仮面ライダーW 『Case of Chaotic City』 作:津田 謡繭
◇
ヘルサレムズ・ロットの夕焼けはどこか淡い。
ぶ厚い霧を通して注ぐのは燃えるような紅でなく、空に残るのはかすんだ黄金のような
街に夜が訪れようとしていた。
ぽつぽつと街灯が光を持ち始め、今日を終えた人々が家路につく、そんな時間。
だが、明日も同じように一日が終わるのかは道行く人の誰にもわからない。
この街ではそんな当たり前ですら、降り注ぐ夕陽と同じくらい淡い輝きなのだから。
◇
痛い……いたい……イタイ……。
焼けつくような全身の痛みによろめきながら、オッドは裏路地を歩いていた。
いったいどうしてこんなことになってしまったのか。
オッドにはわからなかった。
ただ、思いを伝えたくて、振り向いてほしくて、自分を見てほしくて。
──僕は間違っていたんだろうか?
そんな考えをさえぎるように、オッドの中の
マチガッテナドイナイサ
本当にそうなのか?
ウケイレロ
そうすれば、どうなる?
モウマケナイ ツヨクナレル
強く? そんなことは望んでいない。
──僕は……ただ……
傷が燃えるように熱い。
イタイ、イタイ、イタイ。
こんなところで死にたくない。
まだ、彼女に伝えていない。
ウケイレルンダ
再び
──ああ、わかったよ
オッドはうなずき、心の中で
全身が熱を持つのを感じた。
傷の痛みではない。もう痛くはない。
ぼんやりとした頭のまま、自分の腕を見る。
無数の刃で貫かれ、えぐれていた傷がジュウジュウと音を立てて塞がっていく。
オッドの全身に力が満ちる。
強くなった。もう負けない。
だが、それが本当に自分の望んでいたものだったのか。
オッドにはわからなかった。
「見つけたぜドーパント。……いや、オッド!」
背後の声に振り返る。
そこにいたのは見覚えのある人型の異形だった。
右側は赤く、左側は黒い、奇妙な姿。一目見れば見間違えようがない。
──追ってきた? どうしてここがわかったんだ……?
浮かんだ疑問はどうでもいいことだった。
こいつは邪魔者だ。それだけが大事なことだ。
全身の口を大きく開け、吠える。
ジャマヲスルヤツハ──コロス!
それがオッド自身の声だったのか、他の
それすらもオッドにはわからなかった。
◇
ビリビリと鼓膜に響く絶叫を受けながら、Wは拳を構えた。
(なんか、一回りでかくなってねえか? 傷も塞がってるように見えるんだが……)
(もしかしたら、彼はランゲージメモリの過剰適合者かもしれない。メモリとの適合率が上がって、ドーパントとしての身体が強化されているんだろう。ザップとの戦いでのダメージはほとんど残ってそうにないね)
フィリップが冷静な推測で返す。
その言葉をため息混じりに受け取り、苦笑いする翔太郎。
(ったく、楽させちゃくれねえってか)
(気をつけろ翔太郎。下手なことを口走れば、そのまま現実になるぞ)
(わかってるって相棒。言われなくても、寡黙に戦うのがハードボイルドってもんだぜ)
(……だから忠告しているんだが)
(どういう意味だそりゃ! ……っと、言ってる場合でもねえな)
Wは視線をランゲージドーパントに向けた。
フーフーと荒い息を吐きながらこちらを見据えるランゲージは、すでに殺気十分。今にも襲い掛かってきそうだ。
そうしていないのは先ほどのザップとの戦いで慎重さを学んだからか。
向き合う両者。戦いの引き金を引いたのは、Wだった。
(いくぜフィリップ!)
(ああ、翔太郎!)
ヒートメモリをベルトから引き抜き、腰のマキシマムスロットへと装填する。
《ヒートマキシマムドライブ》
マキシマムドライブによって数倍に高められたヒートメモリの力が、Wの全身にみなぎる。
「「うおおおおお!!」」
Wの全身が炎に包まれ、周囲に爆発する熱気を放った。
落ちていた新聞紙が舞い上がり、一瞬で灰となって消えた。
足元のアスファルトは黒く焦げ、熱に耐えきれず亀裂が走った。
揺らぐ大気、沸き立つ闘志。その向こうにランゲージを見据え、Wは駆けだした。
「「はあっ!!」」
炎をまとった右ストレートを繰り出す。
ランゲージは即座に体をねじりかわしたが、パンチとともに放たれた熱波がその体表を焼いた。
「ぐっ……!」
小さくうめき、ランゲージは反撃しようとWの頭に拳を突き出す。
だが、Wは瞬時に左腕でそれを受け止め、ひざと腰のバネで衝撃を吸収した。
「っ!?」
ランゲージはなぜ自分の攻撃が効かないのか理解できないようだった。
その隙を逃すことなく、Wは素早く左フックを叩き込んだ。続けて右のアッパーが顎に決まる。
頭部を揺さぶられ、よろめくランゲージ。
その側面に素早いステップで回り込み、そのまま二連続のボディブローを見舞う。
「ぅがっは……!!」
ランゲージはたまらず地面に倒れこんだ。
いくつかの口から折れた歯や牙が零れ落ちる。
「なんでだ……? なんでだっ!? 僕はさっきより強くなっているはずなのに!!」
叫ぶドーパントにフィリップが答える。
「闘争本能を高めるヒートのマキシマムドライブで、Wの格闘能力は極限まで高まっている。おまけに今のぼくは世界で一番ボクシングに詳しい人間だ。戦いにも技術というものがあるのさ。身体能力だけでは今のぼくらには勝てない」
「だからって気ぃ抜くなよ」
得意げに語るフィリップを翔太郎がたしなめる。
「このまま一気に決めるぞ」
「わかって──」
と、返事をしかけてフィリップが気づいた。
「翔太郎……言葉が通じる」
「ん……? あ! ホントだ!」
間の抜けた声で驚く翔太郎。だがその声はすぐ、嫌な予感に苦々しくなった。
「ってことは……」
そう。ドーパントの能力が解除されたということは、その分のエネルギーを使うことを止めたということ。
すなわち──
「ああ。ここからが正念場らしい」
Wの視線の先には、ガイアメモリの力をすべて自分の強化につぎ込み、噴き上がる邪気とともに立ち上がるランゲージがいた。
「よせ馬鹿野郎! これ以上メモリの力を取り込んだら、ホントに死んじまうぞ!」
翔太郎が叫ぶ。
彼にとってはオッドもまた、救うべき相手なのだ。
だが、メモリの力に呑まれかけたドーパントにその思いは伝わらない。
「うるさいうるさいうるさい! 死んだっていい! どんなに焦がれても思いを伝えられない苦しさがお前にわかるもんか! 邪魔を……じゃマヲスルナアアア!!」
ランゲージが絶叫し襲い掛かる。
振り下ろされる腕をWは交差した腕で受け止めた。だが、その瞬間にランゲージの前腕についた口が牙をむき出し、Wの左腕に噛みついた。
ヒートの力でWの体は数百度に熱されている。にもかかわらず、ランゲージの牙は万力のような力で食らいついて離れない。
「ぐあっ!!」
翔太郎が思わず声をあげる。
激痛にWの体勢が崩れた。
そこに強烈な蹴りを食らい、Wは大きく吹き飛ばされた。
「ジャマモノハコロス……ジャマモノハコロス!」
まずい。
フィリップは焦りを感じた。ランゲージは、オッドは明らかに自我を失い始めている。このままでは危険だ。
だが、それにも増して危ういのは翔太郎だった。
「やめろ……!」
融合した意識を通じて翔太郎の悲痛な動揺が伝わってくる。
オッドの純粋な思いを理解して、理解しすぎて、翔太郎は苦悩していた。
「ジャマモノハ……コロスゥ!」
ふらつきながら立ち上がったWにランゲージが再び飛び掛かった。
「やめろオッド! お前の思いまで否定する気はねえ……!」
誰よりも他人の心に寄り添うことのできる翔太郎。
だからこそ、その優しすぎる優しさは──
「俺は……!」
──時に、危うい。
「俺はお前を傷つけたいわけじゃねえんだ!!」
しまった。
フィリップがそう思った時にはもう遅かった。
ランゲージがニタリと笑い手をかざした。
「がぁっはっ……っ!?」
翔太郎が咳込みWが崩れ落ちる。
喉元からどろりと煙が立ち上った。
ランゲージの能力が発動したのだ。
翔太郎の意識が遠のく。ただでさえ翔太郎はこの手の干渉に耐性がない。
「翔太郎、しっかりしてくれ! 翔太郎!」
わかっていたはずなのに。こうなることを止められなかった自分を、フィリップは恨んだ。
「……し、心配すんな……大したことねえよ……。断食してぶっ倒れたお前を病院まで担いでった時のほうが……よっぽど
強がる翔太郎だが、その声はか細く震えていた。
そして、Wにも明らかな異常が現れていた。体の左側にほとんど力が入らないのだ。
今の『お前を傷つけたいわけじゃねえ』という言葉が利用されたのだろう。発言者でないためかフィリップはなんともない。
だが、翔太郎が主体となっている左半身が、すでに戦闘不能の状態に陥っていた。マキシマムドライブの効果も切れ、立ち上がることも難しい。
トドメを刺そうとランゲージがゆっくりと近づく。
万事休すか。
そう思われた、その時。
カコォンという音を響かせ、Wのそばに何かが投げ落とされた。アスファルトをころころと転がってきたのは銀色の水筒だ。
Wとランゲージが同時に上を見上げる。
そこには──
「……言われたもの持って来たんだけど、邪魔したかな?」
ビルの壁面にわずかに突き出た窓枠の上で、涼しげにたたずむチェインの姿があった。
「チェインさん!」
絶妙なタイミングでの登場に、フィリップは思わず声をあげる。
対し、チェインはこともなげな顔でWの前にふわりと降り立った。
「ガイアメモリ……だっけ。専門って言う割に手酷くやられてるみたいだね」
フッと微笑んでランゲージの方へと向き直る。
「……で、アンタがオッド? アタシに会いたかったんだって?」
「チェ、チェインさん! 奴の狙いはあなただ! 早く逃げないと……!」
フィリップがチェインに呼びかける。
諜報活動が専門だと聞いていれば、直接の戦闘力は高くないと容易に推測できた。不用意に近づくのはあまりに危険だ。
だが、チェインはまるで聞こえていないという風に前に視線を向けたままだった。
「話があるんでしょ。ホラ、言ってみなよ。ん?」
誘うように首をかしげ、ゆっくりとランゲージに近づいていく。
「チェインさ──」
「いや……フィリップ……!」
止めようとするフィリップを、翔太郎がかすれた声で制した。
「……彼女に任せよう」
「翔太郎!?」
「俺は信じるぜ……彼女も『ライブラ』だ」
フィリップはハッとする。
翔太郎は絶対に女性を盾にするような人間ではない。
そんな翔太郎がチェインを前に立たせたのは、彼女がただ守られるようなか弱い女性でないと確信したからだ。涼しげな表情の奥に強固な意志を持った、街を守るため共に戦う、一人の仲間だと信じたからだ。
「……わかった」
翔太郎が信じたのなら、自分も信じられる。フィリップの知る限り、人を見る目で翔太郎の右に出る者はいないのだから。
「それに……今のオッドを彼女から無理に引き離せば……それこそ手が付けられなくなっちまうぜ」
そう言われ、フィリップはランゲージに意識を向けた。
チェインを前にして、ランゲージはがくがくと足を震わせながら後ずさりをしていた。言葉にならない言葉を吐き出しながら、両手で頭をかきむしる。
「オ……ぼ、僕……ジャマ……コロ……」
呑まれかけていた自我が戻り始めていた。
翔太郎の言う通り、今のランゲージを刺激すればどうなるかわからない。
息をのみ、見守るしかできない。
そして──
「ぼ、僕は……君を……」
崩れるようにその場でひざをつき、ランゲージは、ぽつり、と思いを口にし始めた。
「君を、は、はじめて見た時から……君のことが頭から離れなくなったんだ……。ずっと、こうして話をしたかった。僕は……それだけで……。ただ、伝えたかった……僕は……君が好きなんだ……」
つぶやくようなその告白をチェインは静かに聞いていた。夜の海のような黒く深い瞳で、ランゲージをまっすぐに見つめながら。
彼女が何を思っているのか、フィリップにはうかがい知れなかった。だが、その思いを真剣に受け止めようとしているのだけは伝わった。
まるで──自分も同じなのだ、とでもいうように。
目を閉じて、長い瞬きの後、チェインが口を開いた。
「ごめんね」
ただ、一言。
その一言だけが、ふわりとオッドを撫でた。
「……ありがとう。君は僕の言葉を……聞いてくれた」
力なくうなだれたランゲージから何か邪なものが抜け出たように思えた。
翔太郎もそれを感じ取ったのか、フッと息を吐いて力を抜いた。
だが、その瞬間──
「っ!?」
ぞわりと走ったその感覚にフィリップは戦慄した。
初めてランゲージが発動したあの時と同じ、
「チェインさん! 気を付けて!」
とっさに声を出す。
だが、チェインはまったく反応しなかった。フィリップの声がまったく聞こえていないかのように。
とっさに理解する。ランゲージの能力が再び発動したのだ。
人間には聞こえない周波数の鳴き声で会話する動物の言葉を植え付けられたなら、どれだけ叫んでもその声は他人に聞こえない。
(翔太郎!)
(ああ、わかってる!)
すぐに意識内での会話に切り替える。
翔太郎も何が起きているのか理解しているようだった。
(けどオッドのやつ、なんでこのタイミングで力を使ったんだ!?)
(わからない。……いや、もしかしたら)
フィリップは自分の中のある予感に再びゾッとした。
(これを待っていたのかもしれない。思いを果たしたオッドの自我が弱まる、この瞬間を)
(待ってたって……いったい誰がだよ!?)
ありえない。
だが、なぜか確信できた。
(……T-0ガイアメモリ自身だ)
ランゲージがゆらりと立ち上がった。
「ねえ、最後に一つだけお願いがあるんだ……」
さっきまでと同じオッドの声でチェインに話しかける。
だが、それはすでに純粋なオッドの意識ではなくなっている。
「最後に一回だけでいい。僕のことを好きだと言ってくれないか? 嘘でもいいんだ。嘘でもその言葉が聞けたなら、僕はもうあきらめるよ」
肥大化したT-0ガイアメモリの力がオッドの心を歪めていた。
まずい。
万が一にもチェインが情に流されてその言葉を口にすれば、最悪、チェインが敵に回ることになる。
「だめだチェインさん!」
必死に叫んでもその声は聞こえない。
止めに入ろうにもまだWの体はまともに動かない。
「お願いだ。そうしたら力を使うのも止めるし、ガイアメモリも渡すよ」
チェインがため息をつき、口を開いた。
そして──
「それは無理」
大げさなほどに大きく口を開けて、キッパリとチェインは答えた。
「イヤイヤ、さすがにそこまで行くとみっともないって。自分がかなり気持ち悪いこと言ってるって自覚ある? だいたいそんな言葉だけで満たされるもんじゃないでしょ、そういうのってさあ」
「「…………へ?」」
数秒前からうってかわり、突然ラフになったチェインの態度に、フィリップも翔太郎もあっけにとられていた。
だがよく思い出してみれば、ザップと言い争うチェインは最初から
その間もチェインはあからさまに気の抜けたような顔でランゲージに容赦ない言葉を投げ続ける。
「っていうか、この茶番にここまで付き合ってあげただけで勲章モンの大サービスだよ。最初っからアンタの魂胆みえみえだから。聞いてるに決まってるでしょ、そんなトンデモ能力。甘いわ。甘すぎ。もうピーカンパイのシロップ漬けも裸足で逃げ出すレベル」
言われてみれば確かにその通りだ。レオから連絡を受けたのだろうチェインがランゲージの能力を知らないはずがない。
フィリップも翔太郎も焦りすぎて考えが及ばなかったが、そもそも焦る必要すらなかったのである。
「くっ……くそ……!」
馬鹿にされたランゲージが歯を食いしばりながらうなった。
体中の口が憎悪に歪み、ギリギリと拳を握り締める。
「もういい……! もう……いい……がああああ!!」
路地に咆哮が響き渡った。
だがチェインはまったく気圧されることなくフウッと息を吐き、まっすぐにランゲージを見据えた。
「それにね──」
「うるさいいいイイイイッ!!」
言いかけたチェインの言葉をランゲージの叫びがかき消した。
「僕のモのにならナイなら……コノ手デコロシテヤル!!」
もう聞きたくないとばかりに頭を振り、チェインめがけて拳を振り下ろす。
だが──
「悪いけど、それも無理」
その拳は何にも触れることなく空を切った。
「ナ……二……?」
その存在ごと限りなく薄く。
何者もそこにはいないかのごとく。
「
実体すらも、空間に溶けた蜃気楼。
「──
ぽっかりと穴が開いたように消えたチェインの体を、ランゲージがすり抜ける。
虚空からただ遠くを見つめ、チェインは静かにつぶやいた。
「それにね──心にもない想いを簡単に言葉にできるくらい、私も大人になりきれちゃいないんだ」
伏し目がちに愁いを帯びたその瞳は、遠く届かない距離で自嘲気味に微笑む、そんな誰かを見ているように思えた。
「回復する時間は稼いだし、隙もつくったから。後は任せたよ……仮面ライダー」
チェインの体を透過し、いまだ何が起きたのか理解できていないランゲージの前に立ちはだかったのは──
「ああ、十分だ」
「助かったぜ!」
左半身を引きずるように身構えたWだった。
その右手にはチェインが持ってきた銀色の水筒が握られている。
「いけねえなオッド。まだチェインが喋ってたじゃねえか。話は最後まで聞くもんだぜ」
「でないと会話が成り立たない。せっかくの言語が意味をなさない。だろう?」
「グッ……バカニスルナ! イマノオマエナンカ、ボクノテキジャアナインダ!」
全ての怒りを乗せてランゲージがWに襲い掛かる。
「それはどうかな」
フィリップの声とともに水筒が投げつけられた。
蓋の開いた水筒の中から飛び出した真っ黒な液体が、弧を描いてランゲージに降りかかる。
立ち上った芳ばしい香りにチェインが「えっ」と振り返った。
「コーヒー……?」
チェインの言葉通り、撒かれた液体はコーヒーだった。
中身が何なのかは知らなかったのか、チェインは目を丸くしている。
今わざわざコーヒーをぶちまける意味がわからない、そんな顔だ。
だが、オッドの反応は違った。
「ギッ……ナ、ナンダコレッ!? ウ……ガ……ギャアア!」
苦しそうに顔を押さえ、その場に伏せてのたうつ。
「よーく味わいな。ギルベルトさん特製の超芳醇スペシャル濃厚ブレンドだ。もったいねえ気もするが、ま、しょうがねえ」
「濃縮されたカフェインの香り、君には強烈だろうねぇ。さて翔太郎、相手が相手だけど、一応言っておくかい?」
「ああ、しっかり言ってやんねえとな」
身動きができないランゲージにWが指を突きつけた。
「「さあ、お前の罪を数えろ!」」
その言葉に、ランゲージが牙をむき出し吠えた。
「罪だと……誰かを愛することが、罪だって言うのか!?」
泣き叫ぶような声に、フィリップはかつて戦った一人の男を思い出した。
『人を愛することが……罪だとでも……?』
そう
そして目の前のドーパントもきっと、ただチェインを愛するが故に、ただ思いを伝えたいがために、ガイアメモリに手を伸ばしたのだ。
だが──
「どんな理由があろうと、その思いが他の誰かの犠牲の上に成り立つというなら……それは君が数えるべき罪だ」
罪とは何か。悪とは何か。
翔太郎の相棒として、フィリップが見つけたひとつの答えだった。
「ぼくたちは君を倒してこの街を守る。しばらくはヘルサレムズ・ロットの仮面ライダーになると、相棒と決めたからね」
「へっ、俺が言おうと思ってたこと全部言っちまいやがって。わかってんじゃねえか」
翔太郎の声は上機嫌だ。
思いは同じ。二人で一人。
高まる闘志でランゲージに向かう。
「左手はまだ攻撃に使えねえ。こっちでいくぞ!」
「了解した、翔太郎!」
手にしたのはヒートメモリ。
それを再びマキシマムスロットに装填し、今度はそのエネルギーをメモリブレイクのために集中させる。
《ヒートマキシマムドライブ》
右腕に一極集中された炎が、赤熱を超えて白く輝く。
あふれ出たエネルギーを太陽フレアのようにほとばしらせながら、Wは灼熱の拳を引き絞った。
「今、楽にしてやるからな!」
打ち込む一撃は烈火爆熱の右ストレート──
「「ジョーカープロミネンス!!」」
噴き上がる焦熱、渦巻く火焔、その中心でWの拳が炸裂した。
日の落ちた路地が真昼のような光であふれる。
その中で、ドーパントの爆発とともに宙を舞ったランゲージメモリが粉々に砕け散った。
◇
まぶしさに目を閉じていたチェインが再び目を開けた時、立っていたのはWだけだった。
オッドは跡形もなく消し飛んでしまったのだろうか。
「殺した?」
しかたもないか、というニュアンスも込めて尋ねたチェインに、Wが振り返った。
「いいや。なんとか無事みたいだぜ」
その腕には、一匹の
はい、そうでした。オッドの正体、最後のキーワードは『猫』でした!
けっこう気づいてた方もいらっしゃるようですが、ほんのちょっぴりでも驚いていただけたなら幸いです。
さて、ホントはこの後の展開もまとめて今回を第二話最終章にするつもりだったのですが、さすがに長くなりすぎかと思い二分割して次回を最終章にすることにしました。
必然的に次回がちょっと物足りない長さになってしまいますが、ごめんなさいです。
っていうか、どんだけ続くんだよ第二話。
それでは次回もお楽しみに!