ペルソナ使い鳴上悠と魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

こんな感じになり、ようやく、稲羽VS四葉編は終わりです。




第四十五話 七草家と司波家の困惑

2月13日(日)9:00

 

悠は七草家に訪れていた。

今、応接間では、疲れ切った顔をした七草家当主七草弘一が悠の対面に座り、弘一の隣に早朝に呼び出された長男智一、悠の隣には真由美が座る。

 

「……鳴上くん。先日……いや、今日の未明だな。真由美から話は聞いた。………事実確認は取りようがないが、それが真実ならば………とんでもないことをしたな。君は十師族の一角を潰したのだ。しかも単独でだ。下手をすると全魔法師を敵に回すことになってもおかしくない……」

弘一は疲れ切った顔で話す。

弘一は真由美からもたらされた話を聞いて、その場で眩暈に襲われ、膝をついたという。

弘一自身が事の真偽を探るため、情報を集めだしたのだが、そんな情報は一切なかった。

しかし、鳴上悠が虚言でそんなことを言う青年ではないことは弘一自身、感じていた。

色々と思考を巡らせているうちに、一睡もできずに朝を迎え、今に至る。

 

「父さんそれはどういうことですか?」

父弘一の意味深な話に智一はいぶかし気な顔をする。

 

「鳴上くん、智一にはまだ何も知らせていない。私も君の口から事実を聞きたいのだがいいかね?」

 

「わかりました。昨日夜半、四葉家当主四葉真夜さんとの話し合いに行き、勝負を挑まれました。それで、四葉家本家を壊してしまいました」

悠はいつも通りの感じで簡単に説明をする。

 

「……はぁあ?」

智一は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

 

「………なぜだ?なぜそんなことになった鳴上くん……君はもっと冷静な判断ができる青年だと思っていたのだが」

弘一は疲れ切った顔にさらにしわを寄せる。

 

「四葉家の家人が俺の親戚に対し、監視、接触を図りました。その事をやめていただきたくて、話し合いに赴いたのですが、四葉真夜さんに魔法師らしくということで勝負を挑まれ、致し方なく」

これだけを聞くと、そんなに大したことではない様に聞こえるが、内容は凄まじいものだ。

 

「………あの四葉家が消滅……か」

弘一はソファーに体を投げ出すように、座りなおす。

弘一は四葉家が真夜が悠に勧誘などのちょっかいをかけるだろうことはある程度予想していた。そしてそれが十中八九失敗するだろうことも……

但し、このような大それた結果になる等ということは微塵も考えていなかったのだ。

アンタッチャブル四葉と世界から恐れられ、日本最強の魔法師族として君臨していた四葉家がたった一人の青年に四葉家の中心である本家に迫られ、あまつさえそのシンボルである本家を消滅させられたのだ。

そして、その青年が目の前にいるのだ。無傷で普段と変わらず……そんな悠を目の前に、弘一は話の内容を精査やあれこれと深く考えることをやめた。今は悠の話をそのまま聞くことに徹することにしたのだ。そうでもしないと、精神が正常に保てないのだろう。

 

「四葉家は消滅してません。人的被害は出ていないです。屋敷が壊れただけです」

 

「………本家を破壊されたのだろう。それはほぼ同義だ。実質四葉の力は相当落ちる。四葉家を支えてきたスポンサーや財界や軍関係者は四葉を見限るかもしれん」

弘一は四葉が日本の至る所にパイプを持っていることを知っていた。

 

「鳴上くん……その君の親族は大丈夫だったのかい?」

智一は悠にそう聞いた。四葉に狙われてただで済むはずがないとの思いで聞いたのだ。

 

「無事です。あの地にはよそ者を嫌う風習があります。いえ、悪意を持った人間は排除されます」

 

「……どういうことだね鳴上くん」

 

「……結界とはご存知ですか?魔法的な意味ではなく、神道や民間信仰で言う所の結界です」

 

「……よくは知らないが……それとどう関係するのだね」

 

「そもそも、結界とは神と人、人と人にならざる者の住み分けの意味もありました。無暗にその結界に立ち入ると天罰や呪いなどにかかると言われています。……その風習は今も八十稲羽という土地に根づいています。……八十という名を冠している時点で、神々が降臨した地であることを示しています。今思えばそういう土地なのでしょう。そういう場所には、守り人や神そのものが鎮座しているものです」

悠は具体的な話をせず、八十稲羽は何者かに守られていることを曖昧に答えた。

もちろん。守り人は稲羽の仲間の事であり、鎮座している神とはマリーの事だが、この話し方では誰が聞いてもわからないだろう。

 

「!?………どっちに捉えればいいのか………いずれにしろ鳴上くん。私は聞きたくはなかったよ。そんな話は………私の価値観がすべて壊される思いだ」

弘一が悠にそう言った顔は完全に血の気が引いていた。

さらに精神的に追い込まれることになる。先ほど割り切ったはずの心にさらに緊張が走っていた。

弘一は悠の言葉で二つの可能性を思い浮かべていた。

一つは、悠や桐条美鶴、宮内庁長官が度々話を出してる神、いや神と名乗る存在だ。それが稲羽に存在するということ。

もう一つは、日本で認知されていない守り人と言われる強力な力を持った人間が存在するであろう可能性だ。下手をすると悠の親族自体がそれの可能性がある。その守り人がペルソナ使いである可能性が高いと……

弘一にこの答えを悠に求める気力もなかった。できるならば知らない方がよかったと……

さらに、弘一自身、一つ間違えば、四葉と同じ過ちを犯していた可能性があったことに背中と首筋が冷たくなっていた。

 

「どういうことですか父さん?」

 

「智一……まだ、知らなくていい。いや知らない方がいい。日本に本当に触れてはならない土地があるということだ……」

弘一は今にも寝込みそうな勢いで……言葉に力が無い。

 

「………」

そんな父に心配そうな顔をみせる智一。

 

 

「七草さんには是非お願いしたいことがあります」

そこで悠から本題を切り出す。

 

「……その前にだ。君がこうやって無事でいるということは、四葉真夜殿と何らかの約定を取り付けてきたのではないか?」

弘一は気力を振り絞り、姿勢を元に戻す。

ここからが、実質を伴う話だからだ。

 

「はいその通りです。お願いしたいこともそれに関わりがあります。四葉家本家崩壊は、大規模魔法実験の失敗ということで、政府関連や各所関係者に報告するそうです」

 

「妥当だな……君がやったなど、君の力を知ってるものでなければ誰も信じられないだろう。その方がまだ四葉のメンツが保たれる」

さらに言うと、四葉本家消失の異変に気が付いたものは居ない。

そもそも、四葉本家自体どこにあるのかも、ごく一部の人間しか知らない上に、衛星や成層圏プラットフォームからも映像監視ができないように魔法や物理的、内部人為的に、偽装や細工をされていた。

さらに、悠の『シヴァ』が放った『プララヤ』はそもそも熱反応や核反応などを示さないため、爆発なども引き起こしていない。分解魔法とも違い、物質を分子レベルまで分解し、その分子で形成される水や気体などが発生するわけでもない。まさしく物質を無に帰す術儀なのだ。まさに、そこにあったものが、次の瞬間に無になるのだ。

とても、現代魔法で解析するなど不可能な術儀であった。

 

「四葉真夜さんとは和解しました。今後は、俺に協力してくれるそうです」

 

「………裏があるのではないかね?」

四葉の今迄のあり様を思えば、弘一がそう思っても仕方がない事だ。

 

「大丈夫でしょう」

悠は自信をもって言う。

悠はあの時の真夜に絆をたしかに感じたからだ。

あんなことをやりあった仲だというのにだ。

真夜自身に悠を如何にかしようという意思はすでに無い。その逆はあったとしても……

 

「……四葉はもう鳴上くんに手を出さないと……」

 

「ドッペルゲンガー対策室にも協力してくれるそうです」

 

「………な!?……どういうことだね!!」

弘一は目を大きくし思わず立ち上がる。

四葉家が協力すると言ってきたのだ。

それは四葉家が七草家や九島家の下で協力すると言ったに等しい事なのだ。

あの四葉が、四葉真夜が他家の下で動くなど、そんなことはあり得ない話であった。

弘一が知っている四葉真夜であれば、ほぼ役目も上下関係も決まったドッペルゲンガー対策室に協力するなどと、今更入ったところで、利することはほぼない状況だ。そんな状況で絶対にそんなことは行わないと……

 

「四葉守護地域でのドッペルゲンガーの動きに関して随時の報告と、数人そちらに預けると言ってましたが……」

 

「あ……ありえない」

もはや弘一は茫然自失といった感じだ。

弘一には理解はできないだろう。

弘一は悠が四葉本家を潰したことで、四葉のメンツとプライドを盾に交渉をしてきたと判断していた。

しかし、実際に悠が行ったのは、四葉真夜の心を落としたのだ。

 

 

「お父さん。大丈夫?……鳴上くん。ちょっと休憩した方がいいんじゃないかしら」

黙って様子を見守ってきた真由美だが、さすがにそんな父弘一を見て心配をする。こんな弘一の姿を今迄見たことがなかったのだ。

 

「すみません。話を急ぎすぎました」

 

「いや……、ちょっと……すまない。一息だけつかせてくれ」

弘一は一息付き冷静に考えをまとめる。

きっと四葉には裏があると……この申し出も裏があるに決まっていると……大勢がほぼ決まったドッペルゲンガー対策室でも何かとんでもない事を考えていると……

 

その間、智一は家人を呼び、紅茶とケーキを要求する。弘一には白湯を出すようにと……

 

 

 

「すまない。続けてくれ」

弘一は家人がだした白湯を飲み干し、ソファーに深く座る。

 

「……真夜さんは近いうちに、魔法協会とドッペルゲンガー対策室に挨拶に行くと、言ってましたが……」

 

「……あの四葉殿が」

弘一はもはや考えるのが馬鹿らしくなってきていた。

固定概念を悉く壊すような話が次から次へと出てくるのだ。

めったに外に出ない真夜本人がこんなことで動くなんてことは、今までにはなかったのだ。

 

「お願いしたい事は、俺が四葉家本家を潰したことを、噂程度で流していただきたいんです。それほど信憑性がなくてもいいもので」

 

「……なるほど、君の親族に手を出さないようにとのけん制か……」

実は悠が四葉本家を消滅させたという噂が、上層部でまことしやかに囁かれば、滅多なことで悠たちに手を出そうと思う輩は現れないからだ。

 

「それもありますが……手を出した方が次はどんな目に遭うか……」

悠は至極真面目にそんなことを考えていた。

悠は自宅に帰った後、りせのヒミコ通信で稲羽のみんなに報告したのだが……

悠らしいと言ってくれるのだが、やり方が優しすぎるとの意見が大半だったのだ。

改めて悠は、彼女らのストッパー役の陽介に感謝するのであった。

 

「…………」

弘一は考えるのをやめた。

 

 

しばらく沈黙が続くのだが……

 

 

「難しいですか?」

悠が弘一に答えを聞き返す。

別に弘一にとって悠の頼み事は苦でもない。噂の操作など七草家に取ってさほど困難な事ではないのだ。

ただ、親族に手を出させない理由についてだった……

 

「い、……いや、そんなことはない。直ぐにでも手配可能だ。それは受けよう」

 

「助かります」

 

こうして、七草家と悠との話し合いは終わる。

 

 

悠と真由美が応接間から出ていき、七草弘一と智一は残っていた。

弘一はソファーにそのまま寝込む勢いで姿勢を寝かす。

 

悠は七草家の車で自宅まで送り届けられる。

真由美は珍しく、悠とは別の車に乗り、何やら慌てて、デパートに買い物に行ったとか……その後しばらく普段は入ることがないキッチンに籠る真由美の姿が見られるのだが……

 

 

しばらくの沈黙の後。

「……智一、今日、彼と話した内容は絶対に漏らすな。孝次郎にもだ」

 

「父さん。彼が話した内容は半分も理解が及びませんでしたが……」

 

「今はそれでいい。出来れば、私一人が墓場まで持っていきたい内容だが……そうはいかないだろう」

 

「……そこまでですか」

 

「智一、現当主として、次期当主のお前に言っておく。鳴上悠は絶対に敵に回すな!他の十師族を敵に回してもだ!必ず友好関係を保て!彼が普通の生活を今後送るとしてもだ!………できれば、真由美と彼がくっ付いてくれれば、いいのだが………」

弘一は、最後の気力を振り絞って、力強く智一に言った後……そのまま首を横にし、意識を手放した。

 

 

 

 

 

時を同じくして司波家では……

 

真夜から緊急回線でのコールが入り、リビングの大きなテレビで相互通信を行っていた。

 

『深雪さん。達也さん。おはようございます。ご機嫌はいかがですか?』

 

「ご当主様も、一段とご機嫌が麗しゅう」

深雪はそう言って恭しく返事を返す。

達也もそれに習って、深雪の横で立って礼をする。

深雪はお世辞ではなく、真夜がいつもの作られた微笑ではなく、晴れやかな顔をしていると感じていたのだ。

 

『座ってくださいな。それと他人行儀ですよ。あなた方はわたくしの姪と甥なのですから』

 

達也の目でも、真夜がいつもと雰囲気が違い、相当機嫌がいいことがわかる。

こんな真夜を見たこともなかった。

二人はすっと、リビングのソファーに座る。

 

「叔母上、失礼だとは思いますが、本家にいらっしゃらないのですか?」

達也はあることに気が付く、真夜が映ってる場所がいつも回線をつなげるプライベートルームの風景とは別であったからだ。

 

『そうなんですの。今はわたくしのプライベートな別荘にいますわ。四葉家本家は消失しましたの』

真夜は今にも声に出して笑いそうな笑顔で驚愕の事実を言う。

 

「……なっ!?」

「……お、お兄様!いえ……あの!?」

達也と深雪はそのことを聞き、驚きを隠せないでいた。

 

『昨晩に、ものの見事に消失しましたわ。一片たりとも残ってませんわ。……あっ?残ってましたわ。芝が1平方メートル程。ふふふふっ』

何故か楽し気にそう語る真夜。

 

達也はそんなとんでもない事実を楽しそうに語る真夜を見て、一瞬気が狂ったのかとも思ったのだが……真夜に限ってあり得ないと考え直す。

 

「叔母上、よくご無事で……お怪我などは?」

 

『心配していただいたのですね。わたくしは無傷ですわ』

 

「それで、四葉家本家消失とは……大規模魔法実験でもされて、失敗でも?それとも新魔法の暴走ですか?……他の被害は?」

 

『いいえ、どちらでもないですわ……被害はそれだけですわ。人的被害はゼロですの』

 

「………皆さんご無事なのですね」

深雪はようやく、四葉家本家消失の事実から立ち直った。

 

「では……なにが?まさか敵襲ですか?」

 

『敵ではないですわ………どう言ったらいいのかしら』

 

「敵ではない?……何かの事故?いえ自然現象?」

達也は真夜の曖昧な言葉にいろいろと予測してみる。

 

『悠さん。鳴上悠さんが四葉家本家に乗り込んで跡形も無く消し飛ばしましたの!』

そう嬉しそうに語る真夜。

 

「なっ!?……」

「ふぇ?……ええ?……え?」

達也は驚きのあまり、固まってしまう。

深雪は素っ頓狂な声を上げ、理解が及ばず、しばらく何のことかわからなかったようだ。

 

 

『どうなされました?……経緯ですか?貢さんに悠さんの親族の監視を頼んでいたのですが、悟られてしまいまして、それで、鳴上さんがお話に来たのですが……魔法勝負をすることになりまして、

わたくしの惨敗でしたわ。その後に鳴上さんが四葉家本家を消滅させましたの。

わたくしが悠さんに失礼なことをしてしまったのですが……まさか、ここまでしていただけるなんて思ってもみませんでしたわ』

そんな二人の様子がおかしくも映ったのだが、そのまま話を続ける。

嬉しそうにしながらも、ちょっと恥ずかしそうに語る真夜。

 

 

「……………………」

真夜がなぜこんなことを嬉しそうに語るのかが理解できない達也。

最初は真夜の冗談かフェイクかと思ったのだが、こんな重要なことでカマをかける人ではないのだ。

これが事実ならば、鳴上悠が四葉家本家に殴り込みに行ったことは明白だ。

当主の真夜が惨敗し、四葉家本家が消滅。親族に手を出された事に相当怒っているのだろうと。

あの悠がキレた姿は想像できないが、あのペルソナの力を目の当たりにしていたため……可能だろうと判断せざる得ない。しかし、どうやって親族が狙われた事がわかり、しかも四葉家本家の場所まで突き止めて、殴り込みに行ったのかなど疑問は多数残る。

しかし……そこまでやるとは………もしかすると自分たちの事もバレて、怒りの矛先がこちらにも向かうのでは………普段温厚な人物ほどキレたら何をするか予想がつかない。

 

「……………………」

深雪はどうしても、あの温厚な悠がそんなことを仕出かすなどとはとても思えない。

それよりも、四葉が悠の怒りを買ってしまったという事実。

もしかすると、自分と四葉の関係も判明してしまい、自分も嫌われてしまうのではないかと……そっちの方が気が気で仕方がなかった。

 

 

『お二人ともどうされたのですか?……まあ、いいですわ。本題はそこじゃありませんの。……司波深雪、司波達也への四葉から現行の命令はすべて解除いたします』

真夜は沈黙を続ける二人に、こう宣言した。

 

「……ど、どういうことですか?」

達也はそう聞き返すのがやっとだった。

 

『四葉は昨日の時点で四葉本家と共に一度消滅しましたの。なので、今迄の命令や役目なども消滅しましたの。深雪さんの次期当主候補は変わりませんが、そのほかのすべての命令系統は意味をなしませんの。鳴上悠の監視はもちろんの事、その他の命令も、独立魔装大隊に所属することも解除です。もちろん達也さんのガーディアンという立場も消滅しますわ。だってガーディアンという役名は悪役みたいな名前ですもの』

 

「…………いや、それは」

達也は思考を巡らせる。四葉家が消滅ということはあり得ない。

四葉家本家がたとえ建物が消滅しようとも、人的被害はない状態だ。

四葉の予想資産や資金があれば、それを補填するくらいなんともない。

それに自分が所属してる会社であり、自分の父親が重役であるCADメーカーFLTは四葉の資金源の一つだ。四葉家本家の再興など、すぐに可能なぐらいの資金は常に有しているはずなのだ。

真夜の事だ。情報や情報網なども、本家以外にもバックアップを残しているはずだ。

今、こうやって連絡をしてる真夜のプライベート別荘なるものも、そうしたバックアップの一つだろうことは容易に想像できる。

そもそも四葉本家は資金生産を行っている施設はない。スポンサーなどから裏の仕事をこなし、資金を得ているため、四葉本家が倒壊したとしても、それらを継続することは十分可能なのだ。

なのに、真夜は四葉が消滅したと宣言した。

達也はその意図が理解できなかった。

 

そして、現行の命令系統の解除だ。

これは何を意味することなのか……まったく理解が及ばなかった。

 

 

 

「……その……あの……鳴上さんは……」

深雪のその後の言葉は…無事なのかという言葉なのだが……四葉を撃った悠の事をそのようには聞けなかった。

 

 

『深雪さん。なにかしら?悠さんは元気に今頃ご自宅で過ごしておられるのではないですか?』

 

 

「そ、そうですか」

深雪の表情は一瞬で明るくなる。

 

 

『四葉は一度消滅して、生まれ変わりますの。新生四葉ですわ。魔法師協会からの脱退も考えましたが……それはさすがに早急すぎます。軍とのかかわりは一度解消し清算。政府関係も一度解消し見直しを、スポンサー関係はすべて解消いたしますわ。なので、資金源は達也さんと龍郎さんの会社に頑張ってもらわないといけませんわね。まあ、達也さんは今までいろいろと世界に発信できる開発をしてますので、今のままでも十分四葉は成り立ちますが……』

 

 

「叔母上、性急すぎませんか、四葉のダメージはそれほど無いのでは?」

 

 

『達也さん。四葉は崩壊したのです。……鳴上悠さん。あの人はなんて人なんでしょう。まさかこのような手段で四葉を崩壊させるなんて』

そう言った真夜は、楽し気だ。

 

「……鳴上悠への報復処置は……」

達也は真剣なまなざしで聞く。

 

 

『あるわけないですわ。彼は今後の、新四葉の唯一のスポンサーとなる方ですもの。資金は全く持ってらっしゃらないから、体で払ってもらいますが……』

 

 

「な……!?鳴上悠を四葉に取り込んだのですか!!」

達也は驚くが、それならば納得がいくギリギリの範囲だ。

ただ、今までのスポンサーと鳴上悠を天秤にかけるにしては、ギャンブルすぎる選択だが……

鳴上悠を四葉に取り込めば、四葉は軍事的に強力になるからだ。他の十師族があらがえない程に………

今後、ドッペルゲンガー事件を解決すれば、鳴上悠の名とその力は政府内でもより増す。

それを見越しての事だと……

 

「叔母上様!?」

深雪は達也と別の事を考えていた。

……まさに、悠のあの引き締まった身体の肉体的な話を………

 

 

『いいえ、……分家の方々にはまだ内緒ですが……四葉真夜個人は鳴上悠に全面降伏いたしましたの……なので、わたくしが当主である期間は、悠さんの意向がわたくしを通して四葉の方針となりますわ。悠さん本人はそれほど重要な立場になったことは知りもしませんが』

真夜は今までに見せたことがない、いたずらっぽい笑顔を見せたのだ。

 

 

「な…なにを!?……何を考えているのですか叔母上!?」

これでは実質、四葉のトップは悠ということになってしまうのだ。

達也は慌てて聞き直す。

 

『わたくしの相談をいつでも好きな時に直に会って聞いてくださるって言ってくださいましたもの』

なぜかこの時の真夜の振る舞いは、恋する乙女のように見えた。

 

「………」

「………」

二人ともこんな真夜を見たことがなかった。

達也は対応に困る。深雪は良くはわからないが……いやな予感がしていた。

 

 

『新生四葉の最初の指示は、鳴上悠さんを害することは許しません。些細なこともです。外でそのような輩を発見した場合。直ちに排除。但し、法治国家である日本の法律と手続きに基づいて行ってください。これからの四葉はクリーンにいきますので……後は自由にしていただいて構いませんわ。悠さんの協力はしていただきたいですが、個人の意向にまかせます。それと、達也さん。あなたは、何気ない事でもすぐに法律の枠からはみ出しますので、くれぐれも気を付けてください。わたくしは悠さんに嫌われたくありませんの……以上です』

 

そう言って真夜は一方的に通信を終わらせる。

 

 

 

達也と深雪はしばらくソファーに座ったまま……真っ黒になったテレビの画面を茫然と眺めていた




そして、ついに来た!
あのイベント!!P4も魔法科高校もこのイベントは抜かせない!!

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