ペルソナ使い鳴上悠と魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

何故か長くなってしまった稲羽四葉編。
そして、ようやく来たこの話。
番外編もいいところですが……P4的にも魔法科高校的にも外せないお話のハズ!

ちょっと長くなりましたがどうぞ。


第四十六話 バレンタインデー前日

2月14日(月)

この日もいつもと変わらない朝を迎える鳴上悠。

目覚まし時計に頼ることなく決まった時間に起床し、いつものようにテレビでニュース番組を見ながら朝食をすませ、身支度をし、学校に向かうために家を出た。

 

ごく普通の日常風景……ここまでは。

 

 

悠は高校に向かうためいつも通り家を出て、地元の商店街を通り、駅に着く。

電車で二つ目の駅を降り、ここから斜度のある大通りを真っすぐ10分程歩くと悠が通う都立高校につくのだが……

 

駅に着くなり、悠は近隣他校の制服を着た見知らぬ女生徒からいきなり声をかけられる。

そして、要領を得ない言葉を早口で言われ、きれいにラッピングされた小箱を手渡される。

どうやら、悠にそれを受け取ってもらいたかったようだ。

悠は何やらわからないうちにその小箱を受け取ると、その女生徒は顔を赤らめ慌ててその場を去っていくのだ。

 

それが……その女生徒だけではなかった。

駅の改札を出るまでに……5人も同じような口上で、謎の小箱を渡されたのだ。

悪意が無いことは見てわかるのだが……

悠は改めて渡された小箱を訝し気に見る。

 

駅の改札を出ると……

 

さらに悠に女生徒が押し寄せてきた。

悠は他校、自校の女生徒が我先に争って必死に悠に小箱を渡そうとする。

 

そこで、悠はようやくこの事態を理解した。

今日はバレンタインデーだと……

 

悠はすっかり忘れていたのだ。

ドッペルゲンガー事件に稲羽襲撃、四葉本家崩壊など……最近の悠はそんなことも忘れるぐらい忙しい日々を過ごしていたからだ。

 

そして……駅前で女生徒達にもみくちゃにされる悠は………昨年の事を思い出す。

 

マヨナカテレビと連続殺人事件を解決し、八十神高校にまだ通っていた頃の話だ。

あの頃は悠はこれほどモテていなかった。バレンタインチョコは親しい友人からもらう程度だった。

いやモテては居たのだが、悠の周りにはりせや雪子が居たため悠の事をひそかに思っていた女生徒達はバレンタインチョコを渡せなかったのだろう。

 

悠はあの日のバレンタインデーの事を思い出す。あの苦い思い出を……

あの日、悠は放課後に女友達からバレンタインチョコを受け取り、その場で食べることになったのだ。……普通なら甘酸っぱい思い出となるイベントなのだが………彼女らのチョコは一味違う。

生チョコではなく、何かが蠢く生きたチョコ(マリー)、普通に不味いチョコ(千枝)、バースデーケーキのような大きく豪華なチョコ(雪子と天城屋旅館、合作)、ドリアンとハバネロ入りの強烈な刺激の組み合わせチョコ(りせ)……

 

家に帰ると……かわいい菜々子の手作りチョコが……見た目は怨嗟の声を上げる青白いエクトプラズムそのもの……そのチョコは悠の友人たちのアドバイスによって作られていた。

チョコに入っていたものは……千枝の意見を参考に、隠し味にコーヒー牛乳、肉が嫌いな男の子は居ないということでベーコン。りせからは個性が大事だと辛いものや甘いものを勧められるが、菜々子は大人の味を再現しようとし、苦い物として、ピーマンと青汁、酸っぱい物としてポン酢に黒酢を選択。雪子からはお魚を入れるとコクが出ると思うと言われ、冷蔵庫にあったおさかなソーセージとイカの塩辛を投入したらしい。

 

ベーコン、ピーマン、魚肉ソーセージ、イカの塩辛入り、隠し味にコーヒー牛乳、青汁、ポン酢、黒酢を入れ込んだ。不気味なエクトプラズム型チョコ……

 

悠は期待に満ちた菜々子の笑顔に負け……食し………その場で倒れた。

気が付けば朝………シャドウに食らわされた数々の呪いや術よりもすさまじい威力だったとか……

 

あの時の苦い経験が蘇ってくる。

 

 

悠は一昨日の事を思い出す。

四葉家から帰ってきたあの日、りせは悠の家から帰り際に14日(今日)の夕方以降は必ず家に居るようにと言っていた。りせはバレンタインチョコを持ってくるのだろう。

もしかすると、菜々子や稲羽の女友達からも送られてくるかもしれない。

昨年の悪夢が再来する思いだ。

特に菜々子のチョコは食べないわけにはいかない。誰を参考にしたかによるが……せめて直斗と完二あたりから意見を聞いていて作ってもらいたいものだと。

 

悠は胃薬を買って帰ることを心に決める。

 

 

悠は学校に到着するまでに、持ち切れないほどのチョコ小箱を受け取り……さらに学校では悠の下駄箱と机の上にはチョコ小箱の山が、休み時間にはひっきりなしに悠にチョコを渡す女生徒が現れる。

 

結局、悠は放課後までに、大きな紙袋4袋分のチョコを受け取る事になった。

悠はこの大量のチョコをどうしたものかと、またホワイトデーのお返しをどうしようかと考えにふける。

 

悠は商店街で胃薬と何やらお菓子の素材を買って帰る。

 

 

 

 

2月13日(日)バレンタインデー前日

七草家では……午前中に悠との四葉家についての会談を終え、弘一はその場で寝込んでしまう。

真由美はそそくさと出かけ、デパートに買い物に行き、帰ってくるなり、普段立ち入らない七草家の広々としたキッチンに籠る。

 

その様子を香澄、泉美、双子の妹達が扉の隙間から覗き見ていた。

「お姉ちゃん……キッチンで何してるんだろう?普段料理なんてしないのに」

 

「香澄ちゃん。きっとお姉さまはチョコを作られているのですよ」

 

「はぁ?お姉ちゃんがお菓子を?なんで?今まで作った事もないのに」

 

「香澄ちゃん。明日はバレンタインデーです。お姉さまも好きな方ができたということでしょう」

 

「はぁ?泉美、何言ってるんだよ!お姉ちゃんが……あっ、鳴上…悠」

 

「きっと鳴上さんにですね」

 

「くっ、……お姉ちゃんが男にチョコを!……でも、鳴上悠か……イケメンめ、しかも欠点らしい欠点が見当たらない!……料理はおいしいし、優しいし!」

 

「お父様も鳴上さんを認めてらっしゃるようですし」

 

「いくらいい奴でも!一般人だよ!……ああああ!お姉ちゃんがなんかクネクネしだした!!」

 

「しーっ、です。香澄ちゃん。お姉さまに聞こえますよ。……お姉さま、あんなに顔を赤くされて………今日もお父様と智一お兄様とお話されてたみたいですし、もしかしたら魔法科高校に在籍されていないだけで本当は魔法師なのかもしれません。それか何かのお役目を受けられてる方かもしれませんよ」

 

「……ううううっ、そんなー。お姉ちゃんが……」

 

「香澄ちゃん。ものは考えようです。もし一般人の鳴上さんがお姉さまと結婚されるとしたら」

 

「け、けけ結婚!?何言ってるんだよ泉美!」

 

「もしの話です。もし結婚されるのであれば、一般人の鳴上さんが婿として七草家に入る可能性が高いです」

 

「それがどうしたっていうんだよ!仲がいいところを見せつけられるんだーー!きっと!」

 

「鳴上さんが家に居る。……いつでも、あのおいしいお菓子やケーキが食べれるんですよ香澄ちゃん」

 

「!?……それは……でも、お姉ちゃんが……」

 

「香澄ちゃん、お姉さまはいずれ結婚されます。シスコンの香澄ちゃんが何を言おうとも。それは魔法師家の定めです。もし他の魔法師にお姉さまが嫁がれる事になると、この七草家に滅多に帰ってこられなくなります。でも……一般人の鳴上さんなら婿として……」

 

「!?………な、なるほど………どことも知らない奴よりもマシだ。でも……お姉ちゃん……」

 

「香澄ちゃん……シスコンが過ぎるとお姉さまに嫌われますよ」

 

「ううううぅ……お姉ちゃん、鼻歌まで歌い出した……またクネクネして……うううううぅ」

納得出来ない香澄は悠を思い顔を赤らめクネクネしながらチョコを作る真由美を見て涙する。

そんな香澄に、泉美はため息を吐いていた。

 

 

 

時を同じくして、司波家では……

達也と深雪は、四葉家当主四葉真夜の口から衝撃の事実を聞いたばかりだった。

四葉家本家消滅。

四葉家の解散。

そして新生四葉家の方針。

さらに、それらすべてに鳴上悠が関わっている事を聞く。

 

達也は真夜との通信を終え、一時は茫然としていたが、リビングのソファーに座ったまま思考を再開させる。

四葉家本家を消滅させた人物は悠なのは確定だろう。

その行動力と無茶苦茶ぶりには驚いたが、親族を狙われ、その報復なのだろう事と。人的被害が出てないのは、なんとも悠らしいと……

しかし……解せないのは四葉の解散と新生四葉についてだ。

四葉家本家の解散を決定させたのは間違いなく四葉真夜本人だ。四葉自身の力は四葉家本家が物理的に消滅しようと、再起不能に陥るようなことはない。多少影響は受けるが、これまで通り活動ができるはずだ。

なのに、真夜は四葉を解散し、新生四葉を立ち上げると宣言したのだ。

その真夜本人の様子がすこぶるおかしい。

今迄、自分たちに見せたことがない表情や仕草、そして言い回しを使ってくるのだ。

真夜の微笑や仕草は傍から見れば美しく映るが、何か人形的、機械的に作られたような、そんな印象を受けるものだった。

しかし、今日の真夜はどうだ。

その笑顔や仕草に生の感情がありありと伝わってくるのだ。

四葉家本家が消滅したというのに。一時とはいえ四葉家を解散させたというのに。何やら楽しそうなのだ。

しかも、四葉家本家を消滅させ、このような事態のきっかけを作った張本人である鳴上悠を語る真夜からは、殺意も敵意すら感じない。それどころか、好意的な印象まで受けるのだ。

 

達也がいくら思考を巡らせても答えは出てこない。

ただ、わかってる事は、鳴上悠の行動がきっかけで、四葉家は消滅し、新しい四葉が誕生するということだ。

 

そして、その新生四葉についても、いままでの方針とは180度異なるものだった。

それがもし本当であれば、達也は四葉を警戒し敵視せずに済むのだ。

 

達也は、四葉家に従順に従いながらも、反抗の機会を伺っていた。

四葉は闇深い組織であり、自分も深雪すらも四葉の道具としか見ていない。このまま行くと、自分たちは単なる駒となり、四葉という組織の歯車にさせられ、その生涯を過ごすことになる。

達也は特に深雪がその長になることを憂いていた。深雪にあの闇を負わすことはできないと……

達也は四葉家からの脱却の機会を伺っていたのだ。

そのために、達也は厳しい修練を行い力を付け、新しい魔法を開発し、軍や政府にも自分の有用性をアピールし協力して来たのだ。

少なくとも、単独で四葉真夜を抹殺できるだけの力を付けたいと………

単なる逃亡では、いずれ四葉の組織力で追いつかれ消される。

自分たちの自由を得るためには、四葉という組織を崩壊させなければならない、その為には四葉真夜とは必ず命を懸けた戦いをしなければならないと………その後は自分の有用性を認めさせた軍や政府などから自分達の立場の保証を受けられればと……そこまで考えていたのだ。

 

真夜が語る新生四葉の方針が本当であれば……それがすべて水泡と帰すのだ。

今日の真夜は言う。自由に行動していいと

今日の真夜は言う。四葉は裏稼業から足を洗うと

今日の真夜は言う。技術開発で稼げと

今日の真夜は言う。四葉はクリーンな組織となると……

 

達也はもはや四葉を脱却する理由はなくなったのだ。

深雪が当主となるのが嫌だと言えば別だが……真夜が語るクリーンな四葉であれば、深雪が当主となってもその心の負担は少ないだろう。逆に深雪は良い立場と立ち位置を手に入れられる可能性が高くなるのだ。

真夜の口ぶりからすると、過去のしがらみや闇の部分の清算は真夜の代ですべて行うつもりだ。

 

しかも、自分の将来めざしていた魔工技師として、今後も働けというのだ。

 

……達也の憂いはすべてとはいかないが、かなり解消されるのだ。自分たちが四葉と対峙し打ち破った後の状況に比べるまでもなく。しかも四葉と対峙するリスク自体がなくなる。

 

まさか、こんな事態になるとは予想外もいいところだ。

自分たち兄妹(達也と深雪)にとって、考えられる最良の方向性だろうと、まるで自分たちの都合に合わせたかのようだと……

 

四葉家本家の消滅に四葉真夜の急変。四葉家の解散に新生。

 

たった一日でこれほどの事を成したのは、間違いなく鳴上悠がきっかけなのだ。

 

 

……達也は思考する。

そもそも、鳴上悠と四葉家、いや四葉真夜と何があったのか。

四葉真夜が、鳴上悠の親族に監視者を送る理由はわかる。

そもそも、なぜその監視者がバレたのか、鳴上悠はこの東京に居たはずだ。

鳴上悠の親族は確か中部地方……それなのにだ。

四葉の監視者はいずれも手練れのはず。

それがバレることは普通では考えられない。

 

それがよしんばバレたとしよう。

 

どうやって四葉家本家の位置を特定したかだ。

監視者が捕まったとして、拷問などでは吐かないだろう。

何か特殊な魔法を使った可能性がある。それにしたって、そこに鳴上悠がいなければ成立しない話だ。

 

その後の四葉家本家襲撃だ。

普通はアンタッチャブル四葉と恐れられている魔窟にも等しい四葉家本家を襲撃するなどということ自体が、頭のネジがいくつか吹っ飛んでいるとしか思えない。

しかし、ドッペルゲンガーによる第一高校襲撃事件の際見た悠の判断力の速さは尋常じゃなかったことを思い出す。さらにあのホーンドサーペントを倒したペルソナの力を……

悠のペルソナの力ならば、並みの魔法師ならば手も足も出ないだろう。……悠本人の行動力と胆力も凄まじいものがあった。

さらに、あの四葉真夜が自ら惨敗と認めたのだ。達也の予想よりも遥かに大きな力をまだ隠し持っている可能性が高い。

 

四葉家本家消滅。

破壊だけならば、達也も可能だ。しかし、魔法師や人が多数存在するあの広大な屋敷を人的被害は無しで破壊しつくすなどあり得ない。

 

そして、一番の衝撃は真夜の人格が入れ替わったかのような心変わりだ。

一体何がどうなったらあんなことになるのだ。

鳴上悠は真夜と何を話したのだ?

いや、真夜に何をしたのだ?

 

あの、凄惨な命令を躊躇なく下し、親族すらも物としか思わない真夜をどうやったらあんなことに……もはや別人だ。姿形や口調は一緒だが、誰かが真夜の皮を被って話していると思われても仕方ないレベルだ。

 

達也はこれもいくら思考を回しても答えが出ない。

 

 

 

「お兄様………」

そこでようやく深雪も立ち直り、隣に座る達也に声をかける。

 

「深雪………罠かもしれん。俺たちを試すために、あんな芝居をしているのかもしれない」

真夜が達也たちの隠された思いに気が付き、あぶり出すために、こんな芝居を打ったかもしれないと……

しかし、深雪の心配事はそこではなかった。

 

「……鳴上さんは私たちの事を四葉の人間だと知っているのでしょうか?」

 

「もし、ご当主様が語られた事が真実であったのならば、知っていると思っていた方がいいだろう」

 

「……そうですか………私たちは嫌われたのでしょうか?」

 

「……事実ならば、俺たちは彼の親族を狙った組織と同じ人間と思われても仕方がないだろう」

 

「……やはり、そうですか」

深雪は俯き、か細く答える。

 

「ただ、ご当主様は鳴上さんと和解したような話しをされていた。あんな信じられないような内容だが、もし真実ならば、鳴上さんは四葉を許しているのだろう」

 

「……本当ですか?」

深雪は顔を上げ、心配げに達也に聞く。

 

「ただ、事の真偽がまったくわからん。情報を探ってみるが……、他の分家の方々にも探りを入れてみるか……」

 

「お兄様。…ご当主様に何があったのかは深雪にはわかりません。ただ、今のご当主様は自然体で、嘘を言っているようには見えませんでした」

 

「ああ、まるで人が変わったかのようだ。あれは本当にご当主様だったのだろうか?」

 

「…………」

 

 

達也はこの後しばらくして、四葉の有力分家である津久葉家の津久葉夕歌に連絡を付けた。

司波兄妹は四葉家の中でも疎まれている立場だ。特に達也の存在を認めない分家もあるぐらい立場が悪い。

その中でも津久葉家の津久葉夕歌は達也や深雪に対して、中立な立場を保っている四葉でも珍しい存在だ。

津久葉夕歌は現在22歳、第一高校のOBであり、達也達と年も近いというのもあるかもしれない。

 

達也が夕歌に真偽を聞こうとしたのだが、逆に色々と聞かれることになる。普段落ち着いた雰囲気を持つ彼女だが、この時ばかりは言葉は乱れ、慌てているようであった。

どうやら、津久葉家にも、真夜からの通信が入り、同じ様な話をしていたらしい。

 

達也はこのあり得ない話を受け入れることがなかなかできないでいた。

いや、他の分家も同じようだ。

 

 

「お兄様……私は鳴上さんに電話をしお話しようと思います。そうすれば、事の真偽もわかりますし……どんな結果になろうと……深雪は……」

 

「……深雪、俺が電話をしよう」

 

「いえ、私が直に、鳴上さんとお話しします。お兄様にばかりつらい思いはさせられません」

 

 

 

そして、深雪は午後過ぎに悠の携帯端末へと電話をする。

リビングに携帯端末を置き、達也にも内容が聞こえるようにスピーカー対応にする。

 

「もしもし、深雪です。こんにちは……その…鳴上さん」

深雪は恐る恐る悠に話しかける。

 

『こんにちは、深雪。ん?何かあったか?』

悠は深雪の電話での様子が暗い感じであったため聞いたのだ。

 

「いえ…その、……何でもないです」

悠は特段変わった声色でもなく。いつもの感じでの応答に安心する深雪。

深雪は達也の言う通り、あの話は真夜のフェイクだったのだと思う。

 

『そうだな。深雪にも謝っておかないとな』

 

「え?何をですか?」

深雪は安心して、機嫌よく聞き返したのだが……

 

『ごめん。たぶん深雪と達也の実家か、親戚の家だと思うんだけど………四葉の家、消し飛ばしてしまった………ごめん』

 

「……………えええ!?………本当だった……?」

深雪は安心しきっていたところで、悠からの衝撃の言葉に大きく驚く。

 

「…………」

達也は深雪の横で目を大きく見開く。……これで真夜の話が全て事実だったことが確定し、さらに思考の迷路にはまり込むのだった。

 

 

『真夜さんから話がまだ行ってないのか?しまった。先に言ってしまった』

 

「…………あの……その………一応、聞いてますけど………その」

深雪は慌てて、

 

『そうか、ならよかった。……ちょっと、真夜さんと色々あって、そうなったが、別にケンカしてるわけではない。成り行き上そうなっただけだから』

どんな成り行きで、屋敷を消滅させる羽目になるのかなどという。無粋な考えは深雪には思い起こせなかった。

 

「……あの鳴上さんは私たちの事を知ってらしたんですか?……その四葉との関係を」

 

『昨日知った。………さすがに消し飛ばしたのはすまなかった……二人の実家だったんだろ?』

 

「いえ……その、私たちにとって、意味がない実家だったんで……」

 

『意味がないか。でも、行ったことはあるのだろう?』

 

「………良い思い出が無い所なんです。私にとっても兄にとっても」

特に達也にとって、幼少のころからの拷問のような過酷な訓練を繰り返し行った場所なのだ。

 

『……そうか』

 

「鳴上さんは私たちが四葉の人間だと知って……その、怖くは………その」

深雪は恐る恐る悠に聞く。

 

『怖い?……ああ、四葉家はかなり危ない事をしてたみたいだが、深雪は深雪だ。怖がる理由がない』

 

「本当ですか?……鳴上さんの親族の方にご迷惑をおかけしたと聞いてます」

 

『それは解決した。話してみれば四葉真夜さんもそんなに悪い人じゃない。環境が悪かっただけだ』

 

「……四葉の人間だと黙っていた私たち、私を……嫌いになりませんか?」

 

『なんで?人には話せないことの一つや二つ皆持ってる。そんなことで深雪を嫌いになったりしない』

 

「本当ですか?私は今まで通り、お付き合いさせてもらってもよろしいのですか?」

 

『当然だ。プリンの作り方もまだだったしな。それにドッペルゲンガーの件も、頼りにしてる』

 

「あ、ありがとうございます!きっと、鳴上さんの力になれるように頑張ります!」

さっきまで曇っていた深雪の表情は花開いたように明るくなる。

 

『……達也にも謝っておかないとな……』

 

「大丈夫です!お兄様もきっと喜んでます!………あの……明日夕方にでも、ご自宅にお伺いしてもいいですか?」

 

『ああ、大丈夫だ』

 

「では、明日はよろしくお願いします!」

深雪はすっかり上機嫌だ。

 

『よろしく』

 

ここで通信を終える。

 

「………」

達也はまだ、思考を巡らせ、じっとテーブルの上に置いてある深雪の携帯端末を見据えたままだ。

 

「お兄様!鳴上さんは怒ってらっしゃらなかった!明日、お伺いしても良いそうですよ!」

 

「………」

 

「お兄様?」

 

「ああ、あの話が事実だとわかったが……あまりの事でな……」

達也は深雪と悠が話してる間、いろんな仮説を立てては崩す。そんな事を頭の中で行っていたのだ。

 

「お兄様、考えすぎるのは悪い癖ですよ」

 

「………いや、……そうだな」

達也はいくら考えても、答えの出ない思考を繰り返すばかりだったが、ここでこれ以上思考を巡らせていてもいい結果はでないだろうと、嬉しそうにする深雪を見、思うのだった。

 

この後、上機嫌な深雪はキッチンに入り、しばらくチョコの甘い香りがリビングまで漂うことになる。




次回は、リーナの話を挟んで、本番ですかね
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