誤字脱字報告ありがとうございました。
遂に悠が………ペルソナ使いとして………
2月10日(木)
第一高校がドッペルゲンガーの大規模襲撃を受けてから1週間が経つ。
あの事件で第一高校は、校舎や施設はダメージを受け、更に生徒の600人のうち大凡340人が入院を余儀なくされ、10日間の休校が決定された。
特に野外訓練施設や練習施設は壊滅的なダメージを受け、復旧の見込みは立っていないとのことだ。
あの事件は世間一般では、第一高校大規模テロ襲撃事件として報道されている。
テロリストが第一高校内で、式神による大規模魔法実験を行い。式神暴走の結果多くの生徒がサイオンを奪われ意識が刈り取られたと発表されたのだ。
幸いにも、ドッペルゲンガーの眷属が式神に見えるのと、ドッペルゲンガーの真相を知る者は、悠達のみだったため、パラサイトやゴースト事件と関わっていたことを簡易な情報規制を敷くだけで、秘匿することが出来たのだ。
最終的に一部の生徒がテロリスト達を撃退、捕縛したことで解決したことと成っている。
また、その一部の生徒とは公表されていない。
そして、アイドル久慈川りせも、その生徒達のお陰で、事なきを得たと………
今回の事件。もっぱら、マスコミの興味は第一高校はこの1年で2回もテロの標的とされたことに集中し、セキュリティの甘さ等を指摘された上に、魔法科高校の存在意義の如何まで、有る事無い事を連日報道されている。
政府や警察、軍の間ではこの事件がパラサイトの襲撃事件で有ることは当然把握している。パラサイト改めドッペルゲンガー第一高校一斉襲撃事件として事態を深刻に受け止め、生き残りのドッペルゲンガーの捜索、事件解決へと各組織の連携強化をはかり正式に対策本部を設置し再編成を行うことと成った。
そこには今までお荷物扱いをされていたとある組織も正式に組み込まれることが決定された。
なぜ、パラサイトからドッペルゲンガーに改めたかと言うと、この事件を受け、USNA内部等から日本に情報リークがあったからだ。
USNA政府は日本政府に対し正式にUSNA国内でも同様な事件が起きたこと、そしてUSNA軍の人間が身体を乗っ取られ、日本に潜伏している可能性があることを発表せざるを得なく成った。
その上で、正式に協力を申し出、ドッペルゲンガーと交戦経験があるUSNA軍スターズの一部を情報提供協力という形で日本に正式に滞在させることとなったのだ。
ドッペルゲンガー対策に本腰を入れる日本政府は……ドッペルゲンガー対策室を正式に立ち上げ、様々な組織や立場の人間が集められることになる。
そして対策室の上役の1人にあの桐条美鶴が選ばれたのだ。
今まで、警察組織でも厄介扱いされたシャドウワーカーがこの対策室に組み込まれた事を意味するものだ。
今回の事件でドッペルゲンガーに対し、ペルソナ使いの有用性が正式に認められたからである。
それはとある人物がドッペルゲンガー第一高校一斉襲撃事件に多大な貢献をしたことが現場状況や、報告に上がってきたからだ。
そして……それに伴い特例箝口令が敷かれる。
N案件……彼の事を政府の一部又は対策室以外の人間に漏らす事を禁じたのだ。
だが……それが結果的に彼の価値や有用性に気がつく者が出ることとなり、自分達の立場や力を上げる為に彼を引き入れようと企む組織が後から後からと……………
ドッペルゲンガーの目的は神魔の降臨である可能性が高い…それは人類にとって大いなる厄災となる………だと言うのに、彼らは自らの権力欲と力の為に彼を利用しようとする。
しかし、彼は惑わされない。
彼は己の意思を明確に持ち、真実を見抜く力を持っている。
迷いがあろうとも、彼と深い絆でつながっている仲間が支えてくれるだろう。
2月3日(木)16:05
悠はホーンド・サーペントを悪魔の王ベルゼブブのメギドラオンで消滅させ、リーナ達の元に向かった。
「悠……終わったの?」
「今回はだがな……ドッペルゲンガー2体を取り逃がした」
「鳴上さん……あの…巨大なハエも……鳴上さんのペルソナなのですか?」
(なんだったんだあのヘビの怪物は……あれもドッペルゲンガーの仲間なのか……凄まじい力だった…まるで神話や伝承の怪物そのものだ………あんな物が現存したとは…………、それに貴方は何者なんだ……あの凄まじい力を内包しているヘビの怪物をも圧倒する力…………1人で、軍一個師団に匹敵する力………いやそれ以上だ)
達也はリーナと深雪と会話をする悠を見据えていた。
「霧の結界が晴れる。七草やりせと合流しよう」
「そうね」
「分かりました」
「…………」
こうして、悠達はりせ達と合流するため加速魔法で移動を開始する。
(異世界の化物……それ以上の存在であろう神や魔…………そんな存在がこの世に闊歩していたなどと信じられん。……しかし強大なヘビの化物にそれに対抗する能力者ペルソナ使い……、まるでおとぎ話の悪魔のような禍々しい力を振るうペルソナ………常識を逸脱しすぎているが………目の前に存在する)
達也は魔法で移動しながら、悠の後ろ姿を見、思考を巡らせていた。
「悠先輩!!鏡に囚われてた皆を救出したよ!」
りせは悠を見つけると駆け寄る。
「こんな短期間で流石だなりせ」
「鳴上くん。終わったようね………」
真由美はホッとした表情で真正面で悠を見上げる。
「ああ、七草や皆のお陰だ」
悠はりせと真由美にねぎらいの言葉をかけた後、皆を見回しながら神妙な面持ちで話を切り出す。
「もう直ぐ、霧が晴れ、この結界が解ける。その前に皆にお願いがある。………りせがペルソナ使いだということは誰にも言わないでくれ。……その胸の中だけで収めてほしい。
今回の事はあまりにも大きい。辻褄が合わないことも出てくるだろう。俺の事を話してもらっても構わない……だが、りせだけは頼む」
悠は達也や深雪、エリカ、幹比古、美月に向かって頭を下げたのだ。
「悠先輩…………そんな………私だけを…………」
「私からもお願いするわ。鳴上くんのことも、隠してあげて欲しい」
真由美も悠に習って皆に頭を下げる。
「りせ姉さまの事は絶対言わない……でも、この現象をどう説明すればいいのか見当がつかない………」
「りせさんのことは誰にも言わない………というか後が怖いし…………エリカの言う通り、この学校の惨状を僕らじゃ説明出来ない………」
「りせお姉さまの事は絶対言いません」
エリカ、幹比古と美月は概ねりせについては了承するが……この後、各方面からこの事件について色々と聞かれるだろう。特にエリカ、幹比古は警察組織の協力者だ。どう説明したら良いのか、見当がつかないといった様相だ。この3人はドッペルゲンガーの事すらも、ほとんど知らない状態で、今回の事件に巻き込まれたのだ。致し方がないだろう。
「………その、私は………」
深雪は困っていた。ここまで大々的な事件に発展してしまっては四葉本家に報告せざるを得ないからだ。しかし、恩人である悠を裏切るようで心苦しいのだ。
そんな深雪の肩をポンと叩き、代りに前に出て、達也は鋭い目つきで皆と悠を見据えて言う。
「先程までの出来事……正直俺自身理解が追いついていない。皆もそうだろう。………そして、この惨状だ。あまりにも事が大きすぎる。………さらに人類の存亡が掛かっているという……事の真偽はわからないが……少なくとも今日見てきたことだけでも一個人で背負えるものではない。………俺にはとても、この事を心に留め置くことは出来ない……………それに鳴上さん………その力……………」
「達也!あなただって悠に助けられたんじゃない!それぐらい黙ってくれてもいいじゃない!」
リーナは達也が言い終わる前に噛み付く。
「…………………」
しかし、エリカ達は、達也の言葉を聞き、沈黙し俯くことしか出来なかった。
達也の言葉に同意せざるを得ないのだ。
「……リーナ、いい………達也の指摘はもっともだ。俺もそう思う………七草……俺は今回の事件について……軍に…七草弘一氏に話す。警察組織にもだ………今回たまたま、俺やりせがこの場にいたから良いようなものの……神魔の降臨を許し、最悪人類の滅亡もあり得た。……しかもドッペルゲンガーを一部取り逃がし、今後も、奴らは神魔を降臨させる為に再度動く可能性が高い。事が大きすぎる。…………しかし、りせの事だけはこの通りだ」
悠は今日のことを振り返りながら、皆に話し、最後にりせの事だけは黙ってほしいと再度頭を下げる。
確かに、今回偶然、高位のペルソナ使いである悠とりせがこの場に居たから、阻止出来たが、もし、ドッペルゲンガーの襲撃日時が今日でなければ、ドッペルゲンガーの計画が成功していた可能性が高い。最終的には異世界の門を開け何をなしたかったのかは不明だが………神魔降臨の可能性が高かっただろう。
「鳴上くん!でも、それだと鳴上くんが…………」
「悠!……軍に囚われでもしたら…………」
「悠先輩……そんな!ダメだよ」
真由美、リーナ、りせは悠を止めようとする。
「七草、リーナ………りせ……時間の問題だった…………りせ、わかるだろ神魔の降臨がどういう事態に陥るかを……ドッペルゲンガーの動きも不明な点も多い。奴らを手引きしている者も存在する可能性だってある。今の俺達だけでは…………」
「………悠先輩………私を庇って………」
りせは悠の胸元に顔を寄せる。
りせはわかっていた。悠がこう言ったもう一つの理由を、悠が表に出ることで、りせへの疑惑や追求を全て悠に向けさせるためだ。
もし、真由美やエリカ達、達也達が黙秘しようとも、今回の事はあまりにも規模が大きい。
悠が初めからこの場にいないことにしたとしても、りせはそうも行かない。公式にこの場に訪問しているからだ。
しかも、先の横浜事変の際も、りせは大々的にその場に居合わせた事が報道されている。
勘ぐり、調べる者も出てくるだろう。
「いや、良いんだ。………」
悠はりせの頭に優しく手を置く。
エリカや幹比古、美月と深雪は申し訳なさそうに見ることしか出来ない。
「鳴上くん…私も協力するから!」
真由美は力強く悠に訴えかけるように言う。
「悠………」
リーナは口惜しそうな表情をする。
「もし、悠先輩が酷い目にあったら、私、暴れるから!!きっついお仕置きするんだからね!!」
りせは一歩下がり悠から離れ上目遣いの涙目でこんな事を言ってしまう。
りせならやりかねないだろう。
それこそ悠が軍などに囚われの身になり自由を奪われたとなると、稲羽にいる仲間が黙っていない。そして、今は稲羽の土地神となったかの女神や………現世と異世界の間の住人である群青色のドレスを着た彼女もきっと………
「そうならないように努力する」
悠はりせ、そして、真由美、リーナに苦笑まじりの笑顔を向ける。
そして、皆はりせの事は黙ってくれると約束をしてくれたのだ。
悠は霧が晴れる前に、真由美と相談する。
この件について軍や警察に説明を求められるだろう事は分かりきっている。
今日起こったことの成り行きから、終息までの時系列、悠の事やドッペルゲンガー、そして、奴らの目的についてなども、どう話すかを詰めていく。
その間、リーナと達也、深雪は練習所へ行き達也の再成魔法でミアを復活させる。
第一高校を覆う霧が完全に晴れると、周囲で待機していた軍の部隊やら警察魔法師部隊などが一斉に突入してきた。先程まで霧の結界に阻まれ中に入ることが出来なかったようだ。
真由美が待ち構えるように校舎前で待機しており、軍の隊長及び警察部隊の隊長等に、事態の終息と現状の状況を伝え、生命エネルギーやサイオンを奪われ、気を失っている生徒達の病院への搬送を優先するように願い出る。
エリカ達とりせは混乱を避けるため生徒会室で待機していた。
悠は霧が晴れると同時に、桐条美鶴のプライベート回線に直接電話を掛ける。
悠はある程度、今日のこの事件についてを美鶴に話し、軍と警察組織との話し合いに協力してほしいと願い出る。
桐条美鶴は現在の仕事を全てキャンセルし、僅かな部下を引き連れて、一時間もかからないうちに第一高校に現れる。どうやらヘリで経由し、ここまで来たようだ。
「鳴上くん……今回は大変だったようだ。………しかし、そこまで事態が進行していたとは…異世界の門………」
美鶴と悠はホーンド・サーペントと戦った現場で、今日起こった事件について説明をしていた。
「勝手な申し出をして、すみません。最早俺たちだけでは到底対処が困難な状況です」
「いや、君がいなければ、異世界の門は確実に開いていた。そして、この地に大規模な厄災が降り注ぎ、多くの犠牲と……最悪、未来は閉ざされただろう。……同じく異界(シャドウ)と関わるものとして、君に感謝する」
美鶴も神魔の恐ろしさを自ら体験し十分知っている。過去に自分の親族が厄災を起こし、その後始末を行うために戦ったのだ。その影響は今も残っている。
「……この場に偶然居合わせただけです。………少しでもタイミングがずれていれば…………」
「……そうか………こんな事態の後に不謹慎ではあるが、こちらとしても好機だ。これで、我々シャドウワーカーも介入出来るだろう…………ところで、鳴上くん………これは…………もしや、メギドラオン……なのか?それにしても凄まじい威力だ。私が知っているそれに比べても規模や威力が高い様だ…………やはり、君は現実世界でもペルソナが使えるな………しかもメギドラオン程の高出力の魔法が現実世界でも使えるぐらいに………」
美鶴は森に開いた地面の大穴を見て、驚きながらも悠に問いかける。
これ程の破壊を起こした跡だが、周囲はそれに反してさほど影響を受けていないからだ。
「………黙ってまして、すみません」
「いや良いんだ。………それはお互い様だ。私も短時間だが、使用出来る…………ただ、現実世界では大規模魔法は使えない。私の精神力が持たない……まだまだと言うことだよ。……因みに、我々で現実世界でペルソナが使えるのは今のところは真田と私と山岸、アイギスとラビリスだけだ……アイギスとラビリスに限って言えば、ある程度ペルソナを扱える。やはり異世界にくらべ燃費は随分悪い………だが、そこらの魔法師程度には遅れを取らないだろう」
シャドウワーカーも、本格的に訓練を行っている美鶴と真田、山岸は制限はあるが現実でもペルソナが使えるとのことだった。アイギス、ラビリスの対シャドウ機動兵器姉妹は現実世界でも、燃費の面以外ではペルソナをそこそこ使えるとのことだ。
美鶴はペルソナを現実世界で顕現させることにより、魔法協会や警察組織にシャドウワーカーの意義と立場を売り込む準備をしていたのだ。
今回の事でそれが早まることになる。
「そうだったんですか」
「君には及ばないがな………自らのペルソナ、いや己の精神を鍛える事が必要だとわかった。どれだけ己自身と向き合うかが重要だと…………」
「……………」
「……我々の所に来ないか?」
しばしの沈黙の後、美鶴は悠をシャドウワーカーに勧誘する。
「……すみません」
「ふぅ、君は存外頑固者だな………協力ぐらいは頼まれてくれるだろ?」
悠の答えに、美鶴は苦笑交じりの笑顔で言う。
「……俺の方から無理を頼んでますから」
「後の交渉は私に任せてくれ………軍や警察組織にどう出るかは交渉しだいだが………君の立場と身分は必ず守ろう。もちろん君の友人たちもだ」
「ありがとうございます。助かります」
この後、真由美、リーナ、達也、深雪、エリカ、幹比古、美月は、急行した警察組織の隊長や、軍隊長に状況説明を求められることになった。そこには真由美の兄、七草智一の顔もあった。
悠も当事者として参加することになる。美鶴は現段階では全くの部外者だが、曲がりなりにも警察組織の末端でもある上に、桐条の名の影響力は大きく、同席を許される。
真由美が代表としてこの事件の状況説明をし、質問に答える。
公ではないドッペルゲンガーという表現はせず、パラサイトらしきものが人間に偽装し、校内に紛れ込み奇襲を受け、一気にこの学校が制圧されたと……そして、かろうじて残った面々で抵抗し、反撃に出て数体消滅させ、退けたとした。
悠は自らについて、りせの代理マネージャーであり護衛を兼ねていたと話し、そして、自身も特殊なSB魔法が使えるため、第一高校の面々と協力し、数体のパラサイトを撃破したとした。
この場では混乱を避けるためペルソナ使いと言う表現はあえてさけていた。
また、りせが行ったことの大半は悠が行った事と口裏を合わせるようにしていた。
最初は反魔法団体等のテロリストによる大規模襲撃と考えていたのだが、予想以上の事態に、警察組織や軍の隊長は即上層部に上告する。
警察、軍の両組織から箝口令が敷かれ、外部に漏らさない様にと釘を刺され、皆はその日は解放される。
りせは既にマネージャーの井上さんが迎えに来て、自宅に戻っていた。
魔法協会が大枚を叩いてようやく手に入れたプロパガンダであるりせがこんな事件に巻き込まれたのだ。りせやりせの事務所の機嫌を損ねる訳にも行かず、皆とは別に幾つかの簡単な質問を受けただけで、あっさり解放されたのだ。
この事件を機にペルソナ使いの有用性が知られることになる。
シャドウワーカー(P3メンバー一部)も
ペルソナを現実世界でも使える設定を追加しました。
明日も更新します。
元々は一話の話がめちゃ長くなったので、分けたものが今回が前半です。