許嫁は生徒会長   作:高崎瑞希

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許嫁は生徒会長 11

「咲さん…」

「ん…もう少し…」

 

再び唇を合わせる。

それは三度目のキス。

胸の奥が熱くなっていく。きっとこれが『幸せ』というものなのだろう。

相手も僕を求めてくれる。こんなに近い距離にいる彼女はきっと僕を受け入れてくれる。

そんな優しい彼女。だからこそ僕は彼女と一緒にいたらいつまでも甘えてしまう。お互いのためにならない…

 

「もう…ダメだよ」

 

口をゆっくりと離した彼女は人差し指を僕の唇に当てる。

顔をこてん…と傾け、目を覗きこむ。

 

「また変なこと考えてるでしょ」

「い、いや…」

 

別に変なことは考えてない…のだが…

 

「目が泳いでる」

「うっ…」

 

あまり泣いてる顔を見られたくない。

それにこれ以上目を合わせていたら心の奥まで見られてしまいそうだ。

 

顔を背ける。少し落ち着きたい。

しかし彼女はそれを許してくれなかった。

頬に両手を添え、ぐいっと顔を正面に向けられる。

 

「逃がさないから」

「そんな…んむ…」

 

四度目のキス。

何度しても慣れない。目を開けていると長いまつげが目の前で揺れている。見つめることはできない。だからといって顔を背けることもできない僕は目をつむり柔らかな彼女を受け入れた。

 

たったの数秒。

それだけで脳がマヒしてしまう。正常に働かない僕の頭はキス以上のことを彼女に求めていた。

 

「自分の気持ちに正直に、だよ」

「………咲さん」

「うん。私…初めてだから…優しくしてね…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー…もう朝か…」

 

外がだんだんと明るくなる。

時計を確認。現在6時だ。

さすがにまだ外を歩いている人はいない。聞こえる音はちくたくと時を刻む時計とすー…すー…という可愛らしい寝息だけ。

 

腕の中で彼女は無防備な寝顔をさらしていた。

 

ゆっくりと腕を動かし、彼女の頭へ。

長い茶髪を撫でるように頭から肩へ手を沿わせる。

 

「んん…」

 

彼女の唇が形を変える。

そんなちょっとした変化にも僕の目は吸い寄せられる。

 

 

キス…したい

 

でも寝ている時にそんなことしたら怒られるかな…

 

でもでもそれ以上のことを昨夜はしてしまったんだし…

 

あぅ…責任とらなきゃいけないよな…

 

 

「隙ありっ!」

「んん!?」

 

 

僕は彼女から目を離していた。

こっそりと近寄ってくる黒い影に気づいていなかったのだ。

 

「おはよ♪」

「おはよう…ございます…」

 

また奪われてしまった。

昨夜の余韻が残る唇に更に甘さが加わる。

 

「明日はちゃんと王子さまのキスで起こしてね」

 

王子って…僕のことかな。そうだよね。

どうやら僕よりも早く咲さんは起きていたらしい。

敵わないな…

 

「ねぇ、樹来君」

「なに?」

「私もさ…昨日話をして、いっぱい考えたんだ。」

「うん」

「それで…やっぱりさ。親の決めた許嫁なんておかしいと思う。」

「………え?」

「だから…」

 

「許嫁…解消しよう」

 

「………」

 

突然すぎて言葉が見つからない。

それは確かに昨日の僕が望んだことだ。

でも…でも…!

 

そんな僕を横目にスマホをいじり始めた咲さん。

もしかして僕は飽きられてしまったのだろうか。

もう彼女の横にいることは出来ないのだろうか。

 

「もしもし。お父さん?」

 

どうやら電話らしい。

相手は咲さんのお父さん。おそらくは許嫁についてだろう…

 

「うん…うん。そう、今は樹来君の家で…あ、そうだよ」

 

僕に横顔を向けて話している。

その顔はすごく真面目そうで、僕に口を挟むことを許してはくれなかった。

 

「許嫁…なかったことにしたいの」

 

やはり…

耳がそれ以上の言葉を聞くことを拒否している。

 

「うん。私が決めたことだから。………大丈夫だよ。安心して。うん…うん…うん。また今度連れて帰るね。うん。じゃあね。」

 

耳からスマホを離す。

 

「樹来君?おーい、樹来くーん?」

「聞こえてるよ」

 

嘘だ。最後の方はまったく声が聞こえなかった。

咲さんの顔が目の前まで迫ってきてやっと五感を取り戻したのだ。

 

「お父さん、私が決めたことならそれでいいって」

「そっか…」

「あとは樹来君のお父さんにも話さなきゃいけないんだけど…それもお父さんが連絡しておいてくれるって」

「そっか…」

「これで…私たちはただのクラスメートだね…」

「そうだね…」

 

もうただのクラスメート。でも…昨日の夜のことはもう消すことのできない事実。

幸せだった。たった一夜の関係。でも絶対にそれを外にばらしてはいけない。

きっと僕に向けられた笑顔も、言葉も、行動も、全てが彼女の優しさ。

昨日の夜のことも僕と別れる最後の思い出…

 

「一ノ瀬樹来君!」

「っ…」

 

体が固まる。

目の前の彼女の目はまっすぐと僕の目を見ていた。

再び目元が熱くなってくる。

昨日あんなに泣いたのに…まだ残っていたのか。

 

「私と付き合ってください!」

「…え…?」

 

別れを覚悟した僕の耳はどうやら本当にいかれてしまったらしい。

こんなに大切な場面で…聞き間違えるなんて…

 

「これは親の意志じゃない。私の…私自信の意志。

私はあなたが好き。あなたと同じ学校に入れて、同じクラスにもなれて、本当に嬉しかった。

そんな時に親同士の約束を聞いて…私、一人で舞い上がって…あなたの気持ちを考えずに家に押しかけて、いきなり許嫁だって…

ごめんなさい。私はみんなの意見を聞かなきゃいけないのに…これじゃ生徒会長なんて出来ないよね…」

「…それは違うよ」

 

突然の展開で頭が追い付かないけど、これだけは言える。

『咲さんは何も悪くない』

僕が一人で喜んで、一人で落ち込んで、一人で悩んで。

悪いのは僕だ。自分の気持ちをはっきりさせなかった僕自身だ。

 

「嫌なら嫌って言って。それなら私は…諦めることができるから…」

「嫌なわけない。そんなわけない!

僕だって咲さんのことが好きだ。

初めて咲さんを見たときに目を奪われて、教室で横の席になったときは神様ありがとうって思ったくらい嬉しかった。

そのうえ家にまで来てもらって…許嫁って新事実を突きつけられて…僕はどうしていいのかわからなかった。

きっと親が決めたことだから仕方なく咲さんは来てくれた。そう思ってた。だから僕は…君と関わるのをやめようと思ったのに…それなのに君は…こうして告白してくれた。一度は君を拒絶した僕に。」

「樹来君も…私のこと考えてくれてたんだね…」

「いや、結局は自分のことしか考えてなかったんだよ。そんな関係じゃいつか壊れる。

いつか壊れるなら今のうちに…ってね。ようするに捨てられるのが怖かっただけだ。」

「捨てないよ?」

「うん。僕だって…離す気はもうないから」

 

二人笑いあう。

お互いの気持ちがわかった今、これ以上の言葉はいらないだろう。

 

どちらからとなく唇を合わせる。

それは今までで一番幸せなキスだった。

 

 

「咲さん」

 

「うん」

 

「僕と…付き合ってください」

 

「…はいっ!」

 

 

僕にはもったいないほどの笑顔。

昨日までの僕ならきっと顔を背けていただろう。でも今の僕は…

 

僕は笑顔でゆっくりと彼女を抱きしめた。

 

 










何回キスするねん!
はい、すいません。書いて、読み直して、自分で突っ込みました。
次からはもっと別の方向から書きます。キスは極力避けようかな…

そして僕は思った。
『こいつら…許嫁やめやがった…!』
次回から『彼女は生徒会長』にタイトルチェンジ!
申し訳ございません!
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