ペルソナ使い鳴上悠と魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。

今回はペルソナ風で言うと、推理パートです。




第六話 検証と探り合い

2096年1月9日(月)PM

 

某都立高校の三学期初日の放課後。悠はいつも通り女生徒達を軽く巻いて、帰宅の途に着くが、校門先で予想通り黒い高級車が待ち構えていた。

 

車の窓から真由美の兄、七草智一が顔を出し、同行してくれないかと声をかけられ、悠はそれに承諾し、後部座席の智一の隣に座る。

 

「改めて礼を言うよ。真由美を助けてくれてありがとう」

 

「いえ、たまたま見つけることが出来ただけの事です」

 

智一はにこやかな笑顔で悠に礼を言う。

父弘一と違って、智一は温厚そうな人柄で、言葉も柔らかい。

智一は十師族七草家の長男で年は24歳、既婚者で家を出て都内の高級マンションに住んでいる。

 

「申し訳ないけど、今から、当家に来てもらって詳しい話を聞かせてほしい」

 

「わかりました。七草は大丈夫ですか?」

 

「大分衰弱していたけど、命に別状はないよ。今は大人しく寝かせているよ」

 

「そうですか」

 

「会っていくと良いよ。真由美もお礼を言いたがってたし」

 

「そうさせてもらいます」

 

 

悠と智一を乗せた高級車は広大な敷地を持つ七草家の門の中へと通って行く。

しばらく進み大邸宅のエントランスで高級車は止まる。

 

「……東京にこんな広い土地の家があるんだな…ジュネス丸々1個分はあるな」

悠はボソッとそんな感想をもらしながら、執事風の家人に外から扉を開けてもらって車を降りる。

 

悠は広々とした玄関に入り、長い廊下を案内され、応接間らしき部屋に通される。

中は高級そうな調度品がところどころに置いてあり、広々とした空間の真ん中にアンティーク調の応接セットに、真由美の父、七草家当主七草弘一が座っていた。

 

「鳴上くん。まずは礼を言おう。真由美を連れ帰って来てくれてありがとう。感謝する」

弘一は立ち上がり悠に礼をし握手を求める。

 

「たまたまです」

 

「座ってくれ」

 

「お言葉に甘えて」

悠は弘一の対面に座り、智一は弘一の右横に座る。

部屋の入口には家人が二人控えていた。

 

「鳴上くん。率直に聞く。なぜ真由美の居場所がわかったのかね」

そう言う弘一の視線は鋭い。

もしかすると、悠に何らかの疑いを持っているのかもしれない。

 

「偶然に近いですね。昨日あなたに会ってから俺は直ぐに、渋谷に向かいました。渋谷近郊の公園で七草…真由美さんが行方不明になったと聞きましたから」

 

「なるほど」

 

「どこの公園かはわからなかったので時間を食い、6つ目の公園で捜査員ですか、七草さんところの人だと思われる方達を見かけ、彼女が行方不明になったのはこの公園に向かっている前後だと判断しました」

 

「ほう。自力で探していたということか。君が見かけた捜査員は我々が派遣した家人達で間違いないであろう」

 

「俺はそこで違和感を感じました」

 

「違和感?……捜査員は特に何もなかったと言っていたけど」

智一はここで会話に入る。

 

「近くで烏が鳴いていたんです」

 

「烏?それがなぜ?烏など東京に掃いて捨てるほど居るが」

 

「烏は夜目が効きません。俺が居たのは午後9時頃、烏はとっくに活動を停止している時間帯だ」

 

「ほう」

 

「そして、烏が鳴いている場所へ行くと、小学校があり、何やら怪しい雰囲気だったので、中の様子を見たところ、霧が立ち込めていました」

 

「…………」

 

「俺は何かあると思い。校内を散策することにしました」

 

「君、行動力あるね。勝手に小学校に入って通報されると思わなかった?」

 

「いえ、俺も必死だったんで、友人が行方不明な状況で……そこまで考えが至らなかったです」

悠は智一にそう答えるが、当時は冷静かつ迅速に行動をしていた。

 

「そして、校舎の昇降口の鏡に七草…気を失っている真由美さんが姿見鏡に映っていたのを発見した…しかし、映ってはいましたが、俺の周りには彼女はいない…………鏡を調べると、中に入れたんです。信じられないような話ですが、彼女は鏡の中で囚われていたのです。また鏡の中は狭い空間でした。それで、そこから連れ出したんです」

 

「うむ……真由美の証言とほぼ一緒だな…………鳴上くん。真由美はある事件の犯人を追って居たのだよ。真由美は犯人らしき人物を追って、あの小学校に入ったと、すると君が言うように霧が立ち込めていたらしい。そして、犯人らしき人影を追って校舎に入った直後、光に包まれ、気がつくと鏡の中に入っていたと言うんだ。そんなことは常識的にありえないがね」

 

「真由美さんが何故、事件の犯人を追いかけるなど、そんな警察みたいなことを?」

 

「我々は十師族だ。魔法が関連している事件を解決するのも我々の仕事なのだよ」

 

「真由美さんはまだ、学生ですよ。なぜそんな危険な事を…しかも一人で」

 

「一人ではない、当時も家人5人と組んで捜査をしていた。追跡していた犯人が二手に別れたため、真由美ともう一人で片方を追ったのだ。ああ見えて真由美は高レベルな魔法師だ。遅れを取ることは無いと思っていた。しかし途中、あの公園あたりで同行していた一人が不意を突かれ、魔法攻撃を受け脱落し、真由美はそのまま犯人を追ってあの小学校へ向かったのだ」

 

「僕たちは、君が真由美を助けたあの後、深夜の小学校を隈無く探した。もちろん鏡も調査したが、異常は無かったし、犯人につながる手がかりも無かった」

智一達はあの後、真由美の証言を元に、深夜の小学校を調査したのだ。

 

悠は智一の話を聞いて、そうだろうと。あの烏人間が飛び去った後、鏡に異常を示す反応が霧と共に消えたからだ。鏡の異界化も消えたのだろうと想定していたのだ。

 

「君は犯人を見たか?」

 

「……多分見ました。真由美さんを助けてから、人影が敷地から飛び去ったのを」

悠は昨日の戦いについて、話すべきか迷ったが、あれはシャドウの可能性がある。自分の領分ではないかと、ならば話すべきではないとこの場では判断した。

話したとて、信じてもらえる可能性は低いが……

 

「ふう……普通であればその話は信じ難い。犯人は君を見逃したことになる。しかし君はどう見ても一般人だ。犯人は魔法師だけを狙っている。そう思えば辻褄は合うのかもしれない。もしくは一般人との接触を避けているのかもしれない。あまりにも一般人からの目撃情報が無いからだ」

弘一はそう想定していた。

しかし、目撃情報が無いのは、多分普段は烏に紛れて行動してるためだと悠は考える。

 

「君が犯人もしくは犯人の協力者なのかと疑いもしたが、君は魔法も使えないし、アリバイもある。バックボーンもそれを疑う余地が無い……しかし、君が真由美を助けた事実だけが残る。我々があれだけ必死になって探していたのにも関わらずだ。単なる偶然なのか………」

弘一は一息置いて話を続け、ため息を吐く。

弘一の口ぶりから真由美はこんな事態になっていても、悠の横浜での事、魔法師相手に戦った事を話さないでいてくれたようだ。悠は心の中で真由美に感謝するとともに、真由美との絆を感じるのであった。

 

「真由美さん……いえ、あなた方はなんの犯人を追っていたのですか?」

悠はそもそもの疑問を問う。

 

「……それは」

智一は返事を躊躇しているようだ。

 

「私から話そう……真由美も助けてくれたのは紛れもない事実だ。しかも巻き込んでしまっている。但し、口外無用に願いたい」

 

「わかりました」

 

「我々は昨年末から殺人事件の犯人を追っている。しかも複数人居るようだ。目的も素性も未だ分からないが、わかっていることは、魔法師を狙っていること。神出鬼没だということだ。メディアにもまだバレてはいないが、既に被害者が数人出ている。いずれも魔法師または魔法適性者だ」

弘一は悠にこのように説明するが、実際既に30人以上の犠牲者が出ており、七草家では6名の被害が出ていたが一般人である悠にわざわざ不安がらせる事を言う必要性はないと判断していた。

 

「そんなことが」

悠は真由美以外に被害者が既に出ている事実を知り、自らのペルソナ能力を明かし協力するかを一瞬頭によぎらせるが、先に対シャドウ部隊を要する桐条財閥に話したほうが良いのではないかと思いに至る。

 

「しかも死因がさっぱり分からないんだ。今回の事で鏡の中に閉じ込められたという信じられない現象も真剣に検証しないといけないと感じているよ」

智一は弘一の説明を補足する。

 

死因がわからない…稲羽市の霧の事件と一緒だ。

テレビの中に閉じ込められた人は、その中に居るだけで徐々に衰弱していく。さらにシャドウや自分自身が産んだもう一人の抑圧された自分(シャドウ)に襲われ、テレビの中で絶命すると、現実の世界でも死因不明で死体としてありえない状況で発見される。

真由美の衰弱具合も、きっとあの鏡の中の異界のせいだろう。

 

しかし、あの烏人間は魔法師を鏡に閉じ込めて何をしたかったのか……ただ殺すだけならばそんなまどろっこしい事はしないだろう。何か意味があったのだと……

 

悠はそこまで思考していると、弘一から声がかかる。

「呼び出してすまなかった。真由美に会って帰るといい。真由美はまだベッドから起き上がれない状態だが、君にお礼を言いたいと言っていた」

 

「そうさせてもらいます」

 

悠は一礼して部屋を出、家人に真由美の部屋へと案内される。

 

 

応接間に残った弘一と智一は……

「どう思う智一」

 

「なかなかの好青年だと思います。真由美が気に入るのもわかる気がします」

 

「……しかし、あまりにも堂々としている。我々の前でも全く怯んだ様子もない。彼はまだ高校生だ。

しかも、真由美を助けたあの行動力に判断力だ。一般人にああは出来ない」

 

「間違いなく彼は一般人ですよ。検査結果を見ても」

 

「そうだな……だが、在野のBS魔法師またはSB魔法師なのかもしれん。検査結果から外れるような」

 

「……そんなことは」

 

「わからん。ただ、彼が犯人やその協力者ではない事の裏付けは無数にある……彼が犯人ではないと判断できるが、それ以外に何かが引っかかる…………しばらく、彼を見ていた方がいいな」

 

「わかりました。そのように手配しますね父さん」

 

 

 

一方、悠は家人の案内で真由美の部屋の前まで来ていた。

 

「お嬢様。鳴上様がお見えになりました」

家人の女性がベッドの上で横になる真由美に声をかける。

 

「え?……鳴上くんが?……どうしよう。こんな格好で」

 

「お嬢様は病人です。そのままの格好でよろしいかと……」

 

「う、うん……どうぞ」

 

「お邪魔します」

悠はそう言って部屋に入ると、同時に中に居た女性の家人は一礼して部屋を出る。

 

「こ、こんにちは鳴上くん」

 

「こんにちは、具合どう?」

 

広々とした部屋に大きめなベッドの上で可愛らしいピンクのパジャマ姿の真由美は上半身を起こしていた。

 

「こ、こんな格好でごめんね。……まだ、体に力が入らないわ」

 

「横になっていたほうが良い」

悠は真由美に横になるように言いながら、体を支えようとする。

 

「う…うん」

真由美は悠がなすがまま、体を支えてもらいベッドに潜り横になる。

恥ずかしそうに顔を赤らめシーツを口元まで上げていた。

 

「鳴上くん…………助けに来てくれたんだ。……そのありがとう」

 

「ああ、当然だ。友達だからな」

 

「友達……」

真由美はホッとしたような残念そうな複雑な顔をする。

 

「無事でよかった」

悠は笑顔を真由美に向ける。

 

「……そ、その私、重くなかった?」

真由美は顔を真赤にし、悠に助けられた際、ずっと抱き上げられていた事を思い出す。

 

「ん?軽かったぞ。七草は小さいしな」

 

「子供扱いしないでよ……鳴上くんはその…他の子もその抱き上げたりするの?」

 

「ああ、従姉妹をよくおぶってた」

 

「……その娘は何歳?」

 

「今は8歳だな」

 

「……私もその娘と同じ扱いかしら」

真由美は眉を顰め小声でボソリと呟く。

 

「ん?何か言った?」

 

「何でもないわ………しばらくこのままだと暇ね」

 

「大人しくしておけ。病人は寝るのが仕事だ」

 

「……その、鳴上くん……また、来て相手してくれる?」

 

「ああ、邪魔じゃなかったら、また見舞いに来る」

 

「…あ、ありがとう」

真由美はもう一度シーツを引っ張って赤くなった顔を隠す。

 

しばらく、悠は真由美と世間話をして……

「じゃあ、お大事に」

そう言って、真由美の部屋を後にする。

 

 

悠は七草家の車で自宅付近まで送ってもらうことになった。

 

 

改めて昨日起きた事、今日の弘一と智一との話をまとめ、思考する。

 

何らかの殺人事件が年末から起きていた。

それを真由美、七草家が追っていた。

そして、その犯人はたぶんあの烏人間だろう。間違いなく異界の者。シャドウの気配を感じた。魔法も操っていた。

犯人は魔法師だけを狙って殺害しているという話だが……いや、殺すだけであれば、鏡の中、あの烏人間が曰く、鏡の牢獄に真由美を入れて閉じ込める必要が無い。

何が狙いなのかはわからない。

しかも、あの小学校は一時的に異界の霧に包まれ、鏡の中はまさしく異界そのものだった。

何者なのか、なぜあのような事ができるのかもわからない。

弘一の話では、犯人は複数いるという事だ。組織だって動いているという事なのだろうか?

あの烏人間、確か、イザナギの攻撃を受けて『この国にこれほどの使い手が』等と言っていた。

という事は、国外から来たという事ではないだろうか?

 

わからないことだらけだ。

 

ただ、この東京で何かよくない事が起きようとしていることは確かなようだ。

 

やはり、シャドウがらみの可能性も高い。

相手が組織だって動いていると想定した方がいい。俺一人でできる範疇を超えているのではないか……

しかし、遠く離れた稲羽に居る陽介達に助けを求めるわけにはいかない。東京にいるりせにもだ。今はアイドル復帰後の大事な時期……無用な事に巻き込みたくない。

東京にたびたび仕事で顔を出している直斗には相談に乗ってもらうだけならばいいだろう。

 

やはり、対シャドウ部隊を擁する桐条美鶴に話した方がよさそうだ。気が進まないが……

 

悠は桐条美鶴に直接連絡をし早々に会う約束をつける。

 

直斗にも今日の事を伝え相談するために、次の休みに会う約束をした。





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