俺の日常に妹が追加されるようです   作:Damy

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兄妹の恩返し

「…………」

「…………」

 

今日の朱石家の夕食はなんとも言えない雰囲気が漂っていた。いつも、というかかなでが越してきてからの夕食は、談笑溢れる穏やかなものだ。

今日こうして誰も話さず、皆の目がテレビと夕食と自分以外の3人の目を行ったり来たりしている状況は稀だ。父さんと母さんが喧嘩をした後ぐらいのものだ。しかし、今日の両親は極めて平和的で、少し目を話せばイチャイチャし始めるくらいに仲が良い。

よって、今日この場の雰囲気は俺とかなでから発せられているという結論に至る。理由はわかり切っているんですけどね? あえて一言で言うなら──

 

(気まずい……!)

 

かなでもそう感じているのか、隣にある華奢な方は忙しない。けれども俺はかなでよりも顕著に気まずさを感じていた。

なにしろ事の発端は俺だからだ。先日の那由多に対する恥ずかしい勘違いが原因だ。まず、俺は自分の勘違いの内容を赤裸々に(その時はだいぶ混乱していて話さなくてもいい事まで話してしまった)かなでに語ってしまったことが恥ずかしい。ぶっちゃけ死にたい。

もちろん、かなでに俺は感謝している。今回の件が無事(?)解決したのはかなでの功績によるところが大きい。もし、かなでがいなかったら解決はもっと遠くなっていただろうし、若しかすると解決することは無かったかもしれない。

だが、俺はこの件についてかなでに感謝を何らかの形で表す、ということが出来ていない。要するに『お礼をしたいけどできていない』。

これには少なからず……いや、90%くらいかなでに非があった。何故かかなでが俺を執拗に避けるのだ。それも、今までとは違った避け方で。今までの避け方は針を押し付けて遠退けるようなものだったのに対し、今日は近づくと遠ざかり目が合うと逸らされるというごくごく普通な避け方だ。……避け方に普通とか異常があるのかはわからないが、今までと比べてそれは幾分かマイルドになっていた。

そもそも、なぜ俺がかなでに避けられているのか。いや、理由を挙げたら両手両足の指じゃ数え切れないほどの数になるのだろうけど。今、明確にこれだ! と言えるのはやはり俺が那由多の相談をかなでに持ちかけたことだと思う。

俺も中々に恥ずかしいことを口にしていたが、かなでも俺と同じくらいに恥ずかしいことを言葉にしていた。

「いつもありがとう」とか「気を使ってくれて感謝している」とか「恩返し」とか。あとはかなでが自分のことを妹だと言ってくれたり。(ツッコミ不在でお送りしております)

その1文字1文字が、一声一声が兄として本当に嬉しかった。

けれどもかなでとしては自分が思っていたことを兄に伝えてしまったのが、恥ずかしく後ろめたいのだろう。それに、普段とのギャップもある。あれだけ兄の事をぞんざいに扱っていたというのに心の中では感謝しているなんて、ツンデレっぽくて嫌なんだろう。そろそろこの気恥ずかしくて避けているという状態もツンデレのそれだと気づいて、部屋で悶えたりするんじゃないかな。

 

「……ごちそうさま」

 

結局、今日の我が家の夕食には会話らしい会話は皆無だった。強いて言うなら、母さんが父さんに塩を渡した時に「ん、」と発したのが、唯一のコミュニケーションとも言えないコミュニケーションだった。

気まずい雰囲気が今には充満してしまっていて、俺は逃げるように、というか完全に逃げるためだけに自室に向かった。

 

「どうすっかなあ……」

 

呟いたその情けない声は、誰の耳に届くでもなく壁へと吸い込まれていく。壁が俺の悩みに答えてくれる気配はない。

いや、もしも壁が話し始めたらそれは、俺がいけないに転移してしまったか頭がいかれちまったかのどちらかだ。

 

「かなでへの恩返し……恩返しに対する恩返し……兄らしさ……妹に接するような……兄妹……」

 

頭に浮かぶ単語をブツブツと口に出していく。言葉は全て壁にあたり、染み込み、写し出されていく。

 

「俺自身、今回のことはかなでにはかなり感謝している。そのお礼……プレゼント? いや、それはこの前やったし……んあぁ!!」わからなすぎて発狂した。

 

流石に今のは気持ち悪いな……自重自重。そんなことを呑気に考えていると、隣の部屋のドアが開き勢いよく閉まる音が聞こえた。

 

「急にうっさいんだけど!」

 

部屋のドアが開け放たれたと同時にかなでの声が響いた。随分とご立腹のようで眉間にシワがよっている。

 

「なにもそんなに怒らなくても、いい、だ、ろ?」

 

ビクッと肩を揺らしてからオドオドと、兄らしさの欠片もなくそう言いながら俺は一つ幻覚を見た。

かなでの髪を二つに結んでいるヘアゴム。それが俺の以前プレゼントしたものに見えたのだ。

 

「……かなで、それ」ゆっくりとツインテールの根元を指さす。

 

指をさされたかなでは一瞬キョトンとしてから、俺の指が指している部分に触れる。

指がヘアゴムにあたって驚いたように一瞬離れる。そして不思議そうにもう一度触る。撫でるように触る。手触りを確かめるようにかなでが思案顔をする。

 

「…………………あっ」

 

長い沈黙の後、かなでが情けない声を出した。付け替えるの忘れてた。とも言った。

……え? てことは俺の幻覚ではない? かなでが、俺のヘアゴムをまた(通算2回目)付けている?

嬉しさと恥ずかしさがこみ上げてきて、俺は自分の顔が赤くなっていくのがわかった。

 

「うぅ……っ」

 

しかし、俺よりも先にそれも更に赤くなっているかなでが目の前にいた。

それを見て俺は1つの案を思いついた。うん。これは兄妹らしいんじゃないかな。

 

「かなで」

「いや、違っ! こ、これはその……あ、兄貴のこと考えてたって言うか……そしたら自然とつけてたって言うか」

「ごめん、声ちっちゃくて聞こえないんだけど」

「なんでもない!」ガウッ、と犬歯をむくかなで。

 

明らかになんでもない様子ではないけれど……。俺は「あ、そうか?」と適当に流す。そして、本題に入る。

 

「かなで。デートしようぜ」

 




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コメントが来たら次話も頑張れそうな気がするなぁ(チラッ
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