ペルソナ使い鳴上悠と魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

我らの鳴上悠くんは前回に引き続き今回もお休み。
その代わり、あの人登場。



第五十二話 次なる襲撃

2月24日(木)10:15

 

八王子特殊鑑別所及び特殊少年院、特殊少年刑務所からなる未成年の魔法師及び魔法適正者の犯罪者や容疑者を収容する特殊施設群がドッペルゲンガー4体に襲われてから、凡そ30分後、埼玉の西部山間にある魔法師専用の入間特殊刑務所群がドッペルゲンガーの一団による急襲を受けたのだ。

 

霧が一気に立ち込め、施設内に設置されていた鏡が一斉に強い光を発した。鏡に映し出された人間を鏡の中に取り込む『鏡の牢獄』が発動したのだ。

八王子の特殊施設群同様、鏡の数は最低限まで撤去されていたため、取り込まれた人間の数はごくわずかだった。

牢内には鏡の設置が義務付けられているが、鏡に開き戸が急遽設置され、必要時以外は開かないようにと囚人に徹底させたためだ。

 

魔法師専用の刑務所施設群の規模は八王子の特殊施設群よりも敷地面積も規模も1.5倍程度ある。収監されてる人数も凡そ100人。国内で犯罪を犯した成人の魔法師及び魔法適正者が収監されている。魔法絡みの犯罪ではなくとも魔法師や魔法適正者はこの刑務所に送られる。

但し、国際犯罪者、軍務経験者、戦犯者及び捕虜などは収監されていない。それらの犯罪者は国防軍直轄のさらに厳重な国際犯罪者専用刑務所施設に収監されてるのだ。

千葉にある国防軍松戸基地の敷地内に併設されてるが、その他の国防軍基地にもそのような施設があるらしいが機密保持のため一般には知られていない。公に公表されてるのは松戸基地内に新たに併設されてた国際戦争犯罪者及び戦犯者収容所のみだ。

 

 

 

 

「来たか。鳴上くんの予想通りか……八王子の特殊施設群は囮、本命はこちらで確定だな」

漆黒のバトルスーツに身を纏い、ゴージャスなコートを羽織った桐条美鶴は隣に控えてる二人に話しかける。

 

「はい、りせちゃんからのテレパスで、あちらのドッペルゲンガー4体すべて無力化に成功したそうです」

物々しい雰囲気の中、一人落ち着いた清楚な普段着の山岸風花は自らの女性型ペルソナ、ルキアの下半身を構成する球体内に入り、各種情報を確認、収集しながら答える。

 

「ふん、学生の魔法師だけでよくやる。山岸、敵は何体だ!」

何故か上半身裸のコンバットパンツ姿の筋肉隆々イケメン、真田明彦は手にはめたグローブの具合を確かめながら、風花に聞く。

桐条美鶴、山岸風花、真田明彦の後ろには10名程度のシャドウワーカーの部隊が控えている。

 

「真田先輩。8……いえ、10体を確認しました」

 

「第一高校襲撃時より多いな。それだけ本気と言う事か……」

 

「ふん、敵が作ったこの霧の結界の中では、俺たちのペルソナも十分力を発揮できる。問題ない」

真田は野獣のような獰猛な笑みをこぼしていた。

 

「皮肉なことだがな……風花、アイギスとラビリスとのリンクは?」

美鶴は、真田が心底楽し気にしてる様子に、呆れると同時に頼もしくも思う。

 

「アイギスの千葉警部率いる警視庁特殊部隊も移動開始、ラビリスの精鋭部隊施設内で待機してます」

風花はアイギスとラビリスとテレパスで確認しながら答える。

アイギスとラビリスは警察部隊のオブザーバーとして同行していた。

ドッペルゲンガー対策室は悠の意見を採用し、ここ入間特殊刑務所群に警視庁の精鋭部隊を送り、ドッペルゲンガー襲撃の際、返り討ちにする作戦を立てていた。

 

ドッペルゲンガーに気づかれないよう、少数精鋭のみを配置。元々警備を第一高校襲撃事件以降増員していたため人数的には変わらない、前日や今日に交代要員や出勤職員に偽装して、この施設に入り込んだのだ……警視庁から魔法師精鋭46名、シャドウワーカーから14名派遣されてる。

 

その他でも、近隣に警察の部隊が待機し、事が起きた場合30分以内にこの入間特殊刑務所群を包囲する手筈も組んでいた。

 

 

 

 

 

「こちらアイギス。シャドウ、いえ、ヘビ型のドッペルゲンガー3体と多数の眷属と思われる蛇を目視で確認。戦闘に入るであります」

アイギスは移動を開始し、上半身が人の女性型、下半身が巨大なヘビのドッペルゲンガー3体を補足する。

 

『アイギス。エネミーサーチを行ったわ。その3体、下半身のヘビの体色が青っぽいのが炎が弱点。下半身のヘビの体色が赤っぽいのが氷結。下半身のヘビの体色が黒っぽいのが、光が弱点。ヘビの眷属もその体色が弱点。物理攻撃は弱点ではないけど、有効よ。ドッペルゲンガー本体は魔法も使ってくるわ』

アイギスから報告を受けた風花は、3体のヘビのドッペルゲンガーのエネミーサーチ結果をアイギスに報告する。

 

「了解であります。……千葉警部殿、ヘビのドッペルゲンガーとその眷属は青が炎、赤が氷結、黒が光が弱点であります。物理攻撃も有効。魔法攻撃に注意です」

アイギスに付いて移動してる

アイギスが所属する千葉警部率いる34人の警視庁特殊部隊だ。遠距離攻撃魔法メインの構成となってる。

 

「アイギスさん了解しました。……でも、眷属の数が多くないですかね」

千葉エリカの兄、千葉寿和警部は、補足したヘビのドッペルゲンガーの化け物じみた姿と取り囲む眷属の巨大ヘビの多さに、腰が引けていた。

 

「大丈夫であります。5秒後、わたしが突破口を開きます」

そう言ってアイギスが背負っているバックパックから対戦車ミサイルランチャーと大型機関銃が飛び出し、大きく跳躍しながら、ヘビのドッペルゲンガー一行に一斉発射をする。

 

「………アイギスさん。あんなにかわいいのにロボッ娘なんだよな。いや、ロボッ娘だからいいのか、いやしかし……」

 

「警部、そんなことを言ってる場合じゃないですよ。近接部隊は防御陣を、遠距離魔法師隊はアイギスさんに続いてターゲットに魔法を展開し駆逐開始」

寿和の直属の部下であり、千葉道場の門下生の稲垣警部補は寿和の言動に呆れつつ、部隊に指示をだす。

 

「ペルソナ!パラディオン!」

アイギスの空中一斉射撃でヘビの眷属は半数以上吹っ飛び、3分の1が消滅する。

アイギスの武装はただの重火器ではない、対シャドウ用にカスタマナイズされた素材や術式が組み込まれてる兵器だ。ドッペルゲンガーやその眷属にも勿論効果は絶大だ。

アイギスは地上に降り立ちながら、ペルソナ、パラディオンを顕現させ、相手の反撃に備えつつも、腕を構え、指から機銃を放ち、眷属を駆逐していく。

 

 

 

 

 

 

『ラビリス、ドッペルゲンガー5体が先行し本棟入口に……そっちに到着するわ。すべてコヨーテのドッペルゲンガー。そちらに真田先輩が応援に向かうわ。それまで持ちこたえて、炎が弱点だけど、近接も有効よ。魔法を使ってくるから気を付けて』

風花はラビリスに伝える。

 

「了解や。こっちにぞろぞろと敵さん来るで、準備はええ?殴っても効くみたいや」

ラビリスが所属する警視庁の精鋭部隊12人は近接を得意とする屈強の魔法師が選ばれてる。

その中に、千葉家の次男、世界屈指の剣術使いの一人にして、近接戦では世界で10指に入る魔法師、千葉修次の顔もあった。

この部隊の役目は、施設内の狭い玄関で敵を迎え撃ち、敵を撃退させるか、本体やシャドウワーカー到着まで持ちこたえることだ。

 

「ありがたい、近接戦は得意とするところだからね」

千葉修次は日本刀を構える。

 

「まあ、足引っ張らん程度に精々頑張ってや」

ラビリスは自分の身長程ある大斧を背中から抜き、片手で軽々と構える。

 

「そうさせてもらうよ」

千葉修次はラビリスを一瞥してそう言ったが……

(……桐条財閥の対シャドウ機動兵器、完全に個としての人格がある。日本、いや、世界でも初めてだろう。世界の技術水準をはるかに上回ってる……国防軍が頑なに桐条の参入を拒んだのは、こういう事か……)

桐条財閥の兵器技術は革新的なものばかりではあったが、利権が横行する国防軍では、桐条の参入を快く思わない者が大勢いる。その勢力により桐条は国防軍の兵器開発等に携わる事が出来なかったのだ。

 

 

 

真田を本棟入口に向かわせた美鶴は上空の2体のカラスのドッペルゲンガーとその眷属を追っていた。

「空中の敵は苦手なのだがな、そうは言ってられんか……ペンテシレア!『マハブフーラ』」

美鶴は空中を舞うカラスの眷属たちに向かって、カラスの弱点である氷結属性範囲魔法マハブフーラを放つ。

 

2体のカラスのドッペルゲンガーとその眷属は、この入間特殊刑務所施設群の敷地内上空を飛び回り、情報収集を行いつつ、職員や逸れた魔法師等を襲っていた。

美鶴は2体のカラスのドッペルゲンガーの内の1体にターゲットを絞り、追跡していた。

 

「ようやく、1体射程に入ったか……」

美鶴が1体のカラスのドッペルゲンガーを射程に収める。

 

 

『桐条先輩!りせちゃんからエネミーサーチですでに監獄内にドッペルゲンガーが侵入してると!

すみません反応が微弱過ぎて私には感じられませんでした。……例の人に生きたまま取り付くクモのドッペルゲンガーのようです』

 

「なに!?バカな、ドッペルゲンガーが!?いや、人間の出入りも確認していたはずだ。今日は我々以外は宿直の職員しかいないはずだぞ!」

ドッペルゲンガーに気が付かれないように警視庁の特殊部隊や美鶴達のシャドウワーカーも出勤する職員に偽装して、この刑務所施設に入り込んでいた。

自分たち以外に、今日この施設を訪れる人間はいないハズなのだ。

 

『……りせちゃんのアナライズで分かったことは……囚人として、2週間前に入った人物です』

 

「なに!?どういうことだ!?囚人として……日本でドッペルゲンガーに襲われ、行方不明または死体発見が遅くなった人間は、間違いなく国防軍も魔法協会も警視庁も把握していた!……そんな人間が犯罪をすれば、直ぐに身元が分かるはずだ。どういうことだ!いや、追及は後だ!第一高校に現れたクモのドッペルゲンガーは強力なシャドウだと聞いてる!囚人たちは魔法も使えない牢屋のなかだ。すべてエネルギーを吸い取られる……もしかすると、捕縛して連れ去る手段もあるかもしれん!!……この襲撃自体が囮か!!すでに敵は内部に居た!!風花!!明彦に!!クモのドッペルゲンガーを最優先で撃破するように伝えろ!!」

美鶴は焦る。

この外から襲撃してきたドッペルゲンガーはすべて囮だったのだ。

本命は内部で囚人として収監された人間に取りついていたクモのドッペルゲンガーが内部から囚人達を襲う事だったのだ。

牢屋に入れられた囚人は魔法を封じられている。いとも簡単にドッペルゲンガーの餌食になろう。

第一高校ではCADを持っていない事で、魔法が使えないところを襲撃。

今回は、魔法を封じられた囚人を襲撃。刑務所が襲われるところまで想定はしていたが、まさか囚人に紛れていたとは予想外だったのだ。

ドッペルゲンガーに成り代わられているだろう人物については、把握していたはずだった。

日本では襲われ行方不明になった人物。さらに襲われ死体が後日に上がってきたパターンはほぼ、ドッペルゲンガーに成り代わられているだろうと……さらには既に成り代わられ、組織内に入り込んでいる可能性があるのは、数日間の足取りがわからなかった人物やドッペルゲンガーに襲われた経験や対峙した経験がある人物だ。その辺も各組織に通達して、その可能性がある人物についてもピックアップしていた。

既にドッペルゲンガー対策室発足とともに行方不明となった政府関係者などもピックアップしていたのだ。

囚人として収監されれば、それらの該当する人物であればすぐに判明するはずだった。

しかし、そうではなかったのだ。

美鶴はその囚人がどうやって、ドッペルゲンガーに成り代わられたかに大いに疑問を持ち、面喰ったが……直ぐに気持ちを切り替え、被害を抑えるために、真田にクモのドッペルゲンガーに向かわすように、風花に伝えたのだ。

 

「やられた!襲撃されるとわかっていたのにだ!」

美鶴は口惜しそうに叫び、上空を飛び回るカラスのドッペルゲンガーを睨みつける。

 

 

 

 

風花にテレパスで指示を受けた真田は、本棟玄関付近で足止めを食らっていた。

5体のコヨーテのドッペルゲンガーに加え、カラスのドッペルゲンガーが真田の行動をさえぎっていたのだ。

ラビリスと千葉修次が所属する少数精鋭部隊は、ドッペルゲンガーを足止めする役目を負っていたが、逆にドッペルゲンガーに足止めされる羽目になっていたのだ。

5体のコヨーテのドッペルゲンガーの動きは眷属を使っての明らかに持久戦の構えだったのだ。

 

「くそ、空中の敵とは相性が悪い」

真田は焦る。

一刻の猶予も無いことは風花の報告で理解しているだけに、余計に気が早まる。

 

 

 

 

 

 

本棟地下の刑務所収監所(牢屋)エリアでは、次々と悲鳴が上がる。

囚人服を着た長身の男が、次々と腕力で牢をぶち破り、一人一人囚人を襲っていたのだ。

この男がクモのドッペルゲンガーに生きたまま操られ憑りつかれた状態の人間だった。

すでに、クモのドッペルゲンガーに感情は支配され、ドッペルゲンガーの意識しか残っていない。

 

「……意外とあたりが少ないな」

男は深紫色の禍々しい形をした大きな丸鏡を掲げ、今また、目の前の怯えた顔をした囚人を強烈な光を発すると共に鏡に吸引した。

そして、次の牢屋に向かい。扉を力づくで開け放つ。

 

「おたくは誰?何の用?」

 

「恐怖はないようだな……当たりだな、凄まじい反応だ。これは良質な仲間になるな」

 

「人の話聞いてる?誰だって聞いてるんだけど?てか、脱獄犯?僕はいいよ。ほっといてくれ、今は静かに過ごしたいんだ」

 

「ふははははっ、肝っ玉が据わったやつだ。残念だが無理やりにでも連れて行く」

男は禍々しい鏡をやる気がなさそうな目をした20台後半ぐらいの線の細い男に掲げる。

鏡は目の前の映っている線の細い男を鏡の中に吸収するために光を発する。

 

しかし……

 

「わっ、眩し!」

 

「なに?『鏡の牢獄』が効果を発しない?どういうことだ」

 

「どうこうもないよ。なんなの?……ん?お前、シャドウか?」

 

「……貴様…何者だ」

静かな口調で、線の細い男を警戒しながら、その男、クモのドッペルゲンガーは、牢屋入口から通路へとゆっくり下がる。

 

「あれ?マガツイザナギが使えそうな気配がするな。どうなってるのこれ?ここはテレビの中ではないし……でも、今のここはあの異世界と空気感が似てる気がするな」

線の細い男はそう言って、牢屋から通路に出る。

 

「………」

クモのドッペルゲンガーは軽い感じの線の細い男に異様さを感じ、油断なく見据える。

 

「ん?うわっ、他の牢屋もボロボロ。……で、シャドウが僕に何の用?」

通路に出た線の細い男はつまらなそうな目で頭を掻きながらクモのドッペルゲンガーを見据える。

 

「貴様など知らん」

 

「ふーん。まあいいや。あんたを倒せば恩赦で布団を羽根布団にしてもらえるかな?ここの布団硬くてさ、結構腰にくるんだよねー」

線の細い男は軽い口調でそんなことを言いながら、体からは漆黒のオーラが立ち昇っていく。

 

「……な、なんだ。仲間か、いやこれは」

 

「……マガツイザナギ」

そう呟くと同時に、線の細い男……いや、足立透の眼光は鋭くなる。

そして、悠のペルソナ、イザナギと姿形がそっくりなペルソナが足立の背後にゆらりと現れる。

ただ、異なるのは……鮮血を浴びたように、その躯体が赤く染まっていることだった。




遂に出た足立さん!
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