ペルソナ使い鳴上悠と魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

すみません。ペルソナの現実世界での行使について、わたしの知識不足もあり申し訳ないです。
このお話では、ペルソナ能力は基本的に現実世界では使用出来ない設定で、使用できるのはP4のメンバーのみという形でお願い致します。

わたしの知識不足でちょいちょいおかしな設定が出て来るかもしれませんが、温かい目で見ていただくと助かります。



第七話 第三の勢力

2096年1月10日(火)PM

 

悠はいつも通り、放課後に女生徒達を撒いて学校を素早く後にする。

今日は桐条美鶴と会う約束をしており、原宿の喫茶店で待ち合わせをしていた。

予想通り、尾行する気配があったが、悠はそれらを自然体を装い撒く。

尾行者は七草家の人間だろうと想定していた。

 

「久々だね。鳴上悠くん。君から連絡してくれるなんて、こちらとしてはありがたいが、何かあったのかね?」

桐条美鶴は悠の3つ年上の落ち着いた雰囲気を持つ美女だが、貴族然とした態度と風格が彼女を年相応に見せない。少なくとも10歳は年上に見える。

 

「ご無沙汰してます。すみません。こんなところに呼びだしてしまい…どうしても直接話を聞いてもらいたい事があったので」

 

「かまわないさ。それで話とはなんだね」

桐条美鶴がこのような場所に一人で足を運ぶのは非常に珍しい。

彼女はこの若さで、日本有数の桐条財閥のトップに立ち、非常に忙しい身の上であったからだ。

そんな彼女だが、悠との話し合いに、若しくは顔を合わすだけでも、それに見合うだけの価値を見出している様だ。

 

悠は一昨日、シャドウの雰囲気を持つ烏人間に出くわした事を美鶴に話し出す。

 

「……シャドウの様な烏人間に、鏡の中の異界…限定的な異界化……現実の世界にシャドウが……」

 

「いえ、シャドウと雰囲気が似ているだけで、シャドウではないかもしれません。また別の何かなのかもしれませんが、異界の者ではあるとは思います」

 

「……例がないわけではないが……それも一例だけ、君の所のクマくんだ」

 

「……クマは確かに元シャドウだったかもしれませんが今は違います」

 

悠達と美鶴達ではシャドウに対しての見解が全く異なる。美鶴達はシャドウそのものを悪と捉え、対応手段は基本姿勢として攻撃殲滅を掲げている。悠達はシャドウを人から生まれた意思の一つだと捉え、対応手段はそれを律するための行動と対話を基本としている。

それは巻き込まれた事件や立場の違い。双方のシャドウとの関わりの違いから起因している。

特に悠たちは、一つの事件を戦闘行為を一切せず、音楽とダンスだけで、シャドウを抑え、解決している。

 

さらに美鶴は元シャドウであるクマの存在を危険視していたため、悠は桐条財閥とは距離を置いていたのだ。クマをよく知らない人物にとっては仕方がない事ではあるが……

 

しかし、悠は今回の事件でそうも言って居られないと感じ、同じペルソナ使いとして、シャドウに対抗手段を持つ者として、情報共有と対抗手段を講じようと、こうして美鶴に会いに来ていたのだ。

 

「すまない。気分を悪くしないでくれ、飽く迄も例を述べたにすぎない」

 

「いえ…ところで、東京でこれに近い事例や、事件などはありましたか?」

悠は七草弘一に事件の事は聞いていたが、美鶴からも生の情報が欲しいがため、このような聞き方をする。

もちろん弘一から口止めされていた影響があった事は否めない。

 

「……私の所には少なくとも上がっていないな」

 

「警察も情報を持っていないと」

 

「……確かに桐条は警察組織とタイアップし、対シャドウ部隊を立ち上げたが……実際は桐条の私設部隊と何ら変わらない。警察組織も魔法師の家系でない桐条の財力や権力を欲しているがために協力しているに過ぎない。実情は厳しいものなのだよ」

警察組織はすでに昨年末からこの事件について知っていたが、美鶴の対シャドウ部隊には情報を渡していなかった。

 

「そうですか…お察しします」

 

「こちらからも警察組織に問い合わす……ところで、君は七草家とも関りがあるのか?」

 

「助けた人物がたまたま七草家の子女だっただけです」

 

悠は七草家の子女を助けたことも伝え、七草家に聴取されたことも話している。

ただ、悠にとって、真由美を助けたのは七草家の子女だからではない。

友人である真由美本人を助けたかったからだ。

 

「七草家か……我々が関与できない可能性が高いな。十師族の力は強い。桐条も政財界に顔が利くが、軍や防衛に関しては、もはや手が出せない状況だ」

 

桐条美鶴は若くして桐条財閥を継ぎ、カリスマ性と才能を遺憾無く発揮、財閥の傾きかけた財政や地位を短期間で立て直し、魔法協会には通すことはできなかったが、政財界に働きかけ曲がりなりにも対シャドウ部隊を警察組織の席に組み込ませた若き俊英だ。

そんな美鶴を持ってしても、十師族の影響力は抗うことは困難であった。特に国防に関しては入る余地が全くない。

 

「それほどですか」

 

「残念なことにな……しかしながら、シャドウや異界が関わっていれば、通常の魔法師では対応できないだろう。被害が拡大し、どうしようもない状態になってから、我々に話が回ってくるのが落ちだ。ただ、指を咥えて待つのは性に合わない。私の方でも手段を講じよう。貴重な情報を持ってきてくれてありがとう」

 

「こちらこそ聞いていただいて、ありがとうございます」

 

「鳴上悠くん……ひとりで突っ走ることはしないでくれ……君の力は十分知っている。しかし、現実の世界ではどうだ……くれぐれも、危険なまねはしないでくれ」

美鶴は悠が現実の世界でペルソナ能力が使えることを知らないため、現実世界ではペルソナ能力者が無力な事を、こう忠告したのだ。

 

「肝に銘じます」

こうして、悠と美鶴との話し合いは終わりを告げる。

 

 

悠は桐条が直ぐには動けない事を知り、改めて、自らが先頭を切る覚悟をするのであった。

 

 

 

悠は早速行動に移す。

烏人間、もしくはその仲間の目的や所在、情報を得るために美鶴と別れた後、渋谷に出向き、一昨日に真由美が鏡の中で囚われていた小学校へと手がかりを探すために向かったのだ。

 

ペルソナを憑依させ小学校全域に探査(アナライズ)をかけるが、何の反応も出無かった。

鳥人間達があの小学校自体に何かのメリットがあり、拠点として使用しているのであれば、戻ってくるだろうと考えていたが、そうした訳では無かったようだ。

となると、魔法師を誘って閉じ込める罠として一時利用するだけの場所だった可能性がある。

ならば、もう、この近辺には現れないだろうと悠は考える。

 

 

 

悠は更に思考を巡らせる。

 

(烏人間が言っていた『鏡の牢獄』)

 

(これが捜索のキーポイントになるだろうな。

人間…魔法師を捕らえ、閉じ込めるための術。いや現象なのだろうか。

何の変哲もない鏡が使われている。七草家が七草(真由美)を捕らえた鏡を後で調べても何もなかったとの事からもこの線で間違いないか。

もしかすると、人を捕らえるためには、人の全身を映し出さないといけないのかもしれない。鏡の中の空間は鏡に映った部分だけしか広さが無かった。だから、七草(真由美)を捕えた鏡はあの大きな姿見鏡だったのかもしれない。

ポイントは大きな鏡がある場所で、人を誘導しやすい場所……そうか、人気が少ない場所が烏人間達の罠『鏡の牢獄』を張る場所として最適か……

そういう場所を選定すれば、烏人間やその仲間に行きつくはず)

 

(しかし、東京だけの現象なのだろうか?

ここは、東京だけと限定した方がいい。それ以上は今は考えない方がいいだろう)

 

 

悠は思考しながら、渋谷駅前まで戻ていた。

 

 

(人通りが多い繁華街や町中では犯行は出来ないだろう。

そうなると、人気が居ない場所。……やはり、夜に人がいない公共施設。学校、スポーツ施設、図書館、美術館……警備員がいないとなると公立の学校が一番手っ取り早い……)

 

(後はあの霧だ。あの異界の霧はどうやって生み出したのか……霧もポイントか……もしかするとあの霧が無いと鏡の異界化『鏡の牢獄』ができないのかもしれないか。

飽く迄も推測でしかない。霧の件もひとまずは後回しにするしかないな)

 

 

(わからない事だらけだが、魔法師をとらえる方法と、場所の予測だけは、何とかなりそうだ。

この線でしばらく動くか……)

 

 

悠は考えをまとめ、携帯端末で、まずは渋谷近隣の公立学校をマッピングする。

繁華街や人通りが多い場所は除外すると、近隣では該当する学校は3つ。

悠はその3つの学校を今から捜索する事にした。

 

 

 

2096年1月10日(火)21:02

 

1つ目の小学校は特に何も見つからず。悠は今、2つ目の学校、中学校敷地外から、ペルソナ能力で探査(アナライズ)を掛けた。

しかし、ここも反応は見つからず、特に問題はなさそうであった。

 

悠は3つ目のマッピングしている学校へと歩み出す。

途中で、大きな公園を抜けようとした際。公園の林に身を潜めている明らかに怪しい集団を感知した。

全員戦闘服らしきものを着ている。しかも集団の中央に位置する一人の女性?はかなり怪しい風貌だ。

 

悠はペルソナ能力で視力を上昇させ、戦闘服を着た怪しい5人程の集団の様子を改めて目視で確認する。

中央の女性は怪しい仮面を被り真っ赤な髪を振り乱し、その双眸は怪しく金色に輝いていた。

 

(シャドウ……いや、雰囲気が……鳥人間の仲間か?しかし、後の戦闘服の人達は)

 

悠はペルソナ能力で遠方からその集団に探査(アナライズ)を行う。

 

(……人間…か…とりあえずは安心か、こんなところで戦闘服を着た人間が何を?テロリストか?)

 

怪しい仮面の女性は悠に気が付いたのか、悠の方向を振り向きその怪しく光る眼で見据え、

そして、人間とは思えない凄まじいスピードで悠に迫ってきたのだ。

 

(!アナライズがばれた……魔法師か?……逃げるか…いや、テロリストなら無力化した方がいい)

 

悠はイザナギを憑依させたまま待ち構えることにする。

 

「あなたは何者!」

凄まじいスピード(加速魔法)で迫ってきた怪しい仮面の女性は悠の5m手前で立ち止まる。

意外にも声は若々しい。

 

「貴方こそ、何者だ。明らかに怪しい風体だ。テロリストか何かか?」

 

「あなた!私に何か魔法を仕掛けたわね。何のつもり!」

やはり悠の探査(アナライズ)がばれた様だ。

探査に優れたりせのヒミコのアナライズなら精度も隠密性も非常に高いため、ばれなかった可能性が高いが、悠ではそうはいかなかった様だ。

ただ、戦闘服の5人の内、この怪しい仮面の女性だけが悠の探査に反応したことから、この中で一番の使い手なのかもしれない。

 

「何もしていない。ただ怪しい集団を見かけたから、何なのか遠目で確認しただけだ」

 

「あ、怪しくないし、テロリストでもないわ」

仮面の女性は怪しい風体のわりに、弱腰だ。

 

「町中で戦闘服を着て、こそこそしている人間が怪しくないと」

 

「うっ……怪しいけど!怪しい者じゃない!」

この言動…なにか雲行きが怪しい。本当にテロリストなのかと疑いたくなる悠。

 

「街中で戦闘服などと…警察か?軍か?一般市民に身分を開示する義務があるはずだ」

 

「え?身分の開示?義務?」

明らかに狼狽える怪しい仮面の女性。

 

「少佐まずいです…ターゲットではないですが、我々は見られ、通報されるかもしれません。そうなると後が厄介です。この少年を始末することを提案します」

怪しい仮面の女性に後から追いついてきた4人の戦闘服の一人が、悠に聞こえないように彼女に耳打ちしている様だが、ペルソナで感覚を研ぎ澄ましている悠には丸聞こえだ。しかし、その話す言葉は英語だった。

 

(少佐?どこかの軍属か?しかも英語だ。俺を消すつもりらしい……俺は見てはいけない物を見たということか)

悠は戦闘になることを踏まえ心の準備をする。

 

「……いいえ、ここは撤退しましょう。一般市民に手出し無用。下手をすると外交問題になりかねません」

「少佐、しかし……」

「これは総隊長としての命令です」

「……了解」

怪しい仮面の女性と戦闘服の一人が小声で話を続けていたが、どうやら悠を見逃してくれるようだ。

 

(……外交問題……となると同盟国ということか……英語で会話……同盟国USNA(北アメリカ大陸合衆国)の軍だな………しかし、少佐と呼ばれたこの仮面の女性…俺を見逃してくれるらしい)

 

「ま、まあ、いいわ。今日の事はお互いのため、見なかったことにしましょう。くれぐれも口外しないように」

怪しい仮面の女性は悠に向き直りそう言って、悠が何か言う間もなく逃げる様に撤退していった。

 

 

(何だったんだあれは……テロリストでは無いことはわかった……というよりも十中八九USNA軍の魔法師部隊だな……何かを待ち伏せか、探していたようだが、何故日本に?)

 

(USNA軍の魔法師部隊が、同盟国ではあるがわざわざ国外の日本にまで出向いて探しているもの……目撃者(俺)を消そうとするほどの機密性の高い作戦中だったようだが…………!?鳥人間も国外から来た口ぶりだった。もしや、あいつらを追っていた!?まさか…しかし、偶然にしては出来すぎている)

 

(どういうことだ…………)

 

悠は、出会った怪しい集団がUSNA軍の魔法師部隊だった事に驚き、しかも、鳥人間を追っているかもしれないという自ら立てた推測に少々困惑していた。

 

しかし、魔法師部隊といえばエリートなのだろうが……悠にはとてもそうには見えなかった。

ただ、見た目は怪しい風貌だったが、少佐と呼ばれた女性には好感を持てる気がしたのだった。

 

 

この後、悠は毒気を抜かれたような気分になりながらも、3つ目の学校に向かい探査(アナライズ)をかけるが、烏人間達や異界の気配は見つからず、この日はそのまま帰宅の途についた。

 

 

悠は改めて思考する。

 

この東京の裏側で、魔法師を捕縛、殺害を企てているシャドウと同様の雰囲気を持つ烏人間達。

それを追う十師族七草家。

……事が事だけに七草家以外の他の魔法師も動いている可能性が高い。今回、七草(真由美)が捕まり危険に陥った事により、魔法協会全体で動く可能性もある。

 

しかし、鳥人間達が予想通り異界の者やシャドウであれば、魔法師では対応が難しい。

そのスペシャリストである対シャドウ部隊を擁している桐条財閥に話を持って行ったが、今日の話では当分動くことができないだろう。

 

そして、今日出くわしたUSNA軍の魔法師部隊。もしかすると烏人間達を追って日本に来たのかもしれない。飽く迄も推測の域を脱しないが……

 

………状況は思った以上に混沌としている。

 

情報が少ない上に、状況が把握しきれない。

東京で何かが起こっている……いや、起こりつつあるのかもしれない。

 

 

 

 

悠は個人でどうにか出来るレベルの話ではない事は十分理解している……しかし、この現状ではどこに協力を求めれば正しいのか、誰が真実の近くに身を置いているのかも把握できる状態ではない。

 

……また、一歩一歩進むしかないだろう。

 

だが、この東京では、遠く離れた地にいる絆を結んだ心強い仲間達と共に戦うことができない。

 

……それでも、悠は前へ進むだろう。

 

真実を追い、知り合った人々を、友人を救うために。




魔法科高校ファンの方はおわかりだと思います。
ようやく、タグで表記した。来訪者編のヒロイン…………
巷ではポンコツヒロインと揶揄されております、あの方が登場です。
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