日本 某県 歳場市 市立歳場中学
何も無い平穏な世界、今日もいつも通りの一日が始まろうとしている中、ある女生徒の登校に生徒達がざわめいた。
女生徒A「あ、来たわよあの人」
女生徒B「よく臆面も無く学校に来れますね」
女生徒C「当然じゃない、恥知らずの代表みたいな人なんだから」
周りがひそひそと、それでいてその人物に聞こえるように悪口を言っていた。
「お、おはようございます」
その人物はおずおずと挨拶をしたが、それに対する返事は冷たい目、軽蔑し切った目、もしくは無視であった。
私の名前は緑野 計。
歳場中学校の二年生で、この前まで生徒会長をしていた。
先日の件で、私達は生徒会長でありながら周りを見捨てて自分たちだけ逃げた卑怯者ということになってしまった。
おまけに、生徒会をすっぽかしたことや子供会の引率で先生の息子さんを大けがさせたこと、その他成績が落ちたり生徒会の仕事で失敗したこと等々により生徒会長をリコールされた。
先週行われた再選挙の演説で必死にお詫びを入れたものの、本当のことが言えないため、どうしても言い訳がましくなってしまい、結果は文共々惨敗。
目出たく私達はただの一生徒となった。(ちなみに後任は会計の山崎君と書記の河合さんである)
いやただのではない。
おそらく、いや間違いなく私はこの学校で完全に孤立している。挨拶一つとってもさっきの有様であることから大体想像はつくと思われるだろう。
「計さん、おはようございます」
するとそんな私に唯一力なく挨拶をしてきたのは
計「ああ、文おはよう」
私の親友にして良きパートナー。「元」副会長の青山 文である。
日本舞踊の家元の一人娘であり、才能は弟子達の中でも抜きん出ており、子供の頃からの努力を重ね、跡取りの筆頭候補に名を連ねていたのだが、ここのところの精神的にキツいことの連続で稽古に碌に身が入らず、当分稽古には参加しなくてよい、と言われてしまっている。
幼い頃からの努力が数週間で無に帰してしまい、文はここしばらくかなり落ち込んでいる。
そして何処で聞いたかそれも学校中に広まっていた。
男子生徒A「全く、稽古で忙しいなんていつも言ってたけど実際のところ怪しいもんだな」
男子生徒B「そうそう。成績も下がる一方だし、ただ遊んでただけなんじゃねえの」
男子生徒C「なんにせよ、もう当てに出来ねえよな。テスト対策は自分たちでやろうぜ」
文「やっぱりこの状況はキツいですね」
周りから聞こえてくる陰口に文は俯きながら呟いた。
文もそうだが、精神的にキツいのは私もだった。
昼休み
私と文は、校舎の外れにある汚いトイレの近くで細々と食事をしていた。
どこに行っても白い目で見られ、わざわざ聞こえるように言われる陰口。まさに針のむしろであるため、教室にもおれず、食堂にはいけず、結果誰も近寄らないようなところにしか私達の居場所は無かった。
文「私達、何のために戦っているんでしょう…」
食事をしながら文がため息とともにポツリと呟いた。
それは私も同感だった。
フレアさんから新しい命とともにプリキュアの力をもらった時には、これでもっと多くの人達の力になれると思ったものだ。
この力は、弱いもの、戦えない人を守るためのものだと思っていた。
しかし現実には、命がけで戦ったにも関わらず守りきることは碌に出来ず、悪だと思って倒した怪物だって元は人間だった。
おまけに、その怪物になる原因も元を正せば自分たちだったこともある。
さらには守ろうとした人達が碌でもない人だったこともあり、自分たち自身が守らないといけなかった人を傷つけたこともあった。
挙げ句の果てが、そこまでして守ってきたはずの人達に拒絶され、自分達の立場や居場所までなくなる始末である。
正直、一体こんなことをして何になるのかと私も最近疑問に思い始めていた。
でも、私達が戦いを投げる訳にはいかない。
次の瞬間にも彼女、キュア・ポイントが次のゲームを始めるかもしれない。
そうなれば、また多くの人が傷つき悲しい思いをしてしまうことになる。
それを止められるのは私達しかいないのだから。
???
全てが真っ暗な闇に包まれた、見渡す限り闇だけの場所。
広さや上下の感覚すらつかめない不思議な場所。
そこに映子はいた。
映子「おい、ダムド。いるんだろ、ちょっと顔見せろ」
すると闇の中から、悪魔を思わせるような醜悪な外見の男性が現れた。
その存在はふんぞり返るようにして言った。
ダムド「なんだ、貴様から俺を呼び出すとはな。ずいぶん偉くなったものだ」
映子「けっ、てめえにこうして力が戻ってきたのは誰のおかげだ。ありがとうございますぐらい言ったらどうだ」
ダムド「でかい口は相変わらずだな。それで何の用だ?」
映子「こないだ、作った覚えの無いダムド魔人が現れた。どういうことだ?」
映子の問いかけにダムドは不敵に笑った。
ダムド「貴様のおかげで、大量のダークエナジーが集まり傷も癒えてきた。力が戻ったことの確認を兼ねて俺が作ったのだ。今後も何体かダムド魔人を作り、より多くのエナジーを収集するつもりだ」
その言葉に映子は尋ねた。
映子「ってことは何か、あたしはもうお役御免ってか」
ダムド「ふっ、案ずるな。確かにもはや貴様は必ずしも必要という訳ではないが、存在したところで特に邪魔にはならん。ダークエナジーを発生させるならば、今まで通り好きにしていればいい」
映子「そうかい、じゃあ今まで通りやりたいようにさせてもらうぜ」
映子「と、言う会話をしてすでに一週間ほど経つ訳だが…」
映子は公園で菓子パンを齧りながら呟いた。
映子「大体やりたいことはやり尽くしちゃったんだよな〜」
映子「最近はアイツらもやる気ないみたいだし、面白そうなゲームは大体やったし、な〜んかプリキュアもだんだん飽きてきちゃったんだよな〜」
映子はそう呟くとともに大きくため息をついた。
映子「レーシングゲームに、クラッシュゲーム、格ゲーにハンティングゲーム。推理アドベンチャーに宝探しゲーム。なんやかやでほぼ一通りやったしな。ホントに次は何しよう。な〜んか面白そうなことでもないかな〜」
退屈そうに指折り数えながら二個目のパンの袋に手を伸ばしたときだった。
映子「ん? 誰だお前」
映子は自分のことを、指をくわえてじーっと見つめている五歳ぐらいの少女に気がついた。
映子「気になるから、用がないならあっち行け」
しっしっと追い払うような動作をしてパンを口にしようとすると
「あっあっ」
映子「なんだよ、これか?」
映子は少女が自分のパンを見ているのに気がついた。
そしてお腹が鳴る音が聞こえ、少女は恥ずかしそうにお腹を押さえた。
映子「ほれ、やるよ」
仕方ないというように、映子は少女にパンを差し出した。
するとパンを受け取った少女は、息つく暇もなくパンに貪りついた。
映子「ったく礼もなしかよ。のどに詰めるなよ」
すると案の定少女は苦しそうに胸を叩いた。
「むぐぐ」
映子「あーほら言わんこっちゃねえ、ほら水」
そう言ってペットボトルのジュースを差し出した。
そんなこんなでパンを食べ終わると少女は笑顔になり、初めてまともにしゃべった。
「お姉ちゃんありがとう」
そんな少女を見て映子はなんともなしに尋ねた。
映子「ったくお前、飯ぐらい食ってないのかよ」
「…昨日から何も食べてない」
俯きながら少女は悲しそうに呟いた。
映子「何? 家は? 親はどうした?」
「お父さんは帰ってこない。お母さんは毎日違う男の人を連れてくる。だからしばらく外に行ってろって…」
映子「まさか、それで昨日からか?」
少女は小さく頷くとボロボロと涙を涙を流し始めた。
「お母さんはすぐ私のことを怒る、すぐに叩く。お父さんが帰ってこないのはわたしのせいだって!! お父さんもお母さんも嫌い、大っ嫌い!!」
映子「あーもう、ほら泣くな。なっ」
目の前でいきなり泣き叫び出した少女に映子は戸惑っていた。
映子(ったく面倒なもん拾っちゃったな。捨ててもついてきそうだし…、そうだ!!)
映子は自分の住んでいた教会が倒壊して以来(原因が彼女自身にあることは都合良く意識から放り出している)書類上入所している別の施設のことを思い出した。
もっとも彼女はほとんど寄り付いていないのだが…。
映子(こいつ多分…。となるとあそこに連れてくのが無難か…。そうすりゃ後は何とかなるだろ)
映子「おい、いいとこ連れてってやるから。ほら元気出せ」
「ほんと?」
その言葉に少女は泣き止んだ。
映子「ああホントだ。そういやお前、名前は?」
「ゆか。お姉ちゃんは?」
映子「あたしは、紅 映子だ」
映子はゆかの頭をなでながら笑顔でそう名乗った。
歳場市内 銭湯
映子「ほら、頭流すぞ。目ぇつむれ」
そう言って映子はゆかの頭のシャンプーを流した。
頭からお湯を掛けられたゆかは、ぶるぶるっと身震いをした。
あの後施設に向かって歩き始めると、ゆかが妙に臭うことに気がついた。
事情を聞いてみると、一ヶ月近く入浴していない上、着た切り雀だとのことだったため、着替えを購入の後銭湯に向かったのだ。
映子(こいつ、さんざんな目に遭ってんだな…)
体を洗っている時に気がついたが、ゆかの小さな体は生傷だらけでありタバコの焦げ跡もいくつかついていた。
ゆか「お水があったかい。ここに入っていいの?」
ゆかは興奮気味に浴槽を指差した。
映子「こらこら、そーっと入れよ」
しかし映子の注意にも関わらず、ゆかはザッブーンと盛大に音を立てて湯船に飛び来んだ。
入浴後、映子はゆかの体を拭いてやり、買ってきた下着や服に着替えさせ、ジュースを飲ませていた。
ゆかはゴクゴクと飲み干した後、にぱっと笑った。
ゆか「おいしい。お姉ちゃんありがとう」
映子「ハイハイ」
映子(まぁ、悪くはないな)
そんなゆかの笑顔を見て映子はそう思った。
映子は気付いていなかった。
自分がかつて見たこと無いほどの暖かい笑顔を浮かべていることに。
学校が終わると、私と文は文字通り逃げるように学校から飛び出していった。
学校から少し離れるとようやく一息つき、自嘲気味に笑った。
文「こんな思いしてまで、なんで学校に通ってるんでしょう。行く必要も無いですよね」
それは私も同感だったが、一つだけ理由が思い当たった。
計「仕方ないよ、また彼女が何かしたらすぐ駆けつけられるようにしないと」
文「そうですね。キュア・ポイント、彼女だけは私達がなんとしても止めないと…」
計「うん、戦えるのは私達しか居ないんだから。正義のためにも絶対に!!」
私達は改めてそう誓った。
この時、これがこじつけの理由に過ぎないと気付くべきだった。
彼女は不登校であり学校に必ず居る訳ではない。
そもそも何かあれば悪寒が走ることですぐにわかるし、町中であれば家からでも変身して飛んでいけば一分もかからないからである。
それでも今の私達にとって、自分達だけがキュア・ポイントを止められること。
彼女の暴挙から人々を守れること。
それだけが唯一の心の支えだった。
「ゆか! どこにいるの、出てきなさい!!」
そんな時、誰かを探している女の人の声が聞こえてきた。
気になった私達は、声の聞こえてきた方へと向かった。
「一体何処にいった。ったく」
声のした場所では、愚痴りながら頭を掻いている女性が居た。
計「あの、どうかしたんですか?」
文「誰かお探しのようですが?」
「え? ああ、娘がね、ちょっと目を離した隙に居なくなっちゃったのよ」
計「え、迷子ですか?」
文「何かあったら大変です。私達もお手伝いします。お子さんのお名前は? どんな子ですか」
「そうかい、ありがとう。宮田 ゆかって言ってね。えーっとこの子」
そう言いながら、宮田さんは娘さんのスマホの写真を見せてくださった。
計「わかりました。私達も探してみます」
そうして、写真を転送してもらった私達はゆかちゃんを探し始めた。
通行人A「いや、見なかったよ」
通行人B「うーん、知らないなあ」
通行人C「悪いけれど、わたしは…」
しばらく探してみたけれど、誰も知らないようだった。
計「なんでだろう。そんな遠くには行ってないと思うけど」
文「まさか、考えたくはありませんが…、誘拐とか…」
宮田「そ、そんな…」
それを聞いて宮田さんは真っ青になっていた。
計「ちょっと、文!」
文「あっ、すみません」
私は文を軽く諌めると、近くを通りかかった人に同じように尋ねた。
計「あの、すみません。こんな子を見かけませんでしたでしょうか?」
通行人D「あれ、この子…」
計「知っておられるんですか!?」
通行人D「あ、うん。さっき君ぐらいの年の子とコンビニに居たよ。お菓子買ってもらってたみたいだけど」
文「それは、どちらですか?」
私達は教えてもらったコンビニへとすぐさま向かっていった。
歳場市内 某コンビニ
店員「ああ、この子ならさっき来たよ。お菓子買ってもらってあっちの方にいきましたけど」
店員さんに聞いてみると、希望のある答えだった。
文「それでどこに行ったかわかりますか?」
店員「さあ、そこまでは…。でもなんか楽しいところに連れて行ってもらえるみたいなこと言ってたけど。すごく嬉しそうだったよ」
計「そうですか、ありがとうございました」
私達は店員さんに教えられた方向へと走っていった。
計「まだ遠くには行ってないと思うけど」
文「しかし、一体誰が何の目的で何処に連れて行こうとしているんでしょう。まさかやっぱり…」
宮田「冗談じゃないわ!! そんなことになったら私の人生終りじゃない!!」
しばらく走っていると、子供と手をつないで歩いている人を見つけた。
その人を見て私達は目を見開いた。
計「紅さん!!」
文「なぜあなたがその子を!?」
私達の声に紅さんは振り返ると、おどけたように言った。
映子「これはこれは、『元』生徒会長様方。あたしはこの子と遊んでるだけだよ」
その言葉を聞いて、私達は一瞬寒気がした。
文「あなたという人は…そんな子供まで巻き込むつもりですか!!」
計「子供を誘拐してまで…絶対に許さない!!」
すると紅さんは訳が分からないというような表情をしてきた。
映子「はあ? 何言ってんのお前ら。誘拐? 誰が? 誰を?」
文「とぼけないでください! この方はいきなりお子さんが行方不明になって、心配でずっと探していたんですよ!!」
映子「何? おい、あれがお前の親か?」
紅さんは首だけで振り返り、自分の後ろに隠れている女の子に尋ねた。
ゆか「違う!! あんな人お母さんじゃない!!」
映子「と、言ってますけどね」
宮田「ゆか、何言ってるの? さあ帰るわよ」
宮田さんはそう呼びかけたが、ゆかちゃんは紅さんの服をしっかりと握ったまま、後ろから出てこようとしなかった。
映子「相当、嫌われてるようですな。おか〜さん」
文「あなたは…、そんな子供にいったい何を吹き込んだんですか!!」
そう文が怒鳴ると、紅さんはため息をつきながら答えた。
映子「お前らこそさぁ、ホントに事情理解してる? 悪いけど、ゆかをそっちには渡せないな。いくらなんでもな」
紅さんがそう宣言すると、地響きとともに巨大な犬を思わせるようなダムド魔人が現れた。
計「ダムド魔人!! やっぱりあなた!! 今日と言う今日は絶対に許さない!! 文、いくよ!!」
文「はい!! 宮田さん、ゆかちゃんは必ず助けてみせます!!」
そう宣言すると私達は、左胸に手を当てた。
映子「くっ、ダムドの奴。よりによってこんな時に。仕方ねえ。 ゆか、離れてろ」
そんな私達を見てゆかちゃんを遠ざけると、紅さんも取り出したペンライトをクルっと回して、高々と掲げた。
計・文・映子「「「プリキュアソウル・インストール!!」」」
その叫びとともに、私達は光に包まれて変身した。
私は右腕でX字に空を切ると力強く叫んだ。
エグゼ「実りをもたらす緑の大地 キュア・エグゼ!!」
ワードもまた右腕でWの文字を空に書くと冷静かつ凛とした声で名乗った。
ワード「命を育む青き海原 キュア・ワード!!」
そしてまた、大げさなポーズとともに彼女も名乗った。
ポイント「真っ赤に染まった血の池地獄 キュア・ポイント!!」
エグゼ・ワード「「やぁあああ!!」」
ポイント「うぉおおお!!」
「ダームー」
私達は雄叫びとともに戦い始めた。
エグゼ「あんな小さな子供を誘拐して、一体何をしようというの!!」
ポイント「テメェらこそ、一体ゆかをどうするつもりだ!!」
ワード「決まっています。お母さんのところに返すんです。何があったか知りませんが、小さな子供はお母さんと一緒に居るべきです」
ポイント「ふざけんな。そんなことしたらどうなるかわかってねえのか!!」
私達はポイントやダムド魔人にラッシュを仕掛け、犬魔人もまた牙を振りかざして攻撃を仕掛けてきた。
その間隙をぬって、ポイントは私達のラッシュを受けてはかわして攻撃してきた。
宮田「な、なんなのあの子達!? まあいいわ、今のうちに…」
そんな光景にしばらく呆然としていた宮田さんは、我に帰るとゆかちゃんの方へと向かっていった。
宮田「ゆか!! 帰るわよ、来なさい!!」
しかし、そんな言葉にもゆかちゃんは必死に首を横に振るばかりだった。
ゆか「嫌だ!! 私はお姉ちゃんと一緒に行く!!」
宮田「いい加減にしなさい!! アンタに何かあったら私が大変なのよ!!」
そう怒鳴りつけるように叫んだ宮田さんに
ポイント「いい加減にするのはテメエだ!! プリキュア・プレッシャーボール!!」
ポイントは片手で小さな赤黒い玉を作ってなげつけた。
その玉は宮田さんの足下で爆発し、もうもうとした煙が上がった。
ポイント「これが最後だ。ゆかを自由にしてやれ。次は本気で当てるぞ!!」
その光景を見て私達はさらに頭に血が上った。
ワード「あなたという人は…、こんなことをして何が楽しいんですか!!」
エグゼ「ゆかちゃんをお母さんから引き離してどうしようというの!!」
ポイント「ふざけるな!! 何も知らねえくせに、口出しするんじゃねえよ!!お前らこそ何をしようとしてるかわかってんのか!? あいつは、ゆかの母親はな!!」
ワード「黙りなさい!! あなたの話など聞く耳は持ちません!!」
エグゼ「もう私達は迷わない。あなたを倒す、絶対に!!」
そうして、私達はさらにポイントや犬魔人に対して攻撃を果敢に加えていった。
しかしやがて、犬魔人はこちらの状況などお構いなしに、暴れ始めた。
具体的には私達だけでなく、ポイントにまで攻撃をし始めたのだ。
ポイント「ちぃっ、こいつ!!」
エグゼ「あなたはダムド魔人を作れても、そのコントロールは出来ないんだったわよね」
ワード「自業自得という奴です。ポイント、ここで決着を付けます」
やはり、実質二対一と言う状況はいかんともしがたいらしく、戦いが長引くにつれて、だんだんとポイントは劣勢になっていくのがわかった。
そうして、ついに私達の攻撃をさばききれずにポイントのガードが完全に解けた。
ポイント「くっ!!」
エグゼ「今だ!!」
その一瞬を見逃さず私は大振りのパンチを叩き込んだ。
ポイント「ぐあぁぁあ!!」
クリーンヒットを受けたポイントは悲鳴とともに転がっていった。
ゆか「お姉ちゃん!!」
すると、そんなポイントを見てゆかちゃんが叫んで駆け寄ろうとしていた。
そんなゆかちゃんに犬魔人が爪を振りかざして襲いかかった。
ポイント「!!アブねえっ!」
ポイントはそう叫ぶと、必死に立ち上がるとゆかちゃんの前に飛び出して、犬魔人の攻撃を身代わりに受けた。
ポイント「ぎゃあああ!!」
犬魔人の爪に背中を切り裂かれたポイントは、傷口から血を吹き出して、倒れ臥した。
ゆか「お姉ちゃん!! 大丈夫!?」
ポイント「ばか…くるな…」
倒れ臥したポイントは、必死に踠きながらそう呟くように言っていた。
しかし私達は完全に頭に血が上っており、ポイントの言葉はおろか、周りの状況がほとんど目に入っていなかった。
ワード「これで終りにします!!」
エグゼ「あなたのためにこれ以上誰も悲しませない!! 死なせない!!」
そう叫ぶとワードは両手首を合わせて腰の後ろにもっていき、力を込め始めた。
そして私もまた胸の前で両腕を交差させて力を込めた。
ワード「受けなさい。プリキュア・ウォーターバースト!!」
ワードは両手を上下に開いた形で前方に突き出し、掌から強烈な水を大砲のように犬魔人に向けて放出した。
「ダームー」
その水の大砲の直撃を受けた犬魔人は悲鳴とともに灰になっていった。
さらに私も、大ダメージを受けてボロボロになっているポイントに対して、エックスの形のカマイタチが発射した。
エグゼ「プリキュア・エクストリームスラッシャー!!」
ポイント「!! くそ…がぁっ!」
ポイントは私の放った必殺技に対してそう叫ぶと、両手を広げて立ち上がり、何かを庇うような体勢になり、私の必殺技の直撃を受けた。
ポイント「がっ…はっ!!」
苦しそうに血を吐くと、そのまま糸の切れた操り人形のように変身解除されながら彼女は倒れた。
するとその倒れた彼女の影から、ゆかちゃんが見えた。
ゆか「お姉ちゃん? お姉ちゃんしっかり!!」
ゆかちゃんは、必死になって倒れた紅さんを揺すっていた。
映子「大丈夫…か…。お前と居た時間…楽しかった…ぜ…。お前は…死ぬな…よ…」
紅さんは息絶え絶えになりながらゆかちゃんの頭をなでながらそう呟いた。
そして、そのままゆかちゃんの頭から紅さんの手が力なく滑り落ちた。
ゆか「お姉ちゃん? お姉ちゃん!? うわーん!! お姉ちゃ〜ん!!」
そんな紅さんにゆかちゃんは泣きすがっていたが、やがて紅さんの体は少しずつ灰になって消えていった。
宮田「ゆか!!」
宮田さんは泣き叫ぶゆかちゃんに駆け寄ると抱きかかえた。
宮田「さあ、帰りましょう」
宮田「ありがとうございました」
宮田さんはゆかちゃんを抱きかかえながら私達にお礼を言った。
ワード「いえ、大したことは…」
エグゼ「ゆかちゃん、お母さんと仲良くね」
私達はそう優しく告げると光の玉になって飛び立っていった。
サイバープリキュアを見送ると抱きかかえられながらも、口を押さえられていたゆかの耳に低い声が響いた。
宮田「ゆか、あんた、余計なことしゃべったんじゃないでしょうね」
翌日 緑野家
計「おはよう、お父さん」
計父「うん、おはよう」
市会議員をしている父とは、私が生徒会長をリコールされて以来少しギクシャクしている。
しかし、今日の私は気分が良かった。
彼女には悪いが、キュア・ポイントをようやく倒すことが出来た。
これで、もうあんな痛ましい事件は起きない。
そう思ってテレビをつけると、朝のニュースをやっていた。
ニースキャスター「次は大変痛ましい事件についてです。昨夜十一時頃、歳場市内で五歳になる少女が母親から暴行を受けて死亡しました。近隣の住民の通報により警察が駆けつけたところ、すでに心肺停止状態となっており、病院に緊急搬送されたものの三時間後死亡が確認されました。なくなったのは宮田ゆかちゃん五歳。警察は母親の宮田真紀子容疑者を殺人の容疑で逮捕するとともに、詳しい死亡の経緯を…」
計父「全く痛ましい事件だ。なんとかしないとな。計、お前もこういうことが起きないように…、どうした?」
ニュースを聞いた、私の耳には父の言葉などまるで聞こえておらず、全身を抱きしめるようにしてガクガクと震えていた。
計「なんで…だって…私は…正しいことを…ポイントが…違う…私が…」
ポイントはあの子をどうしようとしていた?
それらしいことは言っていた?
私が話を聞かなかったから?
ポイントのやることは悪だと自分勝手に決めつけていた?
私は正しいことをしていると信じていた?
誰にも認めてもらえない人間が?
何も出来なかった人間が?
いったい何の権利があって?
私の正義は…何…?
計「う、うわぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!!」
To be continued…