サイバープリキュア   作:k-suke

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Story10 “ Destiny ”

 

 

歳場中学 通学路

 

 

 

私は重い頭と沈んだ心で、学校への道を重い足取りで歩いていた。

 

もうすぐ始業時間であり、このままだと遅刻ギリギリだろう。

 

しかし、慌てて走る気にもなれなかった。

 

すると道の向こう側から文が歩いてくるのが見えた。

 

 

 

 

 

計「ああ、文。おはよう」

 

私は自分でもわかるぐらい、力なく文に挨拶をした。

 

 

文「おはようございます。計さん」

 

文もまた以前の凛とした態度はどこへやら、実に力ない声で挨拶をしてきた。

 

 

 

文「計さん、いつにも増して暗いですね」

 

計「文もね」

 

文「計さん、夜更かしでもされましたか? 目の下にすごいクマがありますよ」

 

計「文もかなりげっそりしてるけど、ちゃんと食事してるの?」

 

そんな会話をポツリポツリとしながら、実に重い足取りで私達は学校へと向かった。

 

 

 

 

 

そして、もうすぐ始業時間というところでようやく校門が見えてきたが、そこで私達の足が止まった。

 

ここ最近学校で聞かされる陰口が私達の頭の中に響いてきたのだ。

 

(一体何のつもりなのかしらあの二人?)

 

(学校に来たところで、目障りなだけなのに)

 

(ただ、遊びにきているだけなら来なきゃいいのに。まじめに通ってる人に失礼よね)

 

(厚顔無恥もあそこまで行けば立派ですね)

 

 

 

 

文「…考えてみれば、もう学校に行く必要はないですよね」

 

計「…そうだよね、ポイントはもう居ないんだし。きっと世の中は平和に…」

 

 

そんな会話をしていると、始業のチャイムが聞こえてきた。

 

それを聞いていると突然涙が溢れてきた。

 

 

 

 

 

 

文「もう、もう嫌です!! 居場所の無い学校に行くのも!! プリキュアなんかになって戦うのも!!」

 

突然文が地面にへたり込んで泣き叫んだ。

 

 

 

プリキュアになって精神的にキツいことの連続で、勉強がおろそかになり成績は下がる一方。体力を大きく消耗しているせいか、運動も成績が落ちている。

 

今までが今までだったため、勉強をサボって遊んでいるのでは、と思われてしまい、先生からの評価もどん底に近いところまで下がっている。

 

おまけに正体を秘密にしていたため、肝心な時に姿が見えず、みんなを見捨てた卑怯者呼ばわりされた結果、今では誰も私達と話をしてくれない。

 

学校に行っても、陰口をひたすら聞かされ続けるだけである。

 

 

計「私だって嫌だよ!! あんな思いはもうたくさん!! プリキュアなんてもうやりたくない!!」

 

私も心の底から叫んだ。

 

 

 

プリキュアになって私達がやったことと言えば、何体かの怪物を倒しただけ。

 

しかもその怪物も元は私達と同じ人間。

 

おまけに倒したところで死んだ人は生き返るはずも無く、守れなかった人達も大勢。

 

それでも、正義のためだと弱い人達のためだと信じて、必死に足掻いてきた。

 

にもかかわらず、敵だと悪い人だと信じてきたキュア・ポイントを倒した結果、彼女が連れ歩いていた女の子が死んでしまった。

 

それも私達が味方をしたその子の母親の手で虐待死されるという形で。

 

もしも、私達が余計なことをしなければあの子は生きることが、幸せになることが出来たかもしれないと思うと気が狂いそうだった。

 

 

私達はもうプリキュアどころか一人の人間としても完全に限界だった。

 

 

 

 

 

計「お父さん達にお願いして、転校させてもらおうか。新しい場所で心機一転やり直そう」

 

文「はい、お母様に私も頼んでみます。なんとかもう一度お稽古に参加させていただけるように」

 

 

私達はそう決心して、一度家に引き返すことにした。

 

 

 

 

 

 

計・文「「!!」」

 

その時、例の悪寒が背中に走った。

 

それと同時にすぐ近くでズシンズシンという地響きのような足音とともに、爆発音が聞こえてきた。

 

計「な、なんで…。だってポイントは、紅さんは…」

 

文「まさか、他にも紅さんみたいな人が居たんでしょうか…」

 

 

おそらく爆発のあった方では、ダムド魔人が暴れているのだろう。

 

しかし、そうとわかっても私達の足は動かなかった。

 

 

 

そして、地響きのような足音はこちらへとだんだんと近づいてきた。

 

 

「ダームー」

 

その叫びとともに交差点から現れたのは、巨大な亀のようなダムド魔人だった。

 

 

文「や、やっぱりダムド魔人…」

 

計「そ、そんな…」

 

目の前に突然現れたダムド魔人。

 

それを前にした私達のとった行動は一つだった。

 

 

 

 

 

計「逃げるよ!!」

 

文「はい!!」

 

ダムド魔人に背を向けて私達は脱兎のごとく逃げ出した。

 

 

計「もう私達は、アンタなんかと戦わないよ!!」

 

文「プリキュアをやめて、普通の生活に戻るんですから!!」

 

 

 

すると、亀魔人は頭や手足を甲羅の中に引っ込めて、回転しながら飛行して私達を追いかけてきた。

 

文「な、なんなんですか、あれ」

 

計「何処の怪獣よ、全く」

 

 

そんなことを言っている間に、亀魔人は私達を追い抜いて目の前に着地した。

 

そして、手足を甲羅から出すと再び雄叫びをあげた。

 

「ダームー!!」

 

 

計「こいつ、私達を狙ってる!?」

 

文「そ、そんな!! 何でですか?」

 

と、文は言っていたが、心当たりはありすぎるほどにあった。

 

 

 

 

文「もう止めてください!! 私達はもう関係ないんですから!!」

 

計「プリキュアなんてもうやらない!! アンタ達の邪魔はしないから、あっちいってよ!!」

 

しかし、そんなことを言って通じる訳も無かった。

 

亀魔人は今まさに口から火のようなものを吐こうと、大きく息を吸い込んだ。

 

 

 

 

 

計「ちょっと、止めて!! 止めてってば!!」

 

文「し、仕方ありません。死ぬよりはましです、変身して逃げましょう!!」

 

もう二度と変身したくなかったが、私達はやむを得ないと心臓の部分に手を当てた。

 

 

計・文「「プリキュアソウル…」」

 

しかし、変身するより早く火の玉が吐き出された。

 

 

 

計「えっ?」

 

 

その瞬間、妙に世界がスローモーションに感じた。

 

計(私、また死んじゃうの!?)

 

文(そんな、こんなことって…)

 

 

 

 

 

二度目の死を覚悟し、思わず目をつぶった瞬間だった。

 

妙に暖かい光が私達を包み込んだ。

 

計「こ、これは…」

 

文「覚えがあります。この暖かい光は…」

 

うっすらと目を開けていくと、その前に居たのは、白い鎧に身を包み白い翼を広げた存在だった。

 

目にも麗しい女性の姿をし、人が見れば天使と見紛うようなそれは…

 

 

フレア「計さん、文さん。お久しぶりですね」

 

文「フレアさん!!」

 

計「やっぱり!!」

 

 

私達を生き返らせてくれた存在、フレアさんだった。

 

 

フレア「下がっていてください。あのダムド魔人は私が戦います!!」

 

フレアさんは剣を抜き、亀魔人に立ち向かっていった。

 

 

「ダームー」

 

フレア「こんなもの!!」

 

亀魔人の吐く火炎弾を薄いバリアのようなものであっさり防いで、突撃していった。

 

フレア「はぁぁぁあ!!」

 

 

剣で亀魔人の腹部を切り裂いて、そのまま亀魔人の甲羅の方へと回り込んだ。

 

亀魔人はやはり亀らしく動きが鈍調であり、フレアさんの素早い動きにまるでついていけていなかった。

 

 

フレア「はぁぁ!!」

 

その隙をついて、フレアさんは亀魔人の甲羅に強力なパンチを打ち込んだ。

 

そのパンチは強烈で一撃で甲羅をぶち抜き、巨大な穴を開けた。

 

 

 

そのフレアさんの戦いぶりを見て、私達は複雑な思いだった。

 

計「あれなら、尚更私達は必要ないね…」

 

文「フレアさんが復活したのはいいタイミングですね…」

 

私達には目の前の光景が他人事のようにしか映らなかった。

 

 

 

 

 

「ダームー」

 

亀魔人は、甲羅を割られ大ダメージとともに地面に倒れ臥した。

 

フレア「悪の化身ダムド魔人。これで終わりです!!」

 

 

フレアさんは剣に力を込めた。

 

フレア「闇の力に囚われし者よ、聖なる光の元に帰りたまえ!!」

 

 

 

そのかけ声とともに、剣を思い切りダムド魔人に対して振り下ろした。

 

フレア「シャイニング・セラピースラッシュ!」

 

振り下ろされた剣から放たれた光の刃は亀魔人を切り裂き、それと同時に亀魔人から憑き物のような黒い煙が抜け出ていくように見えた。

 

それが収まった時そこに居たのは一人の男性だった。

 

 

男性「はっ、俺は一体? そうだ、突然悪魔みたいな奴が現れて、それで…」

 

正気に戻ったらしいその男性は何があったかを思い出したらしく、ガタガタと震えていた。

 

しかし、そんな人を包み込むかのような柔らかい口調でフレアさんは話し掛けた。

 

 

フレア「もう大丈夫です。あなたは闇の力に囚われていたのです。これからは光の道を歩いていってください」

 

フレアさんの目にも麗しい姿と優しい言葉に安心したのか、男性は涙を流し始めた。

 

男性「あ、ありがとうございます」

 

 

そうして、何度も頭を下げながら男性は帰っていった。

 

さらにフレアさんは光の粒子のようなものを放射した。

 

すると、破壊された町並みは何事も無かったかのように元どおりに修復された。

 

 

 

 

 

 

 

フレア「ご無事でしたか、計さん、文さん」

 

そして、にこりと微笑みながらフレアさんは私達の方へと向き直った。

 

計「フレアさん…」

 

 

 

そんなフレアさんに私達は間髪入れず申し立てた。

 

計「フレアさん!! もうプリキュアの力なんか返します!! 普通の女の子に戻りたいんです!!」

 

文「あなたが復活されたなら、もう構いませんよね。あなたが戦ってくれるんでしょう? 私達よりずっとずっと強いみたいですし」

 

 

さっきの戦いを見て、私達は自分たちに出来なかったことをあっさりやってのけたフレアさんにどこか嫉妬していたのかもしれない。

 

しかし、そんなことはもうどうでも良かった。

 

これでもう戦わなくて辛い思いをしなくて済む、以前のような当たり前の生活が出来る、私達の頭にあったのはそれだけだった。

 

 

しかし、フレアさんはキョトンとした顔で尋ねてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレア「プリキュア? なんのことですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キョトンとしたのは私達も同じだった。

 

計「なんのことって…。ほら、あなたが私達を生き返らせてくれた時にくれた変身出来る力ですよ」

 

文「私達は、その力でずっとダムド魔人と戦ってきたんです。でも、辛いことばかりで…。もう止めにしたいんです!!」

 

私達はフレアさんに必死に訴えた。

 

 

するとフレアさんは驚いたような表情になった。

 

フレア「まさか…そんなことになっていたなんて…」

 

 

その驚きの口調と表情に私達も戸惑った。

 

文「ど、どういうことですか…?」

 

計「そんなことって? え?」

 

 

 

 

 

フレア「私に、なんの縁もゆかりも無い一般人の少女のあなた達を命がけの戦いに巻き込む気などありませんでした。あなた方を生き返らせたのは、今まで通りの普通の人生を歩んで欲しかったからです」

 

計「えっ? だ、だって、私達は現実にプリキュアに変身できて…」

 

文「そうです…ずっと…戦って…あれ?」

 

 

言われてみてふと気がついた。

 

確かにフレアさんは私達を生き返らせてくれたし、ダムドのことも教えてくれた。

 

しかし、だからといって代わりに戦ってくれとは言わなかったし、そのための力をくれたとも言っていない。

 

 

 

 

紅さんがダークエナジーを収集するためにプリキュアの変身用のペンライトを持っていたのとは違って、私達はそんな物をもらっていない。

 

文「じゃ、じゃあなんで私達は変身できたんですか?」

 

文は当然の疑問を口にした。

 

 

フレア「おそらく、あなた方の心が光の力との親和性が強すぎたのでしょう。しかし、そうなると…」

 

フレアさんの心配そうな言い方が妙に引っかかった。

 

 

計「な、なんですか? はっきり言ってください!!」

 

 

何かいやな予感がしたが、聞かずにはいられなかった。

 

もう大抵のことでは驚かないつもりもあったからだ。

 

しかし、状況は予想を超えてひどかった。

 

 

 

 

 

フレアさんはゆっくりと口を開いて話し始めた。

 

フレア「…あなた方には普通の人が普通に生きていくための命を与えたつもりでした。光の力を命に代えて使えば百年前後はもつはずでした。しかし、そんな使い方をすれば、光の力を何百倍ものペースで消費することになります。それはとりもなおさず…」

 

その言葉に私達は血の気が引いた。

 

 

文「まさか…変身の度に大きく体力を消耗していましたが、それは変身する度に寿命が縮んでいたということですか…」

 

 

 

フレアさんはゆっくりと頷いた。

 

計「そんな!! で、でも何もしなければいいんですよね!? 一体あとどのくらい生きていけるんですか、私達は!?」

 

私は嫌な予感を振り払うように尋ねた。

 

しかし、フレアさんの返事は想像以上に残酷だった。

 

 

フレア「あなた方の光は、私の想像を遥かに超えて消費されてしまっています。何もせずに居ても、あとせいぜい数日…。もし変身するようなことがあれば一時間も持たないかと…」

 

それを聞いて私達の頭は真っ白になった。

 

すでにどん底の底まで落ちていながら、その底が抜けたような感じだった。

 

 

 

 

 

 

文「そ…そんな…ことって…」

 

計「う…うそですよね…うそだと言ってください!!」

 

私は目の前の言葉を否定するかのように必死になって叫んだ。

 

 

 

 

フレアさんは暗い面持ちで実に申し訳なさそうに言った。

 

フレア「申し訳ありません。なにもかも私の所為です。ですが、命の価値は長さではありません。精一杯生きることが…」

 

計「申し訳ないってんならなんとかしてよ!! また光の力をください!!」

 

文「そうです!! 前にはくれたじゃありませんか。だからもう一度!!」

 

私達はすがるように必死に懇願した。

 

 

しかし、フレアさんは目を閉じてゆっくりと首を横に振った。

 

フレア「命は一度しか光の力で代用が出来ません。こんなことになるとは、私の考えが足りなかったようです」

 

 

 

 

 

フレアさんの口調から、責任を感じておられるのはよくわかった。

 

だからといって、私達の現状が回復する訳ではないのだから、正直私達には神経を逆撫でさせるだけだった。

 

 

計「謝られてもなんにもならないじゃない!!」

 

文「何か、何か方法は無いんですか!! 私達が生きられる方法は!!」

 

私達は血を吐くような思いで叫んだ。

 

フレア「私にも出来ることには限界があります。ですが、さっきも言った通り命の価値は長さではありません。限りある命を精一杯生きることにこそ、価値があるんですよ」

 

いいことを言っているようだったが、言い訳にしか聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

計「待ちなさいよ!! 無責任にもほどがあるでしょう!!」

 

文「私達が死んだのもそもそも全部あなたの所為じゃありませんか!!」

 

私達はフレアさんに食って掛かったが、フレアさんの姿は少しずつ薄くなっていった。

 

 

計「ちょっと!! アンタ逃げようっての!!」

 

フレア「ダムドもまた復活しかけています。このままでは多くの人々が命を奪われてしまいます。私にはそれを食い止める使命があります。あなた方も精一杯生きてください」

 

 

 

フレア「その命を、どうか価値ある物に」

 

祈るような優しいその言葉とともに、フレアさんの姿は完全に消えた。

 

 

 

 

 

 

残された私達は、あまりのことに膝から崩れ落ちた。

 

 

計「あと数日…それが私達の時間…」

 

私は震える手のひらを見つめ、震えた声で呟いた。

 

 

文「そんな…私は…ずっと…家元になるために…子供の頃から…稽古をしてきて…」

 

計「私の…夢は…政治家に…いつか総理大臣になって…でも…」

 

 

 

 

 

自分たちの未来、子供の頃からの夢、それに向けて続けてきた努力。

 

それが…何もかも…

 

 

計「うそだ…」

 

文「そうです…これは…夢です…あの隕石事故の日から…ずっと夢を見てるんです…」

 

 

それと引き換えに得たものは… 思い出したくもない辛い思い出と… 居場所の喪失…

 

 

 

 

 

文もまた焦点の合っていない目でたどたどしく呟いた。

 

計「そうだよ…ホントの私達は…あったかいベッドのなかにいて…朝起きたら…元気に…おはようって…」

 

そんなことを呟いているうちに、視界が歪んできた。

 

 

文「あんまりです…こんな…運命…」

 

文は涙声で呟いた。

 

 

 

計「ひどい…ひどすぎるよー!!」

 

私はありったけの声で天を仰いで泣き叫んだ。

 

 

 

To be continued…

 

 

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