ペルソナ使い鳴上悠と魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

今回はかなり、つまらないお話です。
美鶴と悠の打ち合わせで、ここ12話ぐらいの話のまとめです。
次へのステップの前振りと思っていただければ幸いです。
たぶん。飛ばしても大丈夫なレベルです。

では……


第五十話 ドッペルゲンガーについての意見交換

 

 

2月15日(火)15:30

 

 

悠は桐条美鶴に呼ばれ、原宿のとある喫茶店に来ていた。

以前にも美鶴と打ち合わせをしたこの喫茶店。メイン通りから離れた静かな裏路地にあり、昭和風のレトロな雰囲気を持ち、商売っ気がない店主が常連相手に商売してるだけの隠れ家的要素を含んだ店だ。

美鶴は何か一人で考え事をしたい時などに、ふらりとここに、コーヒーを飲みに来ていたらしい。

 

「鳴上くん。急な呼び出しに応じてくれてありがとう。君には前々から話し合いをしたいと思っていたのだが、なかなか時間が取れなくてね。しかし、今日、急に時間が空いたのを幸いに、今ならば君と直に会う時間が十分作れると思い、手前勝手に君を呼びつけてしまった。すまない」

 

「俺の方も、桐条さんと話をしたいと思っていたところです」

 

美鶴が今日、急に時間が空いたのは、各省庁やドッペルゲンガー対策室に四葉真夜が現れたからだった。各省庁や十師族は慌てふためき、ドッペルゲンガー対策室の打ち合わせするどころではなくなり延期となったからだ。美鶴にとっても驚きはあったが、直接の影響が無いため、部下に情報収集をまかせ、自分は悠に会いに来たのだ。

 

「……私が気になっていたのは鳴上くん。『鏡の牢獄』についての報告だ。鏡の中の異次元に魔法師を取り込み、生命エネルギーを奪い、衰弱させていくとあるが……第一高校襲撃時やゴースト事件として魔法師がドッペルゲンガーを追っていた時も、ドッペルゲンガーは直接又は眷属を使って生命エネルギーを吸い取っていた。なのになぜ『鏡の牢獄』が必要なのだ。直接生命エネルギーを奪える奴らが、わざわざ鏡の中に魔法師を閉じ込め、生命エネルギーを奪う必要はどこにあるのかとな……それに君の報告に上がっていたドッペルゲンガー共が『当たり』と『はずれ』と称して魔法師を選別しているとあるが、これと関連性があるのではないかとね。……予想では、当たりと称した魔法師を『鏡の牢獄』に入れ、何かをしようとしたのではないかとね」

『鏡の牢獄』とは、光を発し鏡に映し出された対象の人間を鏡の中の異次元に封じ込める仕掛けの事だ。

 

「……俺もそれに疑問をもってました。……4日前。八十稲羽の従妹がドッペルゲンガーに襲われたことは報告が行ってると思います」

 

「ふむ。報告はドッペルゲンガー対策室を通じて受けてる。ドッペルゲンガーは従妹さんを君の人質として狙ったのだろう……その事も君から直接聞きたかったことなのだが……君がその際5体のドッペルゲンガーを討伐したと報告にあるが……あれは稲羽の君の友人たちが討伐したのだろう?」

美鶴は至って冷静に聞き、質問を返した。

 

「はい、友人たちにガードを頼んでいました。菜々子や叔父さんが狙われる可能性は十分考えられましたので」

 

「やはりな……彼らが居ればまずは大事ないだろう」

美鶴は当然だと言わんばかりに言う。美鶴は稲羽のペルソナ使いが全員、現実世界でペルソナが使える事は知っている。第一高校襲撃事件の事後処理の際、美鶴は悠にりせと稲羽の友人達についての立場とペルソナ使いであることを隠ぺいすることを約束していた。

そして、今もそれは守られている。

 

「それとだ。あのアンタッチャブル魔法師族と言われる四葉家本家が大規模魔法実験失敗により全損したとの情報が入ったが、同時に妙な噂がドッペルゲンガー対策室の上層部にまことしやかにささやかれていてな、それで皆、浮足立ってるのだ。四葉家も稲羽の君の従妹を狙い動いていたと、しかし、返り討ちにされた挙句、その本家が君の手で全損させられたと………しょせん噂程度の話だがな。さすがの君でもそこまでするはずが無いだろうに」

美鶴は笑い話程度でその噂を悠に振り、微笑を浮かべていたのだが……

 

「………」

悠は素知らぬ顔をする。

 

「………まさか?……いや……すまん。この話は私から聞かなかったことにしてくれ、君も答えなくていい……」

美鶴は悠の顔をまじまじと見つめ……

目の前の青年が普通の感覚の青年ではない事を思い出す。

爽やかな好青年に見えるこの青年は、時には大胆に、そして突拍子もない行動に出ることを……

今の悠の素知らぬ顔を見……この青年ならばやりかねないと、冷や汗が出る思いをしたのだった。

 

「そ、そうだ。『鏡の牢獄』の件と、稲羽を襲撃したドッペルゲンガーの話が何か関連性でも?」

美鶴は咳ばらいをして、話を元に戻す。

 

「直接の関連性は無いです。ただ、菜々子を攫おうとしたドッペルゲンガーは5体。この意味は大きい」

 

「………だな、USNAの報告では行方不明になりドッペルゲンガーに成り代わられた可能性がある人物はおおよそ12名、それ以外にもいる可能性はあるが………稲羽で5体、第一高校襲撃で5体、その前に君が2体と、スターズのリーナ君が1体、USNAでも1体倒していると聞いているな。少なくとも14体は滅したわけだ。これだけでも、すでに12体を超えてる。

しかも君の姪を襲った5体は飽くまでも、誘拐を実行するためのチーム。組織だって動いている可能性も高い。であれば、まだまだドッペルゲンガーは存在するということになる………となると仲間を増やしてると言う仮説がほぼ実証されたわけだ……」

 

「そうです。仲間を増やしていた可能性が高い。その手段が『鏡の牢獄』なのではないかと……エネルギーを奪うだけならば、わざわざ、当たりはずれを判別して、鏡の異世界に魔法師を放り込む理由が無い。だとすれば、ドッペルゲンガー……いや、シャドウに成り代わる可能性がある魔法師を選別し、『鏡の牢獄』に放り込み仲間を増やしてると考えた方が自然だと……『鏡の牢獄』でどうやって、ドッペルゲンガーと成り代わったかはわかりませんが……ただ、俺たちは稲羽の事件では、テレビの中で自分たちのシャドウと対峙しました。人の抑圧された強い感情がシャドウを生み、そのシャドウは本体と成り代わろうと、本体の人間を殺そうとしました。

『鏡の牢獄』は人からシャドウ(ドッペルゲンガー)を直接生み出すための何らかの術式か装置なのではないかと……」

 

「なるほど、我々ではその考えにはいたらないだろうな。我々にはそのような経験がない。君らは己から生み出されたシャドウと折り合いをつけ、ペルソナと化したようだが、我々は召喚器で自らのうちに眠るペルソナを強引に顕現させていたからな……ドッペルゲンガーは何らかの方法で仲間を増やしてるのはほぼ確定だ。『鏡の牢獄』に当たりと称す適性のある魔法師を放り込み、新たなドッペルゲンガーを生み出していた。君の仮説が正しいのならば、奴らは、異界の門を開くためのエネルギーを集めると同時に、仲間を増やすための行動をとっていたということになるな」

 

「確証はないですが」

 

「いや、君の推論は正しい様に思う。それであれば『鏡の牢獄』の存在理由が明確だ」

 

「ただ、疑問も残ります。第一高校襲撃事件の際、ドッペルゲンガーは『鏡の牢獄』を当たり、はずれの何らかの適正者の選定と関係なしに、生徒達を取り込んだ様に見えました」

 

「ふむ。それは攻撃手段として『鏡の牢獄』を使用したに過ぎないのではないか?『鏡の牢獄』に捕らわれた生徒達は最初は生命エネルギーをあまり吸い取られなかったのだろ?ならば、しばらくは生かすつもりだったということだ。仲間を増やすためにな。後でじっくりと適正者の選別をすればいいだけの話だ。しかし、『異界の門』を開けるエネルギーが足りなくなり、『鏡の牢獄』に捕らえた生徒達のエネルギーで補填したとすれば、辻褄が合う」

 

「確かにその可能性が高いですね。攻撃手段として『鏡の牢獄』の性質を利用したというところなのでしょう」

悠はリーナと烏のドッペルゲンガーと対峙していた際、リーナの部下が次々と『鏡の牢獄』に捕まっていたのを助けたことがあるが……あれは彼らを何らかの目的で利用するというよりも、リーナに対して人質を取るための手段として使っていたように見えた。

 

「何にしろ、もっと情報が欲しいところだな」

 

「それに、もう一つ懸念があります。今まで東京近郊でしか活動してなかったドッペルゲンガーが稲羽まで現れたということは……ドッペルゲンガーは東京以外でも活動ができるということです。なぜ今まで東京近郊にのみ出現したのかはわかりません。もしかするとあの『異界の門』の召喚は最初から第一高校の敷地で行う予定だったのかもしれません。そのために東京近郊で活動していたのかもしれません」

 

「ふむ、東京近郊以外で魔法師の襲撃は今の所、報告は受けていないが、もし、活動範囲が全国に広がると厄介だな」

 

「はい、さらに、ドッペルゲンガーが何故、『異界の門』を開こうとしたのか、なぜ八王子の第一高校のあの場所で開こうとしたのかが気になります。冷静に考えれば、ドッペルゲンガーのバックに神や悪魔などが初めから存在したのならば、自らの存在を現世に顕現させるためだけにわざわざ『異界の門』を用意せずとも、力のある神や悪魔ならば自力で現世に現れる事は可能なハズです。 『異界の門』を多大な労力とエネルギーを使用して開ける必要が何故あったのかということです。やはりその狙いは人類への干渉……厄災、消滅……」

悠はドッペルゲンガーの目的は神や悪魔の降臨だと最初は考えていた。

しかし、ただ単純にドッペルゲンガーを生んだ神や悪魔が降臨するためだけならば、自らの力で現世に現れてもおかしくない。イザナミやマリーのように。

……アメノサギリのように、現世の人間の深層意識を解析し、その結果、虚ろの世界に変え、人類すべてをシャドウ化させるような大規模な計画を進めているのかもしれないと考えを改めていた。

 

「たしかにな。存在そのものがハルマゲドン級の厄災を内包している神や悪魔が現世に降臨する場合や、現世に厄災や破壊をもたらす場合。現世でも異世界でも何らかの法則に則らなければならないようだ。それは一部の神や悪魔の一存で世界が破滅させられないための抑止力……いやプログラムだと私は認識している。現世に何らかの影響を与えようとするならば、そのプログラムに則って行う必要がある。

我々が関わった事件では明らかに法則が存在した。

……世界に死をまき散らすニュクスを降臨させるために、デスという存在が必要だった。

そのデスは一度なんとか退けたが……デスは12体の大型シャドウと引き合わせることで復活を遂げた……大きな犠牲を払い抑えることができた。……しかし、そのような事態に陥ったそもそもの理由は人間が……愚かな行いを行おうとした代償だった」

話の後半、美鶴の表情は影を落とす。瞳には悲しみとも後悔とも言えない色が浮かんでいた。

美鶴の祖父は神魔の力を欲し、それをコントロールしようとした結果、タルタロスや影時間を生み。デスを顕現させ、ニュクスを呼び寄せる結果となったのだ。

表沙汰にはなっていないが、桐条はニュクスを呼び起こし世界を破滅一歩手前での行いを仕出かした。

それに巻き込まれ、人知れず存在そのものが消えて行った人々が多数いたのだ。

その中には一緒に戦ってきた仲間も……

美鶴自身が仕出かした事ではないが、美鶴の罪の意識は消えない。

桐条の一族として、美鶴はこの罪を償う事に今も奔走していた。

その一つが対シャドウ部隊、シャドウワーカーの結成であり、自らが陣頭指揮を執っているのだ。

 

美鶴がこういった経緯により、シャドウや異界の神や悪魔と呼ぶものに、憎しみに似た何かを持ち、徹底抗戦を唱えるのも仕方がないと言えるだろう。

 

「……確かにそうかもしれません。俺たちの場合も、神は人間の意思を確認したうえで、全人類をシャドウ化させるという行為をとりました。ただ単に滅ぼすだけならば、そのような手続きを取らずとも行えたはず。まるで、人類自身が望んだかのような言い草だった」

悠はイザナミやアメノサギリが盛んに人類が望んだから、人を物を考えないシャドウと化させるのだと言っていたことが強く印象に残っていた。

 

「ああ……私もそれは感じている。ニュクス降臨は、間違いなく世界の破滅だ。神がその行いを見逃したのは、君が言う人間が行った行為の結果だからなのだろう」

 

「今回もその線が濃厚だと俺は考えています」

 

「たしかにな。……君も知っているだろうがシャドウが関わる事件は必ずしも大それた世界破滅や人類滅亡などではない。君や私が関わってきたものは、その中でも大規模なものだが、そんなものはごく稀だ。いや稀でないと困るがな……

世界には小規模なシャドウがかかわる事件が起きている。個人の神隠し程度の事件からな」

 

「今回は、大規模なものだと……『異界の門』を開こうとする程の」

 

「そうだな……君は今回のドッペルゲンガーの連中をどう見る」

 

「……俺はネイティブアメリカンの伝承が気になります。USNAでの大規模実験で次元の穴が開いて現れたというのもそうですが、奴らのシャドウとしての姿が、ネイティブアメリカンの伝承のトリックスター……いわゆる精霊や自然神の逸話に基づいていたものばかりでした」

悠は第一高校襲撃事件から、国立図書館やネットや書籍などで調べていた。

烏から始まり兎、コヨーテと羽のある蛇……そして、最後に出くわしたホーンドサーペントはネイティブアメリカンに伝わる化け物の姿そのものだった。

さらに、『異界の門』を形成したトーテムポール……まさしくネイティブアメリカンの伝承通りなのだ。

 

「うむ。………よく個人でそこまで行きあたるな」

美鶴は桐条グループの対シャドウ研究チームが導いた経過報告とほぼ同じ意見を悠が持っていたことに驚く。

 

「……八王子での『異界の門』。八王子では蛇にまつわる逸話が多数残ってます。それともかかわりがあるのかもしれません」

 

「一考の価値がありそうだな。我々の研究チームでも調べてみよう。

……それとだ。一番の懸念は今までのシャドウと違い今回のドッペルゲンガーが我々の常識を覆し、現世で活動している点だ。シャドウとは別種の異界の者なのではと意見があったぐらいだ」

 

「そもそもドッペルゲンガー、いや、あのシャドウが現世に存在させる理由とは何かと………

シャドウは本来、神や悪魔が抑圧された心や歪んだ心、他者への恐怖の心、他者との繋がりを求める心など、誰もが持つマイナスの心や深層意識を怪物化させたものです。それらは本来、神や悪魔が何らかの目的で創造した異空間でのみ発生し存在します。

テレビの世界、時間の狭間等、異空間の成り立ちは神や悪魔の性質によるところが大きい。

今回のシャドウは一見、それらを介さずに現世で活動してる。なので別の存在ではないかと思われるかもしれませんが、実際には奴らは本来のシャドウとしての力を発揮するには、現世を異界化させる霧の結界が必要です。やはり俺たちが今迄戦ってきたシャドウと同質の存在だと考えてます。ただ奴らはシャドウが現世で活動できる……俺たちが戦ってきたシャドウとドッペルゲンガーは何が異なるのか……それは、シャドウの目的意識の有無がそうさせている可能性があると考えてます」

悠は、マリーやクマの意見も聞いた上での結論だった。

 

「鳴上くん。君は一人で………。ふう、桐条の対シャドウ研究チームも君と同じ見解だったよ。君の所のクマくんの存在が大きいな。明確な意思を持ったシャドウは現世にでる手段ではなく、現世に出ようという意思が働いているのではないかということだ」

 

「それに、ミアさんのクモのドッペルゲンガーがそのカギとなると思ってます。あのドッペルゲンガーはミアさんのシャドウであると同時に、本体のミアさんの体を乗っ取り、現世に活動していたのです」

 

「あの様に本体に隠れ操る事ができるのは厄介だ。他のドッペルゲンガーがやっていないということは。クモの性質によるものかもしれないな」

 

「はい」

 

「………まだまだ、わからない事だらけだな」

 

「今の最大の懸念は……奴らが今、どこにいて、何をやっているのかが足取りがつかめない事です。……りせでも判明できないでいます。りせの意見では、地下か異世界……もしくはシャドウとしての能力を完全にシャットアウトしてるかと……」

第一高校襲撃事件以降、りせに東京近郊をサーチしてもらってるが……反応が見つからない。

さらに都心部では、ミアの件もあり、精密サーチも所々で行ってるが……見つからない。

 

「完璧にペルソナを使いこなせてるりせくんで無理ならば、風花で見つからないのは仕方がない。奴らの最終目的はわからないが、魔法師を狙い、生命エネルギーを奪う。もしくは、魔法師をシャドウ化させようとしている可能性がある事だけは判明してる。魔法師への警戒を促す事や、施設の巡回警備は可能だ。

地方についてはドッペルゲンガー対策室で手を打とう。幸い軍や警察のトップもいることだし、全国に警戒を呼び掛けるか、警備を厚くすることは可能だろう。魔法師を狙ってる事だけはわかってるからな、対処のしようがまだある」

 

 

この後も悠と美鶴はしばらく打ち合わせをする。

 

 

「君との話し合いは実に有意義だな。そういえば君は大学に進学し将来は学者になると……」

 

「そのつもりです」

 

「その時も、私の相談には乗ってもらえるのだろう?」

 

「民俗学の事ですか?」

 

「そうだな。君にとってシャドウの件も民俗学も同じだろう?」

 

「そうですね」

 

こんなやり取りを行った後、2人は喫茶店を出、別れる。

美鶴は悠との話し合いを優先的に頻繁に行うべきだと考えを改める。

悠は、美鶴との話し合いで、改めてドッペルゲンガーの捜索の困難さを感じ、新たな方策を模索する。

 

 




次はついに悠たち東京版特別捜査隊の活動開始です。

アルカナについては皆さんの意見を参考に再度提示します^^
皆さんの意見の方がいい感じですね。
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