「あーちゃん?」
「あなたは誰?私の名はアスミア…決してそんな名前じゃないわ。」
目の前の赤と白を基調とした甲冑に身を包んだ少女は目をきつくギラつかせて睨むようにそう言った。見た目こそあーちゃんにそっくりだけど、喋り方のニュアンスが少し違う。敵意を向けられているからかもしれないなぁ。
「…自己紹介が遅れたね。僕はノビタニヤン、白銀の剣士になる予定の旅人さ。」
まぁ、聞いたのはシルクにだけど、どこにあるのかも分からない物を目的としてるしね。いきなり白銀の剣士って名乗っても、丸腰のこの格好じゃ、意味無いしね。
「白銀の剣士?…そんな軽装で、この森を抜けれると思ってるなんて愚かな人ね。」
アスミアは、やっぱり今の僕の格好を見て訝しげにこちらを見た。確かに丸腰の僕は愚か者と言われるかもしれないけど、来た瞬間からいつもの格好だからなぁ。
「それに私はその白銀の剣士の一式を手に入れるために、旅をしているのよ?…何者かも分からないあなたになんか…譲る気はないわ。…それにどこにあるかも知ってるの?」
「ごめん、それは聞いてない。案内役と離れてしまったから。」
「案内役?……まぁ、いいわ。癪だけど、一応在処を教えておくわ。」
アスミアは、まだ顔が険しいけど、僕に教えてくれた。さっきの川の上流にヨラバタイ樹という雲にも届くほどの巨大な木があり、そのてっぺんに剣と兜が置いてあるそうだ。…何か大変そうな所にあるね。まぁ、夢だけどこれも一種のRPG要素が入ってるみたい。白銀の剣士の一式誰もが求めているそうだしね。
「教えてくれてありがとう。じゃあ僕は行くよ。」
僕は、アスミアに迷惑をかけないために立ち上がってその場を後にしようとした。アスミアが言ってる通りだとすれば、今も誰かが白銀の剣士の一式を手に入れようとしている可能性があるしね。
「待ちなさい。」
行こうとしたらアスミアに止められた。何かあるんだろうか?
「今、森を一人で行くのは危険よ?…私の護衛にしてあげるから、この場に居なさい。」
少し偉そうに言ってきた。護衛って…
「君も剣術習ってるんでしょ?」
「習ってるけど。女の私を1人にする気?」
さっきまで1人だったじゃないか。なんて、言ったらめんどくさい事になりそうだから言わないけど、白銀の剣士の一式を教えてくれたし。護衛くらいはやってやるか。
「はぁ…わかったよ。剣貸して」
「はい。」
僕は、アスミアに剣を貸してもらい、彼女が眠る間にそこに居た…そういえば…
「アスミアはなんで白銀の剣士の一式を欲しがってるの?」
純粋な疑問だった、アスミアは振る舞いや言い方からして貴族だと思うしね。
「…私はオドロームに復讐するつもりよ。」
アスミアは後ろを向きながら語ってくれた。何でもアスミアの都市にも妖霊大帝オドロームの襲撃を受け、支配されてしまった。アスミアの家族や王族は、その場で死刑をされた。自分もされかかったが命からがら逃げ延びて、噂に聞く白銀の剣と兜を手に入れて復讐を果たすんだ。と復讐に満ちた顔で僕に話した。…悪魔族、怪魚族がもしあの時地球侵略を成功させていたら、美夜子さんやソフィアさんもこうなっていたのかもしれない。
「だから…あなたには兜や剣は渡さないわよ。」
「…事情はわかったけど。僕にも使命ってのがあるからね。」
「……あなたみたいな!何も持たずにうろちょろしてた旅人が!私の復讐に水を刺さないで!!」
アスミアは、立ち上がって僕にそう叫んだ。
「……復讐しても何もいいことなんてない。」
「あなたに何がわかるの!」
アスミアはさらに叫んだ。わかるさ…。ヴァサゴの凶弾で亡くなった剣士を思い浮かべながら、アスミアに向かってこう言った。
「知り合いが死ぬ瞬間は心から痛い。殺した相手を復讐したいという気持ちもわかる…でもそいつを殺したからって、殺された人が帰ってくるわけじゃない。復讐したって虚しさしか残らないんだ。」
「……」
思った事をアスミアに言った。アスミアは何かを考えてから何も答えずに眠ってしまった。偉そうなこと言っちゃって怒らせちゃったかな?
「のっくん。あれは怒ってないと思うわ」
「僕もそう思うよ。」
「そうだといいけど。」
美夜子さんとドラえもんが出てきて、僕にそう言ってくれた。アスミアの心にちゃんと届くといいな。僕は隣の木で、朝に備えて眠ることにした。アスミアは朝いなくなっているかもしれないけど。
ーーーーーーー
「ーーーーーなさい!起きなさい!ノビタニヤン!」
「うわ!?…アスミア?」
僕はアスミアに起こされていた。あれ?僕に怒ったわけじゃないのかな?
「……あなたの言葉で私は考えていたの…そして夢を見たわ。亡くなったお父様やお母様、他の貴族達が目の前にいて、私は復讐すると言ったら、怒られた。私達はそんな事望まない。白銀の剣士に任せなさい。って、そんな事言われたら、私は何もできないじゃない?…だから決めたの。私はあなたのサポートに回ろうって。それとね。」
アスミアはスッキリした顔でそう言ってくれた。…良かった。出会ってばかりのアスミアだけど、あの話を聞いて復讐鬼にするつもりは毛頭なかった。復讐して残るものは虚しさだけ。現に僕はヴァサゴを殺す事はしなかった。アスミアの心を救えただけでも良かったよ。
「ノビタニヤン?」
「あっ、ごめん。何?」
「だから!ありがとう!」
アスミアは、あーちゃんのようにすごく綺麗で屈託の無い笑みを浮かべながら僕に言ってくれた。僕はこれでまた一段と頑張れるような気がする。
ーーーーーーー
それからというもの、僕とアスミアは森を歩いていた。アスミアからは白銀の剣の兜の性能を説明された。何でも白銀の剣と兜は、着るだけで天下無敵になれるみたい。剣はこの世界にいるドラゴンを倒し、その血を浴びると不死身になるらしいけど、ドラゴンを殺してまで不死身になろうとは思わないなぁ。あとは、オドロームを倒した者は王女様と結婚出来るらしい。
「あなたもそうなの?」
「それはどうでもいいんだけど。ユミルメ国が救えれば」
「あなたは、本当にお人好しなのね。」
仮にできたとしても、その王女様の気持ちを汲んで別れるつもりだしね。無理に決まった結婚は相手の気持ちを一方的に無視してるし、そんなの嫌だ。…ソフィアさんに求婚されたじゃないかって?…何も言えないよ。情けないな。
「今はそれよりも、山に…ん?」
僕が行こうとしたら向こうから何かの鳴き声が聞こえた。そこを見ると小熊が罠に嵌っていた…ってこうしちゃいられない!
「大丈夫?今逃がしてやるからね。」
僕は罠を外してやった。小熊はこちらを向いてから礼をしていた。律儀な熊だ事。
「やーい!何をしやがるんだ!!」
後ろから声が聞こえてそちらを見ると茶色い兜に赤いマントオレンジの服を来たジャイアンに似た人がこちらに来た。
「俺の獲物を何で逃がした!」
ジャイアンに似た人は僕を捕まえようとしたが、それを避けた。いきなり突っかかって来たのは、この人だし。
「いきなりの挨拶だね。」
「おめえが俺の獲物を逃がしたからだろうが!」
「小熊が可哀想だったから、逃がしたまでだよ。」
「生意気な!俺は白銀の剣士、ジャイトス様だぞ!」
ジャイアンに似た人物。ジャイトスは、偉そうにそう言った。何かハマり役どの世界のジャイアンはこの性格になるのかな?ていうか白銀の剣と兜持ってないのに白銀の剣士って図々しいなぁ。まぁ、僕が言えたことじゃないか。
「ノビタニヤンの言う通りよ!小熊を捕まえるなんて道徳的にもおかしいわ!」
「ふん!女が男の俺に指図するんじゃねー!!」
「な、なんですって!?」
……よくいるんだよね〜。男尊女卑主義者の男が女の人にそう言うの〜…ジャイアンと同じ顔でもこんなにムカついたことは無い。ジャイアンは女性陣に対して、そんな事は言わない。…言ったらどうなるかわかってるからだと思うけどね。とにかく僕はジャイトスに頭にきた。
「……アスミアに謝れよ…」
「あ?何で俺様が謝らないといけないんだ!」
「そういう…女性を見下す男は嫌いなんだよ。」
「へ!そこまで言うなら決闘だ!お前は負けたら俺の奴隷。女は俺の物だ!ガハハハハ!」
この男は…どこまでも腐ってる。性根から叩き直すか。
「ノビタニヤン…」
アスミアが心配そうにこちらを見てきた。まぁ、体格的に向こうの方が強そうだしね。でも僕は、ヴァサゴや転生者と戦ってきたんだ。こんな性根腐ってる男に負ける訳にはいかないね。
「大丈夫。僕はこれでも強いからさ。アスミアの剣を貸して」
「うん、頑張ってねっ!」
アスミアから剣を受け取り僕はジャイトスの前に出た。ジャイトスは相変わらず見下した顔で僕を見ていた。
「始めるぞ!!だ!!」
ジャイトスはいきなり始めてきた。いきなりなんて卑怯だなぁ。でも僕はそれを避けた。誰が当たるかそんなわかりやすい剣筋。ジャイトスは振り返りざまに剣を僕の背中に刺してきたが、僕は消えた。
「消えただと!?」
「ここだよ。」
僕はジャイトスの懐で言った。ここには少しの水があったから、逆巻く雨で避けれた。僕は
「はぁ…はぁ…見かけによらずやるようだな!」
「君もね。まだやんの?」
「あたりめぇだろうが!!」
と言ってジャイトスは、さらに剣を叩きつけてきた。剣を交え、火花を出しながら、僕はそれを受け止めていた。力は強い、剣も重い…そういえば聞くの忘れてた。
「君さぁ、何のために白銀の剣士になるの?」
「戦ってる最中にそれを聞くか!はぁ…はぁ…いいだろう!教えてやるよ。白銀の剣と兜を手にして、オドロームを倒してから、王女を貰いこの国の王になって…女共は性奴隷!男共は奴隷にしてやるんだよ!!ガハハハハ!!!」
「…もう黙れ。」
「ガシュハ!?」
僕はジャイトスに
「ノビタニヤン…」
「こいつにはもう用はない。もう行こう。時間を無駄にした。」
「え、ええ」
アスミアには少し怖い思いをさせたかもしれない。こんな胸糞悪い夢はないよ全く。僕はアスミアを連れてさらに奥へと進んで行った。
ーーーーーーー
「さっきの技ってなんなの?」
ジャイトスという男の決闘した場所からちょっと行った場所で、アスミアから聞かれた。僕は師匠から教わった剣術だと説明した。
「あなたの実力なら、白銀の剣と兜を手に入ったら、鬼に金棒ね!」
アスミアは、昨日会った時よりもあーちゃん寄りな感じなった。ここまで心を許してくれるとは思わなかった。
「待ってくれ!!」
…声が聞こえた。後ろを見たら、ジャイトスが来ていた。性懲りも無く僕と戦うつもりか?
「…さっきは悪かった。俺はどうかしてたんだ!」
と思ったら、土下座して謝ってきた。さっきの態度が嘘のように。でも…
「信用できないね。アスミアに誠心誠意詫びたら、許すよ。」
僕はジャイトスにそう言った。男尊女卑主義者のこの男が次の行動次第で、
「…さっきはクソみたいな事を言ってすまなかった。」
ジャイトスは、僕の言う通りにアスミアに謝っていた。というか何か目の感じも全然違くなっていた。何で?
「俺もさっきは何であんな事言ったのかわからなかった。小熊にも悪い事をしたと思っている。」
本当に反省しているようだし、少しジャイアンと同じ感じになってる。…ジャイトスは操られていた?いやでもこれは夢だし。気まま夢みる機のカセットの一つだ。それにジャイトスを操って僕を倒すんであればもっと姑息な手段をさせる事もできるだろう。
「ジャイトス。僕達に会う前に誰かに会わなかった?」
「…あぁ…白い長髪で長い鼻を持ったやつにな。」
「な!?」
その人物像は、僕が現実で会ったおじさんと同じだ。あのおじさんが僕を?一体何が目的なんだ?
「…ノビタニヤン…俺をお前の家来にしてくれ。」
「…君は操られていたし。何より僕は家来なんかいらない。さっきの事は、水に流すとするから…仲間になろうよ。」
「…いいのか?あんなゲスな事言ったんだぞ?」
「…今はそんなこと思ってないでしょ?それに僕は、君の目を信じる。アスミアもいいでしょ?」
「ええ。本気で謝ってるってわかったし。」
「うう…ありがと!ありがとよ!」
ジャイトスは男泣きをしていた。…あのおじさんがこの世界にいるんだから、次会った時に聞き出さないといけないな。こうして僕達は、ジャイトスを仲間に入れて、ヨラバタイ樹に向かうのであった。
ーーーーーーー
ここはヨラバタイ樹の根っこの部分に来ていた。相当でかい木だな。樹齢1000年くらいかな。
「ノビタニヤン…どうするんだ?」
「こんなに大きいとは思わなかったわね。」
2人も驚いてる様子だった。そりゃ、2人も初めて見るからそうなるか。
「うーん…登るつもりだけど、長くなりそうだしね。ちょっと川で水を調達して来るから待ってて」
2人は頷いて、その場で待機した。僕は水袋を手に持って、川に来ていた。川の中で何かが光っていた。あれって…月?そういえばあのままどこに行ったかわからなかったんだっけ?ってこれ使えるじゃん!僕はそう思って2人が待つ所へと走った。ジャイトスは僕が持ってきた物を指さした。
「それなんだ?」
「月」
「「は!?」」
まぁ、驚くのも無理はないか、月が落ちてるなんて完全に物理法則ガン無視してるしね。ってこれは昨日も言ったか。とにかく2人にこれを使っててっぺんまで行こうと提案したが。
「それはあなただけで使って。」
「そうだ。お前が白銀の剣士だ」
「でも…」
僕は躊躇っていた。だって2人も本当は白銀の剣と兜を欲しているはずだ。アスミアは復讐はしないと言ったが、オドロームに一太刀浴びせたいだろうし。ジャイトスはわかんないけど、操っていたのがもしあのおじさんでそのおじさんが、オドロームと繋がっていたとしたらと思うと、やっぱり一太刀浴びせたいと思うし。
「君は、私を復讐鬼にさせないようにしてくれた。」
「お前は、俺を悪いヤツから目覚めさせてくれた。」
「「だからこそ。白銀の剣と兜はお前(君)が貰って。俺(私)達の
ジャイトスとアスミアは同時にそう言ってくれた。…途端に目柱に熱いものを感じた。2人とも短い間だけど、僕をこんなに信用してくれるなんて…期待に添えるように頑張らなくちゃ。
「わかった。ありがとう。2人とも。」
僕は膨らんだ月に乗って、上へと飛んだ。てっぺんまで着くとそこはやっぱり光り輝いていた。僕は月から飛び乗って、進んだ。そこにはよくRPGで出てくる宝箱があった。そこに近づくと…
《ようこそ、復讐せんとした少女を改心させ、操られし少年を救ったユミルメ一の勇士よ》
声が聞こえ、そのような事を言っていた。僕の行動を見ていたのかな。
《そなたに、白銀の剣と兜を授けます。》
言われた瞬間に宝箱が開き、白銀の剣と兜が飛び出してきた。これが白銀の剣と兜…光り輝いていた。僕はこれを着た、ちゃんと僕に合うようになっている…。やっぱりこれは、誘導されていたのか?まぁ、今はそんな事考えてる場合じゃないか、ってどうやって戻ろう?月はあのまま上に登ってったし。
《心配いりません。帰り道はこの箱の中》
僕がそう思っていたら、声がまた聞こえた。この声は耳じゃなくて、頭に直接話しかけてるみたい。大丈夫かなぁ
《そなたは、このユミルメ国を救う事ができる。白銀の剣士【ノビタニヤン】》
そう言われたら、降りるしかないよね。僕は箱の中に入った。そこには光の道があり、滑り台のようになっていた。そして、僕はヨラバタイ樹の根元に降りていた。
「ノビタニヤン!」
「おぉ!白銀の剣と兜を手に入れたか!」
「うん!…この先三剣士、力を合わせて妖霊大帝と戦おう!」
「「ええ(おう)!」」
僕達は、太陽に向けて剣に誓いを立てた。僕、アスミア、ジャイトスの冒険はこれから始まるんだ!
PIPIPIPIPIPI!!
「…んあ?あっ、そうか夢だったんだ。2人とも寝ちゃってる。」
誓いを立てた時に音が聞こえ、目が覚めた。何か出鼻をくじかれた感じがする。…謎がいっぱいだ。今回も変な事件にならないといいけどね。
「…んん…あ、のっくん?おはよ。どうだった?」
「充分楽しんだよ。まぁ、色々あったけど。」
「アスミアの事、ジャイトスの操られていた件でしょ?また大きな事にならないといいけど」
「僕も思ってるよ。この事みんなに話してくるね。ドラえもんが起きたらいつもの空き地に集合って言っといて。」
「わかった。」
僕は、そう言って皆に夢幻三剣士の事を伝えるために家を出たのだった