ペルソナ使い鳴上悠と魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

アンタッチャブル編を上中下で終わらせるつもりでしたが………
長くなりました。すみません。


第四十一話 悠、静かに動く

2月12日(土)夕刻前

 

 

悠は稲羽の皆とりせのヒミコを通しての連絡で、ドッペルゲンガーに菜々子が狙われた事、そして十師族四葉家の間者が菜々子と遼太郎親子を監視し、悠の身辺に探りを入れていた事を聞いた。

ドッペルゲンガーは明らかに悠に対する人質にしようと菜々子を誘拐するつもりでいた。

四葉家の間者の方は、そこまでの具体的な行動には出ていないが、やはり、悠や直斗が懸念していた通りであった。

 

ドッペルゲンガーは再結成した自称特別捜査隊+現人神マリーで撃滅。

四葉家の間者である黒羽一党は、全員捕まえ、マリーによる1年間の記憶を消去し放逐。双子の姉弟黒羽亜夜子と文弥はまだ幼いということで、3ヶ月の消去で済んだらしい。

 

「菜々子ちゃんは元気ですよ。先輩」

ほぼ直斗が経緯を説明して、この言葉で締めくくる。

 

「みんな、ありがとう」

 

「任せてよ鳴上くん!」

「うん、私達が出来ることはこれくらいだから」

「礼なんて良いっすよ。なんか照れくさいんで」

「任せるクマ!」

「それくらいなんともないし」

千枝、雪子、完二、クマ、マリーはそれぞれの返事をする。

 

「……まあ、人死にがでなくてよかった」

陽介だけは疲れ切ったような声を出していた。

 

「結構な使い手だったのか?四葉家の間者は?」

悠は陽介達が四葉家の間者相手に手こずったのかを聞いた。

 

「いや、そうじゃない。こいつらの暴走を抑えるのがどんだけ大変か……今までのお前の苦労がわかった気がする」

陽介の声は沈んでいる。

四葉の間者より、ドッペルゲンガーより、自称特別捜査隊のメンバーの暴走を抑えるほうが大変だったようだ。

 

「?」

 

「それよりも、先輩、問題があるんです」

 

「何がだ直斗」

 

「記憶を消し放逐したのは良いのですが、彼らは飽く迄も四葉家の実働部隊です。堂島さんや菜々子ちゃんの監視の命令を下した四葉家当主、四葉真夜は未だ健在です。記憶をなくして戻ってきた黒羽一党に異様さを感じ、命令先である、堂島親子周辺で異常事態が起こっていることだけは、伝わるはずです。

そうなると、さらなる監視者や斥候、はたまた刺客を送ってくるかもしれません。

僕たちの事も勘づくかもしれません。

また、十師族の権力を振るい何らかの圧力を稲羽市にかけてくる可能性も考えられます。

頭を抑えなければ……何らかの行動に出てくるでしょう」

 

「なるほど」

悠は何かを考え込む。

 

「直斗!そんなん。俺らで四葉だか魔女だかしらねえが、カチコミかけて、二度とこんな真似しねえようにぶっ飛ばせば良いことじゃねーか?」

 

「巽君。四葉家とは十師族の中でも謎が多い一族です。さらに、30年程前、四葉家だけで、台湾の魔法師に報復攻撃をかけ、ほぼ壊滅させてます。今では恐れられ、アンタッチャブル四葉と世界でも畏怖の念を抱かれている一族です。一人一人の力では負けるつもりはありませんが、相手は組織です。対してこちらは、精鋭と言えども、少数。菜々子ちゃんやこの稲羽を守るのが関の山です。また、四葉は日本の裏社会に顔が効くとも言われ、あらゆるネットワークを持ってます。スポンサーも日本を裏から支えている大物たちが数多く居るとも言われております。うかつに手をだすと、力以外の方法でこちらが干されるでしょう」

 

「ちっ!くそっ!相手の親玉がわかってるってのに、黙って見てるしかないのか!そんじゃ相手の言いなりになってるのと一緒じゃねーか!」

 

「完二くん、私も悔しいよ。でもね。ただ暴れてるだけじゃダメだって、色んな経験をして学んだはずだよ」

千枝はそう言って完二をなだめる。

 

「今は我慢の時、また、襲ってきたら燃やすだけ」

雪子も千枝のフォローに回っているようだが………どうやら、かなり頭に来ているようだ。

 

「天城、燃やすの禁止な!……しかし、実際の話今は、黙って見てるしかないのか………」

陽介も悔しそうだ。

 

「悠、ごめん。私が八十稲羽周辺から出られないから……」

マリーも同じ思いのようだ。

 

「いや、マリーは居るだけで助かる」

 

「先輩。……政府に掛け合うことは出来ないですか?先輩の親族や知り合いに手出しを出来ないような……何かを」

直斗はそこで本題を切り出す。

 

「俺は四葉の事は知らない。今回のドッペルゲンガー対策室のトップに十師族の九島家の元当主と七草家当主が就任してる。後はその下で十文字家と六塚家も関わっていると聞く。七草家当主は、こっちの友人の父親なため顔見知りだが、そんなに悪い人ではない……なんとかなるかもしれない」

 

「七草家ですか……四葉家と七草家は牽制しあっているとも噂で聞きますが、七草家現当主も中々のやり手だと聞いてます」

 

「かなりのやり手だと俺も感じるが、だが俺に対しては敵意を持っていない」

 

「相変わらずお前、何処にでも知り合いがいるな……」

陽介は呆れた声をだす。

 

「マリー、一応記憶を探って得られた情報をメールで送ってくれないか?後は黒羽に関わっている人物の名前がわかれば、それも頼む」

悠はマリーに頼んだのは、情報が多ければ多いほど交渉の幅が広がるからだ。

また、人物の名前も同様だ。責め口が増える。

 

「メール?あっ、これ(携帯端末)の手紙おくるやつ……わかった。ちょっとやってみる……でも悠、無茶だけはしてはいけないんだから。君にもしもの事があれば、私はとても悲しい」

 

「そうだぞ悠!って言っても、お前は無茶するしな……絶対死ぬような真似だけはするなよ。お前に何かあったら、俺は多分、全てが許せなくなる」

陽介は悠にこういう激励の仕方をする。悠にとってこれは戒めとなるからだ。

 

「ああ、大丈夫だ」

 

「うーん。四葉家ってどっかで聞いたことあるのよね……何処だったかな?」

りせは四葉の名前が出てからずっと何かを思い出そうとしている。

 

そうこうしてる内にマリーからメールが届く。その量はちょっとした文庫本ぐらいあった。

「……これだけの文章…速いな」

 

「うん。なんか念じたら出来た」

……マリーは文章を打ち込んだのではなく、携帯端末に念写したようだ。

その文章が痛いポエム調になってるのはご愛嬌だ。

 

「………なるほど、直斗の言った通り、四葉家が恐れられている理由はわかった。かなり危ない橋を渡ってきてるようだな……中々手強そうだ。今回陽介達が捕縛した黒羽家はその中でも1、2を争う実行部隊のようだな」

マリーは黒羽親子の記憶を消す際に、その消した分の記憶を読み取っていたのだ。

 

「マリーちゃんって万能だね。もしかして私達の恥ずかしい過去も覗くことができちゃうとか?」

千枝はなんとなしにマリーに質問をする。

 

「出来るよ。しないけど……と、友達だから」

 

「マリーちゃん!友達だもんね」

 

「し、知らない!」

マリーは恥ずかしそうだ。

 

「………そうか、あの二人が……」

悠はマリーから送られてきた黒羽親子にこの一年間関わった人物名簿の名前の中に、知っている名前を見つけたのだ。

 

「どうした?」

そんな声を上げる悠に、陽介は声をかける。

 

「俺がこっちでドッペルゲンガー退治の協力者を募った人物の中に、黒羽か四葉に関わりがあるようなんだ」

 

「先輩!それは……もしや、先輩を陥れるために………しかし、先輩が人物を見誤るなんて」

 

「いや、……その人物、司波兄妹には絆を少なからず感じている。陥れようと言う意思は感じられない」

 

「あーー!!思い出した!!司波達也と深雪をアナライズ掛けた時だ!!悠先輩!司波達也と深雪は四葉真夜の甥と姪よ!!」

ずっと考え込んでいたりせはその言葉で、思い出したようだ。

そう、司波兄妹がリーナと対峙した際、りせは二人にアナライズを掛けていたのだ。

 

「なっ!四葉家の当主の親族!!先輩危険です!先輩に悟られずに近づくなど!」

直斗は声を大にして悠に警告する。

 

「直斗、落ち着け、その線は無い。達也は俺に疑いの目を向けているようだが、りせの事を黙っていてくれた」

 

「軍や警察には話していなくても四葉には話しているかもしれません!」

 

「直斗くん落ち着いて、私の周りで、そういう疑いの目で見ている人間や、付け回してる人間はいないわ。もし司波兄妹が、私のことを話したら、少なくとも見張られるはず。居たらヒミコが知らせてくれるし。だから……多分、誰にも言ってない」

りせは達也と深雪と接した時間は極僅かだが、少なくとも深雪が悠を裏切るような行為をするようには見えなかった。

 

「しかし、先輩の監視の命令は受けている可能性が高い!」

直斗が声を荒げるのは悠を心配してのことだ。

 

「そうだとしてもだ。……俺は達也と深雪を信じたい」

 

「……直斗、こいつがこう言ってるんだ」

「まあ、マジで先輩裏切ったら、ギッタギタにしてやるだけだしな」

「直ちゃん心配はわかるクマ。でも、今は先生を信じるクマよ」

陽介、完二、クマは悠の好きにさせるように直斗を説得する。

 

「分かりました。……そのかわり久慈川さんには、彼らをまたアナライズしてもらいます」

 

「直斗くんたら………そのくらいはいいわ」

 

 

「……直斗、みんな。四葉家の事は俺に任せてくれ。なんとかする」

 

「わかった相棒存分にやれ、稲羽と菜々子ちゃん達の事は俺らに任せておけって」

「菜々子ちゃんと稲羽のことは任せて!でも、無茶はダメと言っても、今回ばかりはそうも行かないか………」

「鳴上くんが傷つくと私達も辛いから!だから!」

「先輩、いざとなったら魔女だか四葉だか知らねーが俺がぶっ潰すんで!」

「クマは先生を信じているクマよ!」

「悠、君に加護があるように……私は稲羽で祈ってる」

「久慈川さん……先輩の事を頼みます。ブレーキだけはかけて上げて下さい。そちらで信頼出来る方がいれば、先輩の力になってくれる人がいれば……一緒に先輩を助けて上げて下さい」

 

皆は分かっていた。悠が何かをしようとしていることを、だから激励の言葉をかける……悠が仲間が稲羽が家族が危険な状況である今、動かないはずがないと………

 

「陽介、みんな……助かる」

 

 

 

悠はこうして、稲羽の自称特別捜査隊との通信を終える。

 

 

 

悠は直ぐに行動に移す。

りせのヒミコを介して真由美と連絡付けてもらう。

「鳴上くん、りせさんも!りせさんは随分久しぶりな気がするわ!元気にしてた?十文字くんがガードに入ってるって聞いたけど、彼融通が効かないから大変じゃないかしら?」

 

「そうなの!真由美さん!あの人なんとかならない?トイレの前まで来て直立不動で待ってるのよ!こっちの精神が参りそうよ!」

 

「そ、それは酷いわね。私からもそれとなく注意するわ」

さすがの真由美も呆れていた。

 

「話の途中にすまん七草。急ぎの用事があってりせを通して連絡した」

 

「どうしたの鳴上くん?」

 

「俺の家族……従姉妹の菜々子がドッペルゲンガー5体と十師族の一団に狙われた」

 

「え?…………どういう事?」

 

「ドッペルゲンガーは菜々子を俺の人質にするつもりだった。十師族は最終的にどうするつもりかは不明だが、俺の叔父堂島遼太郎と菜々子を監視、そして菜々子に接触した」

 

「そ、それは一大事だわ!!早く助けに行かないと!!」

 

「真由美さん……それはなんとかなったの」

 

「え?………ドッペルゲンガー5体をどうやって?」

 

「俺の昔の友人達がなんとかした」

 

「…………え?……どういう…………鳴上くんとりせさんの昔の友人達も……ペルソナ使いなの?」

 

「そうだ」

 

「………やっぱりそうなのね。そんな気がしてた。でも私にそんな重要なことを……」

真由美はどうやら、その事を予想していたようだが、悠には直接聞かなかった。

きっと悠自身から話してくれると………

 

「七草には話すつもりでいた。その機会が今日になってしまったが……」

 

「ううん。話してくれて嬉しい。私もようやく鳴上くんやりせさんと本当の意味で仲間になったようで」

真由美はこんな事態だったが、悠の言葉に嬉しさがこみ上げる。

 

「俺は七草の事を信用している。何れ稲羽の仲間にも会って欲しいとも」

 

「そうね。いずれね。………今はこっちの問題が先ね。十師族の一団のことね。それもなんとか対処できたのでしょ?」

 

「うん、全員捕まえたのだけど……」

りせが悠の代わりに答える。

 

「何処の家の人達だったの?」

 

「四葉家だ」

 

「よ…四葉!?」

 

「真由美さん?」

りせは真由美の驚く声に疑問を持つ。

 

「そうだ。四葉家の事や十師族の役割など詳しく教えてくれないか?」

 

「鳴上くん……四葉家は危険だわ………私も十師族の家の者だけど、四葉家は十師族の中でも異質なの」

真由美はりせと悠に四葉家の事を話し始める。

大凡、直斗との情報は同じだが、十師族の中でもパワーバランス的に一つ頭が抜きん出た存在だということ、そして、同じ十師族の間でも四葉家の実態が知られていないことを………

「だから、魔法師家は四葉家とは関わりたくないというのが本音。アンタッチャブルな家系とも言われている程に」

真由美はそう締めくくる。

 

「なるほど。弘一さんを通じても、話が出来る相手ではなさそうだ」

 

「でも、なんとかお父さんに、四葉を引きずり出すように頼んでみるわ。幸い四葉の工作員も捕縛しているようだし」

真由美も四葉との交渉は父、弘一でも困難ではないかと思っていたが、四葉の諜報員を捕縛しているのであれば、交渉の余地があるのではないかと……

ただ、真由美はまだ、知らされていない。既にその諜報員の記憶を消して放逐していることを………

 

「……いや、………七草、四葉も魔法協会の一員なのだな。しかも政府とも関わりがあると」

 

「そうよ……一応ね」

 

「………弘一さんには別の事を頼みたい………」

悠は何かを考え、真由美に四葉との交渉以外の事を頼もうとする。

 

「え?……」

 

「俺は今から、四葉家当主……四葉真夜に直に会って話す。その後の対応で弘一さんに頼みたいことがある」

悠がこんな突拍子もない事を言い出した。

 

「鳴上くん!!ダメよ!!四葉に行くなんて!!危険過ぎる!!」

真由美はそれを聞いた瞬間、悠を必死に止めようとする。

 

「……七草、別に俺は戦いに行くわけじゃない。話し合いに行くだけだ」

 

「それでもよ!何を考えているかわからないような相手よ!絶対ダメよ!!」

 

「……七草…ごめん。今回ばかりは多少無茶でもやる。家族や友人を害する危険性のある相手を放置する訳にはいかない。………俺の周りの人が傷つく事は看過できない。それは七草が狙われても同じことだ。………敵意や害意が無い平和に暮らしている幼い菜々子を…………」

 

「な……鳴上くん…………それでも!私は反対よ!!りせさんも鳴上くんを止めて!!」

真由美は悠の何時も冷静な口調が崩れ、苦しみを吐き出すようなうめき声に似たその声色に驚きながらも悠を止めようとする。

 

「……真由美さん。ごめんなさい。私は悠先輩を止められない。私も悠先輩と同じ気持ちだから………何が何だか分からないうちに一方的に虐げられ害される人の気持ちがわからない人達を放置出来ない。しかも菜々子ちゃんを狙うなんて………もう、二度と………あんな気持ちは」

悠やりせ、稲羽の自称特別捜査隊の皆は、一度手痛い目に遭っている。

あの時は、菜々子の死という最悪の結末になりかけたのだ。

 

「鳴上くん…りせさん……………わかったわ。でも早まらないでね。飽く迄も話し合いに行くんだから………後の対処はお父さんに何が何でもやってもらうように頼むわ。それと私も一緒に………何も出来ないかも知れないけど、私が知らないところで鳴上くんやりせさんが苦しむのは嫌よ」

 

「七草…助かる……早ければ早いほど良い。俺は今から四葉家に向かう。七草はりせと通信しつつサポートを頼む」

 

 

この後すぐに、真由美は悠の自宅マンションに駆けつける。

りせも、ガードにバレないように自宅から抜け出し、悠のマンションに向かう。

リーナも何もわからない内に悠のマンションに呼び出されたのだが………

 

悠は一人、既に電車を使って……四葉家のある長野と山梨の県境の最寄りの駅に向かっていた。

 




悠の四葉行き決定。




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