いつの間にか10年も経ていた。あれから、自分の能力をガイモンに協力して磨き、ともに海賊を追っ払ってきた。夜泣きすれば慰めてくれたり、世界の話を教えてくれもした。本当に頭が上がらない。
え、誰だって?俺はカラ。話し方もガイモンと話しているうちにすっかり変わった。ガイモン曰くあの話し方は目立つらしい。魚を釣ることもできるし能力を使って闘えるようにもなった。
今、俺が何をしているかというと、コウモリパンダを追っかけている。飛ぶのが下手くそなくせに何をテンパったのか、ふらふらと飛んでいくのを捕まえるのは大変だ。
そもそもは今日の昼御飯に果物を採っていたとき。コウモリパンダも果物を食べたがっていたから、採ってあげたんだ。それがコウモリパンダのプライドに触れたらしい。よたよたと飛び上がって果物に噛みついた。悲しいかな、それはまだ熟れていない果物でとてつもなく不味かったよう。しかめっ面をさらにくしゃくしゃにして飛んでいくのを危ないから追いかけている訳だ。
というか、なにやらおっちょこちょいで警戒心の無いここの動物達は見ててとても危なっかしい。追いかけて捕まえたりするのに走り回ったりジャンプしたり…。最初の時は追い付くのにもヘトヘトだったけど、今じゃ余裕です。
「ああ、もう!仕方ない。
コウモリパンダに向かって宝石を飛ばす。もちろん怪我をしないように調節して。自分は宝石や鉄、その他もろもろ、地から採れるものは自由に動かせる。けれども一番相性がいいのが宝石だ。
「ぐぇ!」
鳴き声を1つ挙げるとふらふらと降りてきたのを捕まえる。やり過ぎたかな…。
「だ、大丈夫?海賊に当てるほどは強くしなかったから大丈夫だと思うんだけど。」
不満そうな目付きでにらまれるので慌てて謝り倒す。しまった。美味しい果物を3つ採ってくるのを約束してしまった。
「ふぅ、じゃあガイモンのとこに戻ろうか。」
ドーン、ドン、ドン。
銃声!海賊が来たんだ!急いで戻らないと。
「コウモリパンダはここにいて。じゃあね!」
海賊が来たならコウモリパンダを連れていくわけにはいかない。急がないと!
走って行った先には、ガイモンと少年少女がいた。ガイモンとも普通に話しているってことは海賊じゃないのかな。
「ガイモン!」
「お?お前誰だ?」
話しかけてきたのは、麦わら帽子を被った男の子だった。赤いTシャツに短パン。にっかりと笑っている彼は酷く楽しそうだった。
「俺はカラ。この島の番人だよ。君たちは?」
「おう、そうか!俺はルフィ、海賊王になる男だ!」
か、海賊王!あのガイモンが話してくれた海賊王!?まじまじと見詰めるけれどもとてもそんな風には見えなかった。
「ほら、彼が困っているじゃないの。私はナミ。この島に来たのは食料が足りないから。何か食べれる物ってある?」
「う、うん。あっちの方に果物があるよ。」
「それより、このタワシのおっさんが宝箱が有るってさ!先にそっち探しに行こう!」
「宝箱…?」
目をぱちくりさせる。
「あー、カラ。言ってなかったが俺は元は海賊でな、その、なんというか…。」
ガイモンが海賊だったのは別に気づいていた。今までの行動を見てれば気づく。それよりも初めて会った人達を頼ったことが悲しかった。
「…そう。」
気まずげに顔を反らし黙る。
「なあ、なあ!こっちか?こっちに有るのか⁉」
ルフィの声が嫌な空気を吹っ飛ばしてくれてほっとする。今はそんな気分じゃなかったから。
いつの間にか集まっていた動物達を連れて高台の麓に行く。そういえば、ここは登ったことなかったな。
「ここにあんのか?」
「そうだ、俺の記憶が合ってれば上に5つあるはずだ。」
「ここから落ちてあなたは空の箱にはまったのね。」
「ああ。」
「え、ガイモンって元からそうじゃなかったの?」
呆れた顔でナミとガイモンに観られたのは納得いかない。
「あなた、私達より長くガイモンと一緒にいるのでしょう?何で知らないのよ。」
「てっきり、ガイモンも他の動物と同じようなものだと思ってたから…。」
「不思議に思いなさいよ!」
「そういやあ、聞かれたことなかったなあ。もしかして10年も俺って珍獣だと思われてきたのか…?」
ナミは勢いよく突っ込むし、ガイモンは元気なく黄昏ているのに首をかしげる。
「じゃあ、俺行くな!ゴムゴムのロケットー!」
腕がするすると伸びて頂上にくっついたのは驚いた。
「え、一体どういうこと?」
「あなたは知らなかったわね。ルフィはゴムゴムの実を食べた能力者よ。彼、ゴム人間なの。」
初めて自分以外の能力者を見た。あんな風に操れるだなんて…!
「すごい!」
「おーい、宝はあったかー!」
返事が無いのに不思議に思う。
「おーい、どうしたのー?ルフィー?」
「あったぞー!5つの宝箱。」
「やったー!すごいわね!」
宝箱あったんだ…。俺でも取りに行けたのに。
「持ってきてちょうだい!」
「いやだ。」
え。
「な、何で。酷いわよ、ねえそうよねガイモン!」
「どうして。」
「いや、もう…いいんだ…。」
頭を振って言うガイモンに驚く。
「あなたが20年も思ってきた宝なんでしょう?何でそんな事言うのよ!」
泣きながらガイモンが言う。ガイモンが泣くなんて見たことがなかった。
「無いんだろう…宝が…。」
「ああ、空っぽだ。」
「そんな…!ずっと心の頼りにしていたのに!?」
ずっと心の頼りにしていた…?
「分かっていたんだ…。でもそれでももしかしたらと、願っていたんだ。」
大粒の涙をボタボタとこぼして言う。
「宝の地図のところに行ってみればもう盗まれた後、そういうことはよくある。それだけ宝探しは海賊にとっての試練ってことさ。一生かかっても手に入らないっていう海賊はくさるほどいる。」
「20年も守り続けてきたのに…。」
守り続けてきた…?
「あはははは!」
いきなりルフィが笑いだしたのに驚く。
「まあ、よくやったよおっさん。くよくよすんなよ。20年で俺たちが来て良かったよ。後、30年遅かったら死んでたかもな!」
うっ、うっ、ううと泣くガイモンを俺は慰めることも出来ない。
「だからさ、次狙うのは1つしか無いだろう。俺たちと一緒におっさんとカラ、もう一回海賊やろうぜ!」
「おばえ…!びびやづだなあ!」
泣いて泣いてガイモンが落ち着くのを待った。その間に自分は考えていた。俺はガイモンに慰められ傷を癒してもらい生きる方法だって教えて貰ったのに、ガイモンを助けるはおろか、悩みを打ち明けられることもなかった。ルフィはいいやつだ。ガイモンを見て話しかけて、ガイモンを悲しませないように嘘まで着いた。そんな彼に俺はついてっていいのだろうか…?
「ガイモン…。」
「カラ…。行く前に少し話そうか。」
俺は海賊だった。すまねえ、お前は家族を生活を海賊に奪われただろう?言うに言えなくてな。そうだよ。さっき話した通りだ。俺は海賊で宝を探し求めてた。ルフィの言葉は本当に本当に嬉しくてなあ。だが、俺は行かねえ。この島の動物達に愛着があるし、何せここはお前の故郷だろう?俺が居なくなったらお前は一体どこに帰るんだ?…まあ、お前の本当の故郷はもっと立派なんだろうがなあ。お前は家族を殺した海賊になるのは嫌かもしれない。それなら、せめて、どこか町にでも連れてってもらえ。ここで一生を過ごすなんてよくねえ。次、外に出れる機会がいつあるかわかんねえだろう?
「違う…!そういうことじゃない!俺はガイモンに救われたのにガイモンの願いを叶えることすら出来なかった‼そんなにも長くこの島で生活していたことも知らなかった。俺は頼りない…?結局はルフィに助けてもらって俺は何もガイモンに恩を返せてやしない…!そんな俺がガイモンを置いてって、ルフィ達についていくなんてできやしない。」
「ばかもん!そりゃ当たり前だ!息子に自分の恥をさらせると思うのか⁉そりゃ、俺が海賊だったとかそういう負い目はあったが、頼りなかった訳じゃない。それに、恩だあー?そんな馬鹿らしいことで人生を棒にふるな!恩っていうなら、またいつか会いに来い!それが一番の親孝行だろう!」
「息子…?」
涙が止まらない。そういってくれたことが嬉しくて嬉しくて…!
「俺、ガイモンを養父さんって呼んでいいの?」
「当たり前だ!」
「わかった。俺、ルフィ達と一緒に行く。それで絶対また会いに来るよ…!」
「おう、それでこそ俺の息子だ!」
「で、ガイモン、カラ、一緒にワンピースを探しに行こう!」
果物を船に積んだルフィが誘う。
「すまねえ、俺はここに残る。この動物達はよく狙われるから俺が守んなきゃ行けないしな。」
「そっかー、残念だなぁ。カラは?」
「俺はルフィ達の仲間になりたい。ガイモン養父さんの代わりにワンピースを見つけたいんだ。」
「養父さんー!?」
「あなた、ガイモンの子供だったの!?」
「うん、育ててくれたんだ。」
「しししっ!おう!いいぞ、一緒に行こう!」
船に乗る前にガイモン養父さんに抱きつく。
「あのね、ガイモン養父さん。実はずっと前から海賊だって知ってたんだ。」
耳にささやくとガイモン養父さんは大きく目を開いた。
「じゃあ、行ってきます、ガイモン養父さん!」
少しづつ離れていくガイモン養父さんに手を大きく振る。ああ、友達でもあった動物達!ごめんねコウモリパンダ。またの機会に必ず約束を果たすよ。
こうして、カラは旅立ちました。まだルフィ達はカラの力も性格も知りません。頑張って仲良くしてね。