俺の日常に妹が追加されるようです   作:Damy

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この話は18話時点のリメイク版です。投稿日時がおかしくなっていますが、どうかお気になさらず。
「初プレゼント」というサブタイで投稿していたものです。

では、第3話をどうぞ──


初めてのプレゼント

 迷子のアナウンスにタイムセールのお知らせ。ゲームセンターから流れる音やBGM。色々な人がたてる雑踏の中、俺と那由多は隣合って歩いていた。

 今日の学校を無事に終えて俺と那由多は、バス1本で来れる大型のモールに来ていた。目的は昨夜那由多が提示した機嫌取りの法。プレゼント選びである!

 

「それで、朱羅。何買うかって決めてるの?」

 

 騒音の中、気を使ってか耳元で話す那由多。こちょばしいのでやめて欲しい。というかもしもクラスのやつがいて誤解されたら大変だからやめろ。

 1歩遠のいて応える。

 

「それがわかんねぇからこうして付き合ってもらってんだろ?」

「こんな大勢の人の前で大胆に、付き合ってだなんて……♡」

「あーはいはい。そういうわざとらしいのいいから」

「ぶー……。でもさ、大まかには決まってないの? アクセサリーとか食べ物ーとか手紙ーとか」

「全く。これっぽっちも」

「これはまた長くなりそうな……まぁいいけどさ」

 

 さすが那由多、おっとこまえー。とは思うが決して口にはしない。だってすぐ調子に乗るし、挙句になにかお礼に奢ってってせがんでくるし……

 いやまぁ、お礼として元々奢ったりなんかしたりってのは考えてはいるんだが……如何せんねだられるとそういうことをする気には一切なれない。主に那由多の場合。

 プラス「ほんと朱羅は私が居ないとなんにもできないんだからァー」とかほざき始めるのだ。踵を返してゴーホームまである。

 

「ってかさ那由多。あれ、ホントやめてくんね? 明日学校行くの怖いんだけど……」

「えぇー、だって朱羅の反応面白いんだもん」

「マジふざけんなよ……お前の快楽のために俺は『反朱石 朱羅同盟』にどんな目に遭わされると……」

 

『反朱石 朱羅同盟』その聞くからに物騒な同盟は、俺への嫉妬によりクラス内男子──その殆どで結成された。

 昨日公言した俺と那由多が幼馴染という事実を耳にした男子生徒は皆同じく嫉妬に狂い、同盟を創立した。この時点で「アホだろ……こいつら……」と脱帽するがまだ先がある。

 彩斗に聞いた話だとSNS上にグループが作られたらしい。全学年クラスを問わずのもの。5組男子だけのもの。そこから更に、俺への嫉妬の大きさにより幾つかの階級に別れて作られたもの。これを聞いた時はかなり傷ついた。

 作っている途中で面白くなってきちゃってこんなに大きくなっちゃった。らしい。ホントアホだろ……うちの学校の将来が心配です。

 

 では、想像してみてくれ。

 ホームルームも終わり、新学期二日目でなんとなくクラスの大半が教室に残っている中、那由多がこんなことを発したらどうなるのか、を。

 

「朱羅ー、約束どうり放課後デート行こー」

 

 ……想像出来ただろうか? 大丈夫。その10倍は男子の取った行動がアホだから。

 

『………………ハァァァァァア!?』

 

 数瞬表情を失った5組男子生徒及び廊下にいた男子生徒(俺も含む)。その後に机を揺らすほどの大怒涛に、未だ石化が解けない俺へと向けられる鋭い眼光の数々。メドューサ並に怖かった……です。

 那由多のニヤニヤ顔を向けられ、蛇型の髪に噛み付かれたかのように石化が解けて現状を把握する。

 

「おいバカ那由多! デートじゃなくて買い物だろが! か・い・も・の!」

「……? だからデートでしょ?」

「やめろ! その純粋そうな瞳を! 俺が誤魔化しているみたいに聞こえるじゃねえか!」

「そんな……! あれは嘘だったの……? 昨日の夜“付き合ってくれ“とまで言ってくれたのに……!?」

 

 大袈裟な身振りで楽しそうに語る那由多。しかしその声はちゃんと悲痛そうに聞こえる。おい誰かこいつの顔を見ろって! めっちゃ満面の笑みだから!

 だが、視線が向けられるのは那由多ではなく俺。誰も那由多の演技を見抜こうとはしてくれない。

 いや、女子は気づいてるっぽいな。「また那由多ちゃんが何かやってるー」みたいな目をしている。あと「男子ってアホだなー」って目をしていらっしゃる。俺もそう思いますわ!

 

 困り果てていると那由多が大股でずんずんと寄ってきた。本来は見えないはずの赤黒いオーラが立ち込めてきて、俺の心臓をキュウキュウと締め付けてくる。皆からは見えなくなったことをいいことに、猫のようなご満悦の表情をした那由多は、俺の頭をズキズキと痛ませる。

 こいつ絶対こと状況を楽しんでやがる──!

 

「ねぇ応えてよ! 昨日のあれは本当だったの? それとも嘘──」

「あぁもうめんどくせぇ!」

 

 那由多が近づいてきたのを利用して俺は、那由多の手首を掴んで教室からの脱走を謀った。

 背後からは女子の黄色い悲鳴。ボロッとかガッシャンとかいう心が割れる音。誰かさんの笑い声がすぐ側から聞こえてきた。

 思い返すと、那由多の「付き合ってくれ」発言に対して“買い物に”という意味だ、と弁明しておくべきだったな……そう思いながら隣の黒髪の少女を睨む。すると、少したじろいで少し頭を下げた。

 

「あぁいや……ごめんね?」

「……まぁ許すけどよ……次からはマジ勘弁してください……」

 

 じゃないと本当に殺されそうで怖い。

 ただでさえ、今朝登校してきただけで冷たい視線と会話の若干の拒絶があったんだ。はは……明日は何があるのかなぁ……?

 

「ありがと。じゃあその分も今日のプレゼント選び、助力の限りを尽くしましょうぞ」

 

 それから俺達は、色々な店舗を見て回った。

 女子しかいないような場所で那由多がわざと姿をくらまし、俺一人でうろつかされて周りから怪しいものを見るかのような視線を向けられたり。下着売場の前を通る度に入っていこうとする那由多を止めたり。……そもそもサイズを知らん。1番ちっさいのを買ってけば多分大丈夫なんだろうけど。いや、知らんけど。

 とまぁ、那由多にさんざん迷惑をかけられた訳だが、その分色々とアドバイスもしてくれたのでチャラにしといてやる。

 

「朱羅ー、疲れたー」

「おお、確かに結構いい時間になってんな……」

 

 真剣に選んでいると時間が過ぎるのも早く、長い時間歩き回っていたらしい。男の俺はともかく、女子である那由多は少し辛かったのかもしれない。俺の中では女子は永遠に買い物をしていられるようなイメージがあったんだがな……?

 

「あ、あそこで休もうよ」

 

 そういって那由多が指差した先には喫茶店があった。なんとタイミングのよろしいことで……

 

「……ああ、いいぞ」

「わーやったー」

 

 わざとらしくはしゃいで店へと突っ込んでいく那由多。疲れはどこに行ったんだよ……

 

「えーっと、コーヒーとカフェオレを一つづつ」

 

 俺が追いつく頃には既に那由多はカウンターで注文をしていた。

 

「こちらの“カップル限定デザート“などはいかがでしょうか」

 

 俺がカウンターに並ぶとほぼ同時に店員さんがそう提案した。いや、カップルとかほんとやめてください教室でのトラウマとかそういうのがこう──

 

「あ、はい。それもお願いします」

「かしこまりました。全部で1205円になります」

「ほら、朱羅も半分出してよ」

「あ、おぉ」

 

 言われた通りに600円と、丁度あった五円玉を出す。

 いやいや、ちょっと待って。デザート? そんなの頼むって聞いてないんですけど?ってかカップルってなんだよ。付き合ってねーよ『反朱石 朱羅同盟』が怖いよ。

 店員さんから番号札を貰って適当な席に着いた。このお店では商品を運んできてくれるようだ。

 

「……デザートとか知らないんですけど?」

「あーいや、ごめん。つい」

 

 ついってなんだよ……まぁもういいや、頼んじゃったし。

 俺はもう諦めて一息ついた。那由多の肩がビクッと跳ね上がったが、反省しているならわざわざ言って聞かせる必要も無いだろう。

 

「次からはちゃんと言えよ?」

「つ、次……うん、わかった」

 

 プレゼントについて相談しながらゆっくりとし、カップル限定とか宣っていた割には普通だったデザートを食べてから店を出た。

 

 ──────────────────────

 

「ただいまー」

 

 かなでが家にいるだろうと思い、しっかりと挨拶をした……のだが、待てど暮らせどおかえりは帰ってこない。靴はあるのに……

 はぁ……と、一つ嘆息してから2階へと上がった。かなでの部屋の前を通る時に、何やら物音がしていたのできっと部屋にいるのだろう。

 

 プレゼントは、那由多の協力のおかげでなんとか決まった。那由多からの好評かもいただけたのでそれなりに自信もある。

 のだが、やはり不安というのは残る。というのも、例外こそあるが、まぁプレゼントなんてしたことがないと言っていいだろう。

 那由多からは好印象だったし、俺もそこそこ満足しているとはいえ、かなでには喜んで貰えるとは思えなかった。

 だってさ、考えても見ろよ。外を歩いていたところに、急に知らないおっさんから「これあげるよ」と包装された何かを渡されても、戸惑いこそすれど喜んだり感謝したりって言うのはないだろ?

 まぁ、極端な例え話だったがつまり。親しくもない人からプレゼントを貰おうと、嬉しいという感情よりもえ、なんで?っていう感情が先に来るものなのだ。

 そしてもうひとつの不安点。

 

「いつ渡せばいいのかわっかんねぇ〜……」

 

 そもそもプレゼントって記念日とか特別な日に送るもんじゃないの?こんな平日のなんにもない日にプレゼント送るとか意味わからん。むしろ何か裏があるんじゃって疑われるレベル。なに、「君に出会えた記念に」とか言って渡せばいいわけ?キャラじゃないし気持ち悪いっての……

 それに”プレゼント“って単語がどこのパリピだよ、ウェイ勢だよ、リア充かよって感じである。

 まぁもうそこは諦めよう……プレゼント自体もう買ってしまったし。俺がこれを持っていると女装癖を疑われかねない。那由多にあげようにも「へたれ」と言われるだけだし。かといって他に女子の知り合いがいる訳でもない。

 ならば、いつ渡すか。結局これが大切になってくるわけだ。

 家に帰っくる途中、那由多にも聞いてみたのだが、

 

「そんなの雰囲気だよ、雰囲気」

 

 と、軽く流さられてしまい、その後も特に有用な情報は聞き出せなかった。

 雰囲気が大切なのは何となくわかる。大切なことだから2回も言ったんだよね。もしくはそこを強調することによって、他の何かが露呈しないようにしたのか。例えば那由多もプレゼントをほぼしたことを無いとか……まぁ、その詮索はまた明日しよう。

 そんなどうでもいい言い訳を並び立てていると1階から夕飯の呼び出しがかかった。

 

 ──────────────────────

 

「ね、ねぇこここは?」

 

 目の前にはその瞳をキラキラと今までに見た事がないほど輝かせた”かなで“。

 どこか甘い匂いが鼻腔をくすぐり、クマのぬいぐるみや観葉植物なんかが目に飛び込んでくる。

 

「ねぇ、聞いてる?」

「ん、あ、あぁそこな。これはだな──」

 

 すぐ側に──その体温を感じさせるほどの距離にかなでがいて、緩く着られた服の襟元からは華奢な方や細い鎖骨が覗ける……いや、覗いちゃいかんでしょう!?

 このかなでに若干の戸惑いを覚えながらも手取り足取り丁寧に教えていく。

 俺が教える度に、

 

「ふむふむ……へー!……あ、なるほど」

 

 と、無邪気な笑顔を浮かべながら素直に何度も頷くかなで。……こういう感じの首を上下に動かすぬいぐるみとかあるよな。いや、馬鹿にしているとかそういうわけでは無く、そういう愛くるしさがあるよな……って俺は何言っちゃってんの!?

 

「あ、じゃあ次ここは?」

 

 再び質問をしてくるかなで。くっ……なんでこんなことに──

 

「ねぇ、聞こえてる?さっきからボーッとし過ぎじゃない?」

 

 思い馳せることも許さずに、かなでが追撃してくる。

 

「あー、はいはい。ここはな──」

 

 ほんと、なんでこんなことになったんだか……

 

 ──────────────────────

 

 夕飯、風呂、皿洗いその他もろもろを終わらせ、今日はもう寝るだけとなった今。綺麗に包装された袋が手元にひとつ。

 那由多から助言を貰えないかと思い、ベランダへと出たり、電話をかけたり、スタ爆したりと色々な手を尽くしたが反応はなかった。やっぱりあいつプレゼントとかしたことないんじゃ……

 一応インターネットなんかでも調べてみようと思ったのだが……

 

『もう迷わない!? プレゼントの渡し方ベスト10!』

『恋人へのプレゼントを渡すタイミング、損していませか?』

 

 エトセトラエトセトラ。

 恋人とか彼氏彼女とかそういった文字が踊っていてリンクを開く気力が起きなかった。どっかに妹へのプレゼントの仕方とか載ってねぇのかよ……?

 もう頼る術も頼る経験もない。ならば、と。

 

「思い立ったが吉日。ってか?」

 

 ちょっとカッコイイ風のセリフを言って立ち上がっり、プレゼントを手に持ちかなでの部屋のドアをノックした。

 だが、反応は帰ってこない。さっき足音がしたから部屋にいるのは間違いないはずなんだが。

 

「……どうぞ」

 

 少ししてからドア越しに声が聞こえてくる。そっとドアを開いて中を覗くとかなでが、げっという表情を浮かべていた。『反朱石 朱羅同盟』のおかげで傷つくことに耐性のできた俺でも少し傷ついちゃう……

 覗いたかなでの部屋は昨日までのダンボールだらけの部屋と打って変わって可愛らしいお部屋へと変貌を遂げていた。

 ぬいぐるみや観葉植物などが所狭しと置かれていて、全体的にピンクや白をイメージできる内装に、ところどころに自然の緑が入っている。それに昨日までは物置だったはずなのに、部屋には女子特有の甘い匂いが仄かに漂っている。

 その部屋の中央部分に置かれたテーブルの上には勉強道具が置かれていて、先程まで勉強をしていたのであろうかなでが向かいに嫌悪感丸出しで座っていた。なんなら舌打ちとか聞こえたしね。あ、こら、女の子が眉間に皺を寄せてはいけません。

 

「なに。今あたし勉強中なんですけど?」

「へぇ……凄いな。流石は学年首席」

「学生なんだし当たり前でしょ? ってかなに……学年首席?」

「昨日演説してただろ? あれって首席がやるもんじゃねぇの?」

 

 まぁ、首席じゃなくても次席とか……とにかく、頭の良い奴がやることに間違いはないだろう。

 やっぱり、こうして毎日勉強しなきゃ点数は取れないもんなんだなぁ〜。と、他人事のように考えている俺 16歳 高校2年。

 

「あぁ、あれは友達の代わりにやったの」

 

 友達。こっちに来て1日もしないうちに友達を作れたのか……俺なんて16年ここに居るのに毎日敵を作ってるんだけど。

 

「へぇ、変わり。じゃあかなでって次席とかなのか?」

 

 感心してそう言うと、かなでの視線がすぃー、とあさっての方向へと向いた。そっち側には何も貼られていない壁しかございませぬよ?

 ……あれ? そういえばこいつってジュラ紀すら知らなかった、いや、あれは俺のギャグが高度過ぎて伝わらなかったんだっけ?

 なんだか無性にかなでの勉強のできが気になってきた。

 

「……ちょっと借りるぞ」

「ちょっ!勝手に!」

 

 軽く断りを入れてテーブルの上にあった問題集を手に取った。

 なん……だと……

 戦慄した。いや、戦慄しざるおえなかった、と言うべきだろうか。

 俺がえ? という顔でかなでを見やると真っ赤な顔の頬を引き攣らせてこっちを睨んでいた。……念の為裏綿を見るが、そこには朱石 かなでの文字が書かれている。

 もう一度かなでを見やる。

 

「う、うっさいし!」

 

 まだ何も言ってないんですけど……あ、あれか。目は口ほどに物を言う。よくそんな難しい言葉知ってるなぁ〜偉いぞ、かなで。

 冗談ではなく、そう思った。いや、半分くらい冗談だったわ。

 だが、それぐらいに問題集の出来が酷かった。それはもう1ページにつき2、3問合ってるかどうかってくらい。

 

「なぁ……少しくらいだったら、見てやれるぞ」

「い、いらない!かなでできるもん!」

 

 何故自分を名前呼び……それくらい狼狽してるってことか?

 俺は頭を少しかいてから腰を下ろした。正面からギャンギャン言われているが気にしない。

 都合よく、かなでが今勉強しているのは数学だった。それなら教えられる自信がある。よく那由多にも教えていたし。

 

「それで?どこら辺がわからないんだ?」

「ちょっと! ホントに! いいから!」

 

 !1つにつき体を上下運動させるかなで。机が少し軋んで1階の両親が迷惑してそう……

 俺がもう一度同じ質問をすると急にしおらしくなり「……ここ」と指さした。展開の応用問題だ。

 

「あぁ、ここはな。分配法則あるだろ?それでこことここに掛かってだな──」

 

 ──────────────────────

 

 あの後、他教科の問題集を出してきたかなでにはさすがに困った。数学だけならば教えることも出来るのだが、いかんせん他教科となると教え方の検討がつかない。

 キラキラと輝く瞳と表情が落胆の色に染まるのを見ると酷く悪いことをしてしまった気分になる。

 

「あ、あぁーちょっと待て。今度国語と英語が得意なやつ連れてくるから」

「……ん、わかった」

 

 少し拗ねたように頷くかなで。

 そろそろ言ってもいいかな……誰、これ?

 マジで誰だよこれ……素直過ぎない?純真過ぎない?あ、かなでって二重人格だったのか……って素直に思えてしまうほどの代わりっぷりなんですけど……?

 ひとしきりの疑問を心の中で叫びたてていると、かなでがはっ、と肩を揺らした。

 そしてキッと睨んでくる……が、そこにいつもの迫力は微塵も見れない。大方、先程までの態度を誤魔化すためなんだろうが、むしろ逆効果である。

 たじろぐどころか微笑みすら称える俺にかなでは「ぐぬぬ……」と悔しがっている。ぐぬぬって声に出すやつ初めて見た……

 

「……いつまで居座るつもり」

 

 居座るってお前……まぁいいか。俺は「……はいはい」と呆れたような声を出した。かなでの自尊心を損なわないために。

 部屋を出た俺は自室に戻ろうとして「……あれ?」と無意識に声を出していた。

 なんか、重要なことを忘れてきているような……

 そう思った時にかなでの部屋のドアが開いた。

 

「ねぇ、これあんたの?」

 

 その手には包装された袋が乗っかっている。俺からかなでへのプレゼントだ。

 ……って、プレゼントを渡すのをすっかり忘れてんじゃん、俺。

 なんだかおかしくなって苦笑を浮かべる俺に怪訝な目を向けるかなで。それがまた面白く、妙に脱力した気分になった。

 

「それ、お前へのプレゼントな。家族としてお近付きになるための第1歩的な意味で」

「えっ……」

 

 驚きの表情を浮かべ、手元と俺の間を反復するかなでの視線は少ししてから俺に向けて止められた。

 その表情は驚きと戸惑いに充ちていて、今日はかなでの知らない表情を沢山見られるな……と場違いなことを考えてしまう。

 

「あ、ありがと……」

「どういたしまして。またわからないとこあったら遠慮なくどうぞ」

「あ、え、うん」

「じゃあ、戻るわ」

 

 そう言ってから部屋に入った。よし、今日はもう寝るだけだな。久しぶりに頭を使ったせいか、慣れない場所を歩き回ったせいか、いつもよりも体が重くてベッドに横たわると直ぐに睡魔に襲われる。

 

「あ、その前に」

 

 そう思い出して携帯を取り出した。

 

「任務完了。かなでも喜んでくれたみたいだ。ありがとな。あ、あと、今度かなでに国語と英語を教えてやってくれ」

 

 そう入力してから那由多に送信した。きっとまた反応しないんだろうけど……

 携帯をしまおうとしたら振動した。画面を見ると那由多からメッセージが届いたという事が表示されている。返信打つのはぇぇー。

 

『お疲れ!どーいたしまして(*´ω`*)

 いいよー、いつぐらいがいいかな??』

『あとでかなでに聞いてみる』

 

 那由多と俺の文面を比べると明らかに違った。俺のは事務的というか……色がないように思う。那由多のはバカっぽ──色鮮やかで……高校生ぽかった。

 俺も高校生らしく、那由多に寄せた方がいいのかな?いや、でも大体の男子高校生はこんなもんか。

 

『リョーかいっ( ̄^ ̄)ゞ』

『何から何までスマンな(((o(*゚▽゚*)o)))』

『何その顔文字wwwウケるwww』

 

 あのな、不慣れなことに1歩踏み出そうとしている人を馬鹿にしたり嘲笑するのはよくないと思うぞ。むしろ、その失敗を笑うのではなく、挑戦したことに対して褒めてやるべきだと思う。

 例えば『お、その顔文字いいねぇ!これからもどんどん使っちゃいなYO!』ってな感じに。やべぇ、むしろ煽られているようにしか聞こえねぇ。

 よし、これからは顔文字とかは使わないようにしよう。馬鹿にされるのが関の山だ。

 

『うるせぇよこの野郎( ̄▽ ̄)』

 

 あ、もう寝よう。俺は振動し続ける携帯をほっぽって布団をかぶった。




お読みいただきありがとうございました!
感想、指摘、アドバイス等々、ご遠慮なくお願いします!

余談

どうですか、前回の投稿(18話)から6日間しか経ってませんよ!
僕にしてはこのスパンは非常に短いと言えるのではどうもすいませんでした調子乗りました。
6日?なにそれもうちょいで1週間じゃん。どんだけ間空けんだよ、って感じですよね(被害妄想)。
いや、ホント、次こそは頑張りますので、これからも読んでくださると本当に嬉しいですお願いしますm(_ _)m
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