この敬虔なアクシズ教徒に祝福を!   作:nekoge

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ついにカゲミヤは紅魔の里へ。ここでカゲミヤは強くなります。そしてメインヒロインのぼっちが登場!!!


敬虔なアクシズ教徒、紅魔の里へ!

「ここが紅魔族の住む紅魔の里」

 

温泉の街アルカンレティアからテレポートした、俺はアーチ型の石造り門にいた。

 

原理は分からないが物体を一瞬移動させる魔法であるテレポートに少し興味が湧く。冒険者カードのスキル欄には『テレポート』の項目があったが取得ポイントをみて諦める。

 

「とりあえず行くか」

 

俺は門をくぐり目の前にあったグリフォン像を少し眺めて紅魔の里へ。

 

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まずは寝床を確保するべく宿を目指したが。

 

「すまないな、今空き部屋はないんだ」

 

なん、だと。

 

「そうですか、では他の宿を紹介してください」

 

「あ~この里で宿はここだけなんだ。悪いな兄ちゃん」

 

はい詰んだ。

 

「そうですか」

 

「代わりにこの里随一の喫茶店の割引券やるから元気出せって!」

 

「...ありがとうございます」

 

宿の受付のおじさんから喫茶店の割引券二枚をもらった俺は宿を出た。

 

考えても仕方ないので宿のことは一旦置いて観光することにした。泊まるところがなくて乗り気になれないけど。

 

俺は里の商業区と呼ばれる所を歩いている。この辺りは武器屋、魔法道具、ポーションを売っている店、喫茶店など里の外から来る人向けの施設が多い。ちらほらと紅魔族以外の人も見かける。

 

「土産屋まであるのか。異世界でもそういった店があるのか」

 

異世界の土産屋ということで珍しいものでも売ってるかと少し期待した店の商品を見る。

 

「なんだこりゃ?木刀にペナント?それに黒いローブ、これはコスプレ衣装か?」

 

思わず声を出さずにはいられない。そこにはどこか故郷を思い出させる品物が多かった。

 

「キーホルダーまである。そして極めつけは饅頭か」

 

なになに、『白の衣手で封印せし暗黒饅頭』だと?

 

「ネーミングセンスなんとしろよ」

 

俺が土産屋でそんな事を考えていると長い黒髪にその一部をうしろで団子にしてしばり、ロングスカート、大胆にお腹を出して上着は踊り子の衣装のような服の美女が店に来た。

 

その美女の顔とスタイルは凄い。あの残念美人のセシリーにも負けてない。

 

その人は少し店の商品を眺めると木刀を手にとってそれをレジに持って行き、その後どこかに行ってしまった。

 

紅魔族の女性は美形が多い。ここに来るまでに聞いた話を思い出した。そして実際に里に来て嘘じゃないと知った。

 

なんて素晴らしい所だ。ここに永住しようかとほんの少しだけ、そうミジンコレベルで考えた。

 

しかしいくら綺麗な人が多くてもこの中二病集団の里に住もうなどまともな人なら絶対にありえない。

 

「くだらないこと考えてないで次行くか」

 

俺は商業区を後にしてさっき宿のおじさんから聞いた猫耳神社なるものを目指す。

 

 

 

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俺は猫耳神社に着いた。

 

そういえば、神社な来る途中に目立つ大きな家があった。その扉の前に学生らしき格好をした少女が一人で何かペラペラと呟いていたが、中二病が多い紅魔族の里なので何も不思議と思わなかった。俺も昔似たようなことを...うん、忘れよう。

 

それはさておき神社を見ると概観は鳥居と屋根に境内には猫耳が着いたデカイ本殿らしき建物がある。

 

「ここが猫耳神社か。作りは日本の神社そっくりだ」

 

この感じから先に転生した日本人が伝えたのか?

 

さっそく鳥居をくぐり本殿に近づく。本殿の正面には賽銭箱、その上にはよく日本の神社でもよく見かける縄、確か七五三縄だったか。鐘は無かったがとりあえず硬貨を賽銭箱に投げて手を三回叩いて手を合わせる。

 

その後前を見ると、そこにはどこかのアニメイベントもしくは秋葉原のどっかのショップに置いてありそうなパネルが置いてあり、それには日本の旧スクを着て頭には猫耳を付けた女の子が描かれていた。

 

「...」

 

黙って猫耳神社を後にした。

 

次はどこに行こうかと考えていると周りをキョロキョロと見渡している怪しい男がいた。そいつは俺と目が合うとこっちに近づいてきた。

 

「おい、あんた!!この辺で紅魔族随一の美人らしき女性を見なかったか!?」

 

突然なんだ。礼儀を知らんのか。

 

「唐突に質問されても答える気にはならんぞ。それよりお前は誰だ?名前は?髪もボサボサで目には隈がある。まるで三徹したニートみたいだぞ?」

 

すると男はこちらを睨み付けてきた。

 

「そっちこそ失礼な奴だな。いいだろ我が名を聞いて震えるがいい!!!」

 

紅魔族風の名乗りか。さっきの宿でもおっさんから聞いたな。

 

「...我が名はぶっころりー!アークウィザードにして上級魔法を操るもの!!紅魔族随一の靴屋のせがれ、やがては靴屋を継ぎし者!!!」

 

「よろしくニート君」

 

「俺はニートじゃねぇぇぇ!!!!!」

 

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少しいざこざがあったがニート君ことぶっころりーの話は人探しだった。その人はこいつの片想い人で名前は『そけっと』。なんでも紅魔族随一の美人だとか。

 

「ぶっころりーお前の言う特徴をもった女性ならさっき商業区で見たぞ?長い黒髪にスタイルもその通りだった」

 

「なに!それは本当なのかカゲミヤ!!!よっしゃ!ちょっと行ってくる!!!」

 

ぶっころりーはそう言うと商業区の方に走っていった。気が早い奴だと呆れてしまう。たがどこかで止めなければいつかとんでもないことをしでかしそうだ。

 

「少し気になる。あいつのやってることってストーカーでは...」

 

心配になった俺はぶっころりーの後を追った。

 

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商業区でぶっころりーを探そうと歩いていたが雑貨屋付近で怪しい人影を見つけた。

 

「なにしている不審者ニート」

 

「何て酷い呼び名だ!訂正しろ!」

 

ビンゴ。

 

「ごめんな、ニート」

 

「ニートもやめろ!!!」

 

「そんなことよりそけっとさんはいなかっただろ?」

 

「うぅ」

 

「お前の熱意は分かるが少しは冷静になれ。このままだと俺はお前を警察に連れていくことになる」

 

「人を犯罪者扱いは止めてもらおうか!」

 

「一人の女性を四六時中追いかけ回す行為は俺の生まれた国では立派な犯罪なんだ」

 

「うっ」

 

ぶっころりーは地面に手を置いてうなだれた。ちょっと言い過ぎたかもと思って反省した、ミジンコレベルで。

 

「それよりそろそろ昼飯の時間なんだがこの里でうまい飯屋ってあるか?」

 

「なら紅魔の里随一の飯屋に案内してやる!」

 

大袈裟な返事をするぶっころりー。ニートに道案内を任せても良いのかと思ったが、今この里で暇そうに...里を案内してもらえるのは彼だけだ。

 

「期待しているぞ」

 

ぶっころりーに案内されて着いた飯屋。その看板はとても長い名前だ。

 

里随一の飯屋『紅魔飯、一口食べたらもう虜!!! 』

 

「大丈夫なのか?」

 

「ああ!ここの飯屋はめちゃくちゃ旨いんだ!」

 

そう言うとぶっころりーは俺の手を掴んで店にはいる。

 

「らっしゃい!」

 

「いらしゃいませー」

 

「いらしゃいませ!」

 

野太いおっさんの声と若い青年の声、そして可愛らしい少女の声が俺達を迎えた。

 

「なんだ、ぶっころりーじゃねえか?」

 

「引きこもりのお前が外食とは珍しいな、金はもってるのか?」

 

「この店はつけ禁止ですよ!」

 

上からおっさん、青年、少女が順番にぶっころりーに話しかける。

 

「お前ら失礼だそ!!」

 

ぶっころりーは叫ぶ。今日お前叫んでばかりな気がする。下町にありそうな定食屋の服装をしたおっさんが話しかけてきた。

 

「そっちのにーちゃんは誰だ?見ない顔だな?」

 

「冒険者のカゲミヤです」

 

「そうかよろしくな。ならこっちも自己紹介しないとな...いくぞ!!!」

 

「おうっ!」

 

「はい!」

 

紅魔族、自己紹介、まさか。

 

「我が名はびすとろ!紅魔族随一の料理人にしてこの里唯一の飯屋の主なり!!」

 

角刈りの恰幅のいいおっさん。

 

「我が名はこっくん!紅魔族随一の料理人の息子にして今は料理人修行中!いずれは父を超えこの店を更に発展させる者!!」

 

見た目だけならイケメンの爽やかな青年。

 

「我が名はぺこりん!紅魔族随一の料理人の娘にして兄と同じく料理人修行中!いずれは里の外で店を開く者!!」

 

長い黒髪を二つの三つ編みにして頭にはバンダナを着けている少女だ。顔は田舎の農家に居そうな可愛系の少女。将来は美人になるな。

 

「...よろしく」

 

俺は少し馴れてきたのか、返事をした後にぶっころりーと共に席き着いた。まだ昼飯の時間には早かったのか客は少ない。

 

俺はメニューをみたが案の定その名前は普通じゃない。俺はオススメはなにかと聞くとぺこりんが店主の厳選せし選ばれし供物定食(おまかせ定食)と言われたのでそれを頼んだ。ぶっころりーも同じものを注文。

 

「なあカゲミヤよ」

 

「なんだ?」

 

「お前寝る所あるのか?この季節は結構この里に外から人商人達が大勢来る。宿は事前に予約しとかないとまず泊まれないぞ?」

 

もうすぐ冬が終わり春になる。春になると冬眠していたモンスターが活発になり、その為冒険者達の活動も多くなる。その冒険者達に売るポーション等の魔法道具などをこの時期になると商人は買っていく、これが宿が埋まっている理由だ。紅魔族のポーションは質がよく強力なので高値で売れるらしい。

 

「なあこの里で夜寒くない場所ってある?」

 

いくらもうすぐ春だからって夜はまだ寒い。馬小屋ではたまに寒すぎて凍え死にそうになった。

 

「ふっ、やはりか」

 

こいつはむかつく笑みを浮かべた。

 

「殴りたくなるような表情は止めろ」

 

「ふっ、まぁいい。なら今困ってるだろう?」

 

「ああ」

 

「そこで提案なんだが、俺の家に来ないか?」

 

「は?」

 

「随分とまぬけな返事だな。」

 

「いきなり俺の家に来いと言われて驚かん方がおかしいわ。まさかお前男もいける奴?」

 

「違うわい!!!?」

 

安心した。

 

「それで理由はなんだ?」

 

「ああ、俺って周りの大人からは家の手伝いもしない穀潰しだとか、せっかく上級魔法を使えるアークウィザードなんだからもっと里の為にもっと働けとか言われててちょっとうんざりしてたんだ」

 

「う、うん」

 

言われているのは別に普通のことだと思いますが。

 

「俺もいつかは実家の靴屋を継ぐつもりでいる。だが今は自由でいたいんだ!靴屋のこともまだ自分のペースで仕事を覚えていきたい。」

 

「それでその話とさっきの事とどう関係している?」

 

「お前に親父の説得と俺の恋の手助けをしてほしい」

 

「???」

 

「お前は初対面の俺の質問にきちんと答えてくれた。まぁ外の人だからってのもあるが嬉しかったんだ。それに...俺を心配して来てくれたんだろ?」

 

「お前色々チョロイぞ」

 

ぶっころりーは真剣な眼差しだった。

 

「お前の言いたいことは分かった。俺がお前の家で厄介になる条件はお前の親父に今すぐ家業を継ぐのは無理だということを伝え、お前の自由な時間を増やすこと。そして片想いの相手との恋を実らせることだな。」

 

「そうだ!引き受けてくれるか?」

 

「暫くはこの里には世話になる。これからよろしくぶっころりー」

 

「ああ、」

 

俺達は握手をした。

 

「お待たせしました!店主の厳選せし最上供物定食お二つです」

 

俺達の前に元気な声でお盆を置いたぺこりん。

 

「メニューは鴨ネギの唐揚げ、鴨ネギのネギで作った和え物、汁、ご飯、デザートは店特性のアイスです!!」

 

「ありがとう」

 

「ではごゆっくりどうぞ!」

 

「「いただきます」」

 

俺とぶっころりーは食べる。

 

メチャうま

 

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「ありがとうございました!!!」

 

俺達は飯屋で食事を終わらせるとぶっころりーの家に向かうことにした。

 

「お前最初から奢らせるつもりだったのか?」

 

「そ、そんなことない」

 

「こっち見て話せ」

 

俺は自分だけでなくぶっころりーの食事代も払った。この野郎は無一文だった。まあ今回は案内料として払ったが今度は許さん。

 

「お前の家って集落にないんだな」

 

この里の住民は殆どが住居を集落として一ヶ所に固めている。

 

「理由は俺も知らない。しかしだ街から外れ孤独に生きる。なんかカッコよくないか?」

 

「知らんわ」

 

歩いているとさっき見た大きい家が見えた。

 

「ぶっころりーあれは誰の家だ?」

 

「あれは我ら紅魔族の族長の家だ。族長は凄腕のアークウィザードでこの里だけでなくこのベルゼルグ王国随一の魔法使いなんだぜ!」

 

王国随一の魔法使いか。今度訪ねてみようかな。しかし族長となれば前世で言う市長や町長みたいな人。里の人ならともかくよそ者の相手などしてくれはしいだろう。

 

「あと娘が一人いたな。俺の幼馴染と一緒に学校に通ってるそうだ」

 

この里には学校があるのか。本で調べたがこの王国に学校はない。中世の価値観が基本であるこの異世界は貴族は専属の家庭教師、一般市民は教会などで読み書きを覚えるか、親から最低限の文字が読めるように教えられる程度。そんな世界に立派な教育機関があったのは驚いた。

 

「その学校って誰が造ったんだ?この里以外では聞いたことないぞ?」

 

「それは俺も知らん。ずっと昔からある。何度か建て替えたからこの里が出来た当時からあったんじゃないか?」

 

「なら学校という制度を誰が伝えたか分かるか?」

 

物事を教える所ならさっきも考えた通り教会などが善意でやっている所がある。しかし制服を着て、決まった科目を勉強し、テストをする。昼には弁当を持っていって食べる。教師という職業、クラス分けをして年代事に分けて勉強。これらは日本人からすると普通だ。しかしこっちの世界を基準に考えるとあり得ない事だ。

 

やはりこの里には日本人が関係している。

 

「カゲミヤ大丈夫か?上の空だぞ」

 

ぶっころりーの声に少し驚いた。

 

「大丈夫だ」

 

「それより着いたぞ、ここが俺の家だ」

 

そこには普通の一階建ての家があった。隣には小さく屋根がベニヤ板みたいな素材で出来ている家があった。

 

「あそこは俺の幼馴染の家だ。親父さんか変な魔道具を作ってるせいで貧しいらしい」

 

「そうか」

 

「ちょっとそこで待っててくれ親父に話してくるから」

 

そう言ってぶっころりーは家に入る。

 

「どうしようか」

 

なんとなく暫くぼけっとしていると視線を感じた。

 

視線の方向をみるとそこには幼女がいた。

 

「じー」という擬音が見えそうな程こちらを見ている。

 

「何か用か?それとも俺の顔に何かついてるか?」

 

すると幼女はこちらに走ってきた。容姿は真ん丸とした瞳に短い黒髪を二つ結びに星形の髪飾りをしている。

 

「おねがいします、なにかたべるものをください。もうみっかもなにもたべてないんです」

 

うるうるとした瞳でそう言われた。

 

「可愛い女の子、しかもこんな年下ににこんなこと言われて揺らない大人はいないな。でも話は盛るもんじゃないぞ?どこで覚えた?」

 

すると幼女はムッとした表情になった。

 

「姉ちゃん直伝の奥義が破られた。私も魔性の妹としてはまだまだということね」

 

「お前の姉さんはとんでもないアホか」

 

こんな小さい子になんてことを教えている。

 

「でもお腹すいてることは本当だろ?」

 

「うん!」

 

「笑顔で言うな」

 

可愛い奴だな。もしこれが成長した大人の女性だったら分かっていてもホイホイ確実にされただろう。

 

「この棒つきアメあげるよ」

 

「わーい、久しぶりの甘いもん!!」

 

幼女は俺の手渡したアメを手に取ると一心不乱になめはじめた。

 

「ありがとう!兄ちゃん!!!」

 

「どういたしまして」

 

その後幼女は目の前のぼろぼろのちいさな家に入っていった。

 

「あの幼女、将来大物になる気がする」

 

そんな事を考えているとぶっころりーが出てきた。

 

「待たせたなカゲミヤ、親父が待ってる」

 

「お邪魔します」

 

俺はぶっころりーの自宅に入った。

 

 

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ぶっころりー宅に入った俺はぶっころりーの親父さんと話し合った。部外者の俺の話が通じるかは正直不安だったが、ぶっころりーが一人っ子だということを利用して、もし本当にこのニートが継がなかったら終わりだと、それらしい理由を言ったらなんとか説得出来た。だが週に何回かは靴作りの修行を行うことになった。

 

「カゲミヤよ、そこの馬鹿息子の我が儘に付き合わせてすまんかったな。良ければこの里にいる間はこの家で寝泊まりしてもらっても構わない」

 

「ありがとうございます」

 

「靴の材料調達を手伝ってもらうがいいかね?」

 

「わかりました」

 

「ぶっころりー、カゲミヤを使ってない部屋に案内しておいてくれ。俺は仕事に戻る」

 

「分かったよ親父」

 

親父さんはそう言うと居間から出る。

 

「とりあえずありがとなカゲミヤ。靴作りの修行はともかくこれでこそこそせずに堂々と歩ける」

 

「お前は脱獄犯か?」

 

その後ぶっころりーに部屋を案内してもらった後、その日の夜一緒に酒を飲みに行った。

 

「俺はそけっとが好きだーーー!!!」

 

「きっちり歩けこの酔っぱらいニートが」

 

ぶっころりーは俺と居酒屋に行った後様々な種類の酒を飲みほした。結果はこの通り。

 

「らんだとカゲミヤ!俺はよはっらってなんてねぇぞ!!!」

 

「人に奢らせといてなに言ってやがるこの野郎」

 

俺はぶっころりーに肩を貸している状態だ。

 

「カゲミヤ!!!お前が歪んで見えるぞ!幻覚魔法でも使えるのか!」

 

「お前黙れ、その辺に捨てていくぞ」

 

「○▼※△☆▲※◎★!!!!?」

 

「人語を喋れ」

 

知能まで退化するとは哀れな奴だ。

 

「お前ら遅いぞ」

 

ぶっころりーの自宅前には親父さんがいた。

 

「すまん、せがれが迷惑をかけたな」

 

「全く勘弁しておほしいです」

 

「後でお前に伝えることがある、この酔っぱらいを部屋に運んでくるから居間にいてくれ」

 

親父さんはそう言って酔っぱらいアホニートを担いで行ってしまった。

 

「俺なんかした?」

 

疑問しか浮かばない。

 

俺は居間に行って親父さんが来るまでにじっとしていた。暫くすると親父さんが来てすぐに口を開いた。

 

「お前さんは魔法の知識と修行の為にこの里に来たんだろ?」

 

「はい、魔法がうまくコントロール出来なくて」

 

「お前明日から学校に行け」

 

「...は?」

 

「話は族長と校長に通してある」

 

「この里の学校は魔法が使えない子が行く施設ではなかったですか?それに俺はもう20歳になるのに今さら年下にだらけの学校なんて」

 

この年になって何で学校なんだ。大学ならまだ分かるが、この里の学校はどう見ても小中学校みたいな所だぞ。

 

「魔法の知識と技術を教えるとなるとやはりこの里だと学校が一番効率がいいんだ」

 

「えぇ...」

 

「他に手の空いてる凄腕の魔法使いとかいないですか?」

 

「いないな。そんな奴は里の外に出て冒険者をするか里でも立派に働いとる。うちのせがれも魔法使いとしての実力ではそこそこ高い。たがあの性格が...」

 

「あぁ」

 

ぶっころりーはあれでまともなやつだったら今頃王都で凄腕冒険者になってるかもな。

 

この里に来た目的は魔法をうまくコントロールすることを身に付けるため。ここは妥協するしかないのか?

 

「あまり乗り気になりませんがその話に乗させて頂きます」

 

「もう話はついてる。明日の朝八時頃までに学校に行って『ぷっちん』という名の教師に会うといい」

 

相変わらず変な名前。

 

「分かりました」

 

「なら早速格好いい名乗りの練習だな」

 

「仰っている意味が分からないのですが」

 

「自己紹介するときは自分の中の名前を名乗るだろ?外の人達は我々の格好いい自己紹介を見ると何故かひいてしまう。全く変わってる」

 

そっちが普通じゃないからでしょうに。

 

「それで何で俺が紅魔式の名乗りをしないといけないのですか?」

 

「ふっ、我々の里の学校に通うなら我々のルールに従って貰う」

 

「...」

 

父さん、母さん、なんやかんやあって俺は人生四度目の学校生活を送ることになりました。




カゲミヤの趣味のひとつが考察です。彼は気になった地域の伝承やルーツなどを考えるのが好きです。

所持金

定食屋にて700エリス×2=1400エリス

居酒屋 つまみと酒代合計29000エリス

計30400エリス使用

残り66万8200エリス

次回原作外伝『爆焔』に入ります。

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