目が覚めた。昨日飲んだ影響が少し残っているのかまだ眠い。しかし今日、学校に通うため身体を布団から起こした。
「あー」
だるい。二度寝したい。
「でもそろそろ起きないと本気でヤバイ」
服を寝間着から前世のワイシャツとスーツズボンに着替える。その後ふらついた足取りで居間に向かうとおやっさんがテーブルの前に座ってコーヒーを飲んでいた。
「おはようございます、おやっさん」
「おはようカゲミヤ、せがれはまだ眠っているよ」
「昨晩少し飲みすぎたみたいですね」
「困った奴だ」
俺はおやっさんの小言を聞き流して用意されていた朝食を食べると用意してくれていた弁当をもらい受けぶっころりー宅を出た。
「また学校に通うことになるとは」
学校には八時に着けばいいと言われているので急ぐ必要も無い。ぶっころりー宅は学校との距離が近いので直ぐに着く。
「学校か...一年半ぶりだな」
少しドキドキしてきた。心情としては転校生みたいな気持ちだ。もし俺が女性キャラだったら寝坊して走って通学している男主人公とぶつかるお約束展開。もしくはその逆のパターンも。
「うわあああ!遅刻しちゃう!!」
こんな風に慌てて走ってくるヒロインもしくは主人公とぶつかってフラグが立つ的な展開があってだな。
「ああああ!どいてええええ!」
背後を振り向く暇もなくその声の主は俺の背中に突っ込んできた。
2
「ああああ!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!お怪我とかしていませんか?い、慰謝料は何百万エリス必要ですか?何年かかっても払いますので!」
「......」
俺の目の前にいるのは黒いローブを羽織り紅魔族特有の赤い瞳に綺麗な黒いセミロングの髪をリボンで束ねている、優等生といった感じの少女が、泣きながら必死になって謝っている。
「大丈夫です、それより慌てている様子でしたが大丈夫ですか?それにカバンの中身が散乱していますよ?」
「わ、私寝坊しちゃって、うう、もう遅刻確定だよ」
少女は泣き出した。俺は持っていたハンカチを少女に手渡し、本人は俺の行動に涙を浮かべながら固まってしまったが、顔を赤くしておどおどした様子でハンカチを手にとる。
「それで涙を拭いてくれ。とりあえず散らばった本を集めるぞ、泣くよりも行動することが重要だ。まだ急げば遅刻しないだろ」
「で。でもいきなり知らない人から物を貰うなんて心の準備が、その...」
「なんの準備が必要なんだ?」
「ひゃ、ひゃい」
びくびく震えていて小動物みたいでとても可愛いです。
「集め終わったぞ。それにまだ急げばギリギリ間に合うから」
「は、はい!えっと、そのあ、ああ、ありゃがとうございます!!!」
「めっちゃ噛んでる」
「うぅ」
トマトのように顔を真っ赤にした彼女はペコリと礼をすると走っていった。
「あの子大丈夫か?心配になってきた」
せめて彼女に良き出会いがあることを祈る。あとハンカチ返して。
3
学校に着きました。見た目は日本の田舎にありそうな木造校舎。
「昔の学校みたいだな」
校舎に入り、職員室に向かう。事前に聞いていたので迷わず来ることができ、職員室に向かう。
「すいません、今日からお世話になるカゲミヤですが」
ガララと扉を開くと机が数台あり、職員室という雰囲気だ。
「お前が例のカゲミヤか?」
入り口に近い席に座っていた、髭が少し濃いが、この人は教師だなと思える男の人が話しかけてきた。
「はい、カゲミヤです。職業はアデプトウィザードの...」
「族長と靴屋から話は聞いている。ようこそカゲミヤ、では自己紹介といくか」
自己紹介ですか。
「我が名はぷっちん!アークウィザードにして上級魔法を操る者!紅魔族随一の担任教師にしてやがて校長の椅子に座る者!」
勝手に座ってろ。この里はこの挨拶をしなければ死んでしまうのか。
「よろしくお願いします」
「あぁよろしく。さあ次はお前だぞ」
「...」
「どうした?まさか自己紹介も出来ない奴が我が紅魔の学校に通うのか?」
「後のお楽しみです」
「ほう、ならば楽しみにしているぞ、お前のクラスは俺の受け持ちだからな」
そう言ってぷっちんは不適に笑った。
「どうでもいいので早く案内お願いします」
「分かった。付いてくるがよい!」
ぷっちんの案内され俺は自身の学ぶクラスに着く。
「ここが今日からお前が通う教室だ。中にはお前の同級生となる魔法使いのひょっこり達がいる。歳は離れているが仲良くしてやってくれ」
確か六歳離れている子供と勉強とは肩身が狭い。
「早く卒業出来るよう頑張りますよ」
「ふっ、期待しているぞ」
ぷっちんを無視して教室の扉を開けた。
「失礼しま~す」
ガラリと音をたてて教室に入る。その後再び出る。
「これはどういう事ですか?」
「なにか問題でもあるか?」
「俺の見間違えならいいんですが、女子生徒しかいなかった気がするのです」
「見間違えなどではない。私は女子生徒を受け持っている。私の教え子になるカゲミヤはここで彼女達と一緒に授業を受けて貰う」
「何故年下の子、それに女子生徒なんですか、普通は男子生徒だろ、JK」
「最後の言葉の意味は知らんが、今男子生徒の方は担任が男子だけで手一杯なんだ。紅魔族の男子はやんちゃだからな、はっはっは」
「...」
「諦めろカゲミヤ、それに年下とは言え周りは皆女の子だ、ハーレムだぞ?」
「それが13歳の年下じゃなければ喜んでますよ」
「君は大人だろ?我が儘を言うのは許されないぞ?」
「大人であるまえに男なので無駄だと思っても一言申すことは大切だと思うのですよ先生」
「なら先生からのお願いだ、早く教室に入りたまえ」
俺は教室に入った。先程の行動のせいか生徒達の見る目が少し痛く突き刺ささる。
「今日は新しい俺の教え子を紹介する。」
ぷっちんが目でウィンクをしてきた。野郎のウィンクは潰したくなるので後でぷっちん先生の目に指をぶちこむ事を決めた俺は一晩で考えた紅魔族の挨拶を行った。
「我が名はカゲミヤ!!!伝説の上級職アデプトウィザードにして!!!敬虔で誠実なアクシズ教徒、いづれは大魔法使いとなって魔王を滅ぼす者!!!!!」
ケープをバサッとふりむかせ手で顔半分を覆ってから、ジョ◯。立ちをしてそう宣言した。
「...」
恥ずかしい。
「かっ...」
か?
「「「格好いい!!!!!!!」」」
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