許嫁は生徒会長   作:高崎瑞希

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少しだけ短めになった…?
でもその分内容は詰まっている…はず…!
十話という節目のタイミングでこれを書けたので少しだけ満足しています。








許嫁は生徒会長 10

気がつくとベッドに寝転がっていた。

あれからどうしたのかまったく記憶がない。

僕の記憶の最後は目の前に見える天城さんの整った顔。

僕の胸の中で泣く彼女を僕は不謹慎かもしれないが、いとおしいと思った。

おそらく僕はどこかで選択を誤ったのだろう。だって僕は彼女を泣かせてしまったのだから。

あれから彼女はどうしたのだろうか。

何度も言うが、僕はあのキス(・・)の後の記憶がまったくない。

もしかしたら夢かもしれない。

明日起きて学校に行くとそこには笑顔の天城さんが。

僕とは軽く挨拶を交わす程度。それはそうだ。僕と彼女はただのクラスメート。話したことなど一度もない。

それなら楽なのに。もういっそ…こんな夢早く終わればいいのに…

 

 

×××

 

 

バカ…

 

私は彼にキスをした。

しようと思っていたわけではない。ただ…彼にぎゅっと抱きしめられて…見上げると彼の心配そうな顔があって。

『あぁ…この人は私のことを心配してくれているんだ。』って思えた。でも同時に

『昔のこと…なにも覚えてないんだ…』

そんな彼に私は苛立って…気づけば口と口が触れあっていた。

 

「んっ…」

 

ただ触れあうだけのキス。

 

彼の唇は柔らかく、甘く私を受け入れてくれた。

 

驚いて動けなかっただけかもしれない。

 

それでも…彼に拒絶されなかった。それだけで私の心は満たされていく。

 

しかし、満足すればするほど私の耳に彼の言葉が響く。

 

『許嫁…解消しよう』

 

低い彼の声が私の頭を侵食していく。

 

私は…私はどうすればいいの…?

 

あぁ…うあぁぁぁ…!!!

 

 

私は彼をつきとばし、家から飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くしゅん」

 

私は行く宛もなく道をさまよっていた。

世界は灰色。もうどこにも希望なんてないのではないだろうか。

頭の中は彼で埋め尽くされている。

私の失敗した料理を全部食べてくれた優しい樹来君。

一緒にお買い物に行った時のちょっと意地悪な樹来君。

お互いに自己紹介をした時の顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた樹来君。

あの時『可愛い子が好き』って言ってたけど…樹来君もすごく可愛いよね。ふふっ…

 

彼に会いたい。手を繋ぎたい。ぎゅっとしてほしい。キスも…もっとしてみたい。

彼と離れてたった数十分。外は寒くなっていく。しかし対照的に私の体は熱くなっていく。

 

戻ろう。たとえ彼が私を拒絶しても…受け入れてくれるように頑張る。

彼が困っているなら助けてあげる。あの時…彼がしてくれたように…!

 

 

×××

 

 

「眠れない…」

 

ひたすら目をつむり、羊を数える。

 

「羊が一匹…羊が二匹…」

 

『メェ~…メェ~…』

 

途中までは問題なく進む。しかし…

 

『樹来君。』

『樹来君?』

『樹来くーん!』

 

羊ではなく天城さんが流れてくる。

そして柵の中には天城さんがたまっていく。見ているだけで癒される…けど眠れない。

どうしたものか…

 

ガチャ…

 

玄関の方からドアの開く音がした。

もう時刻は十時を過ぎている。訪ねてくるとしたら泥棒さんしかいないだろう。

 

いいよ。好きなもの持っていけよ。

ついでに僕を殺していけよ。そうすれば天城さんは僕と関わらなくてもよくなる。きっと幸せに過ごせるはずだ。

 

不思議と体が軽くなる。まぶたは重くなり閉じていく。

ははっ…人生の終わりなんてこんなものさ。最後に彼女と楽しい日を過ごせたんだから…悔いなんてない…

 

 

 

 

 

 

 

「樹来君。ねぇ、樹来君。もう寝ちゃった?」

「ん…ん?」

 

なんだ。まだ生きてたか。やるなら一思いに…

 

「あまぎ…さん…?」

「うん。」

 

枕元に天城さんが座っていた。

いつのまにか僕は眠りについていたらしい。

 

「今…少し話せるかな…?」

「うん。もちろんいいけど…」

 

顔が熱くなる。

さっき僕はこの子とキスをしたんだ…

電気がついてなくて助かった。きっと今僕は耳の端まで真っ赤だろう。

 

「樹来君は…許嫁…どうしても解消したいの…?」

「…うん」

 

そんなの当たり前だ。

僕なんかと彼女が釣り合うわけがない。

 

「私と一緒にいるの…いや?」

「いやってわけじゃ…」

 

いやじゃない。

でも、一緒にいてはいけない。僕とは住む次元が違うのだから。

 

「私と…たった一日だけだけど…一緒に過ごすの…楽しくなかった?」

「それは…」

 

そんなわけない。全てが楽しかった。最初のイメージとはまったく逆の言動をする天樹さん。

僕は気づくと彼女を目で追っていた。

料理の時も、買い物の時も…シャワーも覗きに行ったほど。

 

「樹来君…泣いてるよ。」

「……え?」

 

手を目の下に当てる。

生暖かい何かが手につく。

それはどんどん手に伝わっていって…布団を濡らしていった。

 

「泣くなら…泣くほど辛いなら…」

「べ、別に辛くなんて…」

「嘘はいいの。私のことは考えなくていいから。あなたの気持ちを正直に教えて。」

 

天城さんの手が僕の頬に触れる。

顔が近づく。あの時と同じ…少し動けば触れる距離。

 

 

「私はあなたのことが好き。」

 

「え…」

 

「あなたは?」

 

「僕は…」

 

「うん」

 

「僕は…僕は…!」

 

「うん」

 

「僕は…僕だって…君のことが…!」

 

「うん」

 

 

涙が溢れてくる。

言葉がうまく出てこない。

僕は何が言いたいのだろう。

彼女に何を言おうとしているのだろう。

………いや、わかっている。ずっとわかっていた。目を背けていただけだ。

僕が彼女を見たとき、目を奪われた。

気づけばずっと彼女を目で追っていた。

きっとこれが……ひとめぼれ……ってやつなんだ…

 

 

「好きだ…!」

 

「うん…うん…!」

 

「あぁ…うぁぁぁぁ………!!!」

 

 

感情がどんどん溢れる。

一度口にしてしまった『好き』という単語はもう取り消せない。

もう心に嘘はつけない。

僕は…天城さんが…咲さんが好きだ…!

 

 

「咲…さん…」

 

「樹来…君…」

 

 

そして僕たちは…

 

 

甘く、少しだけしょっぱいキスをした。










軌・道・修・正!
甘ーい!に戻せるように頑張りまっす!

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