20xx年
窓から差し込むやわらかい朝日に照らされて、徐々に目が開いていく。
「………」
まだ意識ははっきりしない。
自分が何者なのかさえ認識できないような感覚だ。
「………」
ここは……どこ…?
やっとそんな問いかけが頭の中に浮かびはじめたとき、
【ブブォォー!キィーーーン!!】
頭の中に擬音のような音とともに、何かが流れ込んできたような気がした。
それは"今の世界"と"私達が生きた世界"、両方の記憶…。
私はベッドから飛び起きた。
慌てて周りを見渡す。
そこは"今の世界"での自分の部屋。"見慣れたはず"の机やカーテンが目に入る。
段々と思考が整理されていく。
そして一瞬目の前が眩い白い光に包まれたと同時に頭の中に女性の声が響きはじめた。
「あなたの "新しい約束"を、"新しい使命"を を果たしなさい…。そして "暖かい世界" で生きていきなさい…」
白い光が視界から消え、再び部屋の風景が私の目に入る。
しばらく静寂が部屋を包んでいたが、
「ありがとう…今度こそ私は "選択" を間違えたりしない…」
思わずそう呟いた私の頬を一筋の涙が伝った。
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85X年
僕、アルミン・アルレルトは、早朝 ウォールローゼの"壁の外" に広がる平原を見つめていた。
もう巨人がいない平原を…
小鳥のさえずりと近くの木に綱でいる馬たちの嘶きを少しの間聞きながら平原を見つめていると、後ろから声をかけらた。
「アルミン…」
振り返ると、僕が待っていた親友を含めた "人類救国の英雄 " と人々から呼ばれるようになった4人がいた。
「待っていたよ、エレン。」
「あぁ…」
そう応えたエレンとその少し後ろにいる3人、アニ・ライナー・ベルトルトの表情はとても硬い。
「今日、出発するんだよね。馬は準備しておいたから」
僕はエレンたちに努めて明るい声で声をかけた。
「世話かけてごめんな。」
僕は静かに首をふってエレンの気遣いに応えた。
そんな静かなやり取りをしていると、エレン達4人の後ろに、3つの新しい人影が近づいてきた。
「行くメンツは揃ったようだな。」
そう僕達4人に声をかけたのは"人類最強の兵士"、リヴァイ兵長だった。
「はい…」
エレンがリヴァイ兵長に応える。
「エレン…」
兵長の後ろから心配そうな声色でエレンに話しかけたのは、僕とエレンの"家族"であるミカサだった。
ミカサの胸元には大事そうにひとつの箱が抱えられている。
「…本当にこれを私が持って行っていいの?」
ミカサが今にも泣きそうな声でエレンに問う。
「あぁ…。しっかり"連れて"いってやってくれ。」
そうエレンに言われたミカサの黒い瞳は心なしか潤んでいるように見える。
「でも、エレンかアニが"連れて"いったほうが喜ぶのでは…」
そうミカサが言葉をつむいだとき、
「私たちは"約束"を果たすまでは"接する"資格はないよ。」
今まで言葉を発していなかったアニが悲しそうに、呟くように言った。
「アニ…」
アニの横にいるライナーとベルトルトは下を向いて肩を震わせている。
「あいつとの"約束"、しっかり果たしてこい。」
エレン「兵長…」
「本当は私たちも行きたい、いや行くべきなんだろうが…」
兵長の横にいたエルヴィン団長も口を開いた。
「まだ事後処理に兵団が追われている今、団長の私とリヴァイが壁内を離れるわけにはいかない。落ち着かせて必ず"会い"にいく。」
「団長、兵長。無理を言って休暇を頂いて申し訳ありません。」
「気にするな。こっちはこっちで役目を果たす。お前らは"ケジメ"をつけてこい。」
兵長はエレンの言葉に首を横に振りながら、自分にも言い聞かせるように言葉を紡いだ。
「はい…」
「これを"渡して"おいてくれ。詫びだ…」
そういって兵長は、エレンに小さな袋に入った"飴玉"と調査兵団の象徴である自由の翼 のエンブレムを手渡した。
「はい、確かにお預かりします。きっと喜ぶと思います。」
受け取ったエレンの瞳から涙が流れた。
しばらくの間、静寂の中エレン達4人の嗚咽が響いた。
5分ぐらいたっただろうか、なんとか準備を整えたエレン達"人類救国の英雄 "4人とミカサの計5人が馬に乗って、僕達残った3人の方に一礼すると走り出していった。
5人はシガンシナ区に向かって行った。
僕とエレン、ミカサ、そして今ここにいない僕達の大切な"仲間"の故郷に向かって…"約束"を果たすために旅立った。
僕はエルヴィン団長、リヴァイ兵長とともに壁内での事後処理をこなす日々がはじまる。
事後処理をこなしながら、僕は本を書こうと思う。
人類は巨人との戦いに勝利し、平和が日常になりつつある。
平和を取り戻すために多くの血が流れ、悲しみを生み出した。
"4人の人類救国の英雄"の活躍と調査兵団の奮闘によって人類は勝利した、ということは英雄譚として語り継がれるであろう。
でも僕は、手に汗握るような戦いだけでなく、そこに生きていた兵士や民衆の日常があったことも合わせて後世に伝えたい。
ごく平凡な、当たり前の喜びや笑顔や悲しいことがあったこと。
その日常が突然奪われたこと。
…そして、平和を願い、誰よりも人類や"仲間"のことを想い行動したのに、"自分のこと"には背を向けてしまった5人目の"人類救国の英雄"がいたことを、僕は伝えたい。
それが僕の"彼"への償い、いやきっと"彼"は償いと言う言葉を自分に使われるのは嫌がるだろうから"恩返し"になればと願いながら。
これは人類を救った英雄たちの英雄譚であり、どこにでもいる少年少女たちの日常と、おとぎ話しのような不思議な出来事を書き記した、ちょっと変わった物語。