無事下着を買い終わった後はぶらぶらと買い物を続ける。
具体的には…汚いオヤジの部屋の掃除道具だ。
家にあるものだけでは足りない。かといって放っておけばずっと僕は咲さんと一緒に寝ることになってしまう。
………それもいいね
「樹来君?」
「ふぇぇい!?なんでございますでしょうかい!?」
頭の中で咲さんといやーんなことを考えてしまっていたせいでつい現実で変な声が出てしまった…
ほらみろ。咲さんポカーンとしちゃってるじゃないですかやだー!
「だ、大丈夫?やっぱり一緒に下着を買うなんておかしかったよね…ごめんね…」
「いやいやいやいや!そんなことないよ!むしろ楽しかったといいますか咲さんのあられもない姿を見られて非常に眼福といいますか…」
「ふふっ…そっか…」
笑われてしまった。なぜだろう、頬が熱くなっていく気がする。きっと今僕の顔は真っ赤なのだろう。
「樹来君って結構
「へ?そ、そうかな…」
「うん。だってもう…ね?今さら下着くらいで赤くなっちゃって…」
「えっと…ぁ…」
咲さんの言いたかったことがわかった。
つまりは…『もう下着の下まで見ちゃってるでしょ?』と…
顔がさらに熱くなる。
ダメだ。意識してしまうと余計に…
今考えると僕ってすごい幸運の持ち主だったんだな…
フワフワで柔らかい茶髪を揺らし、手を腰に当てて前のめりな体勢で顔を覗きこんでいる彼女を見つめ返す。
うん?と言いたげな様子で首をかしげる咲さん。
それは反則だよ…可愛すぎるじゃん…
「そ、そうだ!ぞうきんとかも買わなきゃ!よし行こう!」
制服と首元の隙間からチラリと見えた水色の布から目をそらし、ムリヤリにでも話を変える。
このままの空気だとそのままキスくらいはしてしまいそうだ。さすがに店の中でそこまではできない。
「うん、そうだね。」
微笑んでから体を起こす。
あまりにもきれいなそのしぐさについ『計算されているのでは?』と思ったりもしたが…気のせいだろう。
「いっぱい買ったね」
「そうだね」
無事買いたいものを購入できた僕たちは家に向かって歩いていた。
僕は右手に掃除道具が入ったビニール袋を、咲さんは左手にあれが入った紙袋を持っている。
え?あれとは何かって?聞くなよバカ野郎。わかってくれよ。
ちなみに空いた手はしっかりと繋いでいる。やけに柔らかいその手は改めて咲さんを女の子だと思わせるのには充分だった。
やはり何度やっても手を繋ぐのは恥ずかしい。
でも手を離そうとすると向こうからぎゅっと握られる。
ついでに肩も寄ってくる。『離れてよ』『じゃあしっかり握っててね♪』離せるわけがない…
やはり咲さんには小悪魔属性があるに違いない。
だからこそ今も水色のあれが時おり姿を見せるのだろう。
恥ずかしさを隠すために前を向き直す。すると…
「ん?あいつ…」
「どうしたの?」
「あ、いや…」
全身真っ黒な服を着て、黒いフードにサングラス。白いマスクは異彩を放ちながらもしっかりと口元を隠している。
男か女かもわからない。年代も不明なその人は電柱の影からこちらを眺めている気がした。
「ふーん…変な樹来君…」
まだ距離はある。本当にこちらを見ているのかもわからない。
それでも…僕の本能は危険だと赤いランプを灯していた。
「咲さん。ちょっと寄り道していこうよ。」
「え?あ、そうだね。もう少し一緒に歩きたいし…」
「ん?何か言った?」
「んーん♪行こっ♪」
無邪気に笑顔を振りまき、繋いだ手を引く。
子供のようなその仕草に僕の心も引かれていく。
「一ノ瀬…樹来…」
背後がキラリと光った。