誤字脱字報告ありがとうございます。
すみません。つまんない話がしばらく続きます。
なんとか、乗り越えたら……
2月14日に繋げられたらと、我慢してます。
ちょい種まきはしますが……
2月6日(日)9:30
悠はリーナの東京での自宅兼スターズの拠点の一つであるマンションの一室に向かっていた。
リーナは前日の夜に悠の自宅マンションに急に訪れた。その時のリーナはかなり取り乱していた。
悠はリーナを落ち着かせ、部屋に入らせ、暖かい紅茶をいれる。
事情を聞くと、USNA軍が第一高校でペルソナを使いドッペルゲンガーを倒した人物が悠である事を把握していたということなのだ。
リーナが第一高校襲撃事件について悠とりせの名前を出さずに上に報告していたのにもかかわらずにだ。
さらに普段リーナと仲良くしている青年と同一人物で有ることも知られ、リーナと悠の関係も疑われているのだ。上層部幹部の一人が、悠との会談の席を早急に持つようにとリーナに命令を下したとのことだ。
リーナは悲壮な表情をし、悠に一緒に逃げるように言ったりと、また、取り乱し始めた。
悠はリーナの頭にポンと手を置いて、一言「大丈夫だ。任せておけ」と言って、明日会談に応じることを上層部幹部に伝えるようにリーナに言ったのだ。
その後も、リーナは涙ながらに、ずっと悠に謝り続ける。
悠はその夜は何とかリーナを落ち着かせ、家に帰らせた。
悠の情報は日本政府から漏れ伝わったものだった。先日のUSNA軍のドッペルゲンガーに関するリーク後、日本との協力関係を結んだ際、USNA軍の日本政府内部に潜り込ませている諜報員が得た情報で、悠の存在を把握したのだ。
「悠…ごめんなさい。こんな事になって」
玄関で悠を出迎えたリーナは悠の顔を見るなり謝る。
「昨日も言ったが、大丈夫だ」
「改めまして、USNA軍所属シルヴィア・マーキュリー准尉です。こんな形で出迎えることになるとは思いもしませんでした鳴上さん」
そのとなりではリーナの副官である。シルヴィア・マーキュリー准尉が挨拶をする。
「シルヴィさんにはご迷惑おかけします」
「アンジー・シリウス入ります。客人をお連れしました」
リーナはリビングの扉を開けソファーに座る人物に敬礼をしそう言って、悠を先導する。
「シリウス少佐、そこまでかしこまらなくて良いです。今日は非公式な会談なのですから。初めまして、私はUSNA軍統合参謀本部情報部ヴァージニア・バランスです」
ソファーに座るUSNA軍の制服姿の30前後の年格好の女性がリーナにそう言いながら立ち上がり、悠に自己紹介を行った。
彼女は情報部の中でも実は監査部に所属しており、軍内の人事に大きな発言権を持っている人物でもある。彼女の報告次第では、将校と言えども、降格や退役、そして、軍規違反に問われる可能性もある。
しかし、このバランス大佐、リーナと率いたスターズが達也と深雪に破れたことに関して、擁護の立場に回り、処分保留とし、半ばお咎め無しの裁定を下した人物だった。
そんな大物の人物だが護衛なども付けず。リビングで1人座っていたのだ。
「鳴上悠です」
「わざわざこの様な場所に足を運んでもらいまして、すみません」
バランス大佐はそう言って、対面のソファーに座るように悠を促す。
「いえ」
悠はそう言ってソファに腰をかける。
リーナは失礼しますと言って、バランス大佐の横のソファーに座り、シルヴィは紅茶をテーブルに運び、そのままリーナの後ろに控える。
「鳴上さんには幾つか聞きたいことがありまして、この様な場を設けさせてもらいました。貴方を害する意思はありません。これは私の個人的な非公式の場だと認識してください」
「分かりました」
「……早速ですが、貴方は第一高校で先日起きたドッペルゲンガーによる襲撃事件においてドッペルゲンガーを撃退したペルソナ使いですね」
バランス大佐はズバリ、悠に聞いてきた。
「そうです」
「……そうですか。申し訳ないですが、こちらで貴方の事を勝手に調べさせてもらいました。鳴上さんは今は高校3年生、18歳……貴方はこの状況下でもずいぶん落ち着いて見えます」
バランス大佐は悠があっさり認めた事に少々戸惑い、こんな事を聞いてきた。
「そう見えるだけです」
「……わかりました。話の腰を折ってすみません。我が国の魔法師の中にも数は少ないですがペルソナ使いは存在します。しかし、とても攻撃に向いているようなものではありません。特殊な状況下でしかその能力を活かせないと聞いております。しかし、独自に手に入れた情報ではペルソナ使いを名乗る貴方はドッペルゲンガーを数体討滅したとありますが、これも本当ですか?」
「皆の協力を得て討伐しました」
「やはり………失礼ですが貴方は日本では魔法師ですら無い。一般の高校生だった。そんな貴方がドッペルゲンガーを討伐した。普通ならば誰も信用しないでしょう。あの桐条財閥が介入してこなければと条件は付きますが……日本政府内部も貴方について随分混乱しているようですしね。
……シリウス(リーナ)少佐の報告にある正体不明の協力者とはおそらく貴方のことでしょう。そう考えれば、すべての辻褄があいます」
「…………」
「貴方は何なのですか?何処の組織にも所属していないようです。さらに我軍のエースであるシリウス少佐からもかなりの信頼を得ているようです。このままだと、貴方にシリウス少佐を取られる懸念すら持つぐらいに」
バランス大佐は鳴上悠と言う人物がどんな人物なのかが報告だけではまるでわからなかったのだ。これまでいろいろな人間に会い、軍の人事のトップに近い場所にいる彼女でもだ。
それで直接、悠を見極めるためにこの場を設けたのだ。
「先ほど、バランスさんが言った通りです。ペルソナという特殊能力をもっていますが、ただの一般の高校生です。リーナについては、普通に街で知り合って友達になっただけです。彼女が軍の人間だと知ったのはその後です」
「……貴方は、桐条にも、日本のどの組織にも属していないと」
「バランスさんが調べられた通りです」
「………シリウス少佐が他国の軍人であるUSNA軍の人間だと知っても、尚もシリウス少佐と」
「リーナはリーナであって、USNA軍の人間だろうが、俺にとってはさほど重要なことじゃないんです」
「悠…」
「………どうやら、嘘は無いようですね」
バランス大佐は悠を見透かすような目でじっと見つめてから、こう言う。
「では、最後の念押しをさせていただきます。貴方は何処の組織にも所属しておらず。アンジー・シリウス少佐を懐柔する意思がないと」
いろいろと遠回しに悠に話しかけていたが、どうやら、このヴァージニア・バランス大佐はドッペルゲンガーのことよりも、リーナが日本へ引き抜かれる可能性がある事に懸念を抱いていたらしい。
もはや、日本にバレてしまった以上、ドッペルゲンガーが元USNA軍人の姿をしている事と理由を隠す必要もなくなり、既にドッペルゲンガーの被害は日本で起きていることで、半分以上他人ごとなのだ。それよりも、USNA軍に3人、世界でたった13人しか居ないと言われる戦略級魔法師の1人である、リーナが日本人である悠に肩入れしているという事実を問題視していたのだ。
「そうです。ただ、俺はアンジー・シリウスなる人物とは接点はありません。飽くまでも、アンジェリーナ・クドウ・シールズと気の置けない友人関係であるだけです」
「………ふう、それも問題があるような気がしますが、まあ良いでしょう。しかし、シリウス少佐。貴方は軍に重要な情報を報告に上げていませんでした。厳罰があると思ってください」
「はい」
リーナは覚悟した表情をする。
「…バランスさん。俺と取引しませんか?」
そこで悠はこんな事を言いだした。
「……どういうことでしょう?」
「俺は、今後も何処の組織にも所属せず、ドッペルゲンガーを個人的に追います。もちろんドッペルゲンガーと何度も交戦するでしょう。そこで、リーナと個人的に協力関係を結びたい。俺たちが戦果をあげれば、USNA軍アンジー・シリウスが関わった事になり、対ドッペルゲンガーの戦果なり評価なりも、そちらに入ってくるでしょう。また、ドッペルゲンガーについての情報もリーナを通じて提供できるかもしれません」
悠はリーナとの協力関係を認めるよう言ってきたのだ。
しかも、USNA側にも得するような条件も付けてだ。
「なるほど……それで、取引とは」
「アンジー・シリウスは俺と今まで繋がっていたのは、ドッペルゲンガーの情報を得るため、更には日本におけるこの事件の情報を得るためだったと言うことにして頂けませんか?」
悠はそのかわり、今までのリーナと悠の関係を認めた上で、不問にしろと言ってきたのだ。
「悠!それは………」
「………本当にあなたは一般の高校生なのでしょうか?………その話、検討の価値はありますね」
バランス大佐は既に、USNA軍と日本との交渉が不利になっていることがわかっていた。それは当然のことだ。もともとUSNAで起こった事件が日本に渡り、被害がこれ程大きくなったのだ。しかも今まで隠蔽し、裏ではUSNA軍スターズが非合法で東京で活動していたのだから……そして、USNA軍の日本との協力交渉もほぼ決定だ。日本滞在のUSNA軍は日本国防軍や警察の指示なしでは、動けないのだ。情報提供や指示がある現場のみでしか活動が許されない可能性が高い。
良いように使われるのは目に見えている。それによる戦果や情報は得られないだろう。
となると、現状ではもう一つの目的である。灼熱のハロウィンを起こした日本の戦略級魔法師の探索もほぼ不可能となる。
今回の件、多大な予算を注ぎ込んで、USNA軍を秘密裏に日本に送り込んだことがすべて水の泡になるのだ。
この青年の言う通り、この青年が独自にドッペルゲンガーを追い。目的を達した場合。誰か1人でもUSNAの人間が関われば、こちらにも得られるメリットは大きい。
さらに、この青年は、今回のドッペルゲンガー第一高校襲撃事件でかなりの戦果を上げている実績もある。
ドッペルゲンガーやそれに伴う情報を少しでも得ることによって、本国に対して多少のメンツを保つことができるのではないかと…………
悠は悠で、リーナの立場を守りたいのと、今後も今までと同じ様な付き合いをしていくためにこんな提案をしたのだ。
「………多分その取引は成立するでしょう。日本政府とも多少詰める必要がありますが…………しかしながら、貴方に踊らされている様な気分ですよ」
「俺はドッペルゲンガーの脅威を払拭できればそれで十分なんです」
「わかりました。今日は非常に有意義な話が出来ました。ありがとうございます」
バランス大佐は立ち上がり、悠に握手を求め、悠は応じる。
「こちらこそ」
「シリウス少佐、鳴上さんをお送りして差し上げなさい」
「了解いたしました」
こうして、悠とリーナはこのマンションの一室から出る。
残ったバランス少佐とシルヴィは
「シルヴィ准尉、鳴上青年をどう思いますか?」
「とても、18歳には見えません。前から堂々としているとは思っておりましたが、頭の回転も交渉術も優れているように見えます」
「そうですね。しかも、毒気を全く感じられない。絵に描いたような真面目な青年………彼の動向は、シリウス少佐の動向同様に注視してください。……………彼は我々に取って吉となる存在なのか、凶となる存在なのか…………いや、吉になるようにしなければなりません。あわよくば取り込みたい………亡命も…」
バランス大佐はそう言いながらソファーに深く腰をかけ、思案に暮れる。
一方リーナは悠を自宅まで送るつもりで歩む。
「悠……」
「なんとかなったな」
「私、悠に助けて貰ってばっかりで、何も返してない」
「気にするな」
「……悠はなんで私を助けてくれるの?」
「友達だからだ。それと、リーナは意外と頑張り屋だから助けたくなる。おっちょこちょいだけどな」
「悠!」
リーナはいきなり悠の背中に抱きつく。
「どうしたリーナ?」
「なんでもないの。温かい……しばらくこのままにさせて」
リーナの目には温かい物が流れる。
2月6日(日)12:30
深雪と達也は自宅で昼食を摂っていた。
「……お兄様、鳴上さんに改めてこの前のお礼を言いに行きたいのです」
「そうだな」
「いいのですか?」
「ああ」
「早速電話をかけてみます」
深雪は純粋に悠にドッペルゲンガー第一高校襲撃事件のお礼を言いたかったのだ。
あの時はいろいろとあり、最後はまともな挨拶も出来ずに別れてしまっていた。
更に、四葉家当主に悠の事を報告を上げてしまったことにも負い目があったためだ。
達也は、鳴上悠という人物を見極めたかったのだ。
人物的にも、その能力もだ。
あわよくば、情報も聞き出したいという打算を一瞬のうちに頭に描いていた。
「お兄様!今からお伺いしてもいいとのことです。何時がよろしいですか?」
「そうだな。なにか手土産も必要だろう。15:00でどうだ」
「はい………お兄様15:00でお願いします」
深雪は明るい笑顔で悠と電話越しで応対していた。
達也はここしばらく、深雪の笑顔を見ていない事に気がつく。
深雪はドッペルゲンガーの襲撃事件から元気がなかった。
悠の事とほのかの事でだ。
幸いにも学校がしばらく休校であったがため、友人連中と顔を合わせていないため、その指摘を受けることは無い。
ほのかの入院先には一昨日達也と行ったが、命の危険は無いとのことだが、未だに意識が戻っていない。
深雪は達也の身代わりになりこの様な状態となっているほのかにも申し訳なく思っていた。
達也もこの事を気にしていた。あの時、ほのかに助けられたのは達也だ。
ほのかが助けなければ自分がこうなっていただろうと………
深雪と達也の兄妹はそれぞれの思いを胸に悠の自宅へと向かうのだった。
次は多少動きがあります。