許嫁は生徒会長   作:高崎瑞希

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許嫁は生徒会長 9

「んー…」

 

自然と目が覚める。これからについて考えていたのだが、いつのまにか眠ってしまっていたようだ。

時刻は…8時…!?

 

「やば…夜ご飯作らなきゃ…!」

 

意識が覚醒する。あの咲さんを待たせるわけには…あれ?咲さん…じゃない、天城さんだ。僕なんかが気安く呼んでいい名前じゃない。気を付けなきゃ。

 

そういえば天城さんはどこへ?見渡した感じどこにもいないのだが…

 

「あ、起きた?」

 

ひょこっとキッチンから顔を出す。

着ているのは昨日と同じ白いセーター。どうやらもうシャワーは終わったようだ。

そりゃそうか。もう帰ってきてから数時間が経っている。

外は真っ暗だ。人の通る声も聞こえてこない。

 

「天城さん…」

 

帰り道で話そう。そう決めていたのだが、色々あって話せなかった。

いつまでも引き伸ばしていい話ではないだろう。

 

「今…いいかな…?」

「ちょっと待って。もうすぐできるから。」

「できるって…なにが?」

「う…ナイショ…」

 

顔を引っ込める。

何をしているのだろうか。おそらくキッチンで何かをしているのだろうが…料理ではないだろう。

でも『できる』と言っていた。ならば…?

 

わからない。どちらにしても夜ご飯は作らなければ。ならばキッチンへは行かなければいけないだろう。

 

ゆっくりと腰をあげる。足は…大丈夫そうだ。筋肉痛は来ていない。よかった。

 

キッチンへと近づく。音が聞こえてくる。

 

 

「えっと…これを…大さじ一杯…?大さじってどれくらい…?」

 

「これくらい…かな…?次は…コショウを少々…少々ってどれくらいだろ…」

 

「少し…少しだけ…あ…」

 

 

まさか本当に…?天城さん料理はできないのに…

 

「天城さん?」

「入れすぎちゃった…え?あ、樹来君…ちょっと待ってっていったのに…」

 

こちらを振り向く。手にはフライ返しとコショウを持っている。

動きが止まってしまった。驚いた顔でこちらを見ている。

おそらく僕の顔も驚いているのだろう。なぜなら天城さんの前にはフライパンがあり、その上には色のついたお米が乗っていたのだから。

 

「なに…してるの…?」

「えっと…料理…」

「なんで?」

「え…樹来君…なんか今日元気なかったから…それに…呼び方が名字に戻ってるし…」

「ごめん…」

「あっ…ち、違うの!いきなり名前で呼んで、なんて私がおかしいんだと思うし…」

 

違う…

 

「樹来君は悪くないよ。あ、私も一ノ瀬君って呼んだ方が…」

 

違うんだ…天城さんが悪い訳じゃ…

 

「一ノ瀬君、その…ご飯作ったんだ。ちゃんとレシピ見てね、グラムとかも計って…し、少々はよくわからなかったんだけど…」

 

悪いのは全部…

 

「あの…た、多分前よりは上手にできてると思うから!その…食べて…もらえるかな…?」

「ごめん…」

 

悪いのは…天城さんを…こんなに優しい天城さんを…幸せにできない自分自身だ…!

 

「ダメ…だよね…そうだよね。私の作ったのなんて食べられないよね。あっ、いいの。私が全部食べるから…

大丈夫だよ。私結構食べられる方だから。樹来く…一ノ瀬君の作る夜ご飯も食べられるよ。作ってよね。あー!今日のご飯はなにかなー!楽しみだ…」

「ごめん…」

 

もうダメだ。もう無理だ。これ以上彼女の優しさにつけこんではならない。

昨日知り合ったばかりの彼女。

僕のことなんて何も知らないだろうに、出会ってすぐに名前で呼んでくれて…今考えるとあれもきっと僕の心を開かせるための方法のひとつだったのだろう。

僕は…そんな彼女の優しさに答えることはできない。

僕が彼女のためにできることは何もない。

一緒にいても僕は一方的に助けてもらうだけだろう。

彼女を幸せにすることはできない。ならば…

 

「天城さん。」

「うん…なに…かな…」

「お願いがあるんだ。」

「え!?なに?私にできることならなんでも…」

「許嫁…解消しよう。」

「………なんで?」

 

なんで驚くの?

むしろ喜ぶべきではないのか?

僕なんかよりもいい男はたくさんいる。

僕に構う時間があるなら他の男を構うべきだ。

 

「お願い。」

「理由…教えてもらえないかな…」

「ごめん…」

「さっきからごめんばっかり。理由教えてくれないとわからないよ。」

「ごめん…」

「だから…はぁ…一旦落ち着こうよ。ご飯にしよ?ね?」

「ごめん…」

「とう」

「いた…え?」

 

突然頭に衝撃が走る。

別に痛くはなかったのだが…いきなりでビックリした。

顔をあげる。そこには腕を軽く持ち上げた天城さんの姿が。

 

「次ごめんって言ったらもう一回ね。」

「ごめ…」

「とう」

 

痛くはない。むしろ目の前で唇をとがらせて『とう』と言いながら頭にチョップを入れようとしてくる彼女の姿に心がやられていた。

 

あっ…だから…はぁ…ダメだな。言い返す気力も無くなる笑顔だよ。

 

「ごめんね」

「とう」

 

わざと言ってみる。天城さんはちゃんと答えてくれた。微笑みながら僕の頭に手を伸ばす。

 

彼女の背は僕よりも少し低い。

そんな彼女が僕の頭に手を当てようとしたらどうなるか。

必然的に体は近づく。

背伸びをすることによって顔と顔も近づく。

 

気がつかないうちに天城さんの顔は目の前まで近づいていた。

近づいて初めてわかる。こんなにまつげ長いんだ…こんなに光の当たっている目ってきれいなんだ…

 

「あっ…」

 

彼女も僕たちの距離に気がついたようだ。

ほんのり赤く染まった唇から息がもれる。

それだけで僕は彼女の唇から目を離すことができなくなってしまった。

 

「ご、ごめんね…気がつかなくて…」

 

彼女はうつむく。

両手が僕の胸に置かれる。

後ろに押される。

 

少し後ろに下がって微笑みかける。それだけできっと彼女も笑ってくれるだろう。

 

でも僕は動かなかった。

彼女の押す力が弱かったから。

唇に気を取られていたから。

 

なんとでも言い訳はできる。

でも…一番は…

 

「ぐすっ…うぅ…」

 

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「なんで…なんでぇ…」

 

服がぎゅっと掴まれる。

 

「私は…ぐすっ…一度も…忘れたことなんて…」

 

無意識のうちに僕は彼女の肩を掴み、抱き寄せる。

僕の胸にすっぽりと収まる。こんなに小さい、力を込めてぎゅっとしたら壊れてしまいそうな女の子、それが彼女。

それなのに僕よりもずっと強く、ずっと格好よく、ずっと頼りになる。

そんな彼女が今僕の胸の中で泣いている。

 

「昔からそうだ…私が…泣いてたら…じゅー君は…いつも…だから…だから私は…!」

 

顔が上がる。目と目が合う。彼女の目からは止まることなく涙が溢れてくる。

口は強く閉ざされている。まるで口には出せない…目でなにかを訴えているように…

 

「あま…ぎ…さん…」

 

口から彼女の名前が漏れる。

それが合図となったように彼女の腕は僕の胸から離れ、首の後ろに絡み付き…

 

ばか…

 

その一言と共に僕の唇に彼女の唇が重なった…

 

 






書いてから読み返すと…『何かが…違う…?』感が否めない。
シリアス書けないんですよね…だから無理やり明るい方向に持っていこうとする作者に共鳴して天城さんが挙動不審に…
すいません。無理やりにでも楽しいイチャコラ方面に持っていこうと思います。
無理そうなら連載終了。
とまあこれ以上話すとネタバレをしてしまいそうなのでこの辺で。
突然 連載→完結 にかわってたら察してください。
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