何とか、頭の中でまとめることが出来ました。
12話程度で終わる予定だったこのお話も随分長く書かせていただきました。
ようやく、最終話の構想までたどり着き、再開することが出来ました。
皆さんに頂いた感想は徐々に返事をさせていただきます。
では、再開……
日本国防軍松戸基地。
東京都心部に隣接し、東京湾にもほど近いこの基地には、常に陸軍一~二大隊、魔法師部隊の中隊規模が一~二部隊常駐していた。
有事には、この旅団規模の軍隊が都市防衛の要となる。
軍の大隊規模とは300~1000人を擁す部隊だ。ここでは最大2000人、最低1000人の陸軍が常駐することになっている。
中隊規模とは60~250人を擁す部隊。魔法師が常時300人近く常駐している事になる。
下総航空基地からも程近く、もしここが襲撃された場合でも、早期の増援も望める立地でもある。
逆の場合もしかりだ。
但し、現在この基地の主な用途は戦争捕虜や国際犯罪人を取り扱う収容所と変更された。
昨年末以降急ピッチで収容所に大規模改装され、年始から運営されたのだ。
なぜこのような事になったのか。
昨年10月末に起こった横浜事変で捕虜とした大亜連合の軍人たち。魔法師140名を含む300名強の捕虜を一斉収監するためのものだ。
この基地ならば、捕虜の移送を必要とせず、都市部とのアクセスも近く、各種施設も整っている。
以前、大亜連合の特殊部隊に、移送中の捕虜を奪還されたことがある経緯などからも、それらの対策にも考慮したとものといえよう。
横浜事変、大亜連合軍大隊規模による横浜電撃上陸作戦だった。
大亜連合が要した軍人は大隊規模凡そ800人と目されている。
日本国防軍は何とか退けたが、横浜は壊滅状態になり、一般人を含む1万人以上の犠牲者をだした事は記憶に新しい。
この横浜事変では第一高校も巻き込まれ、真由美や深雪たちは大亜連合軍と戦ったのだ。
達也は、独立魔装大隊大黒竜也特尉として、大亜連合侵攻軍を壊滅に追いやった。
図らずも、悠とりせはデート中に巻き込まれ、悠とりせは住民救助に一役買っていた。
現在も横浜は都市機能が回復しておらず、ようやく復興事業が始まったばかりだ。
そして……
2月24日(木)11:05
「……なんだ?霧が急に?……?なんだ………光!?」
松戸基地は突如として霧に覆われる。
そして、あの光だ。基地の彼方此方で眩い閃光が発せられ、
松戸基地の警備にあたっていた軍人の約1割弱が鏡に捕らわれる。
対ドッペルゲンガー対策の一つ、鏡の撤去が進んでいたため、これだけの人数で済んだと言っても過言ではない。
そして何処からともなく、有象無象な獣たち、いやドッペルゲンガーの眷属が襲いかかったのだ。
空を鳥や蝙蝠型の眷属が埋めつくし、基地の周囲からはコヨーテ、クマやヘビなどの獣型の眷属が出入口ゲートや壁面を乗り越え又は破壊し、侵入してきたのだ。その数は1000どころの騒ぎではない、1万は居るだろう。
松戸基地は油断したわけではない、国防軍は入間特殊刑務所群が襲撃に遭った事を知り、松戸基地も警戒態勢をとっていたのだ。それにもかかわらず、完全に先手を取られたのだ。
ドッペルゲンガーは松戸基地の監視警戒網をどうやってかはわからないが突破し、基地周囲に到達し、霧の結界を発生させ、無数の眷属を顕現させたのだ。
基地内は警報が鳴り響き、防衛に当たった兵士達はその光景を目の当たりにし、浮足立つものも居た。
2日前の2月22日(火)に話を遡る。
悠は前日2月21日の達也たちとの打ち合わせで、ドッペルゲンガーに次に狙われる可能性がある施設について凡その見当をつけた。
今迄警戒レベルが比較的低い、八王子特殊施設群、入間特殊刑務所群、軍が管理する国際犯罪者、戦犯者、捕虜などを扱う松戸基地がピックアップされた。いずれも魔法師が収容されており、収容されてる魔法師は魔法を無効化されてる状態だ。防衛や監視などを突破さえすれば、容易に魔法師からエネルギーを奪う事や鏡に閉じ込めることが可能なのだ。
皆の意見では、松戸基地が襲われる事は無いだろうとの事だった。防衛施設も整い、現役の軍人が1000人レベル(実際は1000~2000人)で存在し、さらに軍の魔法師を200人以上(実際は300人)擁してる場所だからだ。
そして、残りのドッペルゲンガーの数は20体前後と予想してる。
いくらドッペルゲンガーといえども、20体程度でその規模の人数、しかも訓練をされた軍隊相手に無謀だろうと。
悠は22日の昼過ぎに、この話を政府ドッペルゲンガー対策室に持って行った。襲撃予想施設の防衛について情報共有と協力を得るためだ。
6名の幹部に、悠は理路整然と説明をする。
幹部は納得し、襲撃に備え、さっそく各方面に動き出す。
但し、幹部は皆、松戸基地については、襲撃は無いだろうと判断をしていた。
しかも、元々十分な兵力と防衛設備が存在する松戸基地である。特に問題無いだろうと……但し、警戒は十分にすると。特に国防軍長官は手出し無用と、あそこには十分備えがあると、軍としては他の部署の介入は避けたいところでもある。
そこで、一番可能性が高い入間特殊刑務所群にはペルソナ使いである桐条美鶴達シャドウワーカーを擁する警察組織が襲撃に備えることに、そして悠の希望通り八王子特殊施設群を特別遊撃隊が受け持つことになった。
国防軍は今まで通り、魔法師が集まる学校施設などの警備を行う。
確かに、魔法師の犯罪者を狙う可能性はあるだろうが、飽くまでも可能性の問題だ。
再度魔法科高校やその他魔法師が集う施設が狙われないとも限らないため、今まで通り警備は必要なのだ。
松戸基地についても、十分な注意と警戒を行うようにという事にとどまったのだ。
悠は、誰もが松戸基地が襲撃される可能性は低いだろうという意見に、不安を覚える。
確かに悠も、ドッペルゲンガーが20体で、襲うのは無謀だと思う。
悠達のおかげで、魔法師でもドッペルゲンガーに十分対応が出来ることが証明され、魔法師のドッペルゲンガーへの対応戦略も練られてきている。
今迄のように、容易に魔法師が後れを取る事は少なくなるだろう。
しかし、皆が松戸基地の襲撃が無謀であると思っているという事も、ドッペルゲンガー陣営も当然考えているだろう。逆にその認識の裏を突かれはしまいかと、悠は漠然と不安を覚えたのだ。
22日の晩。
悠はりせを通じて、通信で稲羽に居る直斗と話し合いの場を持つ。
直斗に現在の状況と今回の襲撃場所の件について、説明をする。
「確かに、鳴上先輩が動けない受験時に襲ってくる可能性は十分ありますね。襲撃場所も、今まで政府がガードしていなかった場所だけに、可能性は高いです」
直斗は幾分か間を置いてから、ゆっくりと口を開く。
「直斗もそう思うか」
「はい、但し、相手の狙いについては、さらに考慮する必要があります」
「どういうことだ。教えてくれ」
「ドッペルゲンガー対策室と鳴上先輩は、ドッペルゲンガーの狙いは、魔法師から生命エネルギーとサイオンを奪う事、そして、魔法師を捕えシャドウを引き出し仲間にする事と予測しているのでしょう。最終的には神魔を降臨させるなどの企みをいだいているのでしょうが、そこは僕も同じ意見です。
僕は、ドッペルゲンガーの狙いは、別にもあると思います。ドッペルゲンガーが最終的な企みを成就させるために、必ず障害になるもの……先輩、あなたの……鳴上悠の排除です」
直斗は淡々と説明口調で語るが最後は間を置きその名を出すのに躊躇した。
「……それは」
「確かにドッペルゲンガーにとって、エネルギー確保と仲間の確保は重要です。しかし、それと同じ、いやそれ以上に先輩の排除は重要な案件なはずです。今回彼らがこの機会に何らかの大規模作戦を実行するのであるならば、鳴上先輩の排除も並行して計画に必ず組み込んでるはずです」
直斗は一呼吸おいて、話を続ける。
「直斗君、悠先輩を直接狙ってくるって事?」
りせはここで話に入り直斗に聞く。
「となると、受験会場が狙われる可能性があるという事か?」
悠も直斗に聞き返す。
「直接ですか。僕がドッペルゲンガーであれば、そんな事をしません。あまりにもリスクが高すぎる。先輩を倒すには、疲れさせ、消耗させ、判断を鈍らせてから仕留めます」
「そんな事をどうやって……だったら悠先輩が受験してる間は狙われないってこと?」
「受験会場を直接狙うのは愚の骨頂。猪武者のような所業です。僕だったら、鳴上先輩を誘き出し、引っ張りまわし、疲れたところを最終的には自分たちの力を最大限に出せる場所に誘導し、仕留めます」
「じゃあ、悠先輩が誘き出されなかったらいいの?」
「先ほども言いました。それはそれで、鳴上先輩が動けないという優位性をドッペルゲンガーは利用し、エネルギーや仲間確保に最大の邪魔が入らずに動けます。
僕がドッペルゲンガーだったら、この鳴上悠が動けない可能性があるというこの日に、相手の裏をかいて、すべての問題を解決するための行動を起します」
「………」
悠は直斗の話に黙って聞きいる。
「でも、そんな方法あるの?悠先輩やドッペルゲンガー対策室の偉い人が考え付かないような?」
「ドッペルゲンガー側に相当頭が切れる何者かが加わったはずです。鳴上先輩からの情報からでもそれがよくわかります。1月末から明らかに動きが異なります。それまでの鳴上先輩の動きを読みながら、他の魔法師を襲うというものはありました。単純な戦術的思考の元、動いていた。その時もある程度戦術論を持った指揮官クラスの仲間がいたのでしょう。しかし、第一高校襲撃前後から異なります。
第一高校襲撃は綿密に計画された上での作戦です。もし、あの場に鳴上先輩が偶然に居なかったら、久慈川さんではなく、同じ事務所の後輩の真下かなみさんが第一高校に呼ばれていたならば、ドッペルゲンガーは確実に異界の門を開き、神魔の召喚に成功していたでしょう。
あの事件は、鳴上先輩と久慈川さんが偶然あの場に居たから防げただけの話です」
「確かにそうだ」
悠は呻く。
あの偶然が無ければ、真由美やリーナ、そして達也や深雪たちが、ドッペルゲンガーの魔の手に落ち。同じ姿のドッペルゲンガーとして、自分の前に現れたかもしれないと……そして、神魔が降臨し、人々に厄災をもたらしていた可能性があると。
悠はそう改めて思うと、背中に冷たいものを感じた。
「まあ、その偶然すら引き寄せるのが鳴上先輩なんですが。それは別として、その後の動きもそうです。鳴上先輩を最大の敵として認識し、菜々子ちゃんを襲った手際。久慈川さんのエネミーサーチの効果など知る由もないのに、鳴上先輩達が何らかの探査方法を持ってると確信し、無駄に動かず息を潜め、機会を狙うその慎重かつ冷静な判断力。かなり頭の切れるブレーンがドッペルゲンガー側の仲間に加わったと思って間違いないでしょう」
「直斗、今の刑務所関連の防衛については読まれてる可能性があると」
「はい、残念ながら……」
「ならばどうすれば」
「その裏の裏をかけばいいんです。そして相手はまだ、鳴上先輩の真の力を知らない。先輩の優れたペルソナ能力だけに、目がいってる。先輩の最大の力は……絆の力です」
2月24日(木)11:08 松戸基地
迫りくるドッペルゲンガーの眷属に浮足立っていた外壁防衛担当の兵士達。
しかし、指揮官は既に外壁が突破されたのを確認し、第一防衛ラインの放棄を指示、各兵に直ぐに外壁から内壁へと撤退させ、態勢を整えようとした。
待機していた兵士も戦闘準備を行う。
霧の結界の影響で、各種外部への通信網は遮断され、電波による通信は妨害された今、発令室では、入れ替わり立ち替わり兵士が入退室を繰り返す。指揮官クラスが兵士を走らせ、命令指示を現場に送っていたのだ。すでに第一高校襲撃事件の教訓を生かした対応がなされていた。
松戸基地内のVIPルームでは、優雅にティーカップを片手にし、シックな落ち着いた服装の女性が窓の外を見、呟く。彼女は普段はドレスのような服装を身にまとうのが常なのだが、今は、動きやすそうな服装をし、髪も後ろでまとめている。それでも彼女が醸し出す気品は薄れない。
「ここにも来たようです。彼がもしやのためにと、わたくし達をここにと。どうやら徒労に終わらずにすむようですわね。……流石わたくしが見込んだ方」
窓の向こうから有象無象のドッペルゲンガーの眷属が迫っているのを目の当たりにしても、その女性は落ち着いた面持ちであった。むしろ感心したような口ぶりだ。
VIPルームに数人の戦闘服を着こんだ魔法師が現れる。
そのうちの一人新発田勝成は窓の外を見据えている女性に、代表し指示を仰ぐ。
「ご当主様、ご命令を」
「四葉家が再スタートするにはいい機会ですわ。迫りくる怪物を倒し人々を助ける。まさに正義の味方ですわね。わたくしと貢さん達は収容所に向かいます。先ほどの入間襲撃では収容された犯罪者の中に、化け物が混ざっていたようです。ここもその可能性は十分にありますわ。勝成さん達は、ここの指揮官と連携を密にとり、情報をわたくし共に常に知らせてください。四葉の正義の力を世に知らしめましょう」
霧の結界が形成され、通信網が遮断される前に、真夜の元には入間襲撃の情報が既に逐一耳に入っていたのだ。
四葉家当主、四葉真夜は悪戯っぽい笑みを浮かべながら振り返り、部下にそう指示を出し、自らは黒羽貢と何人かの魔法師を連れ、VIPルームをでる。
その頃、達也と深雪、真由美とリーナは、八王子特殊施設群に幹比古、エリカ、レオを残し、りせの指示に従い移動を開始していた。
そして……
肝心の鳴上悠は……
「さあ、行こうか」
週1ぐらいの更新頻度と考えております。