サイバープリキュア   作:k-suke

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Story FINAL “ Re-install ”

 

 

 

計「う〜んここは…?」

 

辺り一面真っ黒な空間に私は居た。

 

 

計「おっかし〜な〜。確か公園に居たはずなんだけどもう夜になっちゃったのかな?」

 

 

 

計「文〜どこ行ったの〜」

 

文の名前を呼びながら辺りを見回すも人っ子一人見当たらなかった。

 

すると、私の方にゆっくりと誰かが歩いてきた。

 

 

計「あなたは!!」

 

その人物を見て私は驚いた。

 

 

計「紅さん!! どうして!?」

 

一瞬戸惑ったがすぐに何となく理解した。

 

 

計「そっか、ここ死後の世界ってやつなんだ。だからあなたがいるんだ。そっかそっか」

 

そして私は嬉しくなって紅さんに話し掛けた。

 

 

計「ねぇ紅さん。私達ももうすぐ死ぬからさ、あの世で一緒に色々ゲームしようよ。紅さんの言ってたこと私もわかったんだ。やりたいことをやりたいようにやってパァーッと楽しむ。それが一番大事なんだって。今度は一緒に遊ぼうよ」

 

 

しかし、紅さんはそんな私を無言のまま冷たい目で見つめていたが、やがて興味を無くしたように踵を返して立ち去っていった。

 

計「ちょっと、どこ行くの? ねえってば!!」

 

私は後を追いかけたが必死に走ってもまるで追いつけず、紅さんの姿はどんどん小さくなり、そのまま闇の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

計「はっ、なんだ夢か…。うっイタタ」

 

私は自分が昼間の公園に居ることを確認すると、頭を押さえた。

 

 

計「ハァ〜。文、起きなよ。時間もったいないよ」

 

私は大きくため息をつくと同じようにとなりに眠っている文を揺り起こした。

 

 

文「あっ…計さんですか…。イタタ頭が…」

 

目を覚ました文もまた頭痛に顔をしかめていた。

 

 

計「これが二日酔いってやつかな、おかげで変な夢見ちゃったよ」

 

文「私もです。紅さんが出てきたんです。私達が死んだ後ゲームをして遊びましょうって言ったら…」

 

計「言ったら?」

 

文「何も言わずにどこかへ行ってしまいました」

 

文は俯き気味にそう呟いた。

 

 

計「そっか…」

 

文の言葉に私もまた暗い気分になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢ちゃん達。こんなところでなにしてるんだい?」

 

突然話し掛けられた私達は驚いて振り返った。警察が補導に来たのかと思ったからだ。

 

するとそこに居たのは大きな荷物を抱えた、五十歳ぐらいの髭ぼうぼうの男性だった。

 

 

「おや? もしかしてそれは酒かい? もし良かったら少しわけてくれないかい?」

 

 

文「え、ええ構いませんが。あのあなたは…」

 

「この辺じゃヒゲオヤジで通ってるよ。まっ俗にいうホームレスってやつだ」

 

 

 

ヒゲオヤジさんは残っていたお酒を飲むと私達に尋ねてきた。

 

 

ヒゲオヤジ「嬢ちゃん達、一体どうしたんだい? 若い身空でお仲間入りでもないだろう。家出かい?」

 

ヒゲオヤジさんの言葉に私達は何も言えず目をそらした。

 

 

ヒゲオヤジ「…そうかい。まあ色々あったんだろうさ。でもまあいい加減で帰りなよ。家はあるんだろう。家族も心配してるよ」

 

 

 

計「…帰ったって仕方ないんです。もう私達にはなんにもありませんから…」

 

文「…もうどうでもいいんです、私達…。何も出来ず誰からも必要とされず自分の夢も叶えることも出来ず…」

 

私達は俯きながらボソボソと返事をした。

 

ヒゲオヤジさんが私達のことを心配してくれているのは分かったが、私達にはもう何の意味も無いことだった。

 

どうせ後二三日で死んでしまう以上、もう何もかもがどうでもいい。悲観して自殺する勇気もないだけの臆病者の私達に出来ることなど何も無いのだろうし。

 

 

 

ヒゲオヤジ「それは…ちょっと違うんじゃないかな…」

 

計「え?」

 

 

 

 

 

 

歳場市内

 

 

 

 

ダムド「もはや恐れるものは何も無い。この命などと言うガラクタで溢れた世界を美しく掃除してやる!!」

 

 

そう高らかに宣言したダムドはどす黒い光線を発射し、町を破壊し始めていた。

 

「うわ〜助けて〜!!」

 

「誰か〜!!」

 

人々は恐怖の悲鳴とともに必死に逃げ惑っていたが、ダムドの攻撃はホーミングして的確に人を殺害していった。

 

 

むろん警察や機動隊も駆けつけていたが、そもそも歳場市内の警察署が壊滅してしまっていたこともあり、根本的に人手が不足していた。

 

それに加えて

 

 

機動隊「撃てー!!」

 

号令一発ライフルやランチャーが打ち込まれたのだが、ダムドにはどんな砲撃でも傷一つ負わすことが出来なかった。

 

ダムド「フハハハ!! そんなガラクタどもの作ったガラクタになど何もなすことは出来ない。それを教えてくれるわ!!」

 

ダムドの高笑いとともに発せられた黒い光に警察や機動隊は根こそぎ吹き飛ばされた。

 

 

機動隊「うわー!!」

 

 

 

ダムド「ハッハッハ!! フハハハハ!!」

 

瓦礫と累々たる屍の山と化した街の一角にはダムドの耳を塞ぎたくなるような高笑いだけが響いていた。

 

 

 

 

 

 

歳場市内 某公園

 

 

 

文「違うって何がですか?」

 

計「私達はもうなんにもないんです。だからもうどうでもいいんです。それが違うって言うんですか?」

 

 

私達の問いかけにヒゲオヤジさんは優しい声で答えてくれた。

 

 

 

 

ヒゲオヤジ「なんにもない、か。そりゃわしだって同じだよ。こう見えてもさ、昔はちょっとした上場会社の社長だったんだ。でも不況で倒産しちまってね、妻や子供にも愛想を尽かされて逃げられちまった。元々仕事ばっかりでほとんど家のことなんか顧みなかったからな」

 

私達はヒゲオヤジさんの話を聞いて思った。似ている、と。

 

 

ヒゲオヤジ「それから後は絵に描いたような転落人生だ。でもさ、こんなに落ちぶれちまって、なんもかんもなくしちまっても、自分がどうなってもいいなんて思ったことは一度も無いよ」

 

計「えっ?」

 

 

 

 

 

ヒゲオヤジ「だってそうだろ。自分が自分を見捨てちまったらそれこそホントに終わりだ。こうやって酒を飲むことすら出来なくなっちまう。どんな辛い現実でもさ、生きることにだけは一生懸命にならなきゃいけないって思うんだ」

 

文「でも、自分が死んでしまうって分かっててもなんでしょうか」

 

ヒゲオヤジ「当たり前だろ。普通に生きてても次の瞬間事故で死ぬかもしれないんだ。それにこんな生活してたら、それこそ明日の保証なんて無い。だからわしはさ、今を精一杯生きることにしてるんだ」

 

ヒゲオヤジさんは実に晴れ晴れとした顔で迷いなく言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

計「それでも…」

 

ヒゲオヤジ「ん?」

 

計「そうやって生きてもなんにもならなかったらどうするんですか?」

 

ヒゲオヤジ「別にどうもしないさ。自分が納得するために生きてるんだから。誰に認めてもらう必要もない。そうだろう?」

 

その言葉に私達は何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

ヒゲオヤジ「さてと、と。何やら遠くの方で大騒ぎになっとるようだし。わしは安全なところに退散することにするよ。お嬢ちゃん達、人生の先輩としての忠告だ。誰に遠慮することも無い、自分のやりたいように生きるといい。でも、辛いことから目を背けることと自分のやりたいように生きることとは全然違うことだ。精一杯生きて、命を価値ある物にしなさい」

 

ヒゲオヤジさんはにっこりと笑いながら、そう言い残して立ち去っていった。

 

 

 

ヒゲオヤジさんの後ろ姿を見送った私達の頭には、これまでのことがぐるぐると回っていた。

 

自分たちを非難する人達、自分が傷つけてしまった人のこと、自分の欲のために生きている人、助けられなかった多くの人のこと。

 

 

そして、紅さんことキュア・ポイントのこと。

 

 

なによりも、フレアさんのあの言葉が思い出された。

 

 

 

「その命を、どうか価値ある物に」

 

 

 

ふと、目線を下げると自分たちが万引きしてきたお菓子の食い散らかしとジュースのペットボトルやお酒の缶が目に入った。

 

計「…私、何やってたんだろ…」

 

小さく呟くと真剣な顔で文の方に向き直った。

 

 

計「文、お願いがあるの」

 

文「私もです、計さん」

 

 

直後、公園に乾いた音が二回響いた。

 

計「行こう!」

 

文「はい!」

 

 

私達は、頬を赤く腫らしながら駆け出した。

 

 

 

私達が生徒会にいたのは、将来の夢のための練習でもなければ、人から褒めてもらいたかったからでもない。

 

ただただ純粋に、人のためになることをしたかったからだ。

 

そのためなら、どんな苦労も厭わなかったはず。

 

うまく行かなかったから、途中で止めてしまおうなんて思えるほど軽い気持ちじゃなかったはずだ。

 

私達は今更ながらに初心を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

市立歳場中学

 

 

 

この異常事態の中、生徒達は教師の誘導のもと体育館に避難していた。

 

 

生徒「おっおい、あれって」

 

生徒の一人が上空を指差すと、そこにはダムドの悪魔のごとき姿が存在していた。

 

 

ダムド「ふん、ガラクタ共の寄せ集まる場所。まさにゴミ捨て場だな。存在する価値など無い」

 

ダムドは嘲るように吐き捨てると、学校を破壊せんと手のひらに力を集中させ始めた。

 

それを見た生徒達はパニック状態に陥った。

 

 

生徒「やめてくれ〜」

 

生徒「死にたくねぇよ〜」

 

生徒「助けてー!!」

 

しかし、そんな光景はダムドにとって目障り以外何物でもなかった。

 

 

ダムド「ふん、くだらん。実に醜い。目障りだ、消えてなくなれ」

 

 

そうして、光線のようなものを発射しようとしたその時だった。

 

 

計「やめなさい!!」

 

文「それ以上はやらせません!!」

 

 

凛とした声とともに二人が駆けつけた。

 

そんな二人の姿は、避難している生徒達にも映った。

 

 

生徒「ちょっと! あの二人何を!?」

 

生徒「何考えてんだよ、馬鹿じゃねぇの!!」

 

 

 

 

誰かが何かを言っているようだが、今の私達には関係のないことだった。

 

 

計「私達は自分のやりたいことをやる!! 後悔をしないためにも!!」

 

文「未来へ進むことを諦めません!! この命が尽きる最後の瞬間まで戦います!!」

 

 

フレア(あなた方の光は、私の想像を遥かに超えて消費されてしまっています。何もせずに居ても、あとせいぜい数日…。もし変身するようなことがあれば一時間も持たないかと…)

 

私達の耳にフレアさんの言葉が蘇ったが、大きく息を吸い込むと覚悟を決めた。

 

 

私達は心臓の位置に手を当てて叫んだ。

 

 

計・文「「プリキュアソウル・インストール!!」」

 

次の瞬間、光とともに私達の体はドレスのようなコスチュームに包まれていた。

 

 

 

 

 

 

生徒「おい、あれって!!」

 

生徒「こないだ俺たちを助けてくれた奴らだ!!」

 

 

 

 

私は右腕でX字に空を切ると力強く叫んだ。

 

エグゼ「実りをもたらす緑の大地 キュア・エグゼ!!」

 

 

ワードもまた右腕でWの文字を空に書くと冷静かつ凛とした声で名乗った。

 

ワード「命を育む青き海原 キュア・ワード!!」

 

 

「「闇をはらい未来を紡ぐ光の使者 サイバープリキュア!!」」

 

 

 

 

ダムド「ふん、何かと思えばフレアの力の残り火か。所詮ガラクタに毛の生えたようなものでしかないわ」

 

ダムドはそんな私達を見て、馬鹿にしたようにあざ笑った。

 

 

 

 

 

 

しかし、私達はそんな言葉に毅然とした態度で反論した。

 

ワード「たしかに、私達の力は小さいものかもしれません。あなたに勝てないのかもしれません」

 

 

ダムド「愚かな奴らよ。それが分かっているならなぜ戦う。おとなしく震えていればいいものを」

 

 

エグゼ「勝てるから戦うんじゃない!! できないからやらないんじゃない!! 後悔しないためにためだよ!! この命がある限り、私達は戦う!! 本当の意味で生きるために!!」

 

 

 

 

 

 

 

エグゼ・ワード「「はぁああああ!!」」

 

私達はダムドにかけ声とともにダムドに飛びかかった。

 

ダムド「ふん、ゴミが!!」

 

 

しかし、ダムドのハエをはらうかのような手の一振りで私達は吹き飛ばされた。

 

エグゼ・ワード「「うわあああ!!」」

 

 

暴風に吹き飛ばされた私達だったが、すぐに体勢を立て直して再び飛びかかっていった。

 

エグゼ「なんのこれしき!!」

 

ワード「この程度でひるみません!!」

 

しかし、そんな私達に目掛けて今度はどす黒い光線が放たれてきた。

 

 

エグゼ・ワード「「キャアアア!!」」

 

直撃を受け吹き飛ばされ、地面に叩き付けられた私達だったが闘志は折れていなかった。

 

エグゼ「ま、まだまだ…」

 

ワード「何も…終わっていません…」

 

 

ダムド「ふん、これだけの力の差を見せつけられても立ち上がるか。無駄なことを。そんな程度では俺に触れることすら叶わん」

 

ダムドはそんな私達を見下すように嘲笑うと、どす黒く巨大な光の玉を雨霰と発射してきた。

 

最初の一二発こそなんとか躱せたものの、次々と放たれる攻撃に対応しきれず私達はボロ雑巾の様に吹き飛ばされた。

 

 

エグゼ「あ…ぐ…」

 

ワード「げ…ふ…っ」

 

圧倒的なまでのダムドの力の前に、大ダメージを受けた私達はボロボロになっていた。

 

なんとか立ち上がろうとしたものの、すでに私は左腕が使い物にならないほど傷ついており、膝はガクガクになっていた。

 

ワードの方も口から血反吐を吐いており、傍目にも限界が近かった。

 

 

 

 

 

 

生徒「もう駄目だよ。あんなんで勝てる訳が…」

 

その光景を見ていた生徒達も絶望の表情を浮かべていた。

 

そんな中、横井先生の叫ぶ声が飛んだ。

 

 

横井先生「何を言ってるんだお前達は!! アイツらは、緑野や青山は俺達のために戦ってくれているんだぞ!! お前達が弱音を吐いてどうするんだ!!」

 

 

その言葉に生徒達はハッとした顔になった。

 

生徒「そうだよ。いつもいつも会長達は俺達を助けてくれた」

 

生徒「ずっと迷惑をかけっぱなしだった…なのに…」

 

生徒「なんにも知らずに…ひどいこと言って…」

 

 

「が、頑張れー」

 

誰とも無く、応援する声がすると皆口々に声援を送り始めた。

 

「「頑張れー!!」」

 

「「負けるなー!!」」

 

 

ダムド「なんだ? 耳障りなことを」

 

その声援を聞いたダムドはうるさそうに顔をしかめた様だった。

 

 

しかし、同じように声援を聞いた私達は全く違っていた。

 

エグゼ「みんなが…呼んでる…」

 

ワード「うれしい…ですね。力が…湧いてきます…」

 

 

ボロボロだったはずの私達だったが、なぜか力が湧いてきた。

 

そんな私達を見て、ダムドは驚きの表情とともに声をあげた。

 

ダムド「なぜだ!! そこまで傷つきながらなぜ立ち上がる!? なぜ抗おうとする!?」

 

 

ワード「さあ、何ででしょうね」

 

エグゼ「諦めることは、さっきやってきたからかもね」

 

私達は不敵に笑いながらそう答えた。

 

 

 

 

 

ダムド「ほざけ!! ならば塵芥も残らぬほどにしてくれる!!」

 

ダムドはそう叫び大きく振りかぶった。

 

 

 

ダムド「ぐっ!! これは!?」

 

顔をしかめ、横腹を押さえた。

 

不審に思った私達は霞む目を凝らしてよく見ると、ダムドの横腹にひびのような傷が見えた。

 

 

エグゼ「あれは…」

 

ワード「傷跡…でしょうか…?」

 

 

ダムドの脳裏にはフレアを倒した時のことが思い浮かんでいた。

 

ダムド「おのれフレア。最後の悪あがきかと思ったが…」

 

悔しそうに顔をしかめていたが、そうしている間にも少しずつ傷は大きくなっていった。

 

ワード「傷が大きくなっていっている…」

 

エグゼ「一か八かだよ」

 

私達は微かな勝機を感じ、最後の力を振り絞った。

 

 

エグゼ「やぁあああ!!」

 

まず私が飛びかかり、苦しみ動きの止まっていたダムドの横腹にキックを浴びせた。

 

 

ダムド「ぐうっ!!」

 

その攻撃はダムドの顔をゆがめた。

 

 

ワード「はああああ!!」

 

続けてワードのパンチが傷跡に炸裂した。

 

 

ダムド「があああ!!」

 

ワードのパンチは傷深くに刺さったらしく、ダムドは苦悶の悲鳴を上げた。

 

 

私達はそんなダムドに反撃の隙を与えまいと、懐に飛び込みラッシュを傷口に浴びせた。

 

 

エグゼ「だだだだああああ!!」

 

ワード「やあああああああ!!」

 

 

攻撃一発一発はさほどでもないかもしれなかったが、数を積み重ねれば相当のダメージになっていったらしく、ダムドの傷口はどんどんと大きく深くなり、ついに全身にまで広がった。

 

ダムド「ぐおお!! 馬鹿な、こんなことが…」

 

それを見計らって私達は大振りの一撃を炸裂させた。

 

エグゼ・ワード「「いやあああああ!!」」

 

 

 

 

 

その一撃はダムドを大きく吹き飛ばし、かなりのダメージを与えた。

 

エグゼ「ど、どうだ。少しは参ったか!!」

 

ワード「このまま、終わりにします」

 

かくいう私達もかなり消耗しており、肩で息をしつつもう限界に近かった。

 

 

ダムド「終わりか、それは貴様らもだろう」

 

しかしダムドは不敵に笑った。

 

エグゼ「な、なにがよ!?」

 

 

ダムド「貴様らの体のことだ。どうだ、俺の下僕となるならば新たな命をくれてやる」

 

ワード「な!!」

 

私達はその誘惑に一瞬心が揺らぎ、構えが解けた。

 

 

エグゼ「私達、生きられる…の…」

 

 

すると動きの止まった私達を見て、してやったりと言わんばかりにダムドは続けた。

 

ダムド「ふん、やはり人とは愚かななものよ。こうも容易く操れる命などを後生大事にするのだからな。さあ、俺に従え」

 

 

 

 

 

 

しかし、次の瞬間私達はダムドを睨みつけると強烈な蹴りを打ち込んでいた。

 

ダムド「なぜだ…貴様らは命がいらんのか!?」

 

 

 

 

 

吹き飛ばされたダムドは予想外だと言わんばかりに戸惑いの言葉を発した。

 

ワード「命。それは何よりも大切なものです。ですが、それは自分のものだからこそ価値があるんです」

 

エグゼ「私達は戦いの中で色んな人と会った。悪い人もいたし、自分のことしか考えない人もいた。でもみんな自分の命を全力で生きてた。あなたに命をもらって生きることが出来ても、そんな物は私達の望んだ生き方じゃない!! どんなに辛くても、自分自身の生き方をする。そう決めたの」

 

 

私達は一切の迷い無く毅然とした態度でそう言い放った。

 

そんな私達の態度にダムドは混乱していた。

 

ダムド「馬鹿な、自滅するつもりか…。貴様らごときがそんな選択を…」

 

 

ワード「ダムド、これで終わりにします!!」

 

エグゼ「命の力を思い知りなさい!!」

 

私達は手をつなぐと、残された力を最大に込め青と緑の縞模様の光の玉になった。

 

そしてそのまま、傷だらけのダムドに突撃していった。

 

 

 

エグゼ・ワード「「全エネルギー放出!! プリキュア・ファイナルエクスプロージョン!!」」

 

ダムドは私達の最後の攻撃を咄嗟にガードしようとしたが、すでに限界だったらしく私達の攻撃をまともに食らった。

 

 

 

ダムド「ギャアアアア!!」

 

 

その耳障りのする悲鳴とともに、ダムドは大きく吹き飛んでいった。

 

ダムド「こ、これが…命の…力…な…る…ほ…ど…」

 

 

そのままひびが全身に広まったダムドはボロボロと崩れ落ちるようにして消滅した。

 

 

それとともに校舎の方からワァッと大きな声が上がった。

 

生徒「やったあ、怪物をやっつけたぞ!!」

 

生徒「さすが、あの二人だ!!」

 

みんなが口々に私達を誉め称えてくれていたようだった。

 

 

 

 

しかし、そんな声も今の私達にはかなり遠くそして小さく聞こえた。

 

 

 

私達は校舎の方に振り返ると、そのままゆっくりと一礼した。

 

生徒「ん? なんだろ?」

 

そんな私達の様子に何人かの生徒や先生方は戸惑っていたようだった。

 

 

 

しかし、すでに私達の目はぼやけてその様子もよくわからなかった。

 

 

 

私達は顔をあげるとお互い頷き合った。

 

 

 

 

 

そして、そのまま私達は光の玉になって飛び立った。

 

生徒「おっおい、どこに行くんだよ!!」

 

横井先生「どこに行く!? 緑野!! 青山!!」

 

山崎・河合「「会長!! 副会長!!」」

 

 

私達を呼ぶ声が聞こえたようだったが、私達は振り返ることなく夕焼けの空を飛んでいった。

 

 

私達は満足で胸がいっぱいだった。精一杯全力で生きられたことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後のサイバープリキュアの行方は、誰も知らない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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