誤字脱字報告ありがとうございます。
賛否はあろうかと思いますが、こういう展開になりました。
黒羽貢は目を覚ます。
気がつくと、見覚えが無い山中で倒れていたのだ。
しかも、自分の息子、娘と黒羽一党の諜報員と共に………
頭はボーッとし、体はダルいが、体を起こし、気を失っている全員の状態を確認して回る。
気を失ってはいるが、目立った外傷などはないようだった。
取りあえずはホッと息を吐き、思考を巡らせる。
(全員息はあるな。しかし、どういうことだ?……催眠ガスか、精神魔法か、何らかの罠に集団で嵌まった可能性があるな………しかし敵は?)
貢は警戒しながら周りの様子を伺うが、どうやら周囲には自分たち以外に人の気配は無い……
再度未だ意識を失っている女装をしたままの息子文弥と娘亜夜子に、違和感を覚える。
顔つきに幼さが若干消えている様に見える。さらに背まで伸びているように見えるのだ。
(ん?……目の錯覚か?いや………)
貢は状況がわからず、取り敢えず情報と状況の確認の為、黒羽家へ連絡しようと携帯端末を取り出すが………何時も使用していたものとは異なるものだった。
(……どういう事だ?誰かのものと間違えたのか?いや、たしかにさっきまでは何時もの物を………)
画面の表示をみて再度驚く。
そこには【2096年2月12日】と表示されていたのだ。
貢の記憶では今は2095年2月12日はずだ………
(表示間違いか?……いや!?)
そして、貢は記憶を思い起こす。
2095年2月12日午前中にとある仕事の報告を四葉本家の四葉真夜に直接行って、自宅に帰る途中だったはずだ。
それは僅かな部下を引き連れてだ。
今、ここには黒羽の実に4分の3の人数が集まり気絶している。
更に文弥や亜夜子は同行していない。平日で中学校に通っているはずだからだ。
貢は珍しく混乱をきたす。
黒羽家に慌てて連絡を付けると更に混乱する。
今は2096年2月12日だったのだ。
しかも、稲羽市のとある人物の監視任務に入ったばっかりだと言うことなのだ。
携帯端末のGPSを起動させ確認すると………稲羽市の外れの山中をさす…………
貢は全身冷や汗が吹きでる。
貢は今までにない焦燥感と恐怖にとらわれる。
(まずい!まずいぞこれは………直ちにこの場を離れなければ!!)
貢は部下たちを叩き起こし自らは娘を、部下に息子をおぶらせ、直ちにこの場を離れ、全力で稲羽市から撤退したのだった。
時を同じくして、悠は四葉本家へと単独で向かっていた。
最寄りの駅まで電車で向かっているのだ。
少し前……悠は稲羽のみんなから、ドッペルゲンガーと黒羽一党が菜々子の拉致または監視が目的で現れ、それらを撃退し対処したことを連絡を受けたのだ。
そして、当面の問題は黒羽一党の大本である四葉家の動向である。
マリーからの黒羽貢らの断片的な記憶の情報と真由美からの四葉家についての情報から、かなり危険な相手だと判明。特にマリーからの黒羽貢の断片的記憶の情報では、暗殺なども平然と行っていたようだ。
四葉家は目的のためならば手段を選ばない……法治国家である日本の中で、それこそ非合法な手を堂々と使ってまでも…………
悠は叔父の遼太郎や従姉妹の菜々子が狙われることは予想していたが、これ程大物でとんでもない集団が現れたことに少々面食らう。
悠は稲羽のみんなからの報告を受けた当初は、ドッペルゲンガー対策室や七草弘一に協力を求め、自分の親族に手を出さないようにと交渉や圧力をかけて貰う予定で、真由美に相談したのだが、真由美の話から、そんな事に応じるような連中ではないことがわかった。国や軍、政財界にも多大な影響を及ぼしており、内部協力者も多数いるらしいことも………
悠は思考を巡らせる。
相手は大物だ。しかも暗殺などの非合法な手段も辞さない様な集団だ。
これ以上、菜々子や遼太郎……そして、稲羽の皆んなを危険な目に遭わすわけにはいかない。
悠は深雪や達也の顔を思い起こす。
直斗はこの四葉当主の血縁である二人を危険視していたが、悠にはそう思えなかった。
しかし、今回の件で、敵対する可能性がでてくるのだ。二人が当主の命令にそむけない状況であったならば………
四葉当主との間に挟まれ、嘆き悲しむ深雪は……見たくはない。
(菜々子に二度とあの様な目には遭わせない……稲羽のみんなも叔父さんも………深雪も達也も……なぜだ!誰もこんな事は望んではいない!)
悠は胸の中で怒りがこみ上げるのを必死に抑えていた。
黒羽に命令を下した四葉家当主に会うという結論をだしたのだ。
しかも、なるべく早くに……、達也や深雪に命令がくだされる前に………
そして、悠は家を出た。
真由美は悠の自宅マンションに急ぎ向かう。
りせも自宅からガードを巻き、悠の家へ。
りせから連絡を受けたリーナはわけが分からない内に悠の自宅に呼ばれる。
「卑劣な!!私も悠と一緒に戦うわ!!アンタッチャブルが何よ!!四葉が何よ!!」
リーナはりせと真由美にあらましを聞き、激怒する。
「落ち着いて、リーナさん……鳴上くんは何も戦いに行くわけではないわ」
「悠一人で行かすなんて!!どうしてよ!!」
真由美がリーナを宥めるが、収まらない。
「リーナ……悠先輩…………怒ってた。あんな悠先輩を見たのは過去一回だけ、従姉妹が菜々子ちゃんが狙われたってこともあるけど、それだけじゃない。四葉家のやりようにも………皆が理不尽に狙われる事にも………そして自分の行動がこんな事に………皆に迷惑をかけたと思ってる。自分に怒ってる………」
「悠が悪いわけないじゃない!!」
「でも悠先輩はそう思ってる……それが悠先輩…………」
りせは俯き呻くようにそう言った。
「鳴上くん……」
「悠先輩は……皆を守るつもり……深雪や達也も………」
「悠……優しすぎるよ」
「だから、私は自分が出来ることをする!悠先輩を全力でサポートするの!だから、真由美さん!リーナ!手伝って!!」
りせは目を見開き立ち上がり宣言する。
「りせさんわかったわ!」
「りせ任せて!…………でも、私達は具体的に何をすればいいの?」
真由美もリーナもそれに答えるが、リーナはりせに何をすればいいか聞く。
確かに、遠く離れた地に居る悠のサポートなどりせにしか出来ない代物だ。
「ヒミコで情報収拾はできるけど、私自身の知識が不足してるの、魔法の事とか、魔法師の家の事情とか政治的な事とか……軍や軍備の事とか………だから、その時々で教えてくれたら助かるの」
りせは飽く迄も一般人だ。このへんの知識はまるで無いのと一緒だ。
「そうなのね……確かに鳴上くんもその辺の事は最初は全然知らなかったようだし」
「魔法や軍や軍備のことだったら任せてりせ!」
「うん。助かっちゃう」
「でも、りせさんの捜索範囲はたしか、20km前後ぐらいだったんじゃ、四葉本拠の甲府の方までは届かないわ」
「へへーん!私も強くなってるのよ!真由美さん!」
「……まさか、捜索範囲がそれ以上広がるの?」
「人工衛星と成層圏プラットフォームを利用することで、捜査範囲が広まっちゃいました!!」
「えええ??」
「ちょ、ちょっとりせ!どういう事!!」
「どういうことって、人工衛星をジャックします。人工衛星のカメラなどを利用して、その場所を映します。そこからエネミーサーチとアナライズをかけます。ほら出来た!」
りせはあっけらかんと説明する。
「……………………」
「……………………」
「あれ?二人共何黙ってるの?……結構すごくない?」
「りせ…………人工衛星をジャックって何?どうしたらそんな事が出来るの?そこのカメラを利用してって………………」
「り、りせさん………結構どころ騒ぎじゃないわ……………下手をすると世界中の情報がりせさんの手に………………」
二人はりせの口からあまりの驚愕な事が語られ思考が止まっていたが、ようやく動き出し、ゆっくりとした口調で話し始める。
「世界中って大げさな、そんな事を一気にしたら頭がパンクしちゃうわ。前も日本全域を一気にサーチしようとしたら頭がシューって。だから範囲限定ね。うーん、人工衛星から映る30~40km範囲だったら、エネミーサーチとアナライズ可能かな?これでも慣れるのに結構苦労したんだから!でも人口が多い所は厳しいかも…………コウゼオンに転生したら、もうちょっと出来るかもだけど、疲労度が半端ないから」
りせはさらっとそんな事を言ってしまう。
コウゼオンとはりせのペルソナ、ヒミコの最終形態だ。りせのヒミコは後2段階バージョンアップ出来る。
カンゼオンと最終形態コウゼオン……………いわゆる観音菩薩と光世音菩薩だ。
仏教系のトップが知ったら、間違いなく腰が砕けるほどの事実だ。
「………………それって、世界中どこでも見れるって言ってるのと同じことよね」
「………………りせさん………あの、なんて言ったらいいのかしら……あなたに誰も逆らえない気がする」
二人共顔面蒼白だ。
「えーー?そんな事どうだっていいの!今は悠先輩!二人共もっと近づいて!」
りせはソファーの真ん中に座り、真由美とリーナを左右に抱き寄せる。
「ちょ!」
「なに?」
「ペルソナ!ヒミコ来て!」
ヒミコがりせの後ろに現れ、ヘッドマウントディスプレーをりせに被せる。真由美とリーナもヒミコの放つオーラに包み込まれる。
「いっくよーー!人工衛星ジャック!そ・れ・で・は悠先輩は今は何処かな!!…………居た!悠先輩!」
『りせか……』
悠の頭の中に直接りせの声がする。
りせは人工衛星を通して悠の居場所を特定し、テレパスで会話をしたのだ。
「鳴上くん?」
「悠?」
真由美とリーナにも悠の声が聞こえる。
『七草とリーナの声もするどういう事だ?』
「うん!真由美さんとリーナをヒミコの領域内に入れて、リンクしたの!」
りせのテレパスは遠方に対しては1対1が基本となる。
発信側のりせの声は同時複数者に対して届くが、帰ってくる声はりせだけに届くからだ。
こうして、りせとくっつくことで、ヒミコの領域に内に踏み入れたことになり、限定的にリンクした状態となる。
『な、なるほど。……リーナごめん。話すのが後になってしまった』
悠はどんどん、りせがヒミコの能力を応用して力をつけていく事に冷や汗が出る思いをする。
そして、事前にこの事を相談しなかったリーナに謝る。
「悠、気にしないで、本当は悠と一緒に行きたかったけどね」
「悠先輩、これでみんなの声が届くんだから、100人力でしょ?」
『ああ、助かる。りせ30分後には最寄りの駅につく。そこからナビを頼む』
「任せて悠先輩!また後でね!」
ここで悠とのテレパスを終了させる。
「テレパス……改めて使うと凄い能力ね」
「りせは平然としてるけど、これだけでも十分特殊能力者よ」
「じゃあ、先に!四葉家本家っと……マリーちゃんの情報だとこの辺かな?発見!!………ん?でもなんか結界みたいなのが張ってあるけど…………これは何かな?ヒミコ!調べてみて!」
「えええ??何これ、衛星映像……360度に広がる……文字がえ??ええなにこれ?頭が……」
「ううううっ、気持ち悪い何、頭に情報が一杯入ってくる……」
りせの両隣にくっついていたリーナと真由美が苦しみだす。
「あれ?……ごめん!二人にもヒミコの情報が行っちゃった?」
りせは一度、ヒミコのリンクを切る。
「り…りせさん。あんな情報量を一気に処理してたの?」
「りせ……もしかして、脳内の演算能力が凄まじく高くない?」
どうやら、二人にヒミコが今検索している映像や各種情報が流れ込んだようだ。
「え?……そう言えばそうかも、最初はそんなでもなかったの。『あっちが危ない』とか、『でっかい魔法がくる』とか大雑把な情報しか無かったんだけど。だんだん慣れてきて、もっとみんなの役に立ちたいと思っていろいろやってたら、正確な情報とか映像とか分析とかまで出来ちゃって、ヒミコもどんどんいろんな事を覚えちゃったの……今は、ヒミコの方が頑張ってくれてるかな?私の頭のほうが追いつかなくなっちゃったかも!」
「………りせ、もし現代魔法が使えたら、間違いなく戦略級魔法が使える演算能力を持ってるわね」
「………りせさんはもしかして……自覚が無い?」
リーナと真由美はあっけらかんとそんな事を言うりせに、驚くやら呆れるやらの表情を繰り返していた。
「みんなにも悠先輩の勇姿を見てほしかったけど………、ヒミコ、限定的に悠先輩周りの映像とかみんなに見せること出来るかな?」
すると、リビング正面にある大型テレビが勝手に作動し、映像を映し出す。これはりせの目線の映像だ。
「おお!流石ヒミコ!やるぅ!」
「…………なんでもありね」
「そ、そうね」
もはや二人は苦笑するしか無かった。
その頃、四葉本家では、当主である四葉真夜の下に、黒羽貢から報告が上がっていたが………全く要領が得られなかった。
そして、貢から秘匿回線で真夜の自室に直接連絡が来る。
『ご当主、いや従姉妹殿。お送りした報告書は常軌を逸しているように見えるが事実だ!稲羽市……、いや、この件に関わるのは危険だ』
「そう言われましても、貢さん?最初から話して頂けませんか?」
『説明も何も、気がついたら1年経過していたんだ。ただ、家の者の説明では1日前に稲羽市に諜報のために出動しているんだが……全く記憶に無い』
貢は普段真夜に対して、慇懃すぎるぐらいの敬語を使うのだが……動揺が隠しきれず言葉が荒れている。
「落ち着いて下さいまし、あなたらしくありませんわよ」
『申し訳ない……結果から申しますと、昨日から稲羽市に諜報活動に向かった私達42名は全員記憶を失いました。亜夜子と文弥は過去3ヶ月間。私も含め残りは1年間の記憶が全くありません。自分でも信じられず。この一年間の活動記録や自筆と思われるメモなども確認いたしましたが、まるで身に覚えがありません』
「………貢さんは精神感応系の魔法で記憶を奪われたと……ならば記憶領域にその痕跡が残るはずですが」
『これ程完璧な消去はありえません。一部分の記憶だけをこうもなくすなど、他の精神障害や運動障害、機能障害を起こしてもおかしくありませんが、全くその気配がありません』
「そうですわね。そこまで完璧な魔法は聞いたこともありません。どういう事かしら……しかも全員…」
『ご当主様……我々が受けた命令先である稲羽市の堂島親子とは何者ですか、命令書の記録はありますが……』
「……一般人のはずです。堂島遼太郎の甥である鳴上悠の身辺を探り、何らかの情報とその親子が有効活用できないかを探ってもらう予定だったのですが………」
『鳴上悠については付随して記録にありました。ペルソナ使いという特殊能力者だと……もしや、堂島親子もその特殊能力者では……それで我々が返り討ちにあい、記憶を消された……いや、一年間だけをどうやって?』
貢は焦燥感にかられていた。かつてこの様な事態に陥ったことが無かったからだ。いや、あろうはずもない。
「………貢さん程の方が返り討ちにされる。益々興味が湧いてきましたわ」
『ご当主様!尋常じゃありません!今はこの程度ですんでいるだけかも知れません。相手がなにかもわかりません。ここは一度手を引くことを上申します』
「……どうしましょうか」
真夜は考える仕草をする。
そこで、真夜の自室に扉をノックする音が響く。
「葉山です。何者かがこの村に入り、ここに向かっているようです」
………って今回で結論でませんでしたね。
次回が結論です。