ペルソナ使い鳴上悠と魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます
毎度非常に助かっております。

今回は悠の久々の戦闘ですね。


第二十六話 悠、反撃開始

 

 

 

2月3日(木)14:43

 

 

第一高校敷地中央に位置する重厚なつくりの建物、練習棟。その1階は屋内競技場さながらの広さと高さを持つ施設だ。明らかに競技場と異なるのは窓などというものは無く、圧迫感を覚えるような四面が頑強なコンクリートの壁で覆われている事だろう。かろうじて小窓が天井付近に取り付けられているくらいだ。

ここは魔法練習施設でもあり、魔法や物理衝撃に耐えうる設計となっている。

並の魔法では破壊どころか傷つける事も出来ない頑丈な施設なのだ。

 

 

その施設で今、巨大なドッペルゲンガーと2人の少女が戦いを繰り広げていた。

 

情勢はドッペルゲンガーが優勢であった。

ドッペルゲンガーである巨大クモのミアは2人の少女リーナと深雪を徐々に追い詰めている。

 

「あれ~、鳴上悠くんでしたっけ、少佐が大好きなあの男の子。あれはダメね危険すぎる。力を付けた後で八つ裂きにしてあげるわ。彼、他の学校の学生だものね。ここには現れない。そういう時と場所を選んだんですもの………わざわざ、昼間を選んだのもそうよ。残念ね」

ミアは余裕の声色で明らかにリーナを挑発するかのような言動をする。

 

ミア達ドッペルゲンガーはやはり、悠を徹底的に避けていたのだ。

ドッペルゲンガーのミアにより,こちらの動きは筒抜けだった。

ミアはUSNA軍情報局の工作員の身分を活かし、スターズや他の組織の動きを把握していたのだ。

リーナが悠と協力関係であることに気が付き、魔法師を襲う場所をスターズの捜索範囲から大きく離れた場所に限定して行動させていたのだ。

 

 

そんな余裕の声を上げるミアに相槌を打つかのように、彼女らの上から声が降りてくる。

 

 

 

「残念なのはお前の方だ……イ・ザ・ナ・ギ!!」カッ!!

 

 

 

悠が練習棟1階上部の小さな小窓を突き破って飛び込んできたのだ。

そして、空中でイザナギを顕現させ、声に反応し上を向いた巨大クモのミアを勢いのまま蹴り飛ばす。

巨大クモの巨体は練習棟の壁に激しく激突し、めり込む。

 

悠自身も、中空からリーナと深雪の前に背中を向け軽やかに着地する。

悠は顔を2人に向け………

 

「大丈夫か二人共、遅くなった」

 

何時もの自信に溢れた笑顔だった。

 

 

「悠!!…………遅いわよ!!」

リーナは悠の姿を見て嬉しそうな声を上げる。

 

「鳴上さん…?……どうしてここに?………あの式神は?」

深雪は悠がここに現れた事にも驚いたが、一般人だと思っていた悠が人型の式神を操り、明らかに戦い慣れをしている動きをしていたことに混乱気味であった。

 

 

巨大クモのミアは体半分めり込んだ壁から、姿勢を立て直し、悠達に体を向ける。

「なんで!なんで貴方がここにーーー!!ペルソナ使い!!!!」

 

「当然だ」

 

「くっ…監視させていた!!万が一を考えて!!この学校周囲を眷属で監視させていたのに!!どうやって入ったの!!」

今度は巨大クモのミアが動揺する番だった。

 

「ふっ、やはり変装は効果があったようだ。クマにお礼を言わないとな」

 

「へ……変装………もしかして、貴方は、私達の計画を知って!!」

 

「どうだか」

悠は余裕の笑みを湛えていた。

しかし、当の悠はドッペルゲンガーが侵攻してくるなどと考えもしていなかったのだが……大胆不敵である。

 

「……悠」

リーナはそんな悠に呆れていた。ドッペルゲンガーの侵攻なんて予想もしてなかったくせに、しかも変装は、対達也、エリカ、幹比古用であったのに、何でそんなに自信満々なのかと…………

 

「鳴上さんが……どういう事?」

深雪はこの状況を把握できず、まだ混乱している。

 

 

「くっ、やはり、貴方はもっと警戒すべき相手でした…………しかし、貴方はここで死んでもらいます。私も大分力を得ましたしね!!」

 

巨大クモのミアはクモの尻を立てて、多量の糸を撒き散らす様に、こちらに飛ばしてくる。

あのレオの生命力を奪ったクモの糸だ。

 

「二人共……後ろに下がれ」

悠がリーナ深雪にそう言うと、片手に名刀【薄緑】を顕現させ、こちらに向かってくる糸を切り払っていく。

 

イザナギの巨体にも無数のクモの糸が襲いかかってくる。

イザナギも刀で切り払うが、無数の糸は幾つもに分岐して遂にはイザナギに絡みつく。

そして、エネルギードレイン……生命力を奪おうとする。

 

イザナギは自らに稲妻の魔法【ジオンガ】で放電して糸を焼き尽くそうとするが……効果が現れない。糸まで電撃無効の能力が有るようだ。

 

「フフフフフッ、調査済みですわ!ペルソナ使い!!貴方のペルソナは物理攻撃は脅威ですが、電撃魔法しか使えない。…………私には電撃は効かないのですよ!」

 

「そうだったな。チェンジだ。スザク!!」

悠は手の平に節制のペルソナカードを顕現させ、それを勢いよく握りつぶすように掴む。

 

イザナギはスッと消え。

悠の後ろに炎を纏った巨大な鳥スザクが現れる。

 

『マハラギオン』

 

スザクは甲高い鳴き声と共に炎の領域魔法マハラギオンを放つ。

巨大クモのミアが放ったクモの糸は全て燃え尽きる。

ミア自身も炎に包まれるが、腕を上げ、属性防御を行い自身への攻撃を無効化していた。

 

「な………なぜ?ペルソナが2体…………どういう事!?」

ミアは悠が複数のペルソナを使えることに驚いていた。

 

そして、巨大クモの影から、50㎝程の大きなクモが多量にわさわさと現れ、悠達やスザクに襲いかかる。

 

悠は刀技で撃退。

リーナと深雪も魔法で多量に迫るクモを迎撃する。

 

ミア自身は電撃の魔法を複数の腕から同時に放ってきた。

 

 

「ビャッコ!!」

悠はすかさずペルソナカードを顕現させ、ペルソナチェンジを行う。

 

悠の後ろに巨大な白い虎が現れ、大きな咆哮を上げると共にミアから放たれた電撃を無効化する。

 

『マハブフダイン』

 

そして、ビャッコは氷結の領域魔法マハブフダインを巨大クモの周りに放つ。

影から現れたクモ達は凍りつきその場に氷の彫像と化する。

 

巨大クモのミアは氷結の属性防御で自身を守る。

 

 

「なんなの!貴方は!!幾度も観察した。その力も見てきたわ!!でも複数のペルソナが使えるなんて!!」

取り乱したようにミアは叫んでくる。

 

そして、蜘蛛の糸と影からクモを多量に出現させ、人の上半身の腕から氷結、火炎、電撃、疾風の魔法を一斉に放ってくる。

 

 

「アヌビス!!」

悠はさらにペルソナチェンジを行い。犬の顔を持つエジプトの審判の神を模したアヌビスを顕現させる。

 

『マカラカーン』

 

アヌビスは持っている天秤を傾け、魔法反射マカラカーンを発動させる。

 

巨大クモのミアから放たれた魔法は跳ね返され、幾つかの魔法は、属性魔法を無効化する障壁が間に合わず、その巨体に受ける。

 

「なんなの!貴方はなんなの!!なんなの!!」

 

巨大クモのミアは今度は【分子ディバイダー】を悠に向かって振り下ろす。

悠はその一撃を前に進みながら飛びかわし、ペルソナチェンジを行う。

 

「ジークフリート!!」

 

その間もミアはさらに別の腕から【分子ディバイダー】を発動させ、悠に向かって横薙ぎに振るってくる。

 

顕現した古代ローマの戦士のような格好をしたペルソナ、ジークフリートが分子ディバイダーをその手に持つ剣で受け止める。

ミアがさらにもう一つの【分子ディバイダー】でジークフリートに攻撃を仕掛けるが、盾で受け止める。

そして、硬直状態となるが、ジークフリートの気合の雄叫びと共に、分子ディバイダーは消し飛ぶ。

 

 

「なんなのなんなのなんなのなんなのよーーーー!!」

 

 

『ゴッドハンド』

 

ジークフリートが気合の雄叫びと共にその場の床に大きく拳を突き刺すと、巨大クモのミアの頭上から、半透明の超巨大な拳の形状をした高エネルギーの塊、天からの神の拳、超絶技【ゴッドハンド】が振り落ろされる。

 

「なっ!!ああああああああっ…………」

 

巨大クモはそのまま拳の形状に押しつぶされ、コンクリート床にめり込みながら潰されていく。

その衝撃で、リーナや深雪も吹き飛ばされそうになる。

 

そして、無残に潰された巨大クモは黒い液状になりはて消滅。

練習場のコンクリート床には大きく破壊されクレーター状に深い穴が穿たれた跡が残った。

 

それと同時にジークフリートも役目を終えスッと消える。

 

 

「……終わった…」

「あのクモを……あっさりと…倒したの…あの攻撃は…何?」

リーナと深雪はその様子を唖然と見ていた。

 

 

悠はというと、いつの間にかにリーナと深雪の後ろの壁際に姿を現し、何かをそっと床に置いていた。

床には氷漬けとなり、もう息の無いミア本人を横にさせていたのだ。

ジークフリートが鍔迫り合いをしている間に回収し、【ゴッドハンド】に巻き込まれないように移動させたのだ。

 

「今までの奴に比べ随分力を付けていたな………二人共、大丈夫そうだな」

悠は独り言を言いながら、リーナと深雪の方に振り向く。

 

 

「悠!!」

リーナは悠を見つけると、パレードを解除して嬉しそうに駆け寄る。

続いて深雪もその後を追う。

 

「リーナ、頑張ったな」

悠は駆け寄るリーナの頭にポンと手を置く。

 

「子供扱いしないでよ!これでもスターズの総隊長よ!!」

リーナは文句は言うが、悠の手をどけようとせず、顔は嬉しそうだ。

 

「……その、鳴上さん助けに来ていただいてありがとうございます。……鳴上さんは古式魔法師だったんですね………それもかなりの力量の………」

深雪は悠に頭を下げお礼を言う。

状況を十分に理解できてはいなかったが、悠に助けられた事だけはわかっていた。

案の定、ペルソナを式神と誤認し、悠が古式魔法師だと思っているようだ。

 

「そんなようなものだ」

悠は曖昧な返事をする。

 

 

「悠……ミアは…………」

リーナは悠の横に立ち、壁際に横たわっている氷漬けのミアを見、苦しそうな表情をする。

 

「あのままあの攻撃に巻き込まれるのは忍び無い……亡骸だけでも」

 

「………ごめんなさい…こうするしか」

深雪は謝る。

ミア本体は深雪の魔法【コキュートス】により氷漬けとなったのだ。

精神すらも凍結させるという即死系の魔法だ。

 

「深雪が悪いわけじゃない……ドッペルゲンガーに取り憑かれた時点で死んでいたも同然だわ………ミアも軍人……これは仕方がなかったことよ。それに深雪がこうでもしないと私達が先にやられて死んでいたわ」

 

「…まだ……お兄様なら戻せます」

 

「深雪、どういう事?」

 

「お兄様は24時間以内であれば、再成魔法で元に戻すことが……多分この状態はまだ仮死状態だから………」

達也の魔法は回復、復活というニュアンスとは全く別物だ。その物に残るエイドスの記憶をさかのぼり再成させることができる。簡単に言うと、最大24時間前の状態に戻せるということなのだ。

 

「そんな事が可能なのか」

悠は関心するように言う。悠も復活魔法を有するペルソナを内包しているが………今のミアの状態では復活が叶わない。

悠がペルソナで行使出来る魔法は、異世界と現世では効果が微妙に異なる。特に補助魔法や回復系が顕著だ。

例えば、回復系は、回復魔法のランクにもよるが傷や怪我はどんな大怪我でも治すことが出来る。しかし、体力を回復することが出来ないのだ。

補助系のマカラカーンやテトラカーンなどは異界では相手の攻撃を1回跳ね返すという効果だが、現世では数秒発動し、発動中は何発でも跳ね返せる。

そこで、リカームなどの復活魔法だが、死亡してからの時間が勝負となる。ペルソナの能力と損傷具合によるが5分が限度だった。

実際試したわけではなく。りせのアナライズによる情報で得たものだ。

 

「司波さん。この凍結状態はどのくらい保ってられる?」

 

「経験上、多分2、3時間はこのままの状態です。それ以上はわかりません。」

 

「そうか……君の兄さんならば、復活できるんだな」

 

「はい、お兄様の魔法ならば」

深雪は自信を持って言う。

 

「…達也の魔法で……ミアが助かるかもしれないのね深雪……」

悲痛な面持ちをしていたリーナだが、深雪の言葉でホッとしたように胸をなでおろす。

 

「ここも安全ではない。この人をこのままの状態で、何処かに隠す。カタが付いたら復活させよう」

悠は深雪に場所を聞き、練習場の中にある機材倉庫に凍りついたミアを置く。

 

 

「ところで悠………この惨状はどうするのよ………流石にこれ言い訳できないんじゃない?」

床が大きく破壊され大穴が空いた練習場を見ながら………リーナは悠に呆れたように言う。

 

「魔法や衝撃に耐えうる構造の練習場が……これ程に…………き、緊急事態だったし、その……きっと大丈夫ですよ。鳴上さん」

深雪もその惨状を見て、悠の顔を覗いながら根拠のないフォローをする。

 

「…………まずい…保険は効くだろうか?」

悠は改めてこの状況を見、額に脂汗を滲ませる。

 

 

「………一般人だと思われている鳴上さんがこのような事を起こしたとは誰も思いません。ドッペルゲンガーが行った破壊ということに………」

深雪はそんな悠にすかさずフォローを入れる。

 

「それだ!」

悠はそれが起死回生の案だと言わんばかりに拳を握りしめる。

 

「それだじゃないわよ悠……まあ、そういう事にするしか無いわよね………にしても、とんでもない力ね」

リーナは呆れ顔で悠を見る。

これでも悠は建物が崩壊しない程度に【ゴッドハンド】の威力を抑えていた。

 

「フフフッ、鳴上さんって面白い方ですね。さっきまであれ程の戦闘をされた方とは思えないです」

深雪はようやく余裕が出来てきたようで、笑顔を見せる。

 

 

 

悠は2人が落ち着きを取り戻し、体力がある程度回復をしたところで、簡単に現状の説明とこれからの方針を語りだす。

 

「状況は最悪だ。この第一高校は霧に包まれ異界化し、ドッペルゲンガーと、その眷属が多数徘徊する魔窟と化している。ドッペルゲンガーの目的はわからないが、生徒達は鏡に囚われ、さらに、眷属で鏡に囚われなかった者を直接、捕縛している。幸い殺すことが目的ではない様だ。これから、七草達と合流しながら、ドッペルゲンガーを一体一体倒しに行く。リーナと司波さん……手伝ってくれ」

 

「もちろんよ。悠」

リーナは当然だと言わんばかりだ。

 

「異界化?鏡の中に囚われる?どういうことですか?……その、七草先輩ともお知り合いなのですか?」

深雪は異界化や鏡の中に囚われるという言葉に戸惑う。

何も知らない深雪に取って理解不能な話だ。

 

「詳しく説明している暇はない、移動しながらでいいか?」

 

「わかりました。それと…多分、兄も何処かで戦っているはずです。合流していただきたいんです。

ミアさんを元に戻す為にも………それと鳴上さん……兄と呼び方を区別するという意味で、私も下の名前で読んでいただけませんか?………深雪です」

 

「わかった。よろしく深雪」

 

「はい」

 

リーナはそんな深雪と悠を見て、不満そうな顔をしながら悠の耳元で深雪に聞こえないような小声で話しかける。

「りせからテレパスはあれから無いわ……りせと真由美は無事かしら?敵に遭遇していたようだけど………」

 

「大丈夫だ。りせは戦闘を行っているのだろう。そのうち連絡が付く。何かあれば大声で助けを求めてくるだろう」

 

「……りせが戦闘?大丈夫なの?」

リーナは心配そうだ。

 

「七草も居る……りせを相手にする連中は……災難だな………」

 

 

 

 

2月3日(木)14:40

 

生徒会室で待機していたりせと真由美だが、りせはヒミコで情報収集を行いながら、悠への練習棟への誘導、リーナのサポートを同時に行うという荒業を実行していた。

 

「真由美さん!敵がここに向かってる!!シャドウ…ドッペルゲンガーよ!何でここに?………外の烏ね…あれも奴らの眷属!」

 

「!?…りせさん退避をしないと!」

 

「真由美さん落ち着いて!私達でも倒せるわ!ここに来るのは熊のドッペルゲンガー…力技が得意……雷撃系の魔法を用意して!弱点よ!!」

 

「わ、わかったわ」

真由美は不安ではあったが、りせの励ましの掛け声で、迎撃態勢を取りCADを操作。電撃系の魔法の準備をする。

 

「もうすぐ来る………扉に照準を………今よ!!」

 

真由美もマルチスコープという魔法で扉の外の様子を確認し、敵を認識する。

生徒会室の重厚な扉は既に熊の化け物と化しているドッペルゲンガーが外から力任せに引き抜かれるのと同時に扉の外側に向かって、雷撃を放つ。

 

「ぐわっーー!………な、なんだ!」

引き抜かれた片方の扉の外では、未確認生物のビックフットの様な姿をした熊のドッペルゲンガーの巨体が廊下の壁に倒れ掛かっていた。

 

「真由美さん!そのまま連続で!!」

 

「了解よ!」

真由美は雷撃を飛ばす魔法を連続で次々とその大柄な黒服黒マントに放っていく。

 

「ぐっ………ぐわっあああああ!!がぁああ!!」

熊のドッペルゲンガーは放電し煙を上げ、激しく苦しんでいる。

 

「そのまま押し切っちゃえ!!」

 

真由美はそのまま、雷撃を次々と飛ばして行く。

熊のドッペルゲンガーはたまらず、廊下の窓を突き破り、煙を上げながら外に落ちていく。

 

「あ!!逃げた!!……まあいいわ。大分ダメージを与えたし」

 

「……出来た?…私でも?」

真由美はこうもあっさりドッペルゲンガーを撃退出来たことに自分自身驚いているようだ。

 

真由美は近頃、自信喪失気味であった。

ドッペルゲンガーに一度捕まり死にかけ、捜査もうまく行かず。さらに周りにいる悠やりせ、リーナと自分を比較し、劣っていると………

戦闘能力は悠に劣り、同じ魔法師であるリーナには攻撃力では劣っている。かといって、探査能力やサポート能力はりせというとんでもない存在が横にいるのだ。

ただ、悠とりせは言うまでもなく、リーナもUSNA最高峰の魔法師だ。比較対象にする人間が優秀すぎるのだ。

 

真由美自身も本来かなり優秀な魔法師である。

全国に九校ある魔法科高校の中でも五指に入る実力者だ。

この一連の事件で真由美本来の持ち味である『万能』がまだ活かされていないだけの事。

 

日本の魔法師にとってドッペルゲンガーは未知の敵である。相手がどんな性質でどんな敵なのかもわからない状態であり、対処方法も手探り状態であった。

悠やりせはこういう手合の相手は経験が豊富だ。リーナもUSNA時代から追っていた敵である。ある程度経験値があるのだ。真由美にはそれらが全く無かったため、出遅れても仕方がないだろう。

 

しかし、今は隣にりせがいる。

既にドッペルゲンガーは未知の敵ではなくなり、対処可能な、倒すことが出来る敵となったのだ。

 

「そうだよ!真由美さんがドッペルゲンガーを撃退したの!」

 

「私が………」

 

「ついでに外のあの烏もやっちゃおう!!彼奴等、私達や生徒達の居場所を探して、ドッペルゲンガーやその眷属に知らせているみたいなの!!」

 

「え?…私達だけで?………」

 

「何処に居ても一緒、奴らのシャドウみたいな眷属が敷地内うようよしているんだから。とりあえず、ドッペルゲンガーの目の役割をしている烏の眷属と、烏のドッペルゲンガーは早めに倒しておきたいし!私達で先に倒して悠先輩に褒めてもらうの!!」

 

「え?それはそうなんだけど………鳴上くんに認めてもらえる?」

真由美はノリノリで倒しに行こうと言うりせに不安を覚える。……確かに、相手の目である烏の眷属とその親玉である烏のドッペルゲンガーを早めに倒しておくべきだとは思うのだが……ふたりだけでは心もとない。さらに、真由美はりせから戦闘は苦手だと聞いていたため余計だ。

ただ……最後のりせの言葉に心が揺れる。

 

「じゃあ!レッツゴー!!」

のりのりで最早行くつもりのりせ

 

「ええ?」

真由美はこの後、思い知らされることになる。確かにりせには戦闘に対し苦手意識はあるが……苦手と強さは別問題である事に…………





次はりせ回+真由美さん

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