845年
「その日、人類は思い出した
ヤツらに支配されていた恐怖を…
鳥籠の中に囚われていた屈辱を……」
突然それは起こった。
昨日までの日常が、人々の笑顔がまるで"嘘"だったかのように。
シガンシナ区の"壁"が破られた。
【ピカッ!ドッゴォォォォオオオ!!】
「あ…あれは…ッ!!」
突然”壁”の方からした音に驚きながら、視線を壁の方に向けたエレンが叫んだ。
「どうしたの、エレン?…ッ!?」
そんなエレンの声にミカサが反応し、声をかけようとしたがその言葉は驚きによって途中で止まってしまう。
僕、アルミン・アルレルトもそんな二人につられて視線を壁に向けると、
「そんな…壁は50メートルもあるのに!なんで…なんで巨人がッ!」
僕の目にしたものは信じられない光景だった。
50メートルを超える高さの壁の上に、巨人の顔が覗いている。
【ドッゴォォォォオオオ!!】
「ま、まさか、壁が、壊された…」
凄まじい音がしたかと思うと、壁の方からもくもくと煙が上がっているのが見えた。
あまりに突然の信じられない出来事に僕とミカサ茫然自失になっていると、エレンが二人の腕をつかみ
「とにかく、早く家に!母さんと逃げるぞ!!」
と走り出した。
「わかった!」
「うん!」
僕とミカサも何とかエレンに腕をひかれながら走り出した。
エレンと僕達は急いでエレンの家に向かった。
「母さん!!大丈夫?!」
エレンの家が近づいてくると僕達の視界に飛んできた壁の破片で潰された家と、その横で呆然と立ち尽くすカルラさんの姿だった。
「エレン!無事でよかった!ミカサもアルミンも!!」
呆然としていたカルラさんだったが、僕達の姿を見て安堵の表情を浮かべた。
「巨人が入って来てる!早く逃げるぞ!!」
エレンが壁の方を見ながら叫んだ。
そう、ゆっくりしている暇はない。
壁が壊れたのだ。
「ええ」
ミカサがカルラさんの手を取って、僕達4人は無我夢中に走って逃げた。
どのくらい走ったのだろうか、僕達は船着き場についた。
そこには僕達と同じように逃げてきた大勢の人たちがいた。
どの顔も疲労と驚き、そして悲しみの色に染まっている。
そして、僕達の大事な"故郷"だったこの"地獄"から逃げ出すために船に乗った…。
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少しときを遡り、壁が破られる少し前、シガンシナ区の南、外門の近く。
「母さんもこっちに来てごらんよ!みんなで遊ぼうよ?」
“僕”は妹と、幼馴染の女の子と走り回って遊んでいた。
少し離れたところに母さんもいる。
「ねぇねぇ、早く?!!」
僕の傍にいた妹も楽しそうにして、母さんを呼ぶ。
「おばさん、早く早く!!」
物心ついたときからずっと一緒にいる幼馴染の女の子も手招きをしながら母さんを呼んだ。
「はいはい、ちょっと待って。本当に3人は仲良しだね?」
僕達に呼ばれた母さんが、目を細めながら3人に向かって笑顔を向ける。
「本当にこっちの花畑が綺麗だよ!!母さん、早く来て見てごらんよ!!」
僕も目の前に広がる花畑を指差して満面の笑顔を浮かべて母さんを急かすように呼ぶ。
母さんとが僕達3人のほうにゆっくりと歩き出そうとしたその時だった。
【ピカッ!ドッゴォォォォオオオ!!】
「…何?」
「何、この音は?」
僕と幼馴染が突然した大きな爆音に驚いて声をあげた。
続いて風を切るような、耳をつんざく大きな音が近づいてきているのに気がついた。
「お母さん、危ないーーっ!」
妹が母さんに向かって精一杯の声を張り上げる。
僕は信じられない光景を目にしている。
・・・なんで"壁"が飛んでいるんだ。
「母さんーーっ!!!」
僕は頭が真っ白になりながらも母さんに向かって叫ぶ
ドォーン、という音とともに地響きがした。
目の前に土煙が立上り、視界が一瞬遮られる。
土煙が少し晴れたときに僕達が目にしたのは
「・・・母さん・・・嘘だぁー!!!」
「お母さん!!!」
身体の上に壁が落ちて、その下で動かない母さんの姿だった。
「あ、あれはなに・・・」
放心状態の僕と妹の横で、幼馴染が呟くようにいった。
僕は何が起こったのか分からない、信じたくない気持ちの中、半ば無意識にその声に反応して幼馴染の視線の先に目を向ける。
そこにも信じられない光景が広がっていた。
・・・なんで壁の上からこっちを覗いてる"巨人"がいるんだ。
・・・壁は50mあるんだぞ・・・
「お母さん!死んじゃいやーー!!!」
妹が半狂乱で叫んでいる。
僕も呆然とするしかない。
でも巨人が目の前の壁から覗いている。
とにかく逃げないと・・・。
「いやー!!お母さんがっ!!」
妹が顔を手で覆い、泣き叫んでいる。
とにかく妹と幼馴染の二人を助けないと。走るんだ・・・
そう思った矢先に、
「いやー!!!」
僕が手をつかむより先に妹が走りだしてしまう。
「そっちは!!戻るんだ!!」
妹は半狂乱で壁の方に向かって走りだしてしまった。
僕も慌てて妹の手をつかもうと走る。
しかし思いのほか妹の走るスピードが速く、追いつけない。
しかも目の前に迫った壁に何故か穴がしている。
破片が当たって空いたんだな
・・・どうしてその穴、人がちょうど通れるぐらいの大きさなんだよ。
「危ないから外に出てはだめだ!!」
僕は無我夢中で妹に向けて制止を言葉を叫ぶ。
「いやーいやーっ!!」
しかし、僕の言葉が聞こえないかのように妹は穴から壁の外に向けて走る。
・・・だめだって、壁の外に出たら危ないって、戻らないと。
僕は何とか妹との距離をつめ、手を掴もうとさらに走る。
壁の外に出てしまった僕達の耳に、再び地面を揺らすような轟音が飛び込んでくる。
巨人の足音??なんでこんなにたくさん巨人がいるんだ。
続いてその音とは異質な、甲高い叫び声のようなものが聞こえる。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
・・・なんだあれは女の巨人?
今の叫び声はあいつか?
今度は走りだしたぞ・・・。
その金髪の女の巨人は叫んだと思うと、今度は近くの木を蹴飛ばしながら一目散に壁の外のほうに向かって走り出した。
女の巨人に蹴飛ばされた木が折れる音を聞きながら、
「戻るぞ!」
あまりの光景に足が竦んだ妹に何とか追いつき、その手を取って壁の中の方向に振り返り走り出そうとしたとき、ヒューン、というさっきよりは軽い感じの風を切る音が聞こえた。
そして衝撃とともに、またドォーンという音がして僕達は倒れこんだ。
身体を打ちつけた痛みに何とか耐えて、妹が心配で繋いだ手の方を見た僕の視界には
「・・・どうして、どうして!!妹にあたるんだよ!!どうしてっ!・・・」
さっき女の巨人が蹴飛ばして折れた木だと思われるもの下敷きになって血だらけで動かない妹の姿が飛び込んできた。
・・・母さんが、妹が死んだの?
もうどうしたらいいかわからない
・・・あれ?なんか手を引かれて走ってる?
僕の幼馴染はしっかりしてるなぁ・・・
放心状態の僕に声をかけながら幼馴染が必死に手を引いて走ってくれている
壁の中に入っているのだろう、見慣れたはずの風景が僕の目に映る。
半ば意識のない状態でも走っていると今度は前方の方から大きな足音のようなものが聞こえてくる。
・・・今度は、何?
嘘でしょ…北の方から他の巨人とは違う、いかつい巨人が走ってくる・・・
図体でかいんだから、そんなに慌てて走ったら危ないって・・・
ほら言わんこっちゃない、家を蹴飛ばした・・・
もう頭が正常に働いていないのか、そんな危機的な状況でも妙に僕は冷静に考えていた。
でも、通常の判断はできていなかったみたいだけど。
「危ないっ!」
・・・あれ、なんか突き飛ばされた。
そう思った瞬間、地面にたたきつけられた軽い衝撃のあと、凄まじい音と今度は身体が浮くような衝撃が襲ってきた。
さっきまで手を繋いでくれていた幼馴染の姿が見えない。
突き飛ばされる前にいた方向には、土煙とさっきの巨人が蹴飛ばした家の瓦礫しか見えない。
僕はふらふらと立ち上がり、土煙が晴れた家の瓦礫に近づく。
瓦礫を必死になって掻き分ける。
その下に見慣れた、さっきまで僕の手を引いてくれていた幼馴染の服が血に染まって見えた。
「嘘、嘘だよね・・・。」
その服に包まれた身体は、もう動かなかった。
・・・みんな、いなくなった。
どうして、僕はここにいるんだろ?
・・・あの後、どうしたんだろ僕。
あっ、あの知らないおじさんに連れてきてもらったのかな・・・
ここは船の上?
どこに行くんだろ…?
・・・僕がしっかりしていたら3人とも死ななかったのかな。
どうして、どうして、僕だけ生きているんだろ・・・。
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847年
"あの日"から2年たった。
あのあと僕、アルミン・アルレルトとエレン、カルラさん、ミカサの4人は船でトロスト区へ逃げた。
船で地獄と化した僕達の故郷、シガンシナ区を涙を流していた見つめていたエレンが絞り出すように、
「駆逐してやる!!・・・一匹残らず!!、巨人共を・・・!」
そう呟いたのを僕は今でも忘れられない。
その後名前"だけ"の「ウォールマリア奪還作戦」があり、人口の約2割が犠牲になった。
僕の大事な家族のおじいちゃんも帰ってこなかった。
僕達は小さいころからの夢である"外の世界"に行き、"炎の水、氷の大地、砂の雪原"を見ることと、新たに加わった、いや加わってしまった"巨人を駆逐する"ということを実現するために、調査兵団を目指すことにした。
そして今日、僕はエレンとミカサと三人で104期訓令兵団に入団する。