サイバープリキュア   作:k-suke

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Story06 “ Important”

 

 

 

私と文はトボトボと帰り道を歩いていた。

 

先日の警察署の一件だが、その後の報道で警察が事件を隠蔽していたこと。しかもその事件がゲーム感覚だったこと。そのことにショックを受けていたのだ。

 

 

計「あの署長さん、悪い人だったんだね…」

 

文「ええ…」

 

私達はポツポツと小声で会話していた。

 

文「ゲーム感覚で犯罪をする人は彼女だけじゃないんですね…」

 

計「いったい、ホントに守らなきゃいけない大切なものってなんなんだろう…」

 

 

私達は答えのでない問いかけをずっと頭の中で繰り返していた。

 

そんな思いで公園の前を通りかかった時だった。

 

 

「プリキュアー!!」

 

「頑張れー!!」

 

 

そう言う子供達の声が聞こえてきた。

 

 

計・文「「!!!!」」

 

私達は驚いて公園の中に駆け込んだ。

 

計「まさかポイントが!?」

 

文「わかりません!」

 

不安にかられながら公園の奥に行くとそこにいた存在に目を丸くした。

 

 

 

 

 

 

「みんな〜応援ありがとう〜!!」

 

「また見に来てね〜!!」

 

 

そこにいたのは子供達に向かって笑顔で手を振る、ふりふりのドレスを着た二人の女子高生だった。

 

でも私達はその人達をよく知っていた。

 

 

計「ふ、古谷先輩!?」

 

文「美鈴先輩も!?」

 

二人も私達に気がついたようだった。

 

 

古谷「おーっ、緑野に青山か」

 

美鈴「久しぶりね」

 

 

 

子供達が解散していった後、私達は先輩に話を聞いた。

 

この二人は私達の生徒会OGであり、生徒会長と副会長をしておられたのだ。

 

私達も先輩達にはいろいろと教えてもらったことがあり、尊敬する方達である。

 

今では二人とも歳場高校の一年生のはずである。

 

私達は久しぶりに会った先輩に嬉しくなった。

 

 

計「お久しぶりです先輩。一体どうしたんですかその格好は?」

 

古谷「いやね、私達今度孤児院に慰問に行くつもりなんだけどね。ただ行くんじゃ芸が無いと言うか、ね」

 

美鈴「アイドルコンサートみたいにすれば結構盛り上がるかなって。だからこれはその練習」

 

文「そ、そうなんですか。ずいぶんと可愛らしい格好ですけれど」

 

 

古谷「あんまりそう言うなって、結構恥ずかしいんだからこのフリフリだらけの格好。大体プリキュアってのも美鈴が考えて…」

 

美鈴「プリティとキュアの合成語。いいじゃない語呂もいいし。可愛らしい格好しやすいでしょう」

 

古谷「そりゃあんたはこういうの趣味だからいいだろうけどさ」

 

古谷先輩はほっぺたを膨らませながら愚痴った。

 

 

美鈴「わりと乗り気だったくせに」

 

古谷「う、うん。ってそれよりさ、アンタ達なんか元気無さげだったけど。生徒会の仕事キツいことでもあったのかい?」

 

 

 

 

 

計「はい、実は、私達じゃみんなの支えになってあげられないんじゃないかなって」

 

文「辛いことが最近多いんです」

 

さすがにホントのことは言えないので曖昧にはぐらかすようなことしか言えなかったが、心中を吐露したいという思いだけは本物だった。

 

 

古谷「あ〜私達もあったね、そういう時」

 

美鈴「そうそう、何で生徒会なんてやってるんだろうってさ」

 

うんうんと頷くように先輩達は言った。

 

 

古谷「でもさ、辛いことばっかりじゃないんだよね」

 

美鈴「そうよ。やってるうちにさ、やることで得られる大切なことってのがわかるんだよね。だからさ、投げ出さずに頑張りなよ」

 

先輩の気遣うような言葉に私達は心が救われるような思いがした。

 

 

計「はい、ありがとうございます」

 

文「なんででしょう。悲しい訳じゃないのに」

 

私達はいつの間にか大粒の涙を流していた。

 

 

古谷「ほらほら、泣くなよいい年して」

 

美鈴「そうだ、なんならお前達も孤児院に一緒に行かないか。今度の日曜日だが、予定は大丈夫か?」

 

私達が二つ返事で頷いたのはいうまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

日曜日

 

 

 

私達は小さな教会に来ていた。

 

計「先輩、ここ教会ですよね?」

 

孤児院に行くと聞いていた私は戸惑ってそう尋ねた。

 

古谷「ああ、小さいけど孤児院も兼ねてるんだ」

 

 

 

そうして先輩が教会の門をくぐると三十歳後半といった年齢のシスターが迎えてくれた。

 

シスター「ようこそ、お待ちしておりました。あら、そちらの方々は…」

 

シスターは私と文を見て怪訝そうな顔をした。

 

 

美鈴「ああ、この二人は私達の後輩で…」

 

計「み、緑野 計です」

 

文「青山 文と申します。今日はよろしくお願いいたします」

 

紹介された私達はシスターにお辞儀をすると、

 

シスター「こちらこそ」

 

シスターも丁寧にお辞儀をしてきた。

 

 

顔を上げるとシスターは質問してきた。

 

シスター「古谷さんあなた方の後輩と言うとこのお二人は歳場中学校の…?」

 

計「あっはい、生徒会長を務めさせていただいています」

 

シスター「やっぱり、あの子と同じ制服だからもしかしてと思ったのよね」

 

 

 

 

その言葉が引っかかったが、思い当たることがあった。

 

 

美鈴「ああ、ここから通ってる子がいるんでしたっけ。歳場中学に」

 

シスター「そうなの。でも、最近不登校気味でね。退屈だ退屈だって口癖みたいに言ってるのよ」

 

 

文「ええ、一度生徒会でも会いにいきましょうって議題に上りましたね」

 

シスター「そう、ありがとう。でも最近は帰らないことも多くなったし、変な友達が出来てないといいんだけど…」

 

シスターは心配そうに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

その後、先輩達のコンサートも無事に終わった。

 

はじめは恥ずかしそうにしていた先輩達だったが、子供達には割と好評でわたしもアイドルになると言っていた女の子もいた。

 

男の子「ねえ、お姉ちゃん。一緒にサッカーしよ〜」

 

そう言って何人かの男の子が私に集まってきた。

 

計「いいよ、やろうか」

 

そうして私は古谷先輩と一緒にサッカーをした。

 

文の方はと言うと美鈴先輩と一緒に残りの子供達とトランプをしていた。

 

 

 

そうしてしばらく遊んでいると、日も傾きかけてきた。

 

古谷「いやーもうバテバテ」

 

古谷先輩は椅子にドテッと座って、手で顔をあおぎながら顎を出していた。

 

 

美鈴「ちょっと、はしたないよ」

 

美鈴先輩がその態度を諌めたが、今回は私も古谷先輩に賛成だった。

 

 

計「いいじゃないですか、私もクタクタです。みんな元気いっぱいですね」

 

それは正直な感想だった。

 

シスター「まあね、こんなところだと娯楽も少ないから、みんな色々楽しむ方法を知っているのよ。出来ればもう少し贅沢な暮らしをさせてあげられたらって思うんだけどね。それにこんなところに住んでいると、偏見の目で見られることも多いみたいで…」

 

シスターはどこか暗い表情で俯いた。

 

 

文「そんなことありません。みんなあんなに幸せそうじゃありませんか。あなたが立派な方だって証拠ですよ」

 

そんなシスターに文は必死に訴えた。

 

それは私も同感だった。

 

親の無い子供達の親代わりを務め、みんなからも慕われている。私達にとっては心から尊敬に値する人だ。

 

こんな人に会えたことは、今の私達にとって素晴らしいことだった。

 

こんな人達を守るためにも戦えるなら、どんな辛い思いも苦ではないと感じていた。

 

 

計「そうです。聞きましたよ、今は怪我でリハビリ中ですけどここの出身でレーサーになった人がいるって。きっとシスターの為に頑張ったんですよ」

 

シスター「ありがとう。私は神に仕えるものとして当然のことをしているだけだけれど。そう言ってもらえるとやっぱりうれしいわ」

 

シスターは笑顔でそう答えた。

 

 

 

 

 

映子「ふあ〜あ。あれ、なんか人数多いな」

 

そんな会話をしていると、実に間延びしたあくびとともに一人の女の子が入ってきた。

 

シスター「あ、映子ちゃん。おかえり」

 

 

 

文「あなたは…」

 

その女の子には私も見覚えがあった。

 

 

計「紅さん…ですよね。歳場中学の」

 

映子「ん〜そう言うアンタらは…。うちの生徒会長様ですか。こんなきったないところに何のご用で?」

 

眠たそうな目をして、面倒くさそうに紅さんは返してきた。

 

 

文「ちょっと、人と話をする時はもう少ししゃんとした態度を取ってください」

 

礼儀にはうるさい文が、紅さんの態度に諌めるように怒鳴った。

 

 

古谷「まあまあ、今日はこの孤児院に慰問に来たのよ。それよりあなたもここに住んでるんでしょ。だめよ、あんまりシスターに心配かけちゃ」

 

 

美鈴「そうよ。あなたに何かあったらシスターも大変だし、ここに住んでる他の子も迷惑するのよ。みたところ、あなたが一番の年長みたいだし、みんなのお手本にならなくちゃ」

 

先輩達が紅さんを嗜めたが、紅さんはそれがどうしたと言わんばかりに続けた。

 

 

映子「だから何? 別にここのシスターが迷惑したって関係ないし、大体年上になりたくてなったんじゃ無いからな」

 

その言い方には私もカチンと来た。

 

 

 

計「紅さん、その言い方はないんじゃないですか!! ここのシスターは孤児になった子供達を引き取っておられる立派な人でしょう。あなたにとっても親代わりなんじゃないですか。だったらもっと…」

 

ここのシスターは、私が会った中でも一二を争うほど立派な人である。その人をないがしろにする彼女の態度に私は我慢ならなかった。

 

しかし、私の言葉を遮るように彼女は言った。

 

 

映子「あ〜うっさいうっさい。ったく外面だけはいいんだもんな。そいつはあたし達のことを子供だなんて思ってないんだよ」

 

文「なんですかその言い方は!! この人は立派な方です」

 

映子「はいはい。知らないってのは幸せだよねっと」

 

 

あくまでも、シスターを尊敬する気の無い彼女に私達はイライラがつのってきた。

 

そんな言い争いを続ける私達を見て、見かねたように美鈴先輩が口をはさんできた。

 

美鈴「まあまあ、ストップストップ。映子ちゃんは反抗期なのかな。何でそんなにシスターに反発するの?」

 

 

すると紅さんはシスターを指差して吐き捨てた。

 

 

映子「けっ、あたしが知らないとでも思ってんのかよ。さっきから黙りこくってるのがいい証拠だよ」

 

その言葉に振り返るとシスターは下を向き目線を合わそうとしていなかった。

 

古谷「じゃあさ、あなたはどうしてここに帰ってきたの? そんなに嫌ならここに帰ることもないんじゃない?」

 

古谷先輩が話を逸そうとそう尋ねた。

 

映子「んあ? あたしは小遣いせびりに来ただけだよ。こんなところ他に用はねえよ」

 

 

 

彼女、紅さんの態度にイライラが募ってきた私達だったが、何か既視感を覚えた。

 

計(ねえ文、なんか変な感じしない?)

 

文(計さんもですか? 私も最近こんな会話をしたような…)

 

ひそひそと話し合っていた時だった。

 

 

 

 

 

 

???「失礼いたします」

 

 

スーツをピシッと着て三角のメガネを掛けた目つきの鋭い女の人が突然尋ねてきた。

 

 

シスター「あの、どちら様でしょうか?」

 

???「突然で申し訳ありませんが、私はこういう者です」

 

 

その人の差し出した名刺を見て、シスターは驚きの声をあげた。

 

シスター「ぜ、税務署の方ですか!?」

 

その声には私達も驚いた。

 

 

中でも、紅さんも目の色が変わった。

 

映子「ちょっと待て! 税務署!? ってことは…困る!! めちゃめちゃ困る!! あたしの小遣いどうなるんだよ」

 

 

しかし税務署の人も言った。

 

税務署員「申し訳ありません。しかし私も職務ですので…」

 

しかし、その顔には申し訳なさと言ったものは微塵も感じられず、いかにも事務的にマニュアルを読んでいるといった口調だった。

 

 

 

 

 

美鈴「ちょっ、ちょっとそれより税務署の人が何の用があるの?」

 

古谷「言っちゃ悪いけど、一番縁がなさそうなのに…」

 

先輩達のそれは私達言いたいことだった。はっきり言って貧乏であろうこの古い教会に問題があるとは到底思えない。

 

 

そんな時紅さんがある提案をしてきた。

 

映子「よ〜しこうしよう。あんたの探してるものは大体想像がつく。だからゲームをしよう。宝探しゲームだ。どっちが先に見つけるかで勝負しよう」

 

そう言って紅さんはペンライトを取り出した。

 

計「え?」

 

文「ま、まさか…」

 

紅さんの言葉に、私達はさっきの違和感の正体に気がついた。

 

 

映子「さあ! 闇の力でうちなる思いを解き放て!」

 

税務署員「ああああ!!」

 

 

そのペンライトの光を浴びた税務署の人は黒い光に包まれた。

 

次の瞬間、そこにいたのはカマキリのような姿のダムド魔人だった。

 

 

「ダームー」

 

 

美鈴「な、何よこれ!!」

 

古谷「か、怪物…!!」

 

 

突然目の前に出現した怪物に先輩達は大混乱していたが、私達も別の意味で混乱していた。

 

計「そ、そんな…」

 

文「あ、あなたが…」

 

 

出現したダムド魔人に私達は一番当たって欲しくない予想が当たったと感じた。

 

しかし、私達の戸惑いをよそに紅さんはペンライトをクルっと回したかと思うと、高々と掲げた。

 

映子「いくぜ、プリキュアソウル・インストール!!」

 

そう叫んでライトのスイッチらしきものを入れると、彼女の体は赤黒い光に包まれた。

 

 

 

その光が収まった時、そこにいたのは大きく赤のPの文字を胸元にあしらったようなデザインの黒いドレスを身にまとい、血のように真っ赤な髪をした私達がよく知っている「彼女」だった。

 

 

ポイント「真っ赤に染まった血の池地獄…」

 

計・文「「キュア・ポイント!!」」

 

 

ポイント「っておい、登場の名乗りを邪魔すんなよ。大体何であたしの名前を…。ってまさか」

 

 

 

 

 

 

計「そのまさかよ」

 

文「先輩達すいませんが、シスターや子供達を安全な場所に…」

 

避難させてくださいと文が言おうとしたとき、先輩達はシスターや私達を放って逃げようとしていた。

 

 

文「えっ先輩!?」

 

計「どこへ行くんですか!?」

 

 

すると先輩達は当たり前のことを聞くなと言わんばかりに叫んだ。

 

古谷「目の前で怪物が出たのよ。逃げるに決まってんでしょ!! 人のことなんか構ってらんないわ!!」

 

美鈴「大体ここに来たのだって内申点稼ぎよ。そんなことのために命まで賭ける理由なんか無いんだから!!」

 

そう言って先輩達は転がるように逃げていった。

 

 

 

計「え…」

 

文「そんな…」

 

先輩達のあんまりな言葉に私達は呆然としていた。

 

先輩達は何を置いてもみんなのことを考えてくれる人達だと思っていただけにショックだった。

 

 

 

 

 

 

「ダームー」

 

子供達「わああああ!!」

 

呆然としていた私達はカマキリ魔人の雄叫びと子供達の悲鳴に我に返った。

 

計「いけない!!」

 

見ると、カマキリ魔人は建物の壁を切り裂いたり、家具をひっくり返してはいたけれど人を傷つけている様子は無かった。

 

それに関しては少しほっとした。

 

 

 

ポイント「おっ正気に返ったか。察するにお前らがアイツらなんだろ。今日はちゃんと遊べるみたいだな」

 

 

文「遊びじゃありません!!」

 

計「これ以上はやらせない!!」

 

 

 

 

計・文「「プリキュアソウル・インストール!!」」

 

左胸、心臓の位置に手を当ててそう叫ぶと、私達の体は光に包まれた。

 

次の瞬間、私達の体はドレスのようなコスチュームに包まれていた。

 

 

私は右腕でX字に空を切ると力強くこう叫んだ。

 

エグゼ「実りをもたらす緑の大地 キュア・エグゼ!!」

 

 

ワードもまた右腕でWの文字を空に書くと冷静かつ凛とした声でこう名乗った。

 

ワード「命を育む青き海原 キュア・ワード!!」

 

 

「「闇をはらい未来を紡ぐ光の使者 サイバー…」」

 

 

 

ポイント「おらぁ!!」

 

名乗りを上げようとした次の瞬間、私達はお腹に拳や蹴りを受けて大きく吹き飛ばされた。

 

 

エグゼ「がふっ」

 

ワード「げっふ」

 

突然の奇襲に私達はかなりのダメージを受けた。

 

 

 

 

 

ポイント「これでおあいこだな。それより大丈夫か? こないだみたいにやる気なしってのはごめんだぜ」

 

ポイントの口調はどこか遊び相手を気遣うようだったが、彼女の本音を理解している私達には逆効果だった。

 

 

 

エグゼ「あなたに心配される謂れは無いわ!! 私達は決めたの!! どんなに傷ついてもいい、大切なものを守りたい!!」

 

ワード「あなたにどのような事情があるのかは知りません。ですが、これ以上悲しむ人を増やしません!!」

 

私達は決意したことを毅然とした態度で言い放った。

 

 

 

ポイント「ふーん、まああたしとしちゃゲームが楽しめりゃそれでいいけど」

 

尤もポイントはそんな私達の言葉などまるで興味が無いと言わんばかりな態度だったが。

 

 

 

シスター「あ、あなた達は一体…」

 

次々に目の前で起きる非現実的なことにシスターは混乱しているようだった。

 

 

エグゼ「シスター、子供達を連れて逃げてください!! 早く!!」

 

 

私はそう叫んだのだが、

 

シスター「だ、駄目よ。私はここを離れないわ。何があったって絶対に!!」

 

シスターは教会に飾られているマリア様の像の前から頑として逃げようとしなかった。

 

 

 

 

エグゼ「シスター?」

 

私はそんなシスターの態度に何か引っかかるものを覚えたが、今はそれどころではないと気を取り直した。

 

エグゼ「仕方ない。ワード、ポイントとカマキリ魔人は私が引き受けるから子供達を避難させて!!」

 

 

ワード「わかりました。すぐに戻ります」

 

そう言うとワードは子供達の避難を行いはじめた。

 

 

エグゼ「はぁぁぁ!!」

 

「ダームー」

 

私は、家具やその他を片っ端から切り刻みながらシスターに向けて歩き出したカマキリ魔人に攻撃を仕掛けた。

 

するとカマキリ魔人は両手の巨大なカマをビュンビュンと振り回して攻撃してきた。

 

私はそれをかわしながら隙を見て懐に飛び込んで攻撃を続けていた。

 

 

しかし、カマキリ魔人が私と戦い動きを封じられている間に、ポイントはゆっくりとシスターに向かって歩いていった。

 

ポイント「へっ、そんな態度してりゃバレバレだな。宝探しゲームはあたしの勝ちだな」

 

シスター「や、止めなさい映子ちゃん。駄目、駄目よ!!」

 

シスターは必死にポイントを追い払おうとしていたが、ポイントの歩みは止まらなかった。

 

 

 

ワード「ポイント、シスターに手出しはさせません!!」

 

今にもポイントの手がシスターにかかろうとしたとき、ワードが子供達の避難を終えて戻ってきた。

 

ワード「危険です!! あなたも早く逃げてください!!」

 

 

そう叫んでワードはポイントの動きを止めるように組み付いた。

 

しかし、シスターはワードの叫びにも関わらず一向に逃げようとしなかった。

 

 

 

 

 

ポイント「チッ、もうちょっとだったのに。邪魔しやがって」

 

ワードの妨害にポイントは悔しそうな言葉を発した。

 

 

ワード「あなたという人は…。この人はあなたにとって大切な人じゃないのですか!?」

 

そんなポイントにワードは怒りながら尋ねたが

 

ポイント「ちがうな。そいつにとってあたし達みたいな子供が必要なだけなんだよ。それがわかってるから、こっちだって遠慮しないだけだ」

 

そんなポイントの言葉に私は何か引っかかるものがあった。

 

 

 

エグゼ「さっきからなんなの? シスターのことで何か知ってるの?」

 

そうやって一瞬気をとられたのがまずかった。

 

「ダームー!!」

 

カマキリ魔人が私をカマで振り払ってシスターの方へと向かっていった。

 

 

エグゼ「キャア!!」

 

振り払われた私はなんとか体勢を立て直すも、すでに遅かった。

 

ワードはポイントとの戦いで釘付けになっておりカマキリ魔人の行動を止めるものは何も無かった。

 

 

エグゼ「あ、危ない!!」

 

私は叫びながら必死に飛び込んだが、助けに入るより一瞬早くカマがシスターに向けて振り下ろされた。

 

シスター「ああー!!」

 

シスターの体から血飛沫が飛び散り、シスターは糸の切れた操り人形のように倒れた。

 

 

エグゼ・ワード「「シスター!!」」

 

 

私はシスターの元に駆け寄ると、シスターはまだかろうじてだが生きていた。どうやら寸でのところで急所は外れたらしい。

 

エグゼ「シスターしっかりしてください!!」

 

私は必死にシスターを励ました。

 

一方カマキリ魔人は、マリア様の像に向けてカマを振り下ろそうとしていた。

 

 

 

 

ポイント「ちっ冗談じゃねえ!! これじゃこのゲーム負けちまうじゃねえか!!」

 

そんな傷ついたシスターやカマキリ魔人を見てポイントが焦ったようにそう言った。

 

ワード「いつもいつもゲームゲームと、一体何をしているか自覚が無いんですか!!」

 

当然損なポイントにワードは反発した。

 

ポイント「けっ、誰に向かって言ってんだか」

 

 

 

エグゼ「早く戦いを終わらせてシスターを病院に」

 

目の前の存在が元は人間であることを知っていた私は一瞬躊躇したが、守りたいもののために覚悟を決めた。

 

私はカマキリ魔人に対して必殺技を放たんと両手に気合いを込めた。

 

 

エグゼ「ごめんなさい!! プリキュア・エクストリームスラッシャー!!」

 

両腕を戸板をこじ開けるように開くと、エックスの形のカマイタチが発生し、カマキリ魔人をずたずたに切り裂いた。

 

 

「ダームー」

 

 

切り裂かれた怪物は耳に残る悲痛な叫びとともにそのまま砂みたいに消えていった。

 

尤も後ろのマリア像にも衝撃で多少ひびらしきものが入ったが。

 

 

 

一方、ワードとポイントの戦いも一応の決着がつこうとしていた。

 

ワード「プリキュア・ウォーターバースト!!」

 

ポイント「プリキュア・プレッシャーボール!!」

 

赤黒い光の玉と水の大砲の打ち合いは、爆発とともに互いの攻撃が相殺される形で、双方力を使い切り一応引き分けに終わった。

 

 

すると、その爆発の振動でマリア像が倒れ、入っていたひびの所為もありバラバラに割れてしまった。

 

そして、その中から出てきたものに私は目を疑った。

 

 

 

 

 

 

エグゼ「えっ、な、なにこれ? お、お金!?」

 

そう、マリア像の中からはいくつもの札束が転がり出てきた。それだけではなくいくつかの宝石や、金のインゴットまで混じっていた。

 

ワード「な、なんでそんな物が…!?」

 

私達が戸惑っていると、

 

ポイント「おっ、小遣いはっけーん!!」

 

驚いた様子も特になく、いくつかの札束を拾い上げた。

 

エグゼ「あ、あなたこんなものがあるって知ってたの? これは一体なんなの?」

 

私はわき上がる疑問に我慢できずポイントに尋ねた。

 

すると

 

 

 

 

 

ポイント「これはな、そこのババアが不正に貯めた金だ。孤児院には色々補助金が出るが、ここにいる子供の数を水増しして、請求できる額をつり上げてそれを溜め込んでるんだよ」(作者注:あくまでこの作品世界でのシステムの話です。現実にはどういうものかよく知りません)

 

エグゼ「なっ!? そんな…」

 

ポイント「見りゃわかんだろ。こんなボロ屋でどうやったらこんな金が手に入る。結局そいつにとっちゃ、引き取った孤児なんて金づるぐらいにしか見えてないんだよ」

 

 

 

 

エグゼ「そ、そんなことない!! これはきっと子供達のために!!」

 

ワード「そうです!! 必要悪として心を痛めながら…」

 

 

ポイントが吐き捨てるような言葉に、私達は目の前の現実を否定するように叫んだ。

 

すると息絶え絶えになったシスターが呟くように言った。

 

 

 

 

シスター「映子ちゃんの言う通りよ…。私はただ…お金が欲しかった…。ずっと貧乏で…何も出来なくて…。一人でおいしいものを食べて…ホストクラブにも行った…。自分が…よければ…それで良かった…。結局…それが…人間…。あなた達も…いつか…わかるわ…、綺麗事…だけで…生きて…いけない…」

 

そういうとシスターは静かに目をつぶった。

 

ポイント「そうさ、結局人間なんて自分の欲のためにしか生きていけないんだよ。だからあたしは誰よりも人間らしく生きていく。これまでもこれからもな」

 

 

そう言い残すといくつかの札束を手に、ポイントは赤黒い光の玉になって飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

残された私達の中では、逃げ出した先輩達の言葉や目の前に転がるお金や宝石がぐるぐると回っていた。

 

 

エグゼ「内申点…お金…欲…、守らなきゃならない大切なものなんて、もっと他にあるでしょう!!!」

 

 

ボロボロになった教会の中、その叫びは自分でもわかるぐらい虚しく響いた。

 

 

To be continued…

 

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