家の中に入る。
先に入った咲さんは椅子の上にカバンを置いて、中身を確認していた。
む~…と唸っている。どうしたのだろうか…
そんな彼女を横目に見ながら僕は荷物を置きに部屋に入る。
ふわっと彼女の匂いがした。まだ出会って数日なのにどんどん僕の生活は彼女に侵食されていく。
嫌ではない。むしろいい…
「樹来くーん!!!」
「こふぅ!?え?なに?」
後ろから体当たりされた。
突然の衝撃にたまらず前に倒れこむ。
床にキスをした。とても冷たかった。
「痛い…」
「あ…ごめんね…鼻打っちゃった?大丈夫?」
「うん…それはいいんだけど…どうしたの?」
「下着…ない…」
「………うん?」
What?
二人並んでベッドに座る。
なんとも言えない表情をしている彼女から詳しく話を聞くことにした…のだが…
「つまり…この家で過ごすために用意した荷物の中に下着を入れるのを忘れた…と」
「ちゃんといれたもん!樹来君が気に入ってくれるような可愛いや…あぅ…」
「あ、あはは…」
下を向いて真っ赤になっている。
さすがにこれ以上この話を続けるわけにもいかない。
さらに言えば異様に距離が近い。肩が触れそう…どころか完全に当たってしまっている。
流れを変えなければ…
「じ、じゃあ親御さんに連絡しようか!」
ベッドから立ち上がる。
くい、と袖を引かれた。顔を向けると彼女はこちらを見上げていた。
気のせいだろうか。微妙に口角が上がっている気がする。
「ねぇ…樹来君…」
「な、なに…かな…?」
嫌な予感しかしない。
だが無視もできない。たとえ意地悪そうな笑いでも…可愛いのだ。目を離せないのも仕方ないだろう!
「えっとね~♪」
僕は一人地面に座り込み、目をつぶって頭を抱えていた。
周りからは女の子たちの笑い声が聞こえる。
時々『あれ?男の子がいる…?』『彼女の付き添いかな?かわいそー…』なんて声が聞こえてくる。
僕も今すぐ走り出したい。でもできない。残念ながら。
その時、しゃっ!と音がした。
「あれ?樹来君…何してるの?」
咲さんの声がした。
目は開けずにその声に言い返す。
「何でもないから早く終わらせて…というか僕来る必要無かったよね!?」
「じゃあ早く選んでよ~♪ちゃんと見て反応してくれないとずっと続くからね?」
うぅ…かつての生徒会長としての尊厳はどこへいったのやら…
あんなに凛々しくて格好良かった彼女はいずこへ…?
僕としても早く家に帰りたい。晩ご飯の用意もしなくてはいけないし。
覚悟を決め、ゆっくりと顔を上げる。
まず、目に飛び込んできたのは肌色。
そしてほんのりと赤く染まった彼女の顔。
その顔の少し下。本来は見えるはずのものは見えない。
代わりに見えたのはささやかな柔らかそうな胸元とそこを支えるピンク色のフリフリがついたブラ。
さらには外気にさらされたお腹に加え、ブラとセットのピンク色のパンツ、そこからスラリとのびる細い足。
下着姿の彼女がそこにはいた…!
「どお?可愛い?」
恐らくは学校の生徒たち皆が見たいであろう、想像するであろう彼女の惜しげもない姿がさらされている。
いや…僕はその下も見てしまっているのだが…そこは健全な男子高校生である。反応するな、と言うほうがムリだ。
「ねぇ~…黙られると…さすがに恥ずかしいんだけど…」
右手で胸元を、左手で下半身を隠すようにしてモジモジし始めた。
隠されると…その下を見たくなるのが男ってもんで…
「じゃないよね…えっと…可愛い…と思う…よ?」
まともに見れない。しかし、右を見ても左を見ても見慣れない下着の数々。平日の夕方だから人は少ないが…その分男の僕は目立ってしまう。
目線を下に向けながらなんとか言葉を発する。
「そう…かな…えへへ…」
対する咲さんも恥ずかしそうに笑っている。
恥ずかしいならしなければいいのに…まぁ選んだしこれで終わり…
「じゃあ次ね♪」
「ふぁっ!?」
彼女のファッションショーはその後も数十分続いた…