まぁたいして変えてませんが。ちょこっと。ちょこっとだけね。
「え…えっと…も、もう一度言ってもらえます…?」
「うん。私たちは許嫁だったって…」
もう一度。…はぇ?
「い、いいなずけって…あの許嫁?」
「多分それであってると思うけど…」
「………」
「………」
沈黙が周りを包む。いったいどうすればいいのか…
その沈黙を破ったのは天城さんだった。
「それでね?私は…あの…その…えっと…」
「は、はい…」
「し、しばらくこの家に住むことになったの…」
「ああー…なるほどー…この家に…この家!?」
「うん…」
え?待って…話が読めない。一旦整理しよう。
僕と天城さんは許嫁です。なのでこの家に住みます。
なるほど。わからん。
「だ、誰から聞いた情報なの!?それ確かなの!?」
「ふふっ…うん。お父さんが言ってたから確かだと思うよ。」
笑って答える天城さん。あ…笑顔だ…可愛いな…じゃなくて、
「なんで僕笑われたの?」
「やっと敬語じゃなくなったなって思って。」
「あ…」
そういえば…衝撃が強すぎてつい素に戻っていた。緊張もどこかに飛んでいってしまった。今年一番の驚きだぜ!まだ始まったばかりだけどね!
「ごめんなさい…」
「いや、いいの!敬語じゃないほうが仲良くなれると思うし!それに敬語は落ち着かないから、普通に喋って欲しいな。」
ニコッと微笑む。ダメだ。いちいち可愛すぎるんですがこんちくしょう!!
「そ、そっか…じゃあ普通に喋るよ。天城さん。」
「うん。それとね…」
なぜかモジモジし始めた。両手はスカートをぎゅっと握っているし。はっ!これはもしや!噂に聞くあの!告は…
「樹来君!」
「はぐぅ!?!?!?」
うわぁぁぁ!!!名前で呼ばれたぁぁぁ!!!心が!ハートが痛いぃぃ!!!なんだこれ!男性特効半端ねぇ!これで堕ちない男はいないだろレベルの攻撃だ!もちろん効果は抜群だ!!!
たまらず前に倒れ込む。勢い余ってそのまま椅子から転げ落ち、机に頭をガンっ!
「あ、ごめんね!大丈夫?」
「うん…大丈夫だけど…ど、どうしたの?突然…」
「よ、呼んでみたくて…」
「そ、そっかー…」
「………」
「………」
再び沈黙が襲う。ダメだな…こういうときどうすればいいのかまったくわかんないな…
その沈黙を破ったのはまたまた天城さんだった。
「あの…」
「な、なになに!?なにかな!?」
この空気はヤバイ。なにがとは言わないが何かがヤバイ。この空気を壊さなければ!そう思って僕はテンションをムリヤリ上げ、前のめりで彼女に言葉を求めた。床の上から。椅子に座っている天城さんに。あ…見えそ…
「私のことは咲って呼んで!!」
「見てない!見てないよ…え?」
「だから…さ、咲って…呼んでほしい…」
「あぅ…いや…でも…」
「……ダメ?」
まさかの涙目!?な、泣かせるわけには…でも…恥ずかしいし…
心の中で天秤にかける。彼女の笑顔と僕の羞恥心を…ガタンッ!
「咲…さん…」
即決だった。僕の羞恥心なんてどうでもいいわ!彼女の笑顔が大優先じゃボケェ!
「あ…うん!樹来君!」
「咲さん!!」
「樹来君!!」
「咲さん!!!」
「樹来君!!!」
「………」
「………」
「…あはは…」
「…えへへ…」
なんとも言えない甘い空気に包まれる。
まともに彼女の顔が見えない。それでもチラッとばれないように咲さんの顔をチラ見。
咲さんも横を向いていた。顔は真っ赤。彼女もこちらを見れないみたい…
チラッ
目が合った。しまった…チラ見してたのがばれる…
「………」
「………」
見つめあうこと数秒。やっぱり可愛いなぁ…ちょっとウェーブがかった茶髪やクリクリな目のせいだろうか、幼そうな印象を受けるが、僕の前にのびる足は細く、白く、長い。すごくきれいだ。
こんな子が許嫁とか…そもそもなんで許嫁に?咲さんはお父さんが言っていた、と言っていた。ならばうちのオヤジも知っているのか…?
「ご、ごめん。ちょっと電話してくる…」
「う、うん。いってらっしゃい…」
「いってきます…」
いってらっしゃいとか言われたの何年ぶりやら…こんな嬉しいものなのか?昔は全然わかってなかったんだなぁ…なんて考えながらなんとか部屋を脱出。
そしてスマホを取りだし電話を掛ける。
プルプルプルプル…
『もしもし?』
「オヤジか!?おい!」
『おー!樹来か!元気そうだな!まああんなかわいこちゃんが嫁ならそうなるか!あっはっは!!!』
「なっ…やっぱりオヤジの仕業か!どういうことだよこれ!どうすりゃいいのさ!」
『あ?んなもん簡単だろうが。結婚して( 自主規制 )して子供つくって仲むつまじく生活すりゃいいだけだろ。』
「できるか!だいたいどこの子だよ!なんで許嫁になってんの!?」
『いやさ。よくあるじゃん。酒場でさ、息が合ったやつがいてさ、よし!将来はお互いの子供を結婚させようぜ!みたいなやつ。あれだよ。』
「どれだよ!」
相変わらず意味わかんねぇな!おい!
『まぁそういうわけだ。しばらくお前と同棲するらしいからな。相手の親とは話したから後はよろしく!』
「はぁ!?おい!待て!」
『ツー…ツー…』
切りやがった…次帰ってきたら覚えてろよ。腹に数発ぶちこんでや…
「大丈夫?大きな声だったけど…」
「ふぇい!?」
後ろから声がかけられた。うわぉビックリ!ずっと独り暮らしみたいなものだったから声かけられるとすごくビックリだぜ!
「あー…うん。大丈夫。」
「そっか…良かった。ねぇ、お昼作るからさ、キッチン借りるね。」
「はい!どうぞ!」
後ろ姿を見送る。ど、同棲かぁ…こ、これからどうなるんだろうな…