許嫁は生徒会長   作:高崎瑞希

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彼女は生徒会長 1

制服を着て、マフラーで首元を隠す。

まだまだ寒い。4月とは言ってもまだ冬だ。肌を刺すような冷たさが残る道を僕は女の子と歩いていた。

僕は左手だけ手袋をしている。対する女の子は右手だけ手袋をつけていた。

これらの柄は同じ。つまり、一セットの手袋を二人で身に付けている。

なぜか。それは手袋を着けていてはできないからだ。

 

そう。僕たちは手を繋いでいた。それも指を絡ませながら。

 

気を付けて歩かないと、時々肩と肩が当たる。

 

『ごめん』

 

そう謝ると女の子は誰もが憧れるであろう笑顔を僕だけに見せてくれながら

 

『大丈夫だよ。隣に君がいるんだって安心できるから』

 

明らかに僕を殺しに来ている。

でも、まだ僕は死ぬわけにはいかない。だって…彼女と…天城咲さんと…付き合えることになったのだから…!

 

一時期は許嫁がどーたらこーたらと半ばムリヤリ一緒に住むことになったが…今では父親に少しは感謝しなければ。

オヤジがいなかったら咲さんと出会うこともなかっただろうしね。

 

「樹来君」

「うん?なに?」

「顔が笑ってるよ」

「咲さんだって」

「だって…えへへ…」

「あはは…」

 

朝から僕たちはずっとこんな感じだ。

時々どちらからとなく話しかけ、目が合い、恥ずかしくなって、笑ってお互い目を背ける。

更には指まで絡ませているのだからどこからどう見てもカップルにしか見えないだろう。

普段の僕ならすぐに手を離していただろう。でも今の僕は違う。

朝、お互いの気持ちを確認したのだ。

『好きだ』

僕は彼女に告白した。彼女もそれに答えてくれた。それは初めての告白だったのだ。それが成功した今、僕の気持ちは天にも昇りそうなほど。

おそらく彼女も同じ気持ちだろう。そうであってほしい。

 

そんな二人である。

登校中であろうと、手を離すはずがない。

そのまま学校に到着し、周りからの視線を浴びながら教室へ向かう。

 

ガラガラ

 

その音と共に教室内の視線が全て僕たちを捉えた。

騒がしかった教室が一瞬にして静かになる。

 

昨日僕は彼女に『話があるんだ』と言った。

そして今日、僕たちは手を繋いで仲良く登校。

ならば皆の反応は1つだろう。

『キャー!』

黄色い声援が飛び交う。

 

「ちょっと咲!こっち来て!早く早く!」

「え?あっ…じ、じゃあ樹来君。また後でね。」

「うん。」

 

柔らかい掌を離す。

少し名残惜しいが…手を繋げるチャンスは別に今だけではない。

帰り道だって…家でだって。いつだって彼女に触れることができる。だって僕は…彼氏…だから…!

 

「いーちーのーせー!なんだよお前!お前も天城さん狙いだったのかよ!早く言えよな~!」

「羨ましいぞこのやろう!で?どこまで行ったんだ?キスくらいはしたのか?お?お!?」

「あ、あはは…」

 

咲さんは女の子軍団に連れていかれた。

そして僕の元には男共が群がる。まるで砂漠に現れたエサに集まるチーターのようだ。

 

「無言は肯定だからな!くっそ…もうキスまで行ったのか…で!?最後まではまだだよな?な?」

「あ…えと…その…」

「うわぁぁぁ!!!一ノ瀬のくせに!なんであの天城さんと付き合えたんだよ!はっまさか…弱みとか握ってるのか…?」

「あの咲たんの弱みを…?なんでござる?教えてくだされ!」

 

壁際に追いやられ、男共に囲まれる。

逃げ道は無くなった。答えるしかないのか…でも答えられるはずもない…

ひきつった笑顔でひたすら黙認。これいつまで続くのやら…

 

「おはよー…え?なにこの騒ぎ…ほら!チャイム鳴るわよ!席につきなさい!」

 

ドアが開き、先生が入ってくる。

周りから人が消えていく。

助かった…あのまま囲まれていたらどうなっていたか…

 

「凄かったね」

 

咲さんが隣の席に戻ってくる。

どうやら咲さんも皆に色々と聞かれたらしい。

それでも笑顔なのはなぜだろうか。

いや、きっと僕と同じ気持ちだからだろう。

 

「本当にね。まさか僕がこんなに注目される日が来るなんて…」

「男女の恋愛なんてそんなに珍しいものでもないのにね。」

 

女の子は友達の恋愛には敏感に反応する(と思っている)。

それも今回の対象はあの咲さんだ。

これは男も反応すること間違いないとは思っていたがここまでとは…

 

「あ、今日の放課後は生徒会の仕事があるから先に帰ってていいよ。」

「んー…いや、待ってるよ。なにか手伝えるかもしれないし。それに久しぶりに図書室も行ってみたいからさ。」

「そっか。じゃあできるだけ早く終わらせるようにするから一緒に帰ろうね。」

「うん。」

 

机にひじをつき、手に頬をのせてこちらをにこにこと見つめている。

そんな可愛い彼女に僕は目を取られていた。

 

「一ノ瀬君?ちゃんと先生の話を聞いてね~」

「へ?あ、はい!」

 

そして僕は学校生活で初めて先生に怒られた。

でも不思議と嫌な気持ちはなかった。

 

横に彼女がいるからかな…?

 

 

一日が進んでいく。

 

高校一年生の時はあんなに長かった一日がまるで光のように進んでいく。

あれだけわからなくて退屈だった英語の授業も恐ろしいほどの楽しさ。

なんだ英語の先生。授業方法変えたのか?一年間授業受けてたけどこんなに楽しかったのは初めてだ。

 

普段は楽しくないものが楽しくなる。恋愛なんてくだらないと思ってたけど…いざやってみると悪くない…いや、良い。

 

 

 

こんな一日が…ずっと続けばいいのに…!

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