?を体に纏えば大丈夫見たい。ということは……私達は高レベルのペルソナを発動か憑依していれば、無効化できるみたい。実質私達は大丈夫ね。リーナのパレードも有効みたいね。無属性魔法か………マカラカーンでも弾けそう」

りせはヒミコを憑依状態にさせ、達也のアナライズした記録を見ている。

 

「………分解魔法も驚いたけど………りせの能力………………恐ろしいわね」

「そ……そんな事まで……りせさんは魔法師のその……天敵ね」

リーナと真由美はりせの分解魔法の解説を聞いて……りせを引き気味に見ていた。

 

「そうよ!私とヒミコにかかれば何でも丸っとお見通しよ!……だからリーナ。辛い時は頼ってよ」

りせは胸を張って言う。そしてリーナには優しい笑顔を向ける。

 

「……りせ…」

 

「それで、達也って子が持ってる戦略級魔法はマテリアル・バースト……現在の射程距離120kmで破壊力は街一個分……うーん。魔法自体は理論上、世界壊滅レベルまで行けるみたい」

さらにりせは衝撃的な情報をさらっと言ってしまう。

 

「な!?なによそれ!?」

「……な…に………それ…は」

またしても驚愕するリーナと真由美。

りせの情報が二人にとって刺激が強すぎるようだ。

 

「でも多分無理ってヒミコが言ってる。本人も巻き込まれるし……事象干渉力の限界と超次元体の反作用がどうのこうのって……………ああっ!わからないけど。世界崩壊とか大きすぎる力はストッパーみたいなのがかかるみたい」

 

「……ま、街一個分でも十分すぎるわね。…………その超次元体ってなに?」

 

「私も知らなーい…うーん神様?悪魔?まあ、なんかよくわからない力?」

りせは疑問顔でこんな事を言ってしまう。

 

「………………りせさんとヒミコ…さん?……の情報量…世界がひっくり返るんじゃないかしら」

 

「聞かなかったことにするのが無難ね」

「……そうね」

リーナと真由美はお互い毒気を抜かれたような顔をしていた。

特に真由美は達也への恐怖心は大分薄らいでいた。

 

 

「とりあえずだ。リーナが言っている【灼熱のハロウィン】、昨年の日本の報復攻撃は彼が起こした可能性が非常に高いということだな」

悠は話をもとに戻す。

 

「……でも、それがわかっても上に報告するわけには行かないわ。情報源がりせだし。言うわけには行かない。……あんなこと、誰も信用しないだろうし…………実際達也が放ったとは決まってないしね」

リーナは疲れた様な表情をし、りせに目配せをする

 

「そうだな」

 

「達也本人が放ったとしても軍から必ず何らかのサポートを受けているはずよ。だから本来そこから調べないと行けないのだけど……」

 

「リーナの言ったとおり、司波達也本人はいろんな所に所属してるみたい。独立魔装大隊って所が怪しい」

りせによって、達也の情報は全て知られてしまった。

ただ、その情報の重要度の取捨選択はりせが行っているため、本人もその重要性に気がついていない事が多い。

例えば、りせとヒミコの記録には四葉家についてもリークされているが、りせにとってその情報は重要ではないと感じ、皆には話していないのだ。

 

 

 

「そもそもだ。司波兄妹はリーナからゴースト事件の情報を得るために勝負を挑んだのだな」

悠は本題に話を戻す。

 

「少なくとも、最初に聞かれた質問はそれだったわ」

 

「達也くん達もゴースト事件を追ってるわ。警察組織と密接な千葉家に協力してるかもしれない」

真由美はゴースト事件捜査について、実際に達也と千葉エリカ、吉田幹比古と裏取引を行っている。

 

「昨日の達也はそんな雰囲気じゃなかった。同行者は九重八雲で、エリカ達はいなかったわ」

 

 

「……エリカという子ともうひとりに、ペルソナを見られた……」

悠は思い出したように言う。

 

「どういう事、悠?」

「悠先輩?」

悠はまだリーナとりせには昨日の晩、リーナを助ける前にエリカ達と会った事を話していなかった。





次回は悠がダメ出しですかね?
そして、一山迎える序章という感じになりそうです。
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