俺の日常に妹が追加されるようです   作:Damy

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第5話です


密室と怖がり

皆は窓ひとつない密室に閉じ込められた場合どうする?1人ではなく2人でだ、しかも自分はその相手に酷く嫌われているときたものだ……

 

これを機にその子と仲良くなろう!という前向きな人もいれば、隅っこで大人しく話しかけず波風立てずに助けが来るのを待っていよう……という人もいるだろう。

 

え?何でそんなことを急に聞くのかって?別にこれといった理由とかはない。ただ、今さっきまでこの状況に陥っていたからさ?俺がとった行動よりもいいのもがあるなら次回への参考とかにしようかなーとか?いや、別に次回とかなくていいんだけども……むしろない方が嬉しいです。

 

─────────────────────────

 

 

 

俺は夕飯に使った皿、3人分を洗っていた。今日はお父さんの帰りが遅いため俺とかなで、お母さんの3人で夕飯を食べたのだ。

ジャーっという水が流れる音がする中俺はお茶を取りに来たかなでに話しかけた。

 

「そう言えばかなで。将棋部に将棋盤ってあるのか?」

「………別にないけど。ってか気安く話しかけないでくれる?」

「あーはいはい。じゃあさ、物置に結構立派な将棋盤がしまってあるんだけど……それ、使うか?」

 

俺の提案にかなでは少し考えるような仕草をする。大方話としては魅力的だが俺に貸しを作るみたいで躊躇っているのだろう……なんでこんなに嫌われちゃってるのかなー…俺。

 

「使う。でも自分で取ってくるから場所教えて」

「いや、重たいだろうし俺が取ってくるよ。それに場所もわかりづらいんだ」

 

まぁわかりづらいというか、俺がうろ覚えなだけなんだけれども……

 

「じゃああたしもついて行く。んで、自分で運ぶ」

 

それなら文句ないでしょ?とでも言いたげに俺を見てくる。どうしても俺に貸しを作りたくないらしい……別にそんなつもりは無いのだが…

 

「あぁ、わかった。皿洗い終わるまで少し待っててくれ」

 

 

 

朱石家の物置は家の裏側にある。少し使うのに不便な位置ではあるが、ちょっとした倉庫ぐらいの大きさのためここ以外に置くところがなかったのだ。

 

「えーっと…確かここら辺に…」

 

俺はその物置の奥、小物で溢れかえった場所を漁っていた。ちなみに後ろの方でかなでも同じ作業をしている。

 

「かなで。そっちにあったか?」

「あったら教えてるっての」

「ですよねー…」

 

完全に妹の下についている兄だった……いや、でも兄貴ってのは意外とそういうものなのかもしれない(ラノベ調べ)

 

「あ、あった」

 

探し始めてから5分が経過した頃に、将棋盤の角らしきものを見つけた。

 

「かなでーあったぞー」

 

声をかけると、かなでが少し不機嫌顔で振り向いてきた……もしかして俺より先に見つけ出したかったとか、そういう勝負意識出ちゃってました?

と考えたがいくら何でもそれはないか───

 

「あたしが先に見つけるはずだったのに……」

 

マジかよ……見た目だけでなく中身まで子供っぽいな、こいつ。

 

「じゃあ、あたしが1人で運ぶから。先に戻ってれば?」

「本当に大丈夫か?それ、重いぞ…マジで」

 

今さっき俺も少しだけ持ってみたんだが持ち上げるのが精一杯で家の中まで運べそうになかったぐらい重かった。それをかなでが持てるとは到底思えないんだが……

 

「いいって言ってるでしょ。そこ、邪魔」

「はー、そーかよ…」

 

俺は渋々出口へと向かう。流石に俺だけ戻ってしまっても申し訳ないし外で待ってるとしよう。

そう思っていると──

 

──ブォッ──

 

物凄い強風が吹き物置の扉が勢いよく閉まってしまった。幸いライトを付けてあるため真っ暗になることは無かったが──

 

「キャッ!」

 

と思ったのもつかの間そのライトが消え、視界に何も映らなくなってしまう。あと、すごい可愛い声が聞こえた気がするが……やめておこう…このことを言ったら何されるかわかったもんじゃない……

 

「うわっ、おっ、いてっ」

 

俺は何も見えない中扉がある場所へと歩いていく。その道中道端に転がっていたものに足をつまずかせたり、足を打ったりなど足への集中攻撃が……と思っていると光を放たなくなってしまった電球に頭をぶつけてしまったりなど……散々だ。

 

「とーちゃくっと───あれっ?」

「ど、どどどどうしたの!?」

「いや、なんか開かない……てかお前こそどうした」

 

かなでが面白いほどに動揺していた……もしかして暗いの苦手なのか?

それと扉が開いかなくなっている…どうしましょ。

とりあえず暗くて何も見えないため電気をつけようと手探りでスイッチをパチパチやって見るが…やはりつかない……あと、かなでがパチって1回なるたんびに「ひぃっ!」とか「ひゃぁ!」と言うため電気は諦め懐中電灯をつけた。

 

「みぎゃぁぁぁぁ!!!」

 

明かりが灯ると同時にかなでが珍妙な叫び声をあげ物置の隅っこまで移動しうずくまってしまった……いくらなんでも怖がりすぎだろう……

 

「かなではなんも悪いことしてませんかなでを食べても美味しくないです食べるならあっちの人を食べてください……!!」

 

しかも何気にひどいことを言ってやがる……

 

「おい、大丈夫だから…少し落ち着けって…」

「にゃ、にゃにゃにゃにが!お、落ちちゅいてりゅし!」

「噛んでるし、呂律回ってないしホント落ち着けよ…」

 

そう言いながら俺は扉を見つめる。必然的に懐中電灯の明かりが俺の手元に来る。後ろで「ひゃぁ!」とかって聞こえたが今は無視させてもらう。ここから出るのを優先すべきだろう?

 

「あっちゃー……」

 

俺は扉と壁の隙間を見てそんな声をあげてしまう。

 

「え、えぇ!?な、なに!?どうしたの!?」

「鍵がしまっちゃってて外に出られなくなっちゃった…」

 

うちの物置の鍵は外側にのみついており鍵をかけられてしまうと内側からは出られない仕組みになっている。どーしよ、携帯でお母さんを──って家の中だ。

 

「かなで。携帯持ってるか?」

「あんたが必要無いって言ったんでしょ!」

「だよなー…」

 

となると、お母さんが気づいてくれるのを待つかお父さんが帰ってけるのを待つかの2択か……

お母さんはさっき風呂に入ったばっかりだし1時間は気づいてくれそうにないよな…お父さんの方もいつ帰ってくるかわからないし…

 

「かなで、多分しばらくここに待機だ」

 

そう言ってかなでに懐中電灯を向ける。

 

「ふひゃぁ!ちょ、ちょっと!それ!こっちに貸して!」

「いや、だからいくらなんでも怖がり過──」

「なに?なんか言った?」

「いや?何も?」

 

怖がりって言われるのは嫌っぽいな……ホント子供っぽいなぁ……

俺はかなでに懐中電灯を渡す。

 

「あんた、ちょっと後ろ向いて座って」

「はぁ?なん──」

「いいから早く!」

 

なんなんだよまったく……そう思いながら俺は言われた通りに後ろを向き地面に胡座をかく。

すると後から暖かいものがあたった。

 

「静かにして、あんたが怖がらないように背中貸してあげてるんだから感謝してよね」

 

そんな震えまくった声で言われても説得力皆無なんですけど……

 

「そっか、ありがとな」

 

だがここは素直に例を言っておく。別に本当に怖い訳では無い、暗闇とかに恐怖とかは感じない質なのだ。礼を言った理由としてはかなでに怒鳴られないためだな、幽霊なんかよりよっぽど怖い。

少しの間お互い無言で背中を預けあっていたが流石に耐えきれなくなってしまった俺。

 

「あ、そうだ。将棋指さないか?ちょっとは気も紛れるだろ?」

 

言いながら俺は立ち上がった。背後で「ふわぁ!」と聞こえたがこれにはツッコまない……ツッコまないぞ……

俺は物置の奥の方に仕舞われていた将棋盤とその駒を半分引きずるようにして持ってくる。

 

「ちょっと……勝手に立ち上がらないでくれる?」

「あぁ、すまんすまん」

 

言いながら俺は駒を並べていく。最近は将棋をインターネットでしか指していなかったためこうやって駒を並べるのは久しぶりだ。

 

「じゃあ、先行。どうぞ」

「へ?あ、ああ、うん…」

 

そうして俺とかなでは駒を運んでいく。

 

「矢倉……か……」

 

かなでの囲いは矢倉。将棋ができた初期からある戦法と言われているもので現代でも割とポピュラーな戦法でもある。

 

「──!」

 

かなでが息を呑むのが聞こえた。まぁそれも仕方の無いことで、俺も戦法に矢倉を選んだからだ。この形は相矢倉と呼ばれ、まぁ簡単に言っちゃえば殴り合いをしていくってことだ。その分思考力が必要とされるため今のこの状況だと気を紛らわすのには最適だろう。

それから更に駒を動かしていき50分ほどが経過してから勝敗が決した。ちなみに時間は時計が設置されていないため何となくだ。

 

「───参りました。」

 

結果は俺の負け。一手差で惜しくもかなでには届かなかった……それにかなでは序盤は怖さのせいでズタボロだったため普通にやったらこうは行かなかっただろう。

 

「意外とやるわね…」

「勝った相手にそれを言われてもなぁ…」

「ね、もう一局やろ」

 

俺の返事を聞く前に駒を並べ直していくかなで。

俺も一緒になって並べていく。

 

「やっぱ直でやる将棋は違うな」

「へぇー……わかってるじゃない」

「まぁな、それなりには」

「あたしには遠く及ばないけどね」

 

へぇ…言ってくれんじゃねぇの…次は手加減抜きでやってやるよ…

と、そこでひとつ思い出したことがあった。

 

「なぁ、なんでお前って俺のことそんなに嫌ってるの?」

 

質問してから後悔した。今この良い感じの雰囲気の中でするべき質問じゃなかった!慌てて取り消そうとしたがもう遅かったようだ……

 

「別に嫌っている訳じゃないわ」

「え?でも明らかに……」

「あたしね、兄がいるの。あんたじゃない」

 

それは、前にいた家にってことか?聞いたことないけれど……それに今のこの話に関係ないような……

 

「その人がね、あたしが小さい頃に暴力とか奮ってきたり虐めてきたりって酷い人だったの。今はもう結婚してどったに行ったんだけれど」

 

つまり…家庭内暴力って言うことか?

 

「なんていうかそれのせいでね?男の人とかがすごく怖いの。特に年上の人とかね」

 

だからついつい舐められないように強く当たっちゃうのよね…と少し自嘲気味に言うかなで。

そういう事だったのか……初対面から俺への好感度が最悪だったのも俺に高圧的な態度をとっていたのも……それにかなでがうちに来る前、俺の妹が生きているってわかってからの1ヶ月、俺にかなでを合わせなかったのは両親がこのことを知っていたからだろう。

 

「そうだったのか……でも俺はかなでに物理的にも精神的にも傷を与えることを絶対にしない。安心してくれとまでは言わないが俺には怯えなくても大丈夫だぞ…?」

「誰があんた何かに怯えるのよ。そんなヒョロっちい体してるくせに」

「確かにな」

 

そう言って笑い合う俺達。これがかなでが俺に初めて向けてくれた笑顔だった。ということは少しくらいは心を許してくれる存在に離れたってこと……かな?

 

「じゃあ第二局を始めますか」

 

と言った瞬間に物置の外から声が聞こえた。

 

「朱羅ー、かなでちゃん?いるの?」

「あ、お母さん。開けてー」

 

鍵を開ける音が物置内に響き扉が開いた。

 

「あんたたち……何やってるの、電気もつけないで……」

「それが、風でドアは閉まるわ電気はつかなくなるわで……」

「とりあえずお家に入りなさい?」

「はーい、あ、将棋盤運んどいてねー」

 

と、これはかなで。さっきまでの震えた声ではなくいつも通りのはっきりとした声に戻っていた。

ってか俺が運ぶのかよ!これ。

 

「はぁ……」

 

この後将棋盤を運ぶのに10分かかった……しかも運び終わってからお母さんに真剣な顔して。

 

「朱羅……いくらかなでちゃんが可愛いからって…兄妹なんだから、手を出しちゃダメよ?」

 

とか言ってきたのだ。

………俺は最初お母さんが何を言っているのか理解出来なかった。それも仕方が無いことで俺はさっきかなでに「物理的にも精神的にも傷を与えない」と誓ったばかりなのだ……

その間をお母さんは俺が返答に困っていると受け取ったようで……

 

「まさか……!!もう手を出しちゃったの!?」

「違ぇよ!出さねぇよ!ってか息子になんて話題振ってんだ!」

「ならいいんだけど……」

 

これでその話題はおしまい!とばかりに俺は将棋盤を玄関に置き、自室へと向かった。

部屋のドアの取っ手に手をかけた瞬間かなでの部屋のドアが開きかなでが出てきた。

 

「あ、あのさ。これ」

 

かなでが手に持っていたのは紙の切れ端だった。

俺はそれを受け取り書かれていたものに目を通す。

 

「あ、これ。連絡先……」

「勘違いしないでよね!これはあくまで那由多さんに頼まれたから教えただけなんだから!」

 

何ともまぁツンデレのテンプレートを……でもその言葉はそのまんまの意味なんだろう。特に深い意味もなく。

 

「そっか、サンキューな」

「……ふんっ…」

 

そっぽを向きかなでは部屋へと戻っていってしまった。

俺は携帯を取り出し那由多にメールを送った。

 

『かなでの連絡先の件サンキューな』

 

するとすぐに返信が返ってくる。毎回思うけどさこいつ返信早すぎね?暇人なのか?もしかして。

 

『なんのこと?』

「こんなすぐわかることを誤魔化さなくてもいいでしょうに……」

 

そう言って俺は携帯をポケットにしまい。自分の部屋へと入っていった。

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