サイバープリキュア   作:k-suke

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Story03 “ Bloody road ”

 

 

 

青山家

 

 

 

元が旧家であり日本舞踊の家元である青山家は、ちょっとした屋敷と言えるだけの広さがあり、何人かの内弟子もいる。

 

皆相応の達人であるが、中学生の文には家元の娘というのを差し引いても一目置いていた。

 

内弟子の一人であり、今年二十歳となる涼子もその一人であった。

 

 

涼子「文さん、すいませんが明日の稽古を休ませていただけるよう先生に伝えていただけませんか」

 

 

文「あ、涼子さん。何かご用事ですか?」

 

涼子「ええ、小学生の妹のお見舞いに行ってあげたいの。こないだの暴走車の事件に巻き込まれたらしくてね。怪我自体は軽いらしいけど、元々心臓の弱い子で、もしかしたら近いうち手術が必要になるかもしれませんので」

 

 

涼子さんの言葉を聞いて、私こと青山 文は心が痛んだ。

 

先日の暴走車、その犯人を私は知っている。しかし、世間一般には犯人はまだ捕まっておらず、その事故で死傷した人は数十名に及ぶと報道されていたからだ。

 

連日のような被害者や遺族の痛ましい報道に加え、真犯人を知りながらどうすることも出来ない、それ以前に何処の誰かすら知らないという現実に私は自分の無力さを痛感していた。

 

文「あの、それでしたら私もご一緒させてください。涼子さんにはいつもお世話になっておりますので、ご挨拶をさせてください」

 

せめてもの気持ちでそう願い出た。

 

 

涼子「えっ、いえ、そこまでしなくても」

 

文「行かせてください。お願いいたします」

 

その後しばらく押し問答を続けた結果、次の休みに一緒にお見舞いに伺うことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

歳場市立総合病院

 

 

 

 

涼子「霧子、大丈夫? なかなか来れなくてごめんなさいね」

 

霧子「あっ、お姉ちゃん 久しぶり!! うん、元気元気。ちょっと転けたぐらいなのに看護師さんとかが大げさなのよ。私はもうすぐ退院できるぐらい元気なのにさ。そっちの人は?」

 

ベッドの上から、実に元気そうな声で霧子さんは私のことを尋ねてきた。

 

 

涼子「ああ、この人は私がお世話になっている先生の娘さんで、私の先輩にもなる…」

 

文「青山 文と申します。いつも涼子さんにはお世話になっています」

 

霧子「初めまして、霧子です。お姉ちゃんの先輩って言ってましたけど中学生ですよね?」

 

霧子さんは私を見て戸惑っているようだった。

 

 

涼子「私が内弟子になる前から、というか子供の頃から先生に教わってるのよ。だからこの人が先輩ってこと。実際私よりうまいしね」

 

文「いえ、そんな…」

 

涼子さんが持ち上げてくれたことに、私は照れくささを感じていた。

 

 

霧子「フーンそうなんだ。お姉ちゃんのことよろしくお願いしますね」

 

素直な彼女に、私は彼女の病状について道中で聞いたことを思い出していた。

 

 

 

 

文「では、妹さんの具合は…」

 

涼子「まあ、こないだの事故の怪我は確かに大したこと無いんだけど。軽く頭をぶつけてその時の記憶が無いんです。まああんな事故のこと知らない方がその方が心臓に負担をかけないしいいだろうと。妹は次に発作が起きたら緊急で手術をする必要があるそうなんです。それもかなり難しいものを…」

 

文「わかりました。そのことを話さないようにします」

 

 

 

 

私はなんとか霧子さんに元気になって欲しかった。

 

涼子さんは私にとってもお姉さんのような人だからだ。そんな人が悲しむのは絶対に見たくない。

 

 

文「そうだ、テレビでも見ませんか」

 

彼女に元気でいて欲しくて、何となくベッド脇のテレビのリモコンをいじった。

 

しかしそこに映った映像はあまりにもタイミングが悪かった。

 

 

ニュースキャスター「先日の暴走車の事件ですが、一週間以上が経過したいまでも犯人の目星及びその行方もわかっていません。献花場には今日も多数の人が訪れており…」

 

よりによって、最悪のニュースが流れてしまった。

 

 

私は大慌てでテレビを消したがすでに手遅れだった。

 

霧子「あ、あ、あの事故。あの時私も巻き込まれて、それで…。うっ」

 

そのニュースが引き金になり、事故のことを思い出してしまったらしく、急に胸を押さえて苦しみ出した。

 

 

涼子「霧子!!」

 

文「看護師さん来てください!! 早く!!」

 

私は動転しながらもナースコールをした。

 

 

 

 

ストレッチャーに乗せられて手術室に霧子さんは運ばれた。

 

今から緊急の手術をするらしい。

 

文「涼子さん。申し訳ありません」

 

 

私は罪悪感から涼子さんの顔がまともに見れなかった。

 

 

涼子「気にしないで。タイミングが悪かっただけなんだから。そう、たまたまよ」

 

何でも無いように言っていたが、その口調から涼子さんが無理して笑っているのがわかった。

 

そのため尚更私はいたたまれなかった。

 

 

そんな時お医者さんが手術室から出てきた。

 

医師「申し訳ありません。先ほど彼女と同じ血液型の患者さんの手術があり、在庫が少なくなっていますので、至急血液センターに発注します。それが届き次第手術に入ります」

 

文「でしたら私の血を使ってください!!」

 

 

私はそう願い出たが、霧子さんの血液型は残念ながら私はおろか涼子さんとも違っていた。

 

何も出来ないその現実に歯がゆい思いをしていると看護師さんが慌てて走ってきた。

 

看護師「大変です。また事故が発生して道路が大渋滞しているらしくて、到着がいつになるかわからないと今センターから連絡が…」

 

医師「何だと!? 緊急手術だ。少なくとも後一時間以内に到着しないと間に合わんぞ!!」

 

涼子「そ、そんな…。じゃあ霧子は…」

 

その会話を聞いて涼子さんは真っ青になってへたり込んでしまった。

 

 

文「涼子さん、しっかり!! すいません涼子さんをお願いします」

 

私は看護師さんに涼子さんを引き渡すと、続けざまに尋ねた。

 

 

文「今、センターの車はどの辺りにおられるのですか?」

 

 

 

 

 

 

十数分前 歳場市内某所

 

 

 

映子「こないだのレーシングゲームは面白かったな〜。またやろっかな〜。でも同じゲームを繰り返すってのも芸が無いしな〜」

 

一人町中をぶらつきながら、紅 映子は退屈そうにつぶやいた。

 

 

映子「ふぁ〜あ、ん? あれは…」

 

大きなあくびをすると、道路脇に花を添える人が彼女の目に入った。

 

 

男性「潤、何でこんなことになったんだろうな。もうすぐ挙式だったってのに」

 

その男性は手を合わせながら悔しそうにつぶやいていた。

 

 

 

映子「なにかあったんすか?」

 

映子はなんとなくと言った感じで、その男性に話し掛けた。

 

 

男性「ああ、こないだの事故で婚約していた女性が亡くなってね。全く、犯人も憎いが車なんてものもぶち壊してやりたい気分だ」

 

それを聞いて映子はにや〜っと笑った。

 

 

映子「じゃあさ。それが出来るようにしてやるよ」

 

そう言って映子はポケットからペンライトを取り出して、男性に向けた。

 

男性「えっ何だ? うわーっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、看護師さんに教えてもらった場所に向かって必死に走っていた。

 

文「絶対に、絶対に霧子さんを助けてみせる」

 

 

だが、私は嫌な予感がしていた。

 

例の悪寒が走ったのだ。

 

別のところでのことでありますようにと祈りながら走っていると、最悪の状況が待っていた。

 

 

ポイント「ほ〜ら、やれやれ〜」

 

彼女キュア・ポイントの声が聞こえてきたのだ。

 

 

文「こんな時に…」

 

私は歯噛みしながら、ビルの路地裏に入った。

 

 

文「プリキュアソウル・インストール!!」

 

左胸、心臓の位置に手を当ててそう叫ぶと、私の体は光に包まれた。

 

次の瞬間、私の体はドレスのようなコスチュームに包まれていた。

 

変身完了とともに私は青い光の玉になって飛び立った。

 

 

 

 

ポイント「はっはー。車なんてもんを片っ端からぶっつぶしていけー!!」

 

「ダームー」

 

彼女の嬉しそうな声に答えるかのように、巨大なブルドーザーと言った容姿のダムド魔人が車を押しつぶし、道路を穴だらけにしていた。

 

 

ポイント「うーん。レースもいいけど、こうやって大掛かりにぶっ壊すのもスカッとするな〜。目標は三十分百台破壊でいくぞ〜!!」

 

ポイントは実に晴れ晴れとした口調でそう言った。

 

そんな時、彼女は空を飛んでいく青い光の玉を見つけた。

 

 

ポイント「おっ来たな。そろそろ出てくると思ってたんだ」

 

彼女は嬉しそうに言ったが、その玉は彼女を無視して別の方角へ飛んでいこうとしていた。

 

 

ポイント「おいおいおい。何処行くんだ、ちゃんと遊ぼうぜ。プリキュア・プレッシャーボール!!」

 

彼女はそう叫ぶとともに、赤黒い光のボールを投げつけた。

 

 

 

 

 

ワード「キャアアア!!」

 

急いでいた私は、血液センターの車が立ち往生している場所に向かおうと飛んでいたのだが、突然の攻撃に撃ち落とされた。

 

そうして叩き付けられた場所にいたのは案の定だった。

 

ポイント「おいおい、セーギの味方サマが見て見ぬ振りかよ。やっだねー偽善者丸出しで」

 

ポイントは私を見て馬鹿にしたように言ってきた。

 

 

ワード「待ってください。私は今、あなたと戦っている場合ではないんです。この事故で渋滞してしまって、手術に必要な血が届けられないんです」

 

私は、必死の思いで叫んだ。このままでは霧子さんが死んでしまう。

 

一刻も早く輸血用血液を届けなければならないのだ。

 

彼女もわかってくれると思っていたのだが

 

 

ポイント「何だよそれ。病人助けるために目の前で死にそうなやつら見殺しにするんだ。おーやだやだ。人の命に優先順位勝手につけてるやつって」

 

 

ワード「くっ」

 

乱暴ではあるけれど、ある意味正論ではある彼女の言葉に私は何も言えなかった。

 

 

ポイント「行くぜ、偽善者」

 

そう言ってポイントは私に飛びかかってきた。

 

 

 

ワード「時間が無いというのに!!」

 

私はやむなく応戦したが、焦りもあり苦戦した。

 

ポイントのラッシュを受けるだけでいっぱいいっぱいになり、繰り出した攻撃は大振りになり簡単にかわされた。

 

ポイント「ほらほら、こないだの威勢はどうした!?」

 

ポイントが攻撃をしかけながら、そう言った。

 

 

ワード「いけません。このままでは…」

 

ただでさえ限られている時間が過ぎる一方。

 

おまけにそうしている間も、ブルドーザー魔人は暴れていた。

 

 

「ダームー」

 

キャタピラで車やいろいろなものを押しつぶし、前方のブレードで道路をめちゃくちゃにしていた。

 

当然、それだけで済むはずも無く、すでに何人かがひき殺され立ていた。

 

「「ギィエエエ!!」」

 

悲痛なその叫び声とともに

 

その叫びが聞こえるたびに、私は無力さと悔しさに歯噛みしていた。

 

 

 

 

その時、上空から緑の光の玉が飛んできた。

 

エグゼ「ワード、大丈夫?」

 

ワード「エグゼ!!」

 

私の最高の仲間が駆けつけてくれた。

 

 

ワード「エグゼ、申し訳ありません。私は至急手術用の血液を届けないといけないのです。ここをお願いいたします」

 

エグゼ「手術!?」

 

ワード「はい、急いで血を届けないと手術が受けられず死んでしまうかもしれないのです」

 

エグゼ「わかったわ、行って!!」

 

ワード「はい!!」

 

エグゼの頼もしい言葉に私は青い光の玉となって飛び立った。

 

 

ポイント「こらこら、もう帰るなんてなしだぜ」

 

そんな私にポイントが攻撃を仕掛けようとしたようだったが

 

 

エグゼ「させない!! ワード行きなさい」

 

エグゼがポイントにつかみかかりそれを阻止してくれた。

 

私は仲間に感謝しつつ、全速力でセンターの車のところへ向かった。

 

 

 

 

ポイント「ちぇっ、途中でのプレイヤー交代かよ。ゲームマナーがなってないね〜。興ざめしちまったぜ、あたしもやーめよ」

 

エグゼを振りほどくと、ポイントが興味を無くしたように一つ伸びをしながた。

 

 

エグゼ「いい加減にしなさい!! 何がゲームよ!!」

 

ポイント「ゲームだよ。 あたし達の力は普通の人間じゃ考えられないんだぜ。せっかくの力フルに楽しまなきゃもったいないじゃん」

 

ポイントの台詞にエグゼは完全に決意が固まった。

 

 

エグゼ「もうあなたと、話し合うなんてこと考えない!! 倒す、絶対に!!」

 

ポイント「え〜、決意が固まったところでひじょ〜に申し訳ありませんが、あたしよりあっちなんとかした方がいいんじゃない?」

 

そう言ってポイントが指差した先には、ブルドーザー魔人がいた。

 

そうこうしている間も魔人は暴れており、被害は増える一方であった。

 

エグゼ「くっ!!」

 

エグゼがそっちに気を取られた瞬間、ポイントは赤黒い光の玉になって飛んでいった。

 

 

ポイント「じゃあな後始末よろしく〜。次はちゃんと最後まで付き合えって青いやつに言っとけよな」

 

そう言い残して

 

 

 

 

 

 

歳場市立総合病院

 

 

 

私はセンターの車から血液の入った鞄を受け取ると、そのまま病院へと全速力で引き返した。

 

 

文「先生、こ、これを」

 

私は肩で息をしながら、その鞄を先生に渡した。

 

 

医師「おお、間に合ったかい。これで手術が出来る。ありがとう」

 

嬉しそうにそう言う先生を見て私も嬉しくなった。

 

 

文「いえ、お願いいたします」

 

そうお願いすると、私は即座に踵を返した。

 

 

医師「どうしたのかね、かなり疲れているようだし、少し休みなさい」

 

文「いえ、後一つ、やらないと行けないことがあるんです」

 

 

 

 

 

 

 

エグゼ「こ、この、止まりなさい!!」

 

ブルドーザー魔人の進行を止めようと、エグゼは必死に押し返していたが、パワーの差がありまるで止められないでいた。

 

そして、魔人が急旋回すると同時に大きく投げ飛ばされた。

 

エグゼ「くっ、このままじゃ」

 

エグゼは必死に立ち上がろうとするも、力を使いはたし膝がガクガクになっていた。

 

 

 

ワード「エグゼ!! キャタピラを狙ってください」

 

到着した私はそんなエグゼに肩を貸してそう頼んだ。

 

エグゼ「ワードありがとう。病院の方は?」

 

ワード「ご心配なく。無事間に合いました。それより早く」

 

 

 

エグゼ「オッケー!! 行くよー!!」

 

そう言うとエグゼは両手に力を込めた。

 

エグゼ「プリキュア・エクストリームスラッシャー!!」

 

エグゼが両腕を、戸板をこじ開けるように開くと、エックスの形のカマイタチが発生し、片方のキャタピラをずたずたに切り裂いた。

 

 

するとバランスを失った魔人は倒れてしまった。

 

エグゼ「ハアハア、やった…」

 

もっともエグゼも限界に達したらしく完全にへたり込んでしまったが。

 

 

ワード「大丈夫ですか。しっかり」

 

私はそんなエグゼを気遣うも

 

エグゼ「大丈夫よ。それよりさっさと決めちゃって」

 

その言葉に私は力強く頷くと両手首を合わせて腰の後ろにもっていき、力を込め始めた。

 

 

ワード「受けなさい。プリキュア・ウォーターバースト!!」

 

そのまま両手を上下に開いた形で前方に突き出し、掌から強烈な水を放出した。

 

 

「ダームー!!」

 

 

水の大砲と呼べるような攻撃はダムド魔人の体を貫通し、魔人は悲鳴とともに爆発した。

 

 

ワード「ハアハア、やりました…」

 

エグゼ「もうくたくただよ。私は帰るね」

 

ワード「はい、私はお見舞いの続きを行います」

 

エグゼ「うん、早く元気になるといいね」

 

私も信じていた。必ず霧子さんは元気になると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

 

 

 

 

 

涼子「先生、長い間お世話になりました」

 

大きな荷物を持った涼子が心の底から感謝を述べていた。

 

文の母「涼子、あなたが止めるのは非常に残念ですが、妹さんが亡くなって、ご家族も気落ちしてしまい、あなた自身も身が入らないと言うなら仕方ありません。ですが、またいつでも帰ってきなさい」

 

 

 

私は唇を噛み締めて俯きながら二人の話を聞いていた。

 

あの後、霧子さんの手術は無事行われたのだが、結局病院側のミスで亡くなってしまった。

 

霧子さんが亡くなられた遠因を作ってしまった私は涼子さんにあわせる顔が無かった。

 

 

文「申し訳ありません。私があんなことをしなければ…」

 

私は心の底から謝っていた。どんなことを言われても仕方が無いのだから。

 

 

涼子「気にしないで。あなたは一生懸命妹のために頑張ってくれたじゃない。誰もあなたを恨んだりなんかしないわ」

 

いつもと変わらない優しい声を涼子さんは掛けてくれたが、それが却って辛かった。

 

 

涼子「もうすぐ電車の時間ですので。これで」

 

文の母「涼子、元気でね」

 

涼子「はい、先生も」

 

 

そう言って涼子さんは屋敷から出て行かれた。

 

 

 

文「うっ、うっ」

 

その後ろ姿を見送ると、堪えていたものが一気に吹き出した。

 

 

 

文「うあああああ!!」

 

私は人目もはばからず、あらん限りの声を上げて泣いた。

 

 

To be continued…

 

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