「よーし元気、投げ込みラスト5球だ!」
「おう!いくぞ…うおおおおおおおおっ!」
シュッ!スポーン!
「あっ、しまった!」
やれやれ…元気はいいストレート持ってるのにコントロールがなあ…まあアツい奴だしそれを盛り立ててやった方がいいんだけどな。
「川戸センパーイ、そろそろ投げ込み代わって下さいよー」
「あ、あぁ、もうそんな時間か…すまないな桜田」
まあこういうさっぱりしてる所はいい所の一つだよな。
「ありがとうございます川戸センパイ!」
「よーし桜田、まずは軽くだ」
「ハイ!行きますよ白瀬センパイ!」
この桜田翔という1年生に俺は一目置いている。
キレのある変化球をコーナーに投げ分けるピッチング、インハイを苦にせずはじき返すバッティング。彼にはセンスを感じている。元気や康太には申し訳ないが、恐らく彼が新チームではエースになるだろう。もっとも…
「はー、ふー…」
「そろそろ80球だな、終わるか?」
「あ、いや、まだ…はあ、はあ…」
先発完投は正直難しいだろう。
これをリリーフしていく形になるのだろうが、やはり絶対的なエースというものが欲しい。そうすれば桜田も課題のスタミナを向上させる時間もあるしな…
「よーし、グラウンド整備も終わったな!今日の練習はここまで!」
まあ、初日の割にはそこそこいい練習だったんじゃなかろうか。俺も帰って素振りでもしておきたいし早く帰ろう。
そう思って川沿いを走っていると―――
――――――おい、ちょっと待てよ?
あの後ろ姿…まさか――――――
「スバル!」
「えっ?」
青髪で美形の青年。パワフル高校にはお世辞にもそんな生徒はいなかったはずである。しかし、俺はこの青年を知っている。そう、彼こそ幼馴染みの―――――
「やっぱりスバルか!久しぶりだな!」
「…ひょっとして雪斗かい?」
「そうだよ!」
「へえ、こんなところで会うなんて…」
しかし妙だ。彼は覇堂高校に通って、野球部に所属していたはず。ここから結構遠かったはずだぞ…?
「どうしたんだよ、こんなところで」
「…転校したんだ」
「そ、そうなのか…どこに転校するんだ?」
「パワフル高校さ」
!
ウチじゃないか!
スバルは小学校の頃にバッテリーを組んでいたし、ましてや覇堂高校の野球部員がパワフル高校に来てくれるなんてこんなチャンスはない。俺が欲しかった絶対的なエース…スバルなら!
「なあ、なら野球部に入るんだろ?」
しかし、次に彼の口から飛び出した言葉は信じられないものだった。
「…悪いけど――――――」
え?
「――――――――ボクは、野球をやめたんだ。」
8月は夏休みですし、学校の休み時間に転校を知るって少し変だと思ったので、部活帰りにたまたまスバルと再会する、といった形に変えてみました。今回登場したモブキャラについては「キャラ設定、改変など」を参照してください。