独裁者な幼馴染みを辱める話   作:まさきたま(サンキューカッス)

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独裁者は言いなりになる

「……え? 今何でもするって言った?」

 

 

 

 

 

 

 それはローランド中将の更迭が決まり、後釜としてルーデン司令が中将へと昇進してからひと月ほど後の話。

 

 栄転となったルーデン司令に代わる東北部の人事やら、ローランドへと懲罰内容やらと書類仕事に忙殺される魔の1か月を乗り切り、仕事が片付き始め総統府に雑談が飛び交う余裕が出て来た頃である。

 

 我が愛しきロレンシア総統閣下は、

 

「そう言えば停戦協定の件で、まだ君に勲功褒章を下していなかったな。あんな大功を挙げて沙汰が無いとなれば、軍全体の士気に関わる」

 

 と、思い出したかのようにのたまった。 

 

 確かに、先の僕の成果に対しては、数日間休暇を貰ったきりである。昇進や報酬等は出ていないし、受け取る余裕も無かった。

 

 まぁ、無いなら無いで別に構わないのだが。ロレンシアの傍に居られさえすれば、僕は無限に働き続けられるだろう。

 

 とは言え何か貰えると言うなら、話は別だ。遠慮するつもりも無い。思い出してきたぞ、確かロレンシアはエッチな期待をしていい感じのご褒美と言っていた。

 

 ともなれば。思い切って、ロレンシアと一緒にお風呂とか頼んでみても良いかもしれない。今回の功績を考えれば、ギリギリ許してくれそうだ。

 

 銃殺される可能性も否めないが、賭けてみる価値はある。

 

「嬉しいよロレンシア。僕は、一体何が貰えるんだい?」

「うむ。それに関してはもう決めているぞ」

 

 そんないやらしい妄想で鼻を膨らませていた僕へ、ロレンシアは悪戯っぽく囁く。残念ながらご褒美の内容は、もう決まっているらしい。

 

 でも。どんなモノが出て来ても、僕は大喜びするから問題はない。

 

 彼女の罵倒ですら、僕にとってはご褒美なのだ。ロレンシアから絶縁状でも叩きつけられない限り、僕は────

 

 

 

 

「私が君の命令を、何でも聞いてやろう」

 

 

 

 …………。

 

「ロ、ロレンシア?」

「あ、勘違いしないでくれ。あくまで私個人で出来る範囲だ。私の総統としての権力を、君に使わせるつもりはない」

「え、いや、その」

「逆に、私1人で出来ることなら何でも構わんよ。次の私の休暇は一日中、君の言いなりになってやろうじゃないか」

 

 

 ガタガタガタッ、と総統府で仕事している軍人達に動揺が走る。

 

 ……一緒にお風呂だとか催眠術だとか、そんなちゃちなもんじゃ断じてねぇ。ロレンシアは女の子で、僕は成人した男だぞ。ロレンシアはどうして警戒しないんだ? 

 

 何 が 起 こ っ て い る ! ?

 

「とととと年頃の女の子がそそそそんな何でもすすするなんて、いっちちちちちゃダダダダダ」

「動揺しすぎだろう。そも、君を外交官に任じる時、エッチなご褒美も考えてやると言った手前だ。性的な命令であっても多少は目をつぶるさ、君の良識の範囲で好きにしたまえよ」

 

 あふん。ウチの妹、男らしすぎる。

 

 そして僕を信頼しきってらっしゃる。試されている、僕の男としての色々が試されてる。

 

「君の功績から考えたら、これでも安い褒美だ。だが昇進なんかより、君はこういうご褒美の方が嬉しいだろう?」

「あ、ハイ、そりゃもう」

「では、そうだな。今週末の土曜でどうだ? 君もその日までに仕事を終わらせておけ」

「了解した。何があっても、終わらせる」

 

 流石はロレンシア。僕のことは、よく理解している様だ。

 

 良識と言う言葉を使い命令を牽制しつつ、それでいて僕が最も嬉しいだろうご褒美を用意してきた。妹に何もかも見透かされているこの感覚。やはりロレンシアは優秀だなぁ。

 

 

 ────殺気を感じる。

 

 部屋の隅々から、凄まじい殺気を感じる。ロレンシアに心酔している兵士諸兄から、射殺すような視線を感じる。

 

 チラチラと、ロレンシアの死角から僕に向いた銃口が目に入る。ロレンシアの背後に立つ兵に至っては、完全に僕に向けて銃を構えている。

 

 この場に居る皆が、僕にご褒美を辞退しろと重圧をかけてきていた。

 

 その視線を、僕は意図的に無視した。当たり前だ。誰が辞退なんかするもんか。撃ちたければ撃て、僕は不退転の覚悟を持ってここに居る。

 

 今週末になれば、ロレンシアは僕の言いなり。あの気高く美しく可愛らしいロレンシアが、何でも言うことをきいてくれる。

 

 ならば命を賭ける価値は、十二分っ!!

 

 今週末まで生き残れるか否か。既に僕の護衛の何人かも、僕に銃口をチラチラと見せてきている。

 

 僕の護衛ですら敵なのだ。果たして僕は、この先生きのこる事が出来るだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うむ、来たな。おはよう」

「ロレンシア、おはよう」

 

 

 幸いにして、その日は無事に訪れた。

 

 週末の土曜日。ロレンシアが僕のために用意してくれた、最高の一日。

 

 1秒と言う時間が惜しいのだ。僕は日が昇った朝一番に、彼女の私室を訪れていた。

 

 昔は朝が弱かったロレンシアも、最近はこの時間に目が覚める様になっている。仕事尽くしの毎日に、慣れきっている様だ。

 

「……さて、今日一日、私はフリーだ。仕事は全て片付けているし、総統としての地位も総統府に置いてきた。今の私は、ただの町娘のロレンシアだ。さぁ、何でも命令してくれて構わんぞ」

「こんなに可愛らしい町娘は、そうは居ないけどね。覚悟はいいかいロレンシア、遠慮無く命令させて貰うよ」

「うむ」

 

 私室へと入ると、彼女は既に私服に着替え終わっていた。白色のワンピースに、麦わら帽子を被った彼女は成る程、町娘のような出で立ちだ。

 

 軍服以外のロレンシアを見るのは、実に久し振り。だが、そう言えば子供の頃、彼女はこう言ったラフな服を好んでいたな。

 

 そんなバッチリと私服を決めている彼女に、大変申し訳ないのだが────

 

 

「ごめん、ロレンシア。その、着て欲しい服があってね……」

「ああ、成る程。そのくらいはどうって事は無い、何を着れば良いんだ?」

 

 この日僕は、彼女に着て貰わないといけない衣装を持ち込んできていた。久し振りのお洒落なのに、申し訳ないな。

 

 幸いにもロレンシアは、服を着替える事に抵抗は無さそうだった。許可を貰えたので、僕は部屋の外に置いていたカバンを部屋に引っ張ってくる。

 

 1メートル近くあろうか。僕は超巨大なキャリーバッグを、ガラガラとローラーを滑らせて部屋のベット近くへと置き、その口を開いた。

 

 開いたバックの口からは、ドバーッとカラフルな衣装が山のように流れ出てくる。最低でも10着は有るだろう。

 

 

「……凄い数だな。これ、全て着るのか?」

「ああ、全部着てくれないかロレンシア。主に、僕が明日生き残るため」

「いや、意味が分からんぞ」

 

 

 話は、こうである。

 

 僕のご褒美の話を聞き、ロレンシアファンは怒った。そりゃあもう、烈火の如く怒った。

 

 普段からロレンシアの兄と言う美味しすぎるポジションの上に、一日中彼女にエッチな命令を出せるとなっては、ついに彼等の堪忍袋も爆発四散したらしい。

 

 そしてご褒美を辞退しなかった事により、彼等の中で僕の処刑が確定したそうだ。

 

 その日の帰り道、僕は大量の兵士に待ち伏せにあい拉致監禁され、必死の命乞いを余儀なくされた。しかし何を言っても聞き入れて貰えず、下手をしなくとも殺されそうな状況だった僕は、苦し紛れにこう説得したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 僕は彼女の兄だ。ロレンシアに手を出したりはしない。安心してくれ、ロレンシアに誓って僕は嘘をつかないだろう。

 

 むしろ、僕を生かしておいた方が良いぞ。そうだ、僕が諸君の希望に応えようじゃないか。

 

 諸君、好きな衣装のロレンシアを想像したまえ。どうだ? どんな服装でも、ロレンシアは素晴らしいだろう?

 

 いいか、今週末までに僕にこれぞという衣装を持ってきてくれ。僕がご褒美を使ってロレンシアに衣装を着て貰い、その姿を撮影しよう。

 

 衣装を持ってきてくれた人に、その衣装のロレンシアグラビア写真を無料進呈だ。勿論、公序良俗に反するモノは破り捨てるけどね。ロレンシアの兄として、当然だ。

 

 さあどうする? 僕を殺すかい? それとも水着姿の、メイド服の、チアリード服のロレンシアは見たくないかい……?

 

 

 

 

 

 

 

 心のこもった僕の説得の結果、彼等とは無事に和解出来た。そして僕の私室に、溢れんばかりの女物の服が届けられる事となる。

 

 貝紐ビキニ、絆創膏、生クリームなどを持ち込んできた馬鹿共は後で軍法会議にかけるとして。持ち込まれたある程度健全な衣装は、彼等の希望通り撮影する事になった。

 

 

 

「しゃ、写真も撮るのか」

「ロレンシア、辛いと思うけどプロパガンダは大事なんだ。ハーゲン帝国の為にも、一肌脱いでくれないか」

「むう。結局仕事になってる気がするが、まぁ良いだろう」

 

 

 しゅるり、と彼女はワンピースを床に落とす。ロレンシアは面倒臭そうに、まずは給仕服を手に取った。

 

 衣ずれの音にドキマギとしながら僕は後ろを向いて、持ってきたカメラをテキパキと組み立て始める。

 

 絶世の美女と二人きり、僕は着慣れぬ給仕服のスカートの裾を伸ばしているロレンシアに向けて、静かにシャッターを切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「可愛かったよ、スッゴく可愛かったよロレンシア」

「……いや、君が満足しているならそれでいいか。君のご褒美だ」

 

 

 満喫した。

 

 

 

 兵士共の希望と欲望により、古今東西様々な衣装が集められた、豪華絢爛なロレンシアの個人撮影会。

 

 学生服ロレンシアにメイド服ロレンシア、水着ロレンシアに裸エプロンロレンシア。今まで見たことない刺激的な姿のロレンシアが、今日から僕の写真コレクションに加わるのだ。

 

 今日は……今日は、間違いなく今までの人生最良の日だ。

 

 

「生きてて良かった……、本当に生きてて良かった。僕、これからも頑張るよ」

「そ、そうか。それは良かったな」

「じゃ、ちょっと遅くなったけど出かけようかロレンシア。護衛は手配してるから」

「うむ」

 

 

 これで兵士達への義理も果たした、いよいよここからは僕の時間だ。

 

 僕はロレンシアを外へと誘う。せっかくの休日に、家に篭もりきりなんて勿体ない。安全の為、護衛も手配済みだ。

 

 本音も言うと二人きりが良かったのだが、ロレンシアから護衛を外すわけにはいかない。覚悟はしていたが、車内ではパルメとの旅行の時の様に、護衛が睨みをきかせる。

 

 しかもパルメの時とは違い、殺気をはらんだ視線だ。当社比5倍くらい、やりづらい。

 

「……ふふ」

 

 一方でロレンシアは、護衛されるのに慣れきっている様だ。隣で睨む護衛が居ても気にせず、ニコニコと機嫌よさげに彼女は僕の肩にもたれかかってきた。

 

 彼女の髪が、僕の首筋をくすぐる。振り向くと、彼女は猫のように目を細めながら、僕を見上げ微笑んだ。

 

 今日は、僕のご褒美の日というだけでは無い。滅多に無い、ロレンシアの休日でもある。

 

 彼女は聡明で理知的で、それでいて昔から甘えん坊だった。彼女の両親亡き今、彼女が甘えられる相手は僕だけなのだろう。

 

 僕で良ければ、いくらでも甘えてきて貰いたい。

 

 寄り添ったロレンシアの肩を、僕は優しく抱きこんだ。ロレンシアは、抵抗しない。

 

 ……触れあった肩から、彼女の柔らかい温もりを感じる。僕の右半身は、かつて無い幸福感に充ち満ちていた。

 

 ロレンシアの体躯を抱え込んだ腕に、微かに感じる吐息。ワンピースの上の、白絹の肌触り。

 

 ……左の席の護衛からは、凄まじい殺気を感じる。僕の左半身は、かつて無い危機にさらされている。

 

 脇腹に押し当てられた、鉄の感触。強く踏みつけられた、僕の左足。

 

 まさに、デッドオアアライブ。身体の左右で僕の生死が綺麗に分断されている。

 

 とはいえ、甘えてくるロレンシアを放置するという選択肢は無い。

 

 いかに護衛を刺激しないようにロレンシアを愛でるか。これは、僕と護衛のチキンレースだ。

 

 抱きすくめるまではセーフらしい。キスとかは多分アウトだろう。

 

 どこまでなら許してくれるかな。こっそり、身体を預けるロレンシアの胸まで手を────

 

 

 

 

「ステイ」

「あっはい」

 

 

 ロレンシアが見えない位置から、銃口をちらつかされた。胸はダメっぽい。

 

 

 

 

 

 

「ここ、か」

「うん。ロレンシアと遊ぶなら、ここしか無いと決めていた」

 

 がらんとした街道のその脇に、仲良く並んで佇む2軒の白い木造建築。約束通り、近所の人に手入れはして貰えているようだ。

 

 表札に僕とロレンシアの名字が刻まれた、今は誰も住む人の居ない空き家。すなわち、僕達が幼少期を過ごした実家である。

 

「────懐かしい」

「少し、古くなった印象だけどね。見てロレンシア、君が好んで座っていた木の切株だ」

「ああ。よくその切株の上で、並んで他愛ない話を繰り返していたな」

「今じゃ、二人で腰掛けるのは無理そうだけどね。僕もロレンシアも、大きくなった」

 

 2人で座った木の切り株は、今見ると小さかった。大人1人が座る分には申し分ないが、2人で腰掛けるのは不可能だろう。

 

 時の流れを実感する。

 

「……はぁ。まさか思い出のこの場所で、不埒な真似をすることになるとは思わなかったな」

「ちょ、ちょっと! 何もしないよ、いきなりどうしたのさ」

「君がスケベなのはよく知ってるよ。隠さなくても良いさ、本当にある程度まで覚悟はしてるんだ。私は何をしたら良いんだ?」

「だから、そう言うことはしないってば!」

 

 そんなことをしたら僕は蜂の巣になってしまう。

 

 それに、ロレンシアの夢を聞いた後に、ここでロレンシアを辱めるってどんな鬼畜だ僕は。

 

「じゃあ、私達は何をしにここへ?」

「……僕達がこの場所に来たら、やることは1つだろう」

「────ん?」

 

 子供の頃。

 

 朝早く起きた僕は、庭から大声でロレンシアを呼び、朝が弱い彼女は僕の声で慌てて起きてくる。

 

 そしていつも、この切株の上に二人並んで座って。今日は何所へ出かけようかと、どんな遊びをしようかと、笑いながら話し合ったのだ。

 

「遊ぼう、ロレンシア。昔みたいに、何もかも忘れて、ただ無邪気にさ」

「……それは、私の夢の。いや、それは凄く嬉しいけど。今日は、君のための一日で……」

「分からないかい、ロレンシア。この僕が、古今東西神羅万象ありとあらゆる事象を含めて最も嬉しい瞬間は」

 

 

 

 ────(ロレンシア)が、笑っている時間さ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局。僕はその日、ロレンシアと夜まで子供のように遊び続けた。

 

 しりとりをして、鬼ごっこをして、歌を歌って、本を読んで。

 

 そんな他愛ない子供じみた遊びを、懐かしんだ。

 

 少し照れくさそうな彼女は切り株に腰かけ、声をそろえて童謡を歌う。僕たちの、思い出の歌を。

 

 あの時はまだ、僕にも父さんがいて、母さんがいて。僕とロレンシアは親を庭へと集めて、一緒に切り株の上に立ち、童謡を合唱したんだ。

 

 子供二人が開催した、小さな音楽祭。僕や彼女の両親は、ニコニコと微笑みながら稚拙な歌に拍手を送った。

 

 その時に歌った、僕が大好きだった童謡である。

 

 

 

 

 

 

 歌い終わる頃には、日が傾き始めていた。空は赤く染まり、道端に人気が少なくなる。これ以上ここに居たら、総統府へ戻るのが深夜を過ぎてしまうだろう。

 

 そろそろ、童心に返る時間は終わりのようだ。

 

「頑張ろうね、ロレンシア」

「そうだな」

「また、ここに戻ってこよう。今度は二人で、ずっと一緒に」

「……ああ。約束しよう」

「うん、約束だ」

 

 夕焼けの下、僕達は指切りを交わした。子供の約束の様に。

 

 ロレンシアは、笑っていた。きっと、心の奥からの笑顔だと思う。

 

 総統業務で毎日が忙しいロレンシアも、少しは息抜きになっただろうか。

 

 きっと今日は、欲望のままロレンシアにエッチな事をさせるより、ずっとずっと幸せな一日だった。それだけは、断言出来る。

 

 だから。

 

 

 

「ロレンシアのあの態度だと、かなり際どい事も許してくれたよなぁ……。格好つけずに、履いてるパンツ貰っときゃ良かったかなぁ……」

 

 

 

 夜、ベッドの中で独り密かに後悔したのは内緒である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 

「1パック3枚入り、500ハーグだよー」

「おい、もう一つだ! もう一つ寄越せ腹黒秘書!」

「こ、こっちにも! くそう、本当に入ってるんだろうな!」

「僕は、ロレンシアに関することで嘘はつきませんよ」

 

 

 商いは、大盛況となっていた。

 

 僕は約束通り、兵士共の各それぞれの希望通りの衣装写真を進呈した。

 

 ただ、写真を配るだけでは勿体ない。この前の外交で贈賄を駆使した僕は、かなり散財していた。その資金回収を兼ねて、ロレンシア写真の販売を同時開催したのだ。

 

 兵士達の要求したロレンシアの衣装写真3枚入り、1パック500ハーグ(日本円にして10000円程度)。

 

 10パックに1枚、レア写真として「お着替え中の半脱ぎヘソチラロレンシア」

 

 30パックに1枚、スーパーレアとして「お着替えを撮影しているのに気付き、下着姿のままジト目で僕を睨むロレンシア」

 

 そしてウルトラレアとして、谷間の見える「裸エプロン新妻ロレンシア」を収録した。1枚だけしか存在しない、究極のレア写真(おたから)である。

 

 因みに裸エプロンは僕のリクエストだ。兵士達の希望ではない。

 

 兵士達は食いついた。兵士達に金を惜しむ気配はなく、用意しておいた大量のロレンシア写真パックが飛ぶように売れていく。これで、当座の資金難は乗り切れるだろう。

 

 そしてロレンシアの人気が高まれば高まるほど、バーゲン帝国はより強固に結束する。兵士は喜び、バーゲン帝国もより発展していく。

 

 まさにwin-winだ。

 

「やったぁ……ジト目下着ロレンシア様だぁ……」

「畜生あいつ引きやがったぞ、本当に下着写真が入ってやがる! 俺に10パック寄越せ!」

「うーん、学生服と学生服で学生服がダブってしまった。誰か~、メイド服か、水着のロレンシア様と交換して頂きたい」

「皆見ろ! 学生服ロレンシア様、よく見たら上着が透けてるぞ!」

「何だと!? おい、さっきの学生服ダブり! 俺の猫耳ロレンシア様と交換しないか!?」

 

 

 ハーゲン帝国は、今日も平和であった。

 




不定期更新……

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