ペルソナ使い鳴上悠と魔法科生   作:ローファイト

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何とか続きが書けそうです。
久し振りに読み返すと、文章がおかしい所が結構あるので、ちょくちょく修正いたします。


第五十八話 救援と終息

八王子特殊施設群を襲撃したドッペルゲンガー4体を見事撃退した達也達特別遊撃隊は、幹比古、エリカ、レオを残し、達也、深雪、リーナ、真由美は次の襲撃に備えて近隣にある緊急用のヘリポートへと移動し、七草家が所有するヘリへと乗り込む。

現在襲撃されている入間特殊刑務所群に援軍に向かうためだ。

りせの情報によれば、現在入間特殊刑務所のドッペルゲンガー襲撃状況は、予想範囲内であったため、警察組織とシャドウワーカーの戦力だけでも耐えうると判断していたが、万が一の不測の事態に備えて、いつでも救援に向かえるよう準備していたのだ。

 

しかし……

『みんな!松戸基地がドッペルゲンガーに襲われるかも知れないって悠先輩が!』

 

「りせさん。どういう事?入間特殊刑務所に10体の襲撃、八王子の4体を合わせて14体よ。ドッペルゲンガーは残り5、6体位しかいないはずでは?その数で松戸基地は無いのでは?」

りせのテレパスを受けた真由美はりせに聞き直す。

この疑問は当然だ。悠達やドッペルゲンガー対策室の見解は、今迄残りのドッペルゲンガーは凡そ20体前後と予測を立てていたからだ。

既に14体が現れ、そのうち八王子に囮として襲撃した4体は既に真由美達が撃滅させている。

ヘリに乗り込んでいる達也や深雪、リーナも真由美の意見に頷いていた。

 

『入間刑務所の内部からクモのドッペルゲンガーが現れたの!しかも受刑者として初めから紛れ込んでたみたいなの!』

 

「内部からどうやってドッペルゲンガーが!?」

「……内部から…クモのドッペルゲンガーの特性か…受刑者に擬態、可能かもしれない……しかし、いつから誰が」

リーナは純粋に驚き、達也はクモのドッペルゲンガーが生きた人にそのまま憑依できることを思い出し、その可能性を検証するが、受刑者なら身元が分かっているはずであるためドッペルゲンガーに憑依されている可能性のある人物は全部排除されているはずだと、それならば誰が憑依されたのかという問題と、いつの段階で入所したのかという時間的な問題に疑問が残っていた。

 

『クモのドッペルゲンガーは、生きた人にそのまま憑依することができるのは皆知ってるけど……憑依されたのは私達が検討してなかった人たちなの。憑依されていたのは竹内正彦、USNAに拠点がある国際反魔法政治団体OPPO(Ordinary People Political organization)、国際犯罪シンジケートの構成員で、しかも日本では反魔法政治団体ブランシュの構成員としても活動してた奴よ』

 

「なるほど。何も魔法師は日本に登録されている人間だけじゃなかったな。日本に潜伏する犯罪組織や他国のスパイの中には強力な魔法師も存在する。そこを狙われたと言う事か……という事は、俺達が見積もった20人より、遥かに上の戦力がドッペルゲンガーに存在するということか……松戸基地の襲撃の可能性が十分に出て来た。……敵に相当切れる奴がいるということだな」

達也はりせの報告に納得し、松戸襲撃の可能性がある事を理解した。

 

『達也の言う通りよ。悠先輩は松戸に移動開始したわ。真由美さん達も松戸に念のため救援に向かって』

 

「りせ、入間もピンチじゃないの?内部からの攻勢なんて予想外も良いところよ。クモのドッペルゲンガーが私と深雪と戦った相手と同じぐらい強力だったら、普通の魔法師では歯が立たないわ。防衛側も浮足立つだろうし、入間に行った方が良いんじゃない?松戸はこう言ってはなんだけど、魔法師が入間の数倍はいるんでしょ?しかも国防軍も千単位で」

リーナの意見は至極真面だ。松戸襲撃に確証がない段階で松戸基地に戦力を送るよりも、現在ピンチに陥っているだろう入間に戦力を送るのは当然である。

リーナの意見に皆は頷いていた。

 

『……その、入間の受刑者の中に、強力なペルソナ使いが1人いたの……私も知ってる人で、悠先輩とはかなり関わりがある人。悠先輩がその人が居るから入間は大丈夫だって』

 

「……受刑者にペルソナ使い?」

「受刑者にペルソナ使いが存在する……しかも鳴上さんやりせさんの知り合い」

深雪は疑問に思い、達也は思わずその事実を小声で口に出していた。

 

『うん。私も悠先輩もさっき知ったの。その人は私達と敵対してた人。でも、悠先輩はその人を信用してるの……ペルソナ使いとしては、かなり厄介で強い人、私一人ではとても太刀打ち出来ないぐらいに』

 

「りせさんが太刀打ちできないなんて!受刑者で……そんな危険な人!」

真由美が驚くのも無理はない。りせの戦闘力がかなり高いのをその目で見ているからだ。

 

『あ!クモのドッペルゲンガーが消滅した。この感覚はマガツイザナギ……足立さんが……』

 

「え?もう?クモのドッペルゲンガーを?」

「この短時間でクモのドッペルゲンガーを倒すことができるペルソナ使い……しかも受刑者か」

深雪と達也は先ほど同様に声を上げる。

 

『うん……』

りせのテレパスで聞こえてくる頷く返事には、どこか迷いのような感情が流れでていた。

 

「……わかったわりせさん。私達は松戸に向かうわね。……ヘリを松戸基地に出してください。本家に連絡し松戸基地に着陸許可を」

真由美はりせの返事を聞き、松戸へ出発することを決め、ヘリに同乗している七草家の構成員にその事を伝える。

 

 

 

 

 

松戸基地まで後10分で到着する位置までヘリに乗った一行が到達した際、新たな情報がりせによってもたらされた。

 

『悠先輩がピンチなの!』

 

「悠が?りせどういう事?」

「え?りせさん。悠君は人質を解放して、優勢に事を運んでいたのでは?」

「あの鳴上さんが?」

「……鳴上さん」

リーナ、真由美、達也、深雪、ヘリで急行しているメンバー全員が、りせのその言葉に驚いていた。

圧倒的な戦闘力を誇るペルソナを扱うあの悠がピンチに陥ることなど、想像できなかったからだ。

しかも、その前のりせからの情報では、悠が活躍し、松戸基地を一人で解放する勢いだったのだのにだ。

 

『人質を解放した後、ドッペルゲンガーは撤退したんだけど、魔獣が3体出現したの!』

 

「……第一高校の時と同じか、あのレベルの戦闘力を擁した魔獣が3体、流石に鳴上さんも厳しいか」

達也は第一高校に現れた魔獣ホーンドサーペントを思い出す。

 

『一体一体、魔獣を倒すのは可能だったのだけど。でも、その間に基地の人たちがやられちゃうから、防戦一方なの。魔獣3体の攻撃をペルソナで全部受け切ってるけど……』

 

「悠、悠は大丈夫なの?」

「……悠君」

「……鳴上さん」

リーナ、真由美、深雪はりせと達也の言葉を聞き、悠が劣勢に陥っている事を悟り、心配をしていた。

 

『ペルソナ自身は防御に特化したペルソナでダメージ回復も可能、でもペルソナのダメージは……その、悠先輩にも精神的苦痛として届くわ……今も悠先輩はその苦痛に耐え続けてるの』

 

「全然だめじゃない!第一高校の魔獣のような攻撃を受け続けて、大丈夫なはずはないわ!」

リーナはりせの言葉で、心配から焦りに変わる。

 

「悠君……」

真由美はより一層、心配する面持ちに。

 

「なるほど、ペルソナは術者の精神体というのはそういう事か、本人の精神体であるペルソナのダメージは術者にも届く、自在に操れる半面そんな弱点もあるわけだな」

達也はりせの言葉を冷静に分析する。

 

「お兄様、今はそのような事を……」

深雪は、悠の心配よりもペルソナ自身の事を注視する達也に諫めの言葉をかける。

 

『悠先輩、精神的にも強い人だから、今も何とか耐えてるけど……あんな攻撃を受け続けたら……ううん。悠先輩は皆を待ってる。それまで絶対耐えられる。だから早く来て!』

 

「急いでください!」

真由美はヘリを急がせる。

 

 

 

そして、一行を乗せたヘリは松戸基地上空へ

外からは、何も変わったように見えない松戸基地。

ただ、人の姿が全く見られない。警備する兵隊の姿さえも……

これはドッペルゲンガーの霧の結界の影響だ。

外からは霧の結界を張った時の状態をそのまま映しだす。

但し生命体などは映し出さない。

 

 

『みんな、ヘリから直接降りられるよね!悠先輩のペルソナコウリュウの上から霧の結界に穴をあけて入れるようにするから、そこから入って!魔獣を一体やっつけて、悠先輩を!』

 

「わかったわ」

「悠待ってて」

「はい」

「……」

 

真由美、リーナ、深雪、達也の順番にヘリを飛び降り、飛行魔法で、りせが霧の結界の一部にジャミングを掛けて、小さな穴を開けた地点に飛び込んでいった。

 

そして、一行が見たものは……とてつもなく巨大な黄金の龍が基地全体を覆い、光り輝く鳥の魔獣と赤と紫のヘビの魔獣の攻撃を受け続けている姿だった。

一瞬、魔獣が小さく見えたが、ヘビの魔獣は40メートル、光り輝く鳥の魔獣は30メートルはある。

体長500メートルのコウリュウが巨大過ぎて、縮尺がおかしく見えたのだ。

 

「……黄金のドラゴンが悠のペルソナ……なんて巨大なの」

「なんて大きさだ。あれもペルソナなのか」

「綺麗……」

「悠君…居た!」

コウリュウを見たリーナと達也は驚きを、深雪にはその姿が美しく映っていた。

真由美も驚いてはいたが、悠を懸命に探し、コウリュウの頭の上に立つ悠を見つけた。

 

しかし、4人が上空から現れた事に気が付いた光り輝く怪鳥サンダーバードは、雷撃を束ね、彼女らに放つ。

悠はそれをさせまいと、コウリュウの首を伸ばし、雷撃の束を顔面で受け、無効化させた。

そして、4人をコウリュウの頭の上へと誘い、着地させる。

 

「悠!」

「悠君!」

「鳴上さん!」

「……」

 

「みんな来てくれて助かる。正直厳しかった」

そう行って軽い笑みを向ける悠の額は汗を滲ませており、その表情からは何時もの余裕がなく、疲労が見て取れた。

この間もコウリュウはダメージを受け続け、3体の魔獣から基地を守っていたのだ。

 

「な、鳴上さん…大丈夫なのですか?」

「悠君……」

「悠、後は私達に任せて!」

余裕のある表情をした悠しか知らない深雪は純粋に心配する。

真由美とリーナは悠が無茶をしている事を知っており、リーナは早く悠を助けたいと声を上げる。

 

「……一人でこの魔獣の攻撃を受け切っていたのか」

達也はコウリュウの頭から、魔獣たちの戦術級の攻撃を放ち続ける様子を目の当たりにし、改めて悠のペルソナ能力の凄まじさを感じていた。

 

『みんな悠先輩と合流できたみたいね。魔獣は鳥の形をしたサンダーバードと、紫ヘビがキチアトハシス、赤ヘビがウイーウィルメック。みんなはウイーウィルメックっていう赤のおっきな蛇を倒して!体中に生えてる長い触手から吸血して、体中の皮膚から酸をまきちらして、いろんなものを溶かすの!でもみんななら大丈夫!』

りせはそう言って、4人に指示を出す。

実際には直斗が4人の能力を確認し、立案した攻略方法だったが、今の4人には知る由もない。

 

4人は飛行魔法を使い、ウイーウィルメックへと近づく。コウリュウの間合い内であれば、悠が彼女らを攻撃から守る事が出来る。

 

4人はコウリュウの防御範囲ギリギリの建物の上に立つ。

リーナは背負っていた細長いハードケースから、120cmと40cmの円筒状金属の棒を十字にクロスさせたような物を取り出し、短い棒の方を手に持ち腰に構えた。

これはリーナ専用の携行兵器、ブリオネイク。リーナの戦略級魔法ヘビーメタルバーストを指向性と威力の調整を可能にさせ、収束ビームとして打ち出すための魔法兵器だった。

 

ウイーウィルメックはヘビというよりもヒルやナメクジのような性質を持っていた。

動きは全体的に緩慢だが、弱点らしい弱点もなく、物理攻撃もそのヌメヌメとした表層が攻撃を受け付け難くしている。

さらに、再生能力も高く、頭の脳の部分と胴体部の心臓の部分に核が存在し、それを同時に滅しなければ、再生していくのだ。

その為に、リーナの最大火力、指向性を持つブリオネイクによる高威力収束ビームで、脳の部分と心臓の部分を同時に討ち抜く作戦だ。

 

そして、皆はりせの指示通りに動き出す。

達也はこの作戦をりせから聞かされた時には躊躇していた。りせの口から分解魔法の使用を伝えられたからだ。達也は再生魔法が使える事は皆に公表していたが、分解魔法については、知らせていなかった。あまりにも危険な魔法な上に、四葉家としても機密事項とされているからだ。

達也は以前、悠に戦略級魔法を使用する機会が出てくることを言われた事を思い出す。

既に、達也のプロフィールや魔法の一切はりせや悠に把握されているのではないかと……。

四葉家が悠によって一度解体し、当主の四葉真夜は悠に対して完全降伏宣言をしている状況下では、悠に知られていてもおかしくないのではあるが、間違いなく四葉解体前に知っていた節があった。

そもそも、りせの能力に対しても疑問を持っていた。達也が把握しているのは、テレパスと状況把握能力という程度だが……それの精度について、明らかに本人以外知らない情報や、初見で相手の情報を看破している節があるからだ。

リーナや真由美も分解魔法の話が出ても、特に驚いた顔をしていなかった事も気になるが……

達也はそれらの疑問をグッと抑え、今はりせに従う事にした。

戦術級の攻撃をずっと受け続ける巨大なペルソナコウリュウを見渡しながら、今更だなと……

しかも、今も自分たちは、このコウリュウのおかげで、魔獣たちの攻撃を受けずに済んでいる状況である。もし、悠の精神ダメージが限界が来て倒れた場合、確実に自分や深雪が魔獣達の攻撃に晒される事は間違いないからだ。

 

そしてウイーウィルメックの殲滅作戦が開始される。

先ずは真由美の魔法攻撃でけん制し、ウイーウィルメックの注意をこちらに向け、体ごとこちらに向けさせる。

次に深雪が領域冷却魔法ニブルヘイムで、ウイーウィルメック周辺すべてを凍らせる。それでもウイーウィルメック自体を氷結させることはできなかったが、少しの間動きを止めることができた。

そして、達也がウイーウィルメックの下のコンクリートや地面を分解し、ウイーウィルメックの位置を調整、正確には角度だが、それによってリーナのブリオネイクの射線上に脳と心臓が重なる。

りせの掛け声と共に、リーナがヘビーメタルバーストを発動させ、ブリオネイクから高威力ビームが放たれた。

 

ウイーウィルメックの頭から脳と心臓を見事打ち抜かれ、一瞬体が痙攣した後、体表中に蠢いていた触手が、一斉に動きを止め、その巨体が地面に沈む。

ビームによって空いた体の穴から酸が漏れ出すが、深雪によって放たれたニブルヘイムの効力により、酸は凍結していく。これで酸の流出も防ぐことができた。

 

「やったわりせ!」

リーナは魔獣を倒したことに喜びの声を上げる。

 

「……凄い威力ね」

「リーナ…あのような魔法を持っていたのね」

真由美と深雪はリーナの放った魔法に驚きと感心の声を上げる。

リーナは世界に13人しか確認されていない戦略級魔法師の一人だ。その戦略級魔法ヘビーメタルバーストの指向性と威力調整を行ったのが、今回の魔法だ。まずお目にかかる事は無いだろう。

戦略級魔法はその名の通り、広範囲に威力を発揮する魔法だ。その魔法を真直に見ると言う事は、本来は死を意味している。

 

「ヘビーメタルバーストの応用か…指向性と威力調節…あの魔法兵器がそれを可能に……なるほどFAE理論を完成させていたのか」

達也もその魔法に驚きを隠せなかったが、真由美と深雪とは別の角度で驚いていた。

ブリオネイクという携行兵器がFAE理論を使った高性能の魔法兵器であることを、達也は見ただけで理解したのだ。

 

4人の息の合った連携で、巨大な魔獣を倒すことができたのだった。

 

 

『うん!流石みんな!でもまだよ!次、次、悠先輩を早く楽にさせてあげないと!』

 

「そうね!りせ次はどうすれば!」

 

『さっきと同じ要領だけど、スピードが速いからちょっと厄介。でもみんななら大丈夫!』

りせはそう言って皆を励ましながら、紫の巨蛇キチハトアシス殲滅作戦を伝える。

悠の方も余裕ができ、まずはコウリュウのジオダインの一撃を加え、動きを抑えてから真由美と深雪の魔法でけん制つつ、深雪のニブルヘイムで動きを止める作戦だったのだが……防御中にコンセントレイトで威力を高めていた悠のジオダインが、キチハトアシスに大ダメージを与えて動きを止めてしまったため、そのまま達也の分解魔法での位置調整と、リーナのブリオネイクによるビーム攻撃で、キチハトアシスは死に至る。

 

 

残るはサンダーバードのみ。

 

「ペ・ル・ソ・ナ!オーディン!」

悠はペルソナチェンジでコウリュウを戻し、巨大な槍を手に持つ紫の肌の巨漢オーディンを顕現させる。

 

北欧神話の主神オーディンは手に持つ聖槍グングニルを天に掲げる。

 

【万物流転】

 

聖槍グングニルの秘めたる力で、ありとあらゆる事象や物質を虚無に戻す絶技。

グングニルの槍が指し示す方向に飛翔していたサンダーバードの上空周囲から、突如として突風や竜巻が巻き起こり、それらがサンダーバードを中心として集まり、暴風の球体と化し包み込んだのだ。今の基地上空は幾つもの竜巻が起こり、雷鳴が響き渡っていた。

 

オーディンが聖槍グングニルを振り下ろすと空は一気に晴れ、竜巻や雷鳴、さらにはサンダーバードを包み込んでいた暴風の球体も、その中に居たはずのサンダーバードの姿も見えない。サンダーバードは虚無に返されたのだった。

 

そして霧の結界も解ける。

 

 

 

第二発令所では、この光景を見ていた指揮官の少将は身じろぎ一つせず、唖然とその光景を大口を開けたまま見ている事しか出来なかった。

ようやく出た言葉が「彼は……神か」

 

同じく参謀役も、茫然自失という体であった。

「ありえない……あんな力あり得ない……何だというんだ………」

 

 

その場に居た新発田勝成は……

「………なんて事だ。これが鳴上悠の力か………」

茫然としながらも自嘲気味な笑いが漏れる。

 

「わたくしが完敗したのも頷けまして?さて勝成さん。四葉は日本の裏側に巣くい、権力を振るう病魔と彼。何方の味方をした方がいいのかしら?」

勝成の後ろから四葉真夜は声を掛け、こんな事を聞いてくる。

満足そうな笑みで……

 

「……その」

真夜の存在に気が付いた勝成は慌てて向き直るが、その答えを言葉にできなかった。

しかし、勝成の答えは決まっていた。

四葉の分家達は、誰もが真夜が四葉を解体と再構築してクリーンな四葉を目指すと宣言した際には耳を疑い、決定には従うが、納得しかねている状態だった。

クリーンな四葉や正義の味方云々はさておき、鳴上悠と敵対することは選択肢としてあり得ない事を、今、思い知ったのだ。

 

 

 

青空が広がる松戸基地はしばらく静けさを保っていた。

 




次はりせ回の予定です。
まだ、この事件の一連は終わってません。

2020年9月中には次話を投稿できそうです。

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