ペルソナ使い鳴上悠と魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

ようやく、番外バレンタイン編がおわりです。
次からは本編です。

今回、一番長いです、


第四十九話 王様ゲーム

和やかなムードで食後のティータイムを楽しんでいる中、りせが急に立ちあがりこんな事を言い出したのだ。

 

「王様ゲーーーム!!始めるのら!!」

 

りせは呂律が回っておらず、顔は明らかに赤らんでいる。まるで酔っぱらったかのように。

悠の料理に料理酒は当然使用されているがアルコール分は飛んでいるはずだ。

 

「レオ!!アレを持ってくるのら!!」

りせはレオに訳が分からない命令を下す。

 

りせの急変に皆、呆気にとられていたのだが……

そんな中、真夜と悠だけは冷静に見える。

 

だが、実際は……

 

「王様の命令は…絶対だ」

悠は力強い言動と共にりせが要求するアレなるものを正確に把握し、りせに傅き、両手で王様ゲーム専用黒のプラスチック製のクジ引き棒を人数分恭しく献上したのだ。

そんな悠は顔こそ赤く染めていなかったが目はうつろであった。

 

りせと悠は明らかに酔っぱらっていた。

この二人、アルコール摂取しなくても、場の雰囲気だけで酔える特異体質なのだ。しかし悠の自宅で和やかな空気が流れ、ティータイムを楽しんでいるこの空間は場酔いをするような雰囲気ではない。

 

ではなぜ?

 

この二人にはある共通点があった。

皆の会話を楽しんでいる中、会話に一切入らず真夜が持ってきた高級チョコを黙々と食べていたのだ。

実は真夜が持ってきた高級チョコには香り付け程度にごく微量にブランデーが含まれていた。それを食べた悠とりせはこの微量のブランデーで酔ってしまったのだ。

こうなったりせと悠を止めれる人間はほぼ存在しない。

 

 

「王様ゲーーム!!行くのら!!まずわーーーーエリカ!!引くのら!!」

 

「……あの、りせ姉さま。王様ゲームってなんですか?」

りせにトップバッターを指名されたエリカだが、王様ゲームを知らないため、何をどうしたらいいのか戸惑っていた。

 

「お兄様、王様ゲームとはどのような遊びなのでしょうか?」

「……いや、俺も初めて聞いた」

同じく、深雪も達也も知らないようだ。

 

「幹比古、知ってるか?」

「いや、僕も初めて聞いたよ」

そして、レオと幹比古も……

 

「真由美……王様ゲームって何かしら?」

「私もしらないわ」

当然リーナも真由美も知らない。

 

真夜はただ、その状況を楽しんで微笑んでいるだけだが、たぶん知らないだろう。

 

魔法科高校に通う生徒たちは皆、名家や企業家の子息子女だ。

ここに居るメンバーも例外ではない。

ただでさえ、魔法師ということで特殊な環境で育った人間だ。

世間一般からも外れた、こんな下世話な遊びを知っているはずもなかった。

 

 

「なんらーー!!王様ゲームも知らないろら!!お子様なのら!!……悠ー先輩!!庶民共に教えてやるのら!!」

 

「王様のおっしゃるままに」

悠は皆の前に立ち上がり、王様ゲームの説明と素晴らしさを拳握り力説しだした。

 

王様ゲームとは、罰ゲーム的要素を持つ、多人数で行うレクリエーションの一つである。

ルールは至って簡単。

①人数分のクジ引き棒を用意し、クジ引き棒にはあらかじめ王様の印と王様分を引いた人数分の番号を記しておく。

②番号や王様印が見えないように、皆が引いていく。その際誰にも番号が見えないようにするのがコツだ。

③まずは、「王様だーれだ」の掛け声と共に王様印を引いた人間が名乗り出る。

④王様に選ばれた人間が命令を下す。例えば「〇番が○〇を○○する」「〇番と〇番が○○する」など

⑤「〇番だーれだ」の掛け声と共に王様の命令で番号のクジを持っていた人間が名乗りでて王様の命令を実行するのだ。

 

王様は命令を下すが、誰がその命令を実施するかはクジ運だのみのため、そのランダム性が楽しみの一つである。

このゲーム、罰ゲーム系の命令のケツバットとか腹筋30回とかよりも、男女が居ればちょっとエッチな命令の方が盛り上がる。

 

悠は上記のルールなどを力説した後……

ルールを聞いて戸惑いや不安そうな顔をしている面々に対して……こう締めくくった。

「いいから、やれ」

 

「にゃはははは!面白いのら!きっと皆気に入るのら!」

 

「み、みんな節度を持った命令じゃないとだめよ。これでも元生徒会長なんですから私の目のまえでは……」

真由美はルールを理解し、その危険性を感じ、皆に釘をさす。

 

「真由美さあーん。チッスまでは大丈夫なろれーす」

 

「りせ、チッスって何よ?」

リーナはりせに聞く。

 

「リーナぁーー、チッスはチッスよーー」

りせはリーナに投げキスをして見せる。

 

「りりりせ姉さま!?ま、まさかキス!?」

エリカは顔を真っ赤にしていた。

当然、美月も顔を赤くし、幹比古とレオも顔を赤らめ慌ててる。

深雪も皆の反応を見てワンテンポ遅れてから、顔を赤らめ、もじもじする。

達也は凍てつく眼光でりせを睨みつける。

 

「だだだだめよ!りせさん!!」

真由美は慌てて反対する。

 

「えーーー、チッスはーーー欧米では挨拶なのら!!欧米か!!にゃはははは!!」

完全に酔っぱらいのりせ。

 

「まあ、頬にキスは家族や親しい友人にもするから別にいいんじゃないかしら?」

リーナは冷静に答えるが……頭の中では悠の事を思い浮かべていた。

 

「七草さん、わたくしが、あまりにも倫理に反するようであれば止めますので、まずは進めてはいかがですか?」

真夜は微笑みながら真由美を説得する。

 

「そ、そうですね。本当に節度を守ってね。みんな!」

真由美は年上である真夜にそういわれては従わざるを得なかった。

 

 

四葉当主である真夜がこう言ってしまっては、達也も深雪もそれに従わなければならない。

達也の眼光はさらに鋭くなる。

深雪にキスなどもっての他。深雪の肌に触れる行為は許せるはずがない。

しかし、真夜が容認してしまえば、命令には従わなければならない。

ならば、深雪に如何に被害が及ばないようにするかを達也は思考をフル回転させる。

男どもは全員敵だ。達也は悠とレオと幹比古を一睨みする。

さらに、とんでもない命令を下す人間も敵だ。まずはりせ。はしたなくも自らキスを要求するほどのあばずれだと、最重要危険人物に達也は指定した。安全牌は真由美と美月だ。エリカは意外と初心だから、エリカも大丈夫だろう。心配なのは深雪だ。天然なところがあり、兄としても冷や冷やする場面も多い。それとリーナだ。リーナのお国がら的に挨拶程度のキスならば簡単に容認しそうだ。それに真夜。何を考えているのかがさっぱりわからないからだ。大体こんな場所に来る事自体おかしいのだ。

そして、悠が説明した王様ゲームのルールを思い出す。

このゲーム、王様になれさえすれば、ひどい目に合うことはない。

それと王様になる人間がまともな命令を下せる人間であれば、深雪に被害は及ばないだろう。

先ほどの思考どおり、自分と真由美、美月、エリカが王様になれば問題ない。意外とレオはまともな命令を出すだろうと、レオはああ見えてお子様脳だと知っている。

要注意は逆に幹比古だ……ああ見えて、むっつりスケベだと……血迷ってとんでもない命令を下す可能性があるからだ。後は未知数の悠だ。これも何を考えているかさっぱりわからない。

安全牌は自分、真由美、美月、エリカとレオ。そして深雪が王様になればとんでもない命令を下すかもしれないが深雪自身に被害は及ばない。

これで、11人中6人が王様になれば、深雪への被害は起きないということだ。そう考えれば結構な確率で回避できそうだ。

ただ、これだけでは確実性にかける。

 

達也はさらに思考を深める。

くじ引きだ。

くじ引きでいかにまともな命令を下せる人間を王様にならすかだ。

達也は自らの空間認識能力を使い。くじ引き棒に書かれている番号と王様印を把握できるのではないかと考える。インクで書かれているのであれば、ごく微量の凹凸が生じる。空間認識能力をその一点に集中すれば、インクの微量な凹凸が判断できるのではないかと。だとすれば、達也自身が一番最初にくじ引きさえすれば、必ず王様になることができる。そうでなくとも自分がくじを引く番までに王様印が残っていれば、王様になることができるのだ。

これで、さらに確率が上がる。

 

さらに達也は思考を回転させる。

とんでもない命令を下す連中をリタイアさせる。

もしくは男どもをリタイアさせる方法を思考する。

達也の空間認識能力を使用すれば、誰が何番のくじを引いたかを把握することができる。

そこで、達也は王様になり、リタイアさせたい者同士に精神的ダメージが大きい命令を下し、行動不能にさせる。

理想は達也が最初の2回は王様になれば、すくなくとも男ども3人の排除が可能となり、すべて方が付く。

3回王様になれば、危険分子は全員排除ができる。

これで深雪に不貞な行いをする不届き者はすべていなくなる。

 

達也が思考の渦から脱したころ……

 

「んじゃー!くじを引くのらー!!あたしからーーー、うんしょ」

そう言ってりせは王様ゲームをはじめだし、自ら最初にくじ引き棒を引いたのだ。

達也が最初にくじ引き棒を引くといういう思惑が、りせの行動によっていきなり瓦解したのだ。

 

「くっ」

達也はしかめっ面をしながらも、2番目にくじ引き棒を引きに行こうと手を伸ばすが……

 

「たーつや、なーーにがっつくのら!?男どもは最後なのら!!レディーーファーストは世界の常識なのら!」

よっぱらいのりせに常識的な理由で止められる達也。

 

そんな達也に女性陣の注目が集まる。

達也は形勢不利とみて、手を引っ込めた。

 

「悠先輩を見習うのら!悠先輩は必ず。最後に引くのら!!」

 

そう言ってりせは、アルミで出来た細長いくじ引き棒専用の缶ケースを隣のエリカに渡す。

 

もはや達也は女性陣より先にくじを引くことができない。

ならば、せめて誰が王様で、誰が何番を引いたか把握することに徹した。

女性陣が引くクジに意識を集中し、空間把握能力を使うが、番号が記されたインクの凹凸が把握できない。長い六角のプラスチック棒の表層は全く凹凸が無かったのだ。

どうやら、ただプラスチックの棒にインクで書いた簡単に作ったものではなく、ちゃんと加工されたくじ引き棒のようだった。実際は悠の手作りだが、かなり丁寧に仕上げているようだ。

 

「くっ」

これでは誰が王様で何番なのかは全くわからない。達也は最初に引いたとしても、王様印がしるされているくじ引き棒を引くことができないのだ。達也は顔をしかめる。

 

「なにやってんだ達也、次、お前引けよ」

達也が思考を巡らせている間、女性陣の後の幹比古とレオとすでに引いていたのだ。

そして、達也は意を決して引く。

くじ引き棒には7番の数字が……

達也は後は運に任すしかなかった。

 

最後に、悠が妙に切れのある動きでクジ引き棒を引き抜く。

 

 

りせの掛け声とともに悪夢のゲームが始まる。

 

「「「「王様だーれだ!」」」」

 

「わ……わたしです」

恥ずかしそうに美月は右手を上げながら、KINGと書かれたくじ引き棒を胸元に掲げる。

達也は美月が当たったことでまずはホッと肩を撫でおろす。

まず美月ならまともな命令を下すだろうと。

 

「「「おおお!!」」」

 

しかし……

 

 

「あの、その……王様の命令です!3番が7番に膝枕をしてあげてください!!」

美月は最初は恥ずかしそうに、そして意を決したかのようにおおきな声で命令を下す。

 

「美月!ナイス命令なのら!」

 

「な!?」

あの美月がかなり大胆な命令をくだしたのだ。達也は驚き、裏切られたような気分になる。

しかも、誰一人その命令を否定しない。あの真由美すらだ。

美月の狙いは尊敬するりせが恥ずかしそうにする姿を写真に収めたかったのだ。だからこんな大胆な命令をくだしたのだった。

 

だが、達也はホッと息を吐く。

7番……自分が選ばれた……後は3番は誰かだが、これで深雪は守られた。

もし、深雪が3番であろうと、兄妹で膝枕をするだけの事、達也達兄妹は普段から行っている事なのだから。……普通はしないだろうが、ただこの兄妹がおかしいだけの話だ。

 

「7番だ」

達也はそう言って手を上げ、7番のくじ引き棒を掲げる。

 

そして……

「あら、わたくしが3番ですわ」

達也はその声の主に勢いよく顔を向けると真夜がにこやかに手を上げ、3番のくじ引き棒を掲げていたのだ。

 

……達也は珍しく額に一筋の汗を流す。

一番当たりたくない相手にあたってしまった。

しかも、あの真夜がゲームとは言え、そんなことをするはずがないと。

 

そして、周りが囃し立てる。

 

「さあ、達也さん。膝枕ですわ。横になってくださいな」

元々真夜の隣に座っていた達也を、真夜はそのまま自分の膝の上に横になるように手招きする。

真夜は結構ノリノリであった。

 

(な!?なぜ!?)

達也は真夜を見つめ混乱し、躊躇する。

 

「達也うらやましいぞ!」

「達也くんなに恥ずかしがってるのよ」

「お兄様頑張ってください」

「王様の命令は…絶対だ」

さらに皆は口々に囃し立てる。

 

 

達也は意を決して、横になり真夜の膝に頭をのせる。

達也の心境は生きた心地がしない状況だ。いつ寝首を掛かれるかわからないと。ライオンの檻に入れられたウサギの如く。

この達也の姿を囃し立てる皆を見て、すべて敵に見えたという。

 

 

「じゃあ、次!達也と真夜さんはーー次の次までそのままーーー」

達也はりせから更なる追い打ちの言葉を吐かれる。

 

「な!?」

達也は抗議の声を上げようとしたが……

 

「達也さん、いいではないですか、たまには」

そう言って真夜は達也の頭を撫でていた。

達也はそんな仕草をする真夜に驚きながらも、それに素直に従う自分がいた。

 

 

 

次の王様に選ばれたのは……深雪だった。

「5番が王様に肩車をしてください!」

 

「深雪!ナイスチョイスなのら!」

 

「はぁ?深雪なんで肩車?」

「その、私、生まれてこのかた肩車をしていただいた記憶がなくて、お兄様に頼んでもその……」

 

達也は焦る。

深雪が王様に選ばれた時点でホッとしていたが、まさか深雪自身が墓穴をほるなどとは思いもしなかったのだ

達也は5番が男連中に当たらないことを祈る。

肩車ということは……深雪の肌に直接触り、密着するということだ。達也としては許容できるものではない。

 

5番のくじ引き棒が宙にくるくると舞う。

それを決めポーズと共にキャッチする悠。

「5番だ」

 

5番は悠だった。

 

悠はそのまま深雪の座ってる前に来る。

「立て、深雪」

 

深雪は顔を赤らめながら立ち上がる。

「あのー」

 

悠は真正面から深雪の腰あたりを掴み上げ、ひょいっと軽い感じで深雪を自分の肩に乗せたのだ。

 

「きーーーーうらやますぎるのら!深雪!!ずるいのら!!」

りせは明らかに嫉妬の声を上げる。

そんなりせの姿を美月はパシャパシャと写真に収める。

 

真由美は悠の肩の上の深雪をうらやましそうに見る。

リーナも同じくだ。

 

「……いいな」

幹比古もぼやく。

 

「その、鳴上さん重くないですか?」

深雪は顔を赤らめながら嬉恥かしそうに下の悠に聞いた。

 

「いや、まったくだ」

 

達也はそんな悠と深雪の姿を見て、真夜の膝の上から、悠を睨みつけていた。

 

 

 

 

「次々ーー!!いくのら!!」

 

真夜、達也、悠、深雪が抜けた状態で次に移行する。

 

 

王様になったのは、レオだった。

 

レオは珍しく凶悪な笑顔を浮かべていた。

「4番と6番!りせさんのチョコを食べてもらう。ありがたく頂け!!はっはーー!」

もっとも恐ろしい命令を下したのだ。

そう、レオは自分だけあの地獄を味わった事を根に持っていたのだ。

 

りせ以外の参加者の皆は血の気が引く。

 

見事あたりを引いたのは……

 

「僕はレオを介抱したのに!恨むよ!」

「レオ!!あんた、明日覚えてなさいよ!!」

幹比古とエリカだった。

 

「幹比古……これも勝負の世界だすまん!エリカ!俺がもがき苦しんでいるのを見て笑ったバツだ!」

 

りせの激辛チョコを食した二人はあえなく物理的に脱落する。

 

 

 

そして、真夜、達也、悠、深雪が復帰し、次に移行しする。

 

 

この後、リーナが王様で、お姫様抱っこを命令。

思惑が外れ、達也がリーナをお姫様抱っこする羽目に。

お互い、うんざりした表情をしていた。

 

次に、真夜が王様となり、2名に今この場で一番気になる異性を告白する事を命令する。

それに真由美とリーナが当たる。

「一番付き合い長いから、この中では当然悠ね」

リーナはさも当然とばかりに淡々と答えたことに対し真由美はしどろもどろに顔を真っ赤にし答える。

「その……あの、私は、年下はちょっと、同じか上がいいかしら……その、だから、悠くんで」

悠をちらちら見ながらバレバレの言い訳じみたことを言う。

 

「こらーーー!悠先輩はわたしのものらのら!!王様の物は横取りしたらいけないのら!!」

りせは二人に、酔っぱらいながら絡んでいた。

 

そして、ついに悠が王様に。

 

悠はいつの間にかクマメガネを装着し、王様印のくじ引き棒をくるくると回しながら決めポーズをとり宣言する。

「3番と5番が男だったら女装、女だったら男装だ!」

 

やはりというか、達也が当たってしまう。

もう一人は、真夜が当たってしまった。

 

悠はノリノリで、一昨年に八十稲羽高校の文化祭で女装に使用したスケバン風セーラー服を用意し、達也に洗面所で着替えさせる。もちろんりせがノリノリでメイク、悠が強制的に着せ替えさせた。

 

真夜は悠の部屋で、悠の高校の制服を着ることに、この際、深雪が着替えを手伝う。

「……そのご当主様、このようなことになり申し訳ございません」

 

「深雪さん。わたくし、今、楽しくて仕方がありませんの。このような経験を今迄してこなかった事が今更ながら悔やまれますわ。これも鳴上悠さんのおかげ。今は30年という月日を取り返している最中ですのよ」

 

「……叔母上様」

穏やかに微笑む真夜を見て、深雪は悠に心の中で感謝をする。

 

「今のわたくしは従姉の津久葉真夜ですわ」

真夜は深雪にそう微笑み掛ける。

 

 

メイクさせられ、スケバン風に女装させられた仏頂面の達也が登場。

その後には、どうだと言わんばかりの悠とりせが自信満々の顔をする。

レオとリーナは大笑いをし、真由美と美月は笑いをこらえるが我慢できずに漏れていた。

これほどこの女装が似合わないイケメンも珍しいだろう。達也の仏頂面がさらに滑稽に映る。

そして、皆は携帯端末で写真を撮り出す。

達也は心の中で悠に恨み節を吐いていた。

 

その次に悠の制服を着、元々のゆるふわの長い髪を後ろで束ねた男装の真夜が登場。

悠の制服を着ていても、真夜の美貌は男には到底見えない。

似合ってないかと言われれば、制服がそういうファッションなのではないかと思えるぐらい、意外としっくり来ていた。

 

レオは真夜の姿に唾を飲み込む。

美月も真夜の大人魅力に目が行く。

真由美も美月と同じくだった。

りせは自分も大人になればそれぐらいと呂律が回らない舌でぶつぶつ言う。

リーナは一瞥するだけだった。

 

「どうですか悠さん?」

真夜は悠の前で体を一回りさせて見せる。

 

「グッドだ!」

ノリノリで答える悠。

 

深雪は達也の女装を見て、

「お兄様、とてもよくお似合いですよ」

と微笑み掛ける。

 

しかし、それが逆に達也を不機嫌にする。

悠に対する敵愾心がどんどん上がっていくのだった。

 

 

 

 

次にようやく達也が王様になったのだ。

達也は女装をさせられたまま、初期の目的など忘れ、悠を見すえながら、悠をどうやって陥れようか頭をフル回転させる。

 

そして出した答えはこれだ。

「皆が選んだ代表と王様がクイズで勝負し、負けた方がりせさんのチョコを5個食べる。ちなみに出題者は皆が代表を選んだ時点で、番号で指名する。指名された人は高校で習った知識から出題することとする。5問先に正解した方が勝ちとする」

達也には思惑があった。りせのチョコを盾にすれば皆、尻込みし。必ず悠が自ら志願する。そして、クイズは学校の知識と限定したのは、悠に確実に勝つためだ。悠は魔法関係の知識にかなり疎いと見ていた。実際にもそうだ。りせ以外皆、魔法師だ。魔法に関する何らかのクイズになるだろうと見ていた。もし一般教養から出てきたとしても、達也は勝つ自信があった。

達也の知識はすでに大学生並だ。理系に関していえば大学の知識を優に凌駕していた。

 

そして、案の定。皆が尻込みしてる中、悠がすくっと立ち上がり出てきた。

「俺が行こう」

悠の眼鏡がキランと光る。

達也の思惑通りである。

 

「悠くん」

「悠……」

「悠先輩~♡」

「鳴上さん、お兄様」

「鳴上さん男だぜ!」

「……流石悠さんですわ」

真由美とリーナは悠を心配そうに、りせはデレる。深雪は悠と達也両方の心配をする。レオは悠の男気に惚れこむ。真夜は微笑んでいた。

皆悠を応援し。

悪の王(達也)と対峙する勇者(悠)の図が出来上がっていた。

 

 

「出題者は4番」

 

「わたしなのら!」

達也が一番不安材料のあるりせがクイズの出題者に当たってしまった。

しかし、達也は冷静だ。一般教養でも負けない自信があるからだ。

 

 

「じゃあ、クイズ行くのら!手を上げて答えるのら!」

りせは呂律が回らない舌でクイズ開始する。

 

「芸能界業界用語なのら!『てっぺん』とはなんのことなのか答えるのら!」

 

「!?」

達也はりせの出題の意味がさっぱり分からなかった。

 

悠はポーズを決めながら手を上げる。

「24時を指す言葉だ」

 

「正解なのらーー、さすが悠先輩♡」

りせは悠の答えにデレる。

 

「ちょっと待て、学校で習った知識からだ。芸能界業界用語は当てはまらない」

達也はりせに抗議する。

 

「たーつや!こんな問題基本なのら!答えられない方が悪いのら!学校で習う常識なのら!」

りせは当然とばかりに達也に言う。

 

「一般の学校では業界用語を習うのか?いやそんなはずはない」

 

「……達也くん。りせさんの通ってる高校は一般の高校なんだけど、芸能科コースがある高校なの。りせさんはその芸能科コースなのよ。だから、業界用語とかも習うみたいよ」

真由美は達也に苦笑しながら、りせの話を補足する。

 

「な!?」

達也は驚きを隠せない。

達也にとって全くの予想外の展開だった。

 

リーナは意地悪そうに達也に向かって笑っていた。

深雪は達也を心配そうに見る。

 

「まだ、1問目なのら!次、次!!」

 

そして、りせの業界用語の問題が次々と出され、あっという間に、悠は4問正解し、後1問で悠の勝利へとリーチがかかった。

達也は全く答えられなかった。達也に芸能界の業界知識などあろうはずがない。

 

「……なぜ、芸能人でも、芸能科に通っているわけでもない鳴上さんが答えられる?」

達也は悠にこんなことを聞く。

 

「基本だ」

悠は眼鏡を光らせそう答えるだけだ。

 

「達也君。悠くんね。りせさんのマネージャーのアルバイトをしたこともあるし、ちょっと前にりせさんと一緒に共演したこともあるのよ」

真由美は苦笑しながら、達也に説明する。

 

「達也!!往生際が悪いぞ!!」

レオが達也を冷やかす。

その隣で美月は苦笑していた。

 

最後にりせの問題を悠に答えられ、達也は敗北する。

策士策に溺れるとは、まさにこの事だった。

 

そして、達也は約束通り、りせのチョコを5つ意を決して一気に口に入れる。

幼少期から、訓練と称し毒等にも耐性を付けるために、少量の毒をも口にしてきた達也だが……りせの超激辛チョコ5つには耐えることができず、スケバン姿の達也はその場で気絶した。

 

 

 

この後も、王様ゲームが続いたが、王様に一回もなれないりせがついに暴走し、悠にキスを迫ったのだ。

真由美とリーナがそんなりせを取り押さえようとするが、座ったまま不動の悠はりせのキスを頬に受ける。

……その後は、もはや荒れた展開だ。

成すが儘、もみくちゃにされる悠。

 

その光景に美月は苦笑しながら気絶したエリカを介抱し、レオも幹比古を介抱、深雪はうらやましそうに見ながらも、達也を介抱していた。

 

結局、もみくちゃにされる悠は最後に真夜に抱き寄せ助けられ、この訳が分からないバレンタインイベントは終息を見た。

 

 

 

翌日、案の定、悠には王様ゲーム以降の記憶が全くない。

そして、りせも同じくだ。

 

第一高校では……

エリカと幹比古にりせ特製激辛チョコの仕返しをされるレオ。

達也のスケバン女装姿の写真が一部出回り、一時騒ぎに。

達也はますます、悠に敵愾心や対抗意識を持ってしまう。

美月は昨日撮ったりせの写真を待ち受け画面に。

リーナと深雪は昨日の事を笑い話で語る。

真由美は時々何かを思い出したかのように顔を赤くし、ため息を吐いていた。

 

真夜は楽しかった事を思い起こしながら、各省庁やドッペルゲンガー対策室へと赴く。

 

皆が共通して思ったことは一つ、りせはいろんな意味で危険人物だと。

りせの料理は絶対に口にしてはいけない。

りせにわずかな酒類でも近づけさせては絶対にいけない。

皆は等しくこの教訓を得たのだった。




やっと本編にもどれますw
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